――――誓いを立てよう。
風が吹いている。
どこへ行っても寒風吹きすさぶ世界。
それは比喩などではなく、本当に事実のことだ。
大気制御衛星の暴走によって荒廃したこの地球上に最早陽の差す場所は存在しない。
人類はシティという七つの箱庭、あるいは細々と築かれた小さな町にしがみつき、かろうじて生を永らえている状態であった。
絶望と、悲観が世界には溢れてしまっていた。
だがしかし、それでも、諦めない人たちはいる。
活気に溢れ、生きる望みに満ち、毎日が慌しい町というのも確かにあるのだ。
……けれど、これはちょっと度が過ぎてないか、と天樹錬は切に思った。
「まーひーるー! アンタまた私の発明品下らないことに使ったわねー!?」
「ん? ……もしかしてこの端末のこと?」
「もしかしなくてもそうよ! それは情報制御の乱れを感知して演算機関の故障箇所探すっていう画期的なヤツなんだからね!」
「でも見た目ハンドクリーナーだよねこれ。僕が間違えて机の掃除に使っても無理はないと思――――」
「そんな馬鹿なことぬかすのはこの口か――――ッ!!」
どったんばったんと口論(片方は半物理的)を続ける兄と姉。
いや、口論というのはあくまでも互いが言い合うという状態であってこんな剛柔ある対決ではないのだが。
というか先ず何より毎日よく飽きないなぁと思う。
別段見てる分には楽しいけれどそのうちこっちに被害が及ぶのがネックなのだこのワンサイドゲーム。
いい加減止めるべきとは思うけどその場合絶対に矛先が自分に向くだろう。
かといって放っておけばそのうちいつもどおりまた巻き込まれることは自明だ。
「………魔女裁判?」
錬は大きくため息をついた。
こうなれば最後の手段。36もないけど36計目を使わせてもらおう。
「月姉ー、真昼兄ー、僕フィアと出かける用事あるからもう行くねー!」
言い放ち、そして一目散にダッシュ。
ついに物理的破壊音まで聞こえ始めた魔窟となった我が家から錬は大慌てで逃げ出した。
「………ふぅ」
大通りまで出て改めて息をつく。
場合によってはラグランジュの発動も考えていたのだそれは杞憂だったらしい。
というか何故ここまで神経使わねばなりませんか。教えて神様。
逃げ出してから思うことはいつも一つだ。平穏ってなんだっけ。
「さってと」
ぱしん、と頬を一つ叩いて気分を入れ替える。
いや、そんなことする必要もなく気持ちは明るくなるだろう。
「今日はフィアとどこ行こうかなー?」
好きな子と一緒にいれる。
それだけでさっきまでの鬱な気分など吹っ飛んでしまう。
満面の笑顔で駆け寄ってくる金髪の少女を思い浮かべて錬は頬を緩めた。
待ち合わせの時間まで、後15分程度。
律儀なフィアのことだ。今から向かえば丁度いい具合に出会えるだろう――――
――――案の定。金髪の天使は既に待ち合わせ場所にいた。
「お待たせ。フィア」
女の子を待たせるのは男としてどうなのよ? とこのまえ月夜に説教されたがこっちも時間は守っているので別段問題ないだろう。
「はい。おはようございます、錬さん」
にっこり、と笑うフィア。
服装はセーターに吊りスカート、それにストールという見慣れた格好だ。
それでもどこか新鮮に感じるのは惚れた弱みというヤツだろうか。
頬が緩むのを自覚して、錬はフィアの手をとった。
「それで、今日はどこ行こうか?」
「そうですね……。せっかくですからお花を見に行きませんか?」
花、と聞いたら思い浮かぶの場所はたった一つ。
錬が丹精こめて作り上げた空中庭園。世界で唯一青空が望める場所だ。
「そろそろ手入れもしなきゃいけませんし、ね」
確かにそのとおりだ。
意外に仕事で忙しい錬はここのところあの庭園の手入れを何もしていない。
というか休みをほぼ全てフィアとのデートに費やしていることもその原因の一つなのだが。
「そーだね。そうしよっか。最近僕も行ってないし」
久々に緑と太陽に囲まれてのんびりするのもいいかもしれない。
「それじゃ、行こう!」
「はい!」
なにはともあれ、一路向かうは青空の下へ――――
「………ん?」
地下道へ入り、軌道エレベータへと向かう途中。錬は何かの視線を感じて振り返った。
「錬さん?」
不審げに首を傾げるフィア。
敵意というには薄く、殺意というには儚いほんの一瞬の違和感。それでも今のは好ましい気配ではなかった気がする。
「…………」
周りを見渡すが特に異常はない。
「なんでもないよ。気のせいだったみたい」
まぁもとよりこの場所を知っているのは自分とフィアだけなのだ。
それなら心配することでもないだろう。
そう思って錬は先へと足を進めた。
けれど、何か胸にひっかかるような違和感は拭い去れなかった。
――――そして数分後。
エレベーターを乗り継ぎ、壊れそうな階段を上り、目的地に到着した。
テラスへ通じる分厚い扉の前で二人して意味もなく呼吸を整える。
そしてゆっくりと手をかけて扉を開き、そこには燦燦と煌く陽光に照らされる草花たちが――――
「「――――え?」」
期せず言おうとした感想が固まる。いや、それは違う。絶句したというのなら二人ともが目の前の光景を認められていないだけ。
認識できぬものに浮かぶ気持ちなどありえない。
故にこの思いはただ硬直。目の前、無残に踏み荒らされた花園を認められない心――――
「な――――ん、で……?」
呆然と呟いた。
今まで丹精込めて育ててきた草花。問答無用でそれらは踏み砕かれていた。
千切られ、踏まれ、吹き飛ばされている。かろうじて原型を保っているのは真ん中に生える桜の樹のみであった。
「どうして…………?」
口をつくのは疑問ばかり。そのせいで気づかなかった。
「――――やっと来たかよ」
桜の樹にもたれかかり、剣呑な目つきでこちらを見ていた一人の男に。
「!」
一瞬にしてI-ブレインが覚醒する。前方に人間一。正体不明。魔法士の可能性。
幾つもの分析が自動的に始まる――――前に怒りが爆発した。
男の足元。
無残に踏み潰された花々があったからだ。
――――コイツだ。
直感した。理由は知らない。けれどもここを破壊したのは間違いなくコイツだ。
「………誰だ、お前」
普段の錬からは考えられないほどぶっきらぼうな物言い。
しかし眼前の男は錬の怒眼に視線すら合わさずに告げた。
「テメェが『天使』でいいんだよな?」
「っ!?」
一瞬にしてフィアの体が強張る。
「あぁいや訂正する。――――テメェが”マザーコア”でいいんだよな?」
ゆら、と体を起こす男。その手に握られているのは、見まごうことなどありえない――――騎士剣!
「もう用件くらいわかってんだろよ?」
「フィア、下がって!」
最早問答をしている間もない。
どうやってフィアがシティ・神戸崩壊から生き延びたのを聞きつけたのか。
どうやってフィアがマザーコアであることを知りえたのか。
そんなことはどうでもいい。
ただ、この目の前の騎士が自分の愛する少女を害するというのならば、全身全霊全力を以って排除するのみだ――――!
(「ラグランジュ」常駐 知覚速度を20倍 運動速度を7倍に定義)
一喝でトップギアに引き上げたI-ブレインに命令を叩き込む。引き伸ばされた視界の中、走るは踏み込んできた男が放つ銀の一閃。
それをサバイバルナイフで受け止め、流す。だが敵は騎士。真っ向から膂力で勝負しては勝ち目は無い。
故に、
(「マクスウェル」常駐 『炎神』発動)
振り切ったナイフの先端。そこへ情報干渉を開始する。望むは灼熱。爆炎よ、暴れて吼えろッ!
「!」
いきなり迸った灼熱に男の顔が驚愕に歪む。それも当然、この身は広きこの世でたった一つ、能力の同時起動を行えるI-ブレインを持ちうる者。
だが男は太刀風一つを纏って身をまわし、離脱した。
そして着地。開いた彼我の間合いは約5m。油断なく錬を見据え、男は口を開いた。
「ちぃ……テメェがそいつの守り手か」
苦々しげに吐き捨てる。
「オイ小僧。わかってんのか? そいつはマザーコアだ。そいつには俺らを生かす義務があるん――――」
「――――黙れ」
その言葉に一瞬で頭が沸騰した。
今、
お前、
は、
何、
を、
言った?
「義務、だって?」
怜悧な声が大気を裂く。
「あ、当たり前だろうが! マザーコアなんぞ所詮シティの電池以外の何者でもねぇよ!」
一瞬気圧された男だが、すぐさま我を取り戻し、騎士剣を構える。
……そうか。つまりは敵なんだね。
スイッチが入る。もう知ったことではない。
この男は祐一のように己が正義を貫いている人間ではない。
悩み、苦しみ、愛する人を犠牲にし、それでも貫くと決めたあの黒衣の騎士の信念に比べればなんと矮小なことか。
ただ生き延びるだけに。あがくことなく現実を受け入れ、犠牲を”しかたがない”と容認している唯の怠惰な愚者だ。
ならば、倒すことになんの躊躇いもない。
後ろにいる金髪の少女を守ると誓った。生きていてほしいと、そう願った。
それを上回る信念を持たずして彼女を得ようなどと、無謀愚策も甚だしい――――!
「テメェをぶっ殺して、マザーコアは手に入れさせてもらうぜ……!」
だからそれが阿呆だと言っている。どこで嗅ぎつけたかは知らないが、その蛮勇、身を以って後悔しろ。
「――――フィアは渡さない」
言に全てを込める。
「一緒に生きるって、約束したんだ」
たとえ絶望に塗りこまれた運命だとしても、少女を守って戦うと決めた。
「フィアは電池なんかじゃない。ちゃんと泣いて笑える、一人の女の子なんだ」
だからお前のようなヤツになんか渡さない。
それになにより、
「なにより――――好きな子をそう簡単に渡すと思う?」
「錬さん……」
フィアに微笑を向ける。結局はそれにつきるものだ。どんな理屈並べ立てようと、とにかくフィアのことが大好きだから守りたい。
「……け。言ってろクソガキ」
言葉と共に男が動く。運動加速は28倍。――――二流が。ナイフを構え、錬も迎撃すべく疾走を開始した。
激突する。
そして、勝負は呆気なくついた。
「大丈夫? フィア」
倒れ伏した男を縛り上げてダストシュートから重力制御をかけて地上へと戻し、振り向く。
金髪の天使は、震えていた。
「フィア……?」
敵は倒したのに、どうして……?
伸ばしかけた手が途中で止まる。
フィアはひぅっと嗚咽気味にしゃくりあげ、
「…………やっぱり、まだ狙われてるんですね、私」
顔をうつむかせて呟いた。
「錬さんに、月夜さんやおばあさまたちに助けられて……もう生きていいと思ってたのに」
一筋、涙が踏み潰された花の上に落ちた。
かけるべき言葉が見つからない。
「……それでもまだやっぱり、私はマザーコアなんですね」
違う、と。そう言いたい。
けれど言葉が出てこない。
少女のこの苦しみは安っぽいその場しのぎの言葉で慰めていいものではないからだ。
「やっぱり……私は――――」
「フィア」
だから抱きしめた。
目の前で震える金髪の天使。
今の僕に君の苦しみを和らげる言葉はかけれないけど、せめて震えだけは止めてあげる。
「大丈夫……絶対に大丈夫だよ」
「錬、さん……」
嗚咽を漏らすフィアを胸の中に抱き込む。
身長はそんなに変わらないはずなのに、胸の中の少女は酷くちっぽけに見えた。
「僕が守るから。月姉も、真昼兄も、弥生さんも……みんな、フィアのこと大事に思ってるから……っ」
抱きしめる腕に力を込める。
守りたい。
心の底から改めて思う。
愛おしい。
心の底から改めて思う。
「だから……泣かないで、ね?」
「……は、ぃ…………」
一層顔を強く押し付けてくるフィア。
それを優しく引き離し、指で涙を拭った。
「約束する。ずっと僕がそばにいる。ずっとフィアを守る」
顔を寄せる。
フィアは拒まなかった。
眼を閉じ、安心したように身を寄せ、錬とフィアは口付けを交わした。
「ん、ふ…………っ」
唇を啄ばまれたフィアがぴくりと身じろぎする。
その一挙一動が愛おしい。
錬はキスを交わしたままフィアを再び抱きしめた。
あったかく、柔らかい少女の体。
「ふ……ぁっ」
舌先でフィアの口の中をつつく。
それだけでフィアはびくんと反応し、脱力した。
「ぁ…………」
つ、と唾液の線を引きながら唇を離し、今度は首筋に口づける。
「ぁ、ふ……っ」
とろけそうな吐息。
眼を閉じ、紅潮した顔でフィアはほうっと息をつく。
既に足には力が入っておらず、錬の体にしなだれかかっている状態だ。
「フィア……」
「錬、さん………」
どちらからともなく目が合う。
潤んだフィアの目と、黒々と澄んだ錬の目。
同調しなくとも意思が伝わるような錯覚。
言葉なんていらない。
ただ、今は確かに”ここにいる”フィアを感じたかった。
「…………フィア」
守りたい、愛する少女の名を呼ぶ。
心の中は猛り狂う愛おしさと、拒絶されることに対するほんの一抹の不安。
それを見透かしたようにフィアは、
「…………錬さん。――――大好きです」
にっこりと笑んで、穏やかに身を任せてきた。
「――――ふぁ……っ」
口付けを交わし、形の良い胸を撫でる。ゆっくりと服を脱がせ、あらわになったフィアの肢体は息を呑むほど美しかった。
白皙の肌。決め細やかな髪。それはまるで一つの芸術品のよう。そしてついでにごくりと思わず唾を飲んでしまった自分に自己嫌悪。
「うわぁ…………きれいだよ、フィア」
「そ、そんなこと言わな――――ひぅんっ!?」
身を起こして抗議しかけたフィアの耳を甘噛みし、言葉を封じる。
あぅぅ、と脱力するフィアに微笑を一つ漏らし、そのまま形のいい胸を掌で覆った。
「あ……っ」
「だいじょぶ。力ぬいて、ね」
「は、はい……」
このセリフはこのときに言うものではなかったような気もするがまぁいいだろう。
フィアは素直に従ってからだをリラックスさせる。それでもまだ緊張は解けていないが、これはこれで味わい深い。
ゆっくりと揉んでゆく。弾力に溢れ、形のよいそれは、まるで錬の手の動きに合わせて形状をフィットさせてゆくように感じるほど。
「あ、はぁ……っ」
次いで錬はその胸にゆっくりと舌を這わせた。
「ひぁっ!?」
たちまち劇的な反応。手指とは違う湿り気を帯びた感覚にフィアの体がびくりと跳ねた。
円を描くように頂の周りを動き、空いているもう片方の胸に手を伸ばす。
「んっ……はぁ……ぁ……ぁっ」
徐々にフィアの吐息が甘いものへと変わってゆく。たどたどしいこちらの愛撫でも感じてくれている。
それが何よりも嬉しい。それがとても愛おしい。
「や……は――――ぁ……んふ……っ――――きゃぁ!?」
こちらの手がフィアのショーツに触れた。さすがにそこは恥ずかしいようで、フィアは真っ赤になって顔を上げた。
それに一言。
「こら、動いちゃダメって言ったでしょ」
「え……で、でも―――ふぁうっ!」
既に屹立していた胸の頂を吸ってやるとフィアはおとがいを逸らせて甘い悲鳴を上げた。そのまま舌で連続して刺激を与えてやる。吸い、弾き、甘噛みし……
「ひぁぁっ! んぁっ……く――――ふぁ、は……ぁぁぁっ!」
そのたびに面白いように反応するフィア。胸だけでここまでとは、相当フィアは感じやすい体質らしい。
脇腹から脇の下までを一息になめ上げ、くすぐったげに身を潜めたところに再び胸への愛撫。反った首筋にキスをし、艶かしく動く背中のラインをうなじまで撫ぜ上げる。
フィアの体の全てが愛おしい。
「ふぁ、ぁ、ぁ…………っひぅ!」
「……フィア」
ふと気づく。ショーツに宛がわれた自分の指。そこに湿り気が生まれていた。
「ぁ……錬、さん……?」
愛撫が止まったことに対してか、フィアが不思議そうにこちらを見てくる。それに少しばかりの悪戯心を覚え、錬は、
「…………それっ」
「え――――、ふああぁぁっ!?」
つぷ、と指を彼女の秘部へと差し込んだ。
「や、んんぁッ!」
たちまちフィアの体が弓なりに反った。甲高い嬌声。甘く甘く全てをとろけさせる天使の声が天蓋に響き渡る。
「ひぁ、ちょ、錬さ、あ、ひあぁぁん!」
フィアの中は酷く狭く、差し込んだ指をくわえ込むようだった。それでも暖かい。フィアがフィアである所以の優しさがこんなところまで現れている、のかどうかはわからないが。
中に入った指を折り曲げ、内壁をこするように刺激を与える。
「んんんんッ……!」
フィアは指をくわえ、必死で声を抑えている。その仕草ですら清列。自分が誰よりも守りたいと誓った少女――――。
「ひぁ、あ、んっ! れ、――――んっ! んはぁぁっ! 錬、さん――――!」
水気が溢れてくる。最早フィアの秘部は洪水を呈していた。断続してあがる甘い喘ぎは彼女の絶頂が近いことを知らせてくれる。
「いいよ、フィア。我慢しないで」
「そん、な……ことっ、でき――――なぁぁっ、は、んぁ、ひぅぅっ!」
秘部を愛撫する手は止めずに、頂へ舌を這わせた。同時に二箇所を責められる快感にフィアはより一層背筋を反らせる。
「だめっ、だめです! うぁ、ひあぁうっ! なにか、んはぁっ、なにか、きちゃいますっ!」
いやいやするように首を振り、未知の感覚を振り払おうとするフィア。
イク、と判断した錬は最後に胸をつん、と吸い上げ、同時に指でクリトリスを弾いた。
途端、
「ひぅっ、あ、はんっ、やぁっ、なにか、なにかきますっ! あ、あぁぁ、ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――ッ!!」
今までの中で一際高い嬌声と共にフィアはびくんと震え、絶頂を迎えた。
「は……あぁ……ん……」
フィアはくたりと柔らかな草のマットに倒れこむ。初めての絶頂は余程衝撃的だったのだろう。
目の焦点は合っておらず、時折体は余韻で震えている。そっと額にかかった髪の毛を払ってやる。
「錬さん……私」
「気持ちよかった?」
「っ! そんなこと言わないで下さいッ!」
……先手を打ってみたのだがちょっと失敗だったかな。
「えっと……それで、その……」
「?」
何故かいきなりしどろもどろになるフィア。やっと焦点の合ったその目線は錬の目ではなくもっと下の方へ向けられていた。
「――――!」
途端、顔が火が出るように真っ赤に染まったのがわかった。錬のそれは最早立派に屹立し、ズボンの上からでも容易にわかるほど盛り上がっていた。
「あ、や、これは……」
フィアに自分のいかがわしい心を見透かされたように思い、錬は慌てて意味不明の言い訳をしようとし、
「そ、そのこれは男な――――んむっ!?」
フィアの口づけに妨げられた。唇同士を触れ合わせるだけの簡単な、しかし一生懸命なキス。
その不意打ちに心身共に固まった錬に、フィアはにっこりと笑って告げた。
「いいですよ」
「……フィア?」
頭の中がぐるぐるになる。
フィアはそんな錬を優しく眺め、
「錬さんになら、――――うぅん。私は錬でなきゃ、嫌です」
「――――――――」
その言葉で、一瞬にして頭が冷えた。目の前で少し頬を赤らめて、こちらを見つめてくる金髪の天使。フィア。その全てが、たまらなく愛おしい――――
「……いいの?」
「はい」
恥ずかしそうに、しかししっかりとフィアは頷いた。
ゆっくりと手を伸ばす。
「ぁ……っ」
引き寄せ、抱き寄せてキスをする。
全ての制約は失われた。
ただ今は、愛する、守るべきこの少女を愛したい――――
「くぅ……ぁんっ、ふ、ひぁ……っ!」
フィアの秘部からくちゅくちゅと淫猥な水音が響き渡る。一度達したためか、そこは少し触れただけで再び愛液に溢れ始めていた。
「ふぁっ! は、あ、ぁんっ!」
背筋を反らせてフィアがよがる。白皙の肢体がくねるその様子は官能的というよりは芸術的なまでの美しさ。
錬はそれに惹きこまれるようにして愛撫を続ける。そして花びらのように開いているフィアの秘部にゆっくりと口づけた。
「あ、はぁっ、んぁ、ひぅっ――――ぁああっ! れ、錬さん、そこ、そんなとこ――――!」
舌をいれて蹂躙する。
もっとフィアの声を聞きたい。
もっとフィアの体を感じたい。
「んん……ッ! ふ――――ひはぁぁっ!」
もっと――――
「ひ、あぁ、ああんっ、いぁっ、くぅぅっ、ひぃあっ!」
もっと――――――――
「ふぁぁぁぁぁっ! れ、んさん! あ、ひ、んはぁぁっ!」
もっと――――――――――――
「い、いいですっ、も、もっと……あ、は、あぁんっ!」
もっと――――――――――――――――
……そして。
「は、ふぁ……ぁ……っ」
何度も絶頂に達し、力なく錬にしなだれかかるフィア。
――――もう、限界だった。
「……フィア、いくよ」
「れん……さん……」
いきり立った自分のモノを取り出し、フィアの膣口に宛がう。くちゅり、と亀頭が中へと侵入する。
「くぅ……っ」
「ふぁ、はぁぁっ!」
それだけでI-ブレインが機能停止するほどの刺激が走った。絡み付いてくる。フィアの体そのものが抱きしめてくるような感じ。
ゆっくりと、ゆっくりと前へ進む。
「だい……じょう、ぶ?」
「は、はい……っ」
異物が自分の体の中に入ってくる感覚に、歯を食いしばって必死で耐えるフィア。
やはり痛みはあるのだろう。フィアには痛覚遮断の能力は備わっていない。だからゆっくりと、優しく、できるだけフィアが苦痛を得ないように挿入を進めてゆく。
「ふ、ぁぁ……っ」
「はぁ……はぁっ」
吐息が重なる。鼓動が重なる。思いが重なる。
「……っ」
ゆっくりと挿入を進めていた先端が、弾力ある膜に触れた。おそらくは、これが――――
「はぁ……っ、錬さ、ん……私なら、大丈夫……ですから……」
「……」
荒い息と共に、しかしそれでも微笑みを見せるフィア。苦しいだろうに、初めてだから辛くないわけがないだろうに、それでも笑んでいる。
……それが少女の本質。
どこまでも優しく、どこまでも暖かい、”フィア”という少女の基本骨子。
だから……錬はそれに応える。優しさを遠慮することほど相手に躊躇を与えるものは無い。
「わかった……いくよ」
それでも、フィアをなるべくなら苦しませたくは無い。だから錬はお留守になっていた手をフィアの花弁へと伸ばし、クリトリスを軽くつまんだ。
「ひぁっ!? あぁぁぁぁんっ!?」
いきなりの刺激にこれまで以上に反応するフィア。その快感に跳ねた一瞬の隙に、錬は一気に最奥まで己を突き入れた。
「ひぅぅぅっ!? い、ぁ――――っ!」
それでもやはり軽減することはできなかったか。痛みにフィアの目から涙がこぼれる。
「ひ、ぐ――――っ……!」
フィアが痛みに震えている。
そしてそれを為したのは自分。
だから、せめて抱きしめていよう――――
「は、はぁ……ぁ……ぅ」
徐々に震えが収まってくる。
「フィア……」
心配そうに覗き込む。破瓜の痛みがどれほどのものかはわからない。
しかしそれでも、
「あ、は……。これ、で……私たち……一つになったんです……ね」
それでも、天使の少女の笑みは崩れなかった。
「ん……っ、動いて、いいですよ……」
つぅ、と秘部より染み出る鮮血。それが痛みの何よりの証。
「私は……大丈夫、ですよ。だから……」
「――――っ」
その笑顔に、全ての理性が吹き飛んだ。どこまでも狂おしく、桜のように舞い散るはただ一つの思い。
天樹錬という少年ははフィアという少女を愛しているという、それだけの想い――――
「……動くよ」
「はい――――ぁんっ!」
ずりゅ、と前後に抜き差しを始める。
「ふぁ、ぁ、あぁぁああっ!」
「っく……!」
もうフィアのことしか考えることはできない。
フィアを守りたい。
フィアを歩んで生きたい。
フィアを、愛したい――――!
「ひぁぁっ!? れ、錬さん、そん、そんな激しく――――くぁぁっ!」
抜き差しすると同時に片方の手でクリトリスをつまみ、舌で乳首を転がす。同時に三箇所を責められ、フィアの苦痛は一気に快感に多い潰されてゆく。
「んぁぁっ、は、ふぁ、あんっ、あぁ、錬、錬、錬――――!!」
「は――――く、ぁ……っ」
フィアのよがる声を聞いてさらに愛撫の激しさを増す。肉芽をつまみ、回転を加え、少女の全てを自分で満たさんとばかりに愛してゆく。
「あぁん! れ、んさん……あぁっ、が……おく、まで……んふぁっ」
「フィア……ずっと、一緒だから……」
ずっと一緒に、ずっと僕がこれから君を守ってゆくから。
マザーコアなんかじゃない。道具なんかじゃない。
フィアは、この世界でたった一人の、フィアなんだ――――!
「きゃぁぁんっ! ひ、はぁっ、ふぁ、あぁあぁんっ! 錬さん! も、もう私――――!」
「いいよ……っ! イッて、僕も、もうすぐ――――!」
「くふぁっ、ああぅっ、ひぃぁぁっ! いっしょ、いっしょに――――!」
戦うと決めた。そして何より、守ると決めた。
「あ――――、も、もう、ダメです………ッ!!」
「フィア…………ッ」
……もう泣く必要なんて無い。
「あ、あぁぁっ! んぁ、ぁあんっ、れんさ、錬さん――――! ひぁ、あ、い、イっちゃいますっ!」
「くぅ…………っ」
だってほら。これからは――――
「ふ、はぁっ、んぁあああああああああああ―――――――っ!!!」
「フィア――――――っ!!!」
――――ずっと、一緒なんだから――――