願いの行方〜A last happiest night of knights〜  
 
「なあ、雪」  
「どうかした? 祐一?」  
 おそらく最後になるだろう、雪との試合の後、体を洗って後、部屋に二人過ごす時間。普段なら最も穏やかな時間。  
 節電のため、どこか薄暗いその部屋で、俺は溜め息を漏らす。  
 ……参ったな。雰囲気を重くしたいわけじゃないんだが……。  
 一方雪はあっけらかんとしている。明日自分に起こることを知っていてこの態度。自制が強いのか、性格なのか……両方だろうな。  
「またそんなため息溜め息吐いて……ジジくさいわよ!」  
 そう言って俺の背中に張り手。こいつは手加減ってものをしない。不意打ちに思わず咳き込む。  
「雪、少しは手加減してくれ」  
「あら、私が全力出せるのは祐一だけだもの。いいじゃないこれぐらい」  
 そう言われると少しこそばゆい。だがこんな生活ももうすぐ終わる……。  
 脳内時計が22時30分を告げる。もう10時間ほどで彼女に会えなくなる。いや、会うだけならできる。マザーコアに、抜け殻となった雪だけど。  
「本当に、良かったのか?」  
「まだそんなこと言ってるの? 私は1年以上前に決意済みよ」  
 俺も、月夜も真昼も、皆で止めたが、実験は進み――もうすぐ死を迎える。  
「俺が知ったのはつい最近だ! 何でこんな大事なこと黙って……!」  
「私が頼んだからって言ったでしょ。祐一の性格からいって悩んでノイローゼにでもなっちゃうかもしれないじゃない」  
 確かに、実際悩んでいる。  
「……そりゃあね、未練が全くないわけじゃないわ。大好きな人とずっと倖せにっていうのは女の子なら誰でも持つ願いだもの。こんな世界だけど、いつかは青空が見えて、あなたと過ごせる春が来るかもしれない。ううん、きっと来る。  
もし私が一般人だったら……もし皆を救えるもっと優れたシステムがあったら……でもIfなんてキリがないし、未練はあっても後悔は全くしていないわ。  
別にね、自己犠牲が美しいとかそんなこと思っていない。大切な人たちを守る――その手段として、マザーコアがあって、たまたま私が最適だった。他の誰かが犠牲になるっていうなら躊躇ってる場合じゃないしね」  
 
 雪しかいない――そう言えば雪は絶対断らない。たとえシティのために死んでくれという願いであっても。それは卑怯ってものだろう。  
「でも10年保つかどうかの、不明瞭なモノに……雪の次にまた犠牲を生んで、いや、ひょっとしたら無意味に終わってしまうかもしれない」  
「そしたらあなたが助けてくれるんでしょ? なんたって最強騎士だもの」  
「結局勝てなかったけどな」  
 そう。今まで一度も勝ったことがない。最強とはいえ、何のことはない。試合終了後、雪の称号をそのまま俺が受けただけだ。皆に認められたわけじゃない。  
 そしてこの生活が終わり次第、俺がまた剣を取ることを見透かされてもいるわけだ。  
「かなわないよ、君には」  
「そう簡単に勝たせてあげないわよ。誓いを守ってもらう程度には強くなってくれなきゃね。見つかったかな? 世界で一番きれいなもの」  
 世界で、一番きれいなもの……俺に課せられた誓いは雪のより難しいのではないか。  
 ふと思い至る。実行開始。  
 唐突に口付けを交す。  
「世界で一番『愛しい』ものならここにあるんだがな……」  
 固まる雪。  
「ぷっははは! あの祐一がこんなこと……これは本当に明日晴れるかもね!」  
 噴出した。む、そんなに変か。かなり真面目に言ったのだが。  
 何か言い繕おうと口を開こうとした瞬間、キスされた。  
「これはお返し。うん、ホント言うと、ものすごい不安だったの。もし祐一が何もかも捨てて逃げ出そうって言ったら逃げたかもしれない。あなたがいなかったら一度くらい泣いたかもしれない。その程度には弱いのよ、私。でも祐一となら、私は最強よ」  
 目頭が熱くなる。それをごまかすために彼女を抱き寄せる。  
 今度の口付けは長く、そしてそっとベッドに押し倒す。  
 
 服の上から、掌を少し越えるほどの胸を揉みしだき、そして乳首を指先でいじくる。  
「ふ……あぁ……」  
 片手で寝巻きのボタンをはずす。もう片方の手を股へと伸ばし、秘裂を布越しに布ごしに擦りながら。  
 徐々に頬が赤く染まっていく  
「あふ――もっと……」  
 要望に答えるため、彼女の下着を脱がす。もう既に乳首は勃ち、股間も濡れ始めている。その乳首を舌で転がしながら、右手は陰核を、左手は残った乳首へ。  
「ふぁ……ん――ああっ! ……や……だめぇ、今度は私の番……」  
 そう言って雪は俺のモノを咥えた。最初はキスするように軽くつつく。次第に奥深くまで咥え込む。  
 やられっぱなしではいけない。俺が下、雪が上の69の状態に持っていき、舌を膣内に進入させる。  
「ふっ……! ふむ……んむ――あっ、はぁ……むぐ……ん」  
 負けじと対抗し、激しくなっていく。喉を震わせ、あまがみする。  
「どうだ、雪? ものすごい濡れてきたぞ」  
 こっちも膣内をなめつつ、手は蟻の門渡りを押し、さする。  
「は――言わないで、よ……ん……  
 そして、少し顔を離し、陰核をつまみ、ひねる。  
「――あっ、ぁ……! やあぁぁぁぁぁ!!」  
 軽い絶頂を迎えたようだ。だがその時のショックで歯が陰茎にあたり、こらえていたものが思わず噴き出した。  
 雪は全部口で受け止めようとしたが、間に合わず少し取りこぼす。シーツに落ちたのは諦めて、俺の腹や雪の顔ににかかったものを丹念にすくい上げて口に運ぶ。  
 一通り済んだ後、雪は俺にまたがり騎乗位の体勢に。見た目よりずっと軽い、引き締まった肉体が目に入る。  
「祐一……私の不安を全て吹き飛ばして。あなたが、欲しい」  
「ああ、俺もだ」  
 ――世界で一番愛しい人――言葉と同時に、雪が腰を浮かせ、すっかり硬さを取り戻しそそりたった俺のモノを挿入させる。雪の秘裂はいまだ熱を帯び、愛液が溢れている。  
 
「――ふ……あ、はぁっ――! ん、あっ、あっ、あああ!」  
 最初はゆっくりと、だんだん加速する世界。Iブレインも使っていないのに、止まらない。グチュグチュ、ズコズコと音が響き始める。  
「くっ……うぅ」  
 こみ上げる射精感をこらえるながら、手を、なんとか揺れる程度の胸と腰に添える  
「あ、はぁ――ひゃっ! ああん、はっ……ん、あぁぁ!」  
 不意の快感に身を仰け反らせ、スピードが落ちる。すかさず雪の腰を抱え、二人繋がったまま腹に力を込めて起き上がり、正常位へ移る。  
 ふと目が合う。強さと優しさを兼ね備えた雪の瞳に俺が映っている。このぬくもりも重さも、この夜を境に消えてなくなる。  
 かつてない切なさと愛しさが湧き上がる。  
「祐一、今もの凄い優しい顔してた。普段の仏頂面からは考えられない」  
 ふふっと微笑する雪。  
「そんなに凄いか?」  
「うん、私の処女を奪った時より優しい顔してる」  
 思い出し、照れくさくなる。  
「雪、俺の想い、全て受け取れ」  
「うん、伝わるよ。祐一の想い」  
 加速する鼓動、肉がぶつかり合う音、淫猥な水音。腰にかかるすらりと長い足、シーツを握る手、白く美しい肌、長い黒髪、誰よりも強い瞳。快感も周囲の空気も、雪という存在の全てを己に刻む。  
「ああん! はああ、あふ――んんんん! ふ……あああああ!」  
「雪……凄い……くぅっ――はぁっ」  
「あん! は――イイッ! はっ、イく! あああん!」  
「ああ、俺も、もうすぐ……イきそうだ!」  
「は、いいよ、一緒に、あん、あっ、んん!」  
「イくぞ、雪。お、おぉ……」  
「あああああ、ふぁ――い、ひゃあん! あ、はぁ、ああああああぁぁぁぁぁ!!」  
 結合深く、最奥部に精を放つ。視界が一瞬白く染まった気がした。ビクビクと陰茎が脈打つ。  
 雪はよだれをたらしながら荒い息をついている。そのよだれを舌でなめ取り、そのまま接吻する。  
「祐一、愛してる。――陳腐な言葉でごめん」  
「シンプルが一番だ。愛してるよ、雪」  
 腕枕に頭を預ける彼女を抱き寄せる。その髪を指で梳く。いつか失われるものだとしても、今だけは雪を感じていたかった。  
 
「雪、最後に1つだけ、Ifを言っていいか?」  
「何? 言ってごらんなさい」  
「もし俺たちに子供ができたら……」  
 ――それは二人の生きた証。  
「決まってるじゃない! すっごくかわいくて、優しく強い子になるわ。何せ私達が育てるんだから。こっちのマザーの方が魅力的よね」  
 本当に当たり前のように、嬉しそうに言ってのける。終ぞ叶うことなかった、見果てぬ夢。  
 しばらくそんなことを言い合い、じゃれていると、雪がふと切り出してきた。  
「ねぇ祐一」  
「何だ?」  
「約束してほしいことがあるの」  
「また難しそうな……とにかく言ってみろ」  
「うん……騎士の誓いほど固いものじゃないわ。まず一つ目。私が死んだら、『黒沢雪』のことで泣かないで」  
「……ちょっと自信ないな」  
「あなたに泣かれたらちょっと後悔しちゃうじゃない。それに涙は記憶を風化させるのよ。あなたが私のことを忘れて第2の人生歩みますって言うのなら忘れた方が倖せかもしれないけど」  
 
「そんな器用な生き方ができるなら苦労しないさ」  
 本当にそんな時が来たら、それは騎士を辞めるときだろう。  
「どっちにしてもあなたが倖せなら私はいいんだけどね。それで二つ目。月夜と真昼をお願い。あの子達放っておくとすぐ無茶するから」  
「そんなのは言われるまでもない」  
「それで3つ目。もしも、万が一にも私が暴走とかしたら――一切の同情も容赦も遠慮もなく殺して」  
 答えに詰まる。  
「私がその時どんな風に願うか、長年つきあってきた祐一ならわかるよ」  
「――わかった。躊躇うことじゃないか……」  
 そうは言ったものの、一切の同情も容赦も遠慮もなくってのは無理だろうな。  
「本当は最後にもう一個あるんだけどね」  
「遠慮するな」  
「それじゃあ……次の新しいマザーコアが来て、その人の道に可能性があるなら……助けてあげて。祐一は変なところで頑固だからね。おばあさまは私でダメならもうマザーコア作らないって約束したけど、ちょっと偉いだけの人にそんなこと期待できないし」  
 肯定も否定もできない。  
「祐一なら大丈夫だよね。私の愛する祐一は最強騎士だもん」  
 全く、本当に卑怯だ。だが、それで救いになるなら……。  
 俺たちはまどろみ始め、いつしか眠りについた。  
 
 
 
 
     ――それは、恨めしいほど残酷な世界(システム)が見せる、アタタカな夢――  
 
 
 
 脳内時計が午前7時を告げた。  
 気がつくと虚空に手を伸ばしていた。夢……? 良かった。涙は出ていない。  
 あともう少しで、《世界で一番きれいなもの》を掴めそうな気がした。ぬくもりと重さ、その残滓が確かに手に残っていた。  
 雪……あれから俺は何かを守れているだろうか? 誓いはおろか、約束さえ満足に守れていない。いまだに英雄には値しない。  
 やれやれ、本当にかなわないな――。  
 
              願いの行方〜A last happiest night of knights〜   Fin.  
 
 

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