金子さちは、『それ』をいつもどおりの騒霊騒動(ポルターガイスト)だと思って  
いた。  
(ぎしっ、ぎしっ、どんどん)  
 ある日を境に聞こえてくるようになった物音。彼女の住むのは八号室。隣室の七号  
室は空き部屋なのに、壁は軋み微かに揺れ、耳をそばだてると聞こえてくる、甲高い  
女の悲鳴のような声。そんな、普通の人間なら気味悪がるシチュエーションだが、体  
質か、それともそういう星のめぐりなのか、その手の部屋を転々としてきた彼女にと  
っては、  
(ああ、またですか・・・まぁ、実害が無いから全然、マシですよねー)  
 そんな風に暢気に構えていた。  
「でも、あの声、どこかで聞いた気がするんですけどね・・・」  
しかし、ある日、偶然に彼女は音の原因を知ってしまう。  
自室のドアを開けたときに、  
(珠季さん?)  
無人のはずの七号室から出てきたのは、五号室に住む高校生(猫又)の長谷川珠季。  
その横には見知らぬ学生服姿の男子校生が居た。妙につやつやした珠季の表情とは逆  
に、やつれた顔の男子校生。鈍いさちでも部屋で何が行われていたか察するのは簡単  
だ。  
(・・・ポルターガイストではなかったんですね)  
 声に聞き覚えがあるのも合点がいく。  
 だけど、いっそのこと霊の仕業のほうが彼女にとっては都合が良かったのかもしれ  
ない。それから、隣室のことが前以上に気にかかるようになってしまったのだ。はた  
迷惑なことに珠季が逢引に自室を使わないのは、そこには見られてはいけないモノで  
も置いてあるのか。前の男関連のものとか。  
 さちにとって一番の驚きなのは、毎回珠季の相手が違うこと!凄いときには三人引  
き連れてきたことも。  
(とっかえひっかえですか・・・)  
 それとなく管理人のうみに相談してみても、  
「まぁ、春ですから」  
 の一言で、流されてしまう。  
「春だから、なんでしょうかねぇ・・・」  
 
 そんなこんなで今日も今日とて、お隣の部屋ではお盛んな様子。  
 格安貧乏アパートの安普請では、聞きたくなくても隣の部屋の様子が耳に入ってき  
てしまう。  
(・・んっ・・・あ・・・んくっ・・・・)  
「はぁ・・・」  
 のんびり部屋で寝転がって過ごそうかと思っていたさちだったが、隣から聞こえて  
くる淫声のせいで落ち着かない。  
(こういう時に限って壱さんはどこかほっつき歩いてるし・・・)  
「はぁあ〜」  
 ゴロン、と寝転んで今日何度目かのため息。  
(・・・そうか、珍しく今、私ひとりなんですね・・・)  
 隣室から漏れ聞こえる声は、クライマックスが近くなったのか、さらに鮮明なもの  
になる。嫌が応にも何が行われているのか、想像を掻き立てられていって、  
(あ、私・・・)  
 もやもやと頭を満たした妄想が、高ぶりに繋がっていく。いつもだったら横に壱が  
居ることが押さえになっていたのだが・・・  
 もぞもぞと上着の中に手を潜り込ませる。  
「んっ・・・」  
 小ぶりな胸に手のひらを沿わすと、先端が硬さを帯び、つんと尖っていく。  
 うつぶせの格好から、ひざを立ててお尻を突き上げると、胸にまわしてないほうの  
手でジャージをずり下ろす。シンプルな白い下着。よく見ると中心の皺に沿ってかす  
かな湿り跡も。そろりと両手がショーツの下に滑り込んでいく。くにくにと肉襞を人  
差し指がいじくり、くりっとした肉色の真珠も包み越しから揉みしだかれる。  
「はぅ・・・」  
 さちの口から、深い吐息がこぼれた。秘所をいじくりながらかすかに体を前後させ  
ると、それ合わせて、胸が床と擦れる。  
(気持ちいい・・・です・・・)  
 
 頬を上気させながら一人、淫らな遊びにさちが溺れていると、  
ガチャ!  
「帰ったよ〜さっちゃん。『よっ○ゃんいか』のアタリ、溜まってきたから引き換え  
て来たよー。いっぱいあるからさっちゃんにもあげるね・・・って?」  
 夢中になっていたから足音に気が付かなかったのか。ドアを開けた壱に見せ  
付けるように、お尻丸見えな格好のさち。  
「あわ、あわわわ・・・」潜り込んだ手もそのまま、言い訳する余地のまったく無い  
格好で、さちが赤面して慌てる。  
「・・・なんだ。それならそういってくれれば良いのに」なぜか、いい笑顔の壱。さ  
っとさちに近寄る。ずりおちたジャージのおかげで身動きしにくいせいか、さちが体  
制を整えるより壱のほうが早かった。後ろに位置どると、すっ、とショーツを下ろし  
て秘部を晒した。  
「そうだよねー、さっちゃん、見た目こうでも二十三歳だもんねー、疼く日もあるよ  
ね〜」  
「ち、違いますっ」  
「いやいや、説得力ないよー、こんなにしてさ」  
 愛液でてらてらのそこ。  
(ああ、見られちゃってます、壱さんに・・・)  
「しかし・・・さっちゃんやっぱり生えてないんだ。残念、ワカメ酒できないか」  
 秘部の周りは生まれたままの姿だった。桃色で、外見同様に年よりはるかに幼く見  
えるその部分をじっと見ながら、壱がつぶやく。  
「勝手なこと、言わないでくだ・・・ひゃっ!」  
 壱の手がさちの尻肉を撫で回す。  
「さっちゃんはいつもどうやってるのかな〜、道具とか使うの?それとも手だけで?」  
「ど、どうでもいいじゃないですかっ・・・はうん」つぷ、と壱の中指がさちの膣内  
にもぐりこんでくる。自慰で潤っていたせいか、ほとんど抵抗無く第二関節あたりま  
でのみこむ。  
 
「あ、壱さん・・・まだそっちはキツっ・・・」  
「ふぅん。さっちゃん自分でやるときはココは使わないんだ。じゃ、こういうの知っ  
てるかなー」いたずらげに呟いた壱が、飲み込ませた中指をくっと鍵爪に曲げた。  
 指の腹が膣壁を掻く。瞬間、奥側から唐突に沸くような刺激に、さちが大きく目を  
開く。  
ぐちゅ、にちゅ、ちゅぷ・・・  
 愛液を潤滑に曲げられた指が前後に動く。肉と水分が擦れて、粘りを持った淫音が  
さちの秘所から出てくる。  
「ひぅ・・・だ、そこ、なんか・・・」  
 快感。けれど、いつもの自慰とどこか違う。下半身に急速に沸いてくる、説明不可  
能な衝動。  
(なんか、なんか出ちゃいます・・・)  
 恍惚にとろけた表情のさちに気をよくして、壱はなおも手の動きを早くする。  
 泡立った愛液が中指、手のひらを伝って手首まで伝い落ちていく。  
じゅぷじゅぷじゅぷ!!  
「んんんんん!!!」  
 ぱぁ、っと脳内で何かが弾けるような後、  
ぷしゃ、  
 さちの秘所から無色透明の液体が勢い良く飛び出した。  
「はぁー、はぁー・・・・」  
 ちゅぷ、へたったさちを横目に、壱がゆっくりと中指を引き抜いた。びしょびしょ  
に濡れたその手を、ぶぶぶと空中で軽く振って水気を飛ばす。  
「はい、潮吹き一丁〜」からかうような口調で言うが、さちは突っ込みを入れるどこ  
ろではない。  
 けだるい倦怠感に体を任したまま、床に付していると、  
「ん〜、まだダウンするには早いよー」  
「へっ・・・?」  
 
 ぐい、っと上半身を持ち上げられる。背後の壱にちょうど抱きかかえられるような  
感じに。小柄なさちはすっぽりと壱の両腕の中に納まってしまう。  
「なんか、いつもと立場が逆転してて楽しいねー」  
 その姿勢のまま、壱はさちの耳の裏側に舌をのばしてくる。ぞくり、こそばゆいよ  
うな気持ちいいような感覚。  
「はぅ・・・」脱力したような情けない声が思わず飛び出してしまう。  
 小ぶりな胸にも手が伸ばされ、立ちっぱなしの先端もぐにぐにと弄くられる。背中  
越しの体温、一体感が高まりを早めていく。そしてまた、  
ちゅぷ、  
 伸ばされた中指が、クレヴァスをかき割ってもぐりこんでくる。  
「だ、ダメです、壱さんっ、まだイったばかりで敏感なんですっ、だから、ちょっと  
まってくださいっ!」  
「ん〜、ダーメ」  
ぐちゅ。  
「あああっ!」  
 高まりすぎて痛みと紙一重になった快楽に、さちが体を振るわせた。執拗にGスポ  
ットを攻めてくる指技。  
 絶え間なく襲い来る絶頂の連波に、さちの小さな体が翻弄される。  
「い、いちひゃん、らめ、らめです、でひゃう、でひゃいますっ!」  
「おー、出しちゃえ出しちゃえ」  
じゅっぽ、じゅっぽ、じゅぽじゅぽ・・・・  
(違う、これ違う!!)  
 先ほど感じたものとは違う衝動。ろれつの廻らない舌で、頭を必死に左右に振りな  
がら抵抗するさち。  
「らめらめ、らしたく、らしたくないのにっ!!」  
 くん、っとエクスタシーでさちの体が硬直した瞬間だった。  
ぱしゃ、たぱぱぱぱぱ・・・  
 潮とは明らかに違う、生暖かい液体が零れだしてきた。  
「あうう・・・」  
 出てしまったものをとめるわけにはいかなく、小さく体を震わせながら出ていくも  
のを呆然と眺めるしかない。  
 
 放出が終わって、程無くして、  
「壱さんの・・・」  
「・・・?」  
「壱さんの・・・バカ!!」  
ズビシッ、  
 背後の壱にアッパーカット気味の一撃が入る!  
「なんで!?」  
「出したくないっていってたのに!もう、どうするんですか、床を汚しちゃって、お  
掃除大変じゃないですか!!」  
「え、そこ!?」  
「滲みちゃって、跡にでもなったらどうするんですか!」  
「や、それやったのさっちゃんだし・・・」  
「・・・なにか?」二発目のアッパーの雰囲気を察して、とったに壱が視線を逸らす。  
「もうっ、部屋はなるべく綺麗にしておかないと、越すときに敷金礼金とかで損をす  
るんですからねー」  
「んー、その点の心配はしないでいいんでない」  
「・・・?どうしてですか」  
「引越しなんてしないで、ここにずっと住んでればいいじゃん、ね?」言いながら、  
きゅっとさちの小さな体を抱きしめる壱。  
(あれ、口説かれてます?)言葉の真意を測りかねて戸惑うさちの唇に、壱の唇が近  
づいて、  
「んっ」背後から抱きすくめられた格好のままの長いキス。舌を入れるでもない、た  
だ重ねるだけの口づけだったが、静かにさちの体の中に昂ぶりの火を灯していく。  
 ただ、それはさっきまで体を包んでいた肉感的な快感とは違う、心のほうがほこほ  
こしてくるような緩やかな精神的快感。  
(ロクデナシ・・・だけど、いつも一緒にいてくれているんですよね、壱さんは)  
 離れていく唇がとても名残惜しく感じられた。  
「ねぇ、まだ俺、なんにもしてもらってないんだけど。さっちゃんいじりもまぁ楽し  
かったんだけどさ・・・」どこか照れたように壱が言う。  
 
「・・・もう」首をすくめて、仕方ないというジェスチャー。「でも、一つ、言うこ  
と聞いてもらっていいですか」  
「ん、なに?」  
「・・・もう一回、ちゃんとキスしてくれませんか?」  
「お安い御用で」  
 身長差のせいで、壱は少し屈み、さちは少し背伸びしないといけない。けれどそん  
なことは今の二人にはまったく気にならないことだった。  
 目を閉じて、唇の先の感触だけを感じあう時間をしばらく過ごした後、  
とさ、  
 さちの体が優しく倒された。  
 壱が着流しの帯を緩めると、袷からすでに準備万端なモノを取り出す。  
(うう、大きい・・・)  
 指一本でも狭かった膣中にその肉棒は大きすぎるように見えた。不安が顔をよぎる  
と、  
ポン、  
 頭の上に手のひらが乗せられる。安心して、と言うように。(壱さん・・・)  
 張り出した先端が、秘貝の隙間に添えられた。くにくにと愛液をまぶすようにまと  
わり付かせられると、  
にちちちち、  
 肉槍が狭いさちの膣内をゆっくりと押し広げ、割り入ってくる。  
「くっ、さっちゃんのここ、熱いっ・・・」  
 今まで無いくらいに拡張されていく痛みは確かにあった。けれど、繋がっていくこ  
との満足感が、それを上回った。広がったカリ首が飲み込まれると、それから先は比  
較的すんなりと飲み込まれていった。  
 最奥までを使い切ることで、なんとか全てを包み込むことができる。  
 
「動く、よ・・・」  
 それに答える代わりに、さちは壱の首にその腕をのばしてきゅうっと抱きついた。  
ぎゅ、ずぽ、ずぽ・・・  
 ゆるやかなピストン運動。引き抜き、そして突き入れるたびに華奢なさちの体は揺  
れる。  
「壱さんっ、きもちっ、いいですかっ」  
「ああ、さっちゃんのここは最高だよ」  
「そうですかっ、わたしもっ、うれしいですっ」  
じゅぱ、じゅぱ、じゅぱ。  
 感情の高ぶりにしたがって、注挿が早まる。メレンゲ状に泡立った愛液が入り口か  
ら零れていく。こつ、こつと奥を突かれるたびに、快感が脊椎を駆け上がり、ぴくん  
ぴくんと体を小さく痙攣させる。  
「くっ!でるよ、さっちゃんっ!」  
「・・・!!!」  
 声にならない悲鳴。そして白濁がさちの膣内を叩く。どくり、どくり。ゆっくりと、  
大量のそれが吐き出されていき、その熱さをしっかりとさちは感じた。  
こぽっ。  
 引き抜くとその部分はすっかり広がっていて、手を添えなくてもクレヴァスの奥の、  
色の濃い部分が覗き見れるくらいになっていた。そして、しばらく時間を置いてから、  
つーと白濁がこぼれだしてくる。弛緩したさちの体から垂れたそれが、ゆっくりと糸  
を引いて床に精液溜りを作っていた・・・  
 
 
 
 その後、しばらくして。  
 台所に壱の姿があった。  
「いやー、体動かした後のビールはマジ最高だねー」缶ビールを片手に至福の表情。  
「壱さんずいぶんご機嫌のようですね」そんな壱に夕食の仕込み中の、うみが話しかけ  
る。  
「まぁねー」まんざらでもない表情の壱。  
「それにしても、これで壱さんもようやくりっぱなヒモですね」  
「ヒ、ヒモ!?い、いや、俺は座敷童子であって、決してヒモでは・・・」  
「あら、否定、できるんですか?」  
「いや・・・」働きもせずに日がな一日飲んだくれ、なおかつ体の関係まであるとっちゃ、  
正真正銘のソレなわけで・・・  
「そうか俺ってヒモなのかぁ・・・座敷童子からヒモにってのはランクダウンなのかねぇ・・・」  
 

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