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夢の中にあって、現実のような錯覚を覚える世界。
そんな世界の中で、終焉への夢を、繰り返し、繰り返し――――
変えたくても、変える事の出来ない未来の夢。
並の人間なら気が狂いそうな光景を、牙暁は生まれてからずっと見続けてきた。
何時と同じ様に畳に座り、ぼんやりとしながら目の前に広がる光景を見詰めていた時、ふと、ゆらりと空気が動くのを感じた。
何者かが、夢の中に無理矢理侵入してきた感触。
だが、入ってきた者が居ても、気配からそれが誰かわかるのか…牙暁は身じろぎもせず、振返りもせず。
近づいてきた男に後ろから抱き込まれ、耳元に生暖かい息を感じても。
男の指が無遠慮に髪の毛に触れ、首筋に触れても、抗う事も無く。
肩から羽織っていた打掛が滑り落され、首や顎をなぞっていた指がゆっくりと襟を寛げにかかった時に、初めてか細い指が、やんわりと男の動きを止めた。
…が、元より力の無い手はいとも容易く振り払われ、男の掌が襟の中に進入するのを許す。
「…っ……」
少し強く胸を掴まれ、ゆるゆると揉み、弄られる。
「…ぃ…たっ……」
少しずつ息が上がってきた頃に、ゆるりと乳首をつね上げられ、初めて声が上がった。
潤んだ目で、初めて己を翻弄する男―――封真を抗議するように見上げるが、不敵な笑みを浮かべた男は、そのまま畳の上に牙暁を放り出す。
うつ伏せに倒れた身体を、仰向けにして着物の襟を割る。
まるで肉の付いてない、か細すぎる白い身体。
唯一、男には無い2つの柔らかい脹らみが、彼の者が「男」でなく「女」だと言う事を知らしめていた。
男の薄い笑いと共に、思考は夢の世界から、無理矢理現実の世界へと引きずり出される。
衝撃と共に目が覚めた時、目の前には夢と同じ様に着物の襟は肌蹴られ―――薄い笑みを浮かべた封真が身体の上に圧し掛かっていた。
「身体が痩せ細っていてよく分からなかったが…地の夢見も、女だったとはな…」
無骨な掌がそのままするりと撫でる様に胸に触れる。
「…女だと、何か不都合でもあるのですか?」
「別に。」
読めない表情に浮ぶ冷笑は皮肉か侮蔑か―――何を考えてこのような行動に出ているのか。
だが、そんな事は牙暁にとってはどうでもよかった。
この男―――地の龍の『神威』は、己の命を奪う事の出来る運命の者なのだ。
その彼がこの身を望むなら、代償として差し出すのは当たり前の事。
このような行為が初めてであろうがなかろうが、所詮死んでいるのと変わらない身体を今更どうこうするつもりは牙暁の思考には無い。
それが、愚かな慰み――自らへの陵辱行為であったとしても、牙暁にはどうでも良い事だった。