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それからしばらく実月が犬を眺めていると、隣の部屋から昴流が戻ってきた。
「鏑木さん」
「なあに?」
「えーっと…」
答えにくそうにしながら昴流は例の遊園地のチケットを取り出した。
「…これは?」
「遊園地のチケット、猫依が使えなくなったから、あげるって」
「ああ、護刃ちゃんが。でも、なんで私に?」
「猫依は、その…」
昴流が口ごもる。
「できれば僕と鏑木さんで行って欲しいって」
「本当に!?」
実月の反応が嫌そうに聞こえたのか、昴流が慌てる。
「いや、別に僕と行かなくてもいいんだよ。鏑木さんのお友達と行っても、全然構わないし」
「お友達」と聞いて、実月の頭の中に千歳のことがよぎる。
「…いいわ、『一番仲のいい友達』はいないし」
「え?それって」
「一緒に行きましょ、昴流君」
「う、うん」
「次の日曜日ね、とっても楽しみだわ!
昴流君、お化け屋敷とか平気?あっ、あの仕事だからそれは大丈夫ね!
集合場所は、現地集合か最寄りの駅か…」
予想外の反応が返ってきてしどろもどろになった昴流に、実月はぺらぺらと喋っている。
それから会話こそかみ合わないものの、なんとか実月の家の最寄り駅で集合ということ、集合時間が決まった。
「それじゃあ、お仕事頑張ってね。『フレア』、あなたももっと元気になるのよ」
「フレアっていう名前にしたんだ?」
「そう、最初命の恩人の名前からからとって『プレアデス(昴星)』にしようと思ったんだけど、長かったから止めたわ」
「…それは止めて正解だよ」
昴流が苦笑するのを見て、実月はまた笑った。
あっという間に次の日曜日になり、昴流は集合場所に向かった。
集合時間には間に合っていたが、実月はそれよりも早く到着し、彼を待っていた。
「昴流君!」
「ごめん、待たせちゃったかな?」
「ううん、大丈夫よ」
それから駅から直行の遊園地行きのモノレールに乗った。
休日で中の人も多く、ほとんど会話を交わすことはなかった。
遊園地前に停車して、下車後遊園地のゲートに向かう。
「どこに行こうか?」
「そうね…大きい乗り物には乗りたいけど、どこも混んでるわね。
ジェットコースターなんて二時間待ちよ」
マップを眺めながら実月が答える。
「どうせなら、人が少ないところを沢山見るのはどうだろう?」
「それもいいわね」
昴流の案を採用し、二人は人混みから遊園地のはずれに移動した。
古びたビックリハウスやマイナス30度の世界、と銘打ったアイスハウスに入った後、
ワゴンでチュロスを買った。
「寒かったわね」
「そう?もっと寒いかと思った」
「もう!こういうときは寒いって言ったほうが盛り上がるのよ。
ビックリハウスだって、すぐ昴流君錯覚の仕掛けバラしちゃったじゃない」
「ごめん…でも楽しかったよ、遊園地なんてもう何年も来てなかったから」
「最後に来たのはいつ?」
「うーん、死んだ姉さんと知り合いの人と三人で行ったのが最後かな」
「お姉さんと…そう」
しばらく会話が途切れた。
「次はどうする?」
何とか重い空気を変えようと昴流から話をふった。
「じゃあ、あそこに行ってみない?」
実月が指さした先には、こぢんまりとした施設があった。
「『マスコットキャラクターの人形たちによる豪華な音楽ショー』があるんだって」
「大げさだね」
実月が顔をわずかにしかめ、昴流はまた自分の言葉に後悔した。
薄暗い施設の中には誰もいなかった。
小さい映画館のように並べられた椅子に座ると、間もなくショーが始まった。
曲自体は有名なクラシックのメドレーではあったものの、人形の動きは乏しく退屈極まりない。
結局二人揃って居眠りを初めてしまった。
ショーが終わってどれくらい経ったのだろうか、昴流は人の気配に気付き目を開けた。
目の前には、清楚な感じの女性が立っている。
「あ…すいません、すぐ出ます」
係員が注意に来たのかと思い、昴流は目の前の女性に謝ったが、女性の口から出たのは予想外の言葉だった。
「皇さん、ですよね?実月の友人の田原千歳と申します」
「え?」
よく見ると彼女は実体ではなく、ぼんやりとした幽体であることがわかった。
「こんなところで、それもいきなりですいません。
2年前、私は事故死したんですが、それから実月はあたしをずっと捜しているんです」
「鏑木さんのお友達?」
「はい。それで…実月に伝えて頂きたいことがあるんです」
おそらく、今のままでは実月は見ることができないのだろう。
「よくわからないけど、自分の口で伝えた方がいいと思いますよ?」
呪文を試しに唱えてみると、先ほどよりは姿がはっきりした。
「鏑木さん」
未だ居眠りをしたままの実月の肩をさすった。
「あ、昴流君ごめ…千歳っ!?千歳なのね!?」
目を開けて間もなく、実月は千歳の存在に気付いた。
「よかった…生きてたのね」
駆け寄って触れようとしたが、それがかなうことはなかった。
「ごめんね、実月。あたしはもうあのときの事故で死んだわ」
「そんな、嘘でしょ?」
実月の目にたちまち涙が溢れてくる。
「ごめんね。今まで伝えられなくてごめんね」
千歳は何度も申し訳なさそうな顔で謝った。
「それでね、あたし実月にお願いしたいことがあったの」
下を向いて泣きじゃくる実月に返事は無理そうであったが、千歳は屈んで続ける。
「…あたしのことを、『忘れて』欲しいの」
「何それ…意味がわからないわ」
「田原さん、どうしてそんな酷いことを言うんですか」
昴流にも真意が図りかねたので、思わず疑問が口に出てしまった。
千歳が実月を悲しそうな眼差しで見つめたまま昴流に返した。
「実月がずっとあたしのことを心配してくれて、とても嬉しかった。
でもね、あたしがいなくなってからもこのままじゃ駄目になると思うの。
あたしは死んだ人間で、実月はまだ生きている人間だから、いつまでたっても悲しんでちゃ実月の為にならないから」
「でも」
昴流が反論するのを遮るかのように、千歳の幽体が再び薄れていく。
「嫌よ!行かないで、千歳!」
取り乱した実月の肩に両手を置く仕草をした。
「あたしは、あんたのことは忘れないけどね…大好きよ」
千歳の幽体が昴流にも見えづらくなって、彼女の前にいた実月はへたりこんだ。
もしかしたら能力がない彼女にはもう見えないのかもしれない。
「ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
千歳が昴流に頭を下げる。
「いえ…」
どう返答すべきか昴流が決めかねていると、千歳が初めて微笑んだ。
「実月のこと、どうかお願いします。
小さいときも、今も実月の一番の力になれるのは皇さんみたいですから」
「…どういうことですか?」
「死ぬ前に皇さんのこと、しょっちゅう実月から聞いてたんです。
それで、実月はよっぽど皇さんのこと好きなんだろうなって」
冗談でも言うかのように、楽しそうな顔を最後に彼女は昴流にも見えなくなった。
実月は、涙を流したまま呆然と昴流を見ている。
昴流は彼女の近くにゆっくり歩み寄った。
「千歳は何て?」
昴流と話していたこと自体はわかっているようだ。
「『鏑木さんをよろしく』だって、それだけだよ」
「千歳はずるいわ。自分は忘れないのに、私には忘れろって言うのよ」
再び俯いた実月はひどくしおらしく見えた。
昴流もしゃがみ込み、彼女の背中に手を回した。
「僕も憶えていられるうちは、忘れるべきじゃないと思う。
どうせ、あっという間に忘れてしまうんだから」
「昴流君…」
実月が微かに震えるのを感じ取りながら、昴流は自分自身のことを思い返していた。
北都が星史郎に殺され、当初はあれだけ星史郎を殺そうと強い意志を持っていたのに関わらず、北都の記憶が薄れるにつれ
昴流の気持ちは生きている星史郎に傾いていった。
そして今、星史郎の記憶も薄れ始めている。
自分にとっての「特別」だった二人。
勿論、これからも「特別」であり続けることだろう。
だが、生きていた頃のような依存はもうできないのだ。
そうしている間にどれくらいの時間が経ったのだろうか、施設に足音が響いた。
「きゃっ」
驚いた実月がいきなり立ち上がったので、バランスを失った昴流は尻餅をついてしまった。
「す、昴流君ごめんなさい!!」
「いや、いいんだ」
昴流が見上げると、実月はだいぶ落ち着いたようだった。
「よかった、ちょっと元気になったみたいで。もう帰ろうか?」
実月が首を横に振った。
「ううん。まだお昼を過ぎたばかりでしょ?もっと楽しみたいわ」
「強いね、実月さんは」
そう言った途端実月があっけにとられた顔をした。
「え?ごめん、変な意味で言ったわけじゃ」
「…『実月』って言ってくれた!昴流君、ずっと苗字で呼んでいたでしょう?」
「そうだった?」
別に意識してなかったので、昴流は最初からそう呼べばよかったと思った。
「すごく嬉しいわ。早く出ましょう!」
実月が昴流の腕を引っ張る形になったが、昴流は悪い気がせず、むしろありがたくさえ思えた。
―もしかしたら、「足りなかった何か」ってこういうことなのかな?
単純に、頼り、必要とされることは久しくなかった気がする。
護刃たちの態度も意地の悪い見方をすれば同情の延長線上にあるのかもしれない。
獣医としては頻繁に頼りにされたものの、それを抜きにした「皇昴流」として頼りにされたのはやはり久しぶりだった。
「…そういうことか」
もやもやしていたものが消えた嬉しさで、思わず言葉が漏れた。
「どうしたの?」
「ちょっと考え事をしていただけ。ここが出口だね」
外に出ると、施設に長いこといたせいでひどく眩しく感じられた。
手荷物からサングラスを掛けてみると、実月が微妙だと言わんばかりの顔をした。
「昴流君、そのサングラスのデザイン変よ。古くさくてあんまりだわ」
「そうかな?気に入っているんだけど」
「駄目よ、今度一緒に新しいの買いに行ってあげるわ。
折角顔はかっこいいのにそれじゃ台無しだもの」
「…わかったよ」
「それじゃあ、決まりね。じゃあ、次のアトラクションはどこにする?」
「人が多いけど、やっぱりジェットコースターには乗っておきたいな」
「そうね、私も乗りたいわ」
そうして意見が一致した二人は歩き出した。
遊園地での出来事があった後、二人は共に行動する時間が多くなった。
実月は退院後もフレアをまめに昴流のもとに連れていった。
そんなことを繰り返していれば自然と仲も接近して、一月経った頃にはお互いが異性で一番近しい存在となっていた。
一方、実月は帰国のもう一つの理由である就職活動に精を出していた。
初めは東京で働ける企業を希望したが見つからず、結局とある中企業の名古屋支所に内定が決まった。
前の会社と比べると格が落ちるのは否めないが、自分の年齢を考えると仕方がないとも思う。
それでも、もう親や叔父に迷惑をかけずに済むのが救いだった。
内定が決まり、急いで引っ越しの準備をすることにした。
東京の叔父の家から職場までは時間がかかり過ぎる。
そこでペットを飼えるマンションを探し、手続きを済ませ一人暮らしが始まることになった。
初めての一人暮らしで不安は大きく、また昴流のことも気がかりだった。
これからは東京にすぐに帰ることはできなくなるだろう。
最悪の場合、もう二度と彼に会うことが叶わなくなることもあり得る。
これまでは一応フレアの容態を診てもらうという大義名分があったが、それももうなくなる。
どうせなら自分の口で伝えようとある日の夕暮れ実月は動物病院に出かけた。
動物病院に着いた頃には空がどんよりとして、今にも雨が降ってきそうだった。
入り口が閉まっていたので看板を見ると今日は休みで、自宅にもいなかったらどうしようと後悔した。
昴流の住むマンションに移動し部屋のベルをゆっくりと押してみる。
ベルが鳴り終わっても物音一つしなかったので、やはりいないのかとため息をついた。
「実月さん?」
帰ろうかと思い始めたとき、後ろで昴流の声が聞こえたので慌てて振り向いた。
こちらを不審そうに見ている。
「何か用が…もしかしてフレア?」
「違うの、そうじゃなくて」
否定のあとの言葉が続かない。
昴流の表情を見るのが急に怖くなって、実月は顔を上げることができなくなってしまった。
昴流が黙って彼の部屋に入るよう促したので、実月はうつむいたまま彼の部屋に入った。
「どうぞ」
掃除は行き届いているが殺風景なリビングのソファーに座らされ、昴流が差し出したコーヒーを手に取る。
「…ありがとう。私ね、就職が決まったのよ」
「それは喜ぶべきだろう、なんで」
「職場、名古屋になったの」
昴流の表情は見えない。
「ごめんね、サングラス買いに行けなくなっちゃったわ」
部屋が沈黙に包まれた後、昴流が口を開いた。
「サングラスのことは仕方がないよ。就職できたんだから。それより、いつ出発?」
「準備はおおかた終わってて、来週にはもう行かなくちゃ」
再び部屋を重苦しい空気が包む。
先に口を開いたのは昴流のほうだった。
「実月さんは、もうここに来るつもりはないんだね」
意外な言葉にはっとして実月は顔を上げた。
横に座っていた昴流が、口元を今までにないほど歪ませている。
しかし、その目は怒っているよりかむしろ哀しみを湛えていた。
「そんなことないわ、もし昴流君が許してくれるなら」
「それなら、いいんだけれど」
昴流の機嫌を損ねてしまったのかと、実月は落ち着かず彼の様子を伺っていた。
「社交辞令だと思った?」
え?と余計にあせる彼女には構わず、昴流は続ける。
「確かに昔の僕だったら誰にでも『いつでも来ていい』と言うと思う。
…でも、今の僕はわざわざそんなこと言わないよ。なるべく、仕事以外で人と関わらないようにしてきたんだから。
本当に短い間だったけど、仕事を誉めてもらったり、一緒に出かけたり、頼りにしてくれたりして楽しかった。
実月さんが来てくれて、とても嬉しかった。
『実月さん』だから、また来て欲しいと思えたんだ」
「昴流君…」
軽く自嘲する昴流の言葉を、実月は信じられない気持ちでいた。
―私のことをそんなふうに思っていてくれたんだ
思わず、次の瞬間には彼を抱きしめてしまっていた。
「み、実月さん、ちょっと」
「嬉しい…私も一緒にいられて幸せだった。本当は、もう離ればなれになりたくなかった…大好きよ、昴流君」
自覚せず、心の奥底にしまわれていた本音が堰を切ったようについて出る。
「…ありがとう、実月さん」
昴流の手も、ゆっくりと実月の身体を包み込んでいった。
視線がぶつかると、実月は昴流が微笑んでいることに気がついた。
笑っているといっても、これまでのような苦笑や微かに喜びをあらわすものとは違い、何の屈託もない昔と同じ微笑。
顔つきも片目の色も変わったというのに懐かしい彼に会えた気がして、実月はこれ以上ないというほど強く抱きしめた。
雲が雨を降らし始めた頃、真っ暗な空を寝室の窓から昴流は眺めていた。
雨音とシャワーの水音が聞こえてくる。
―本当に僕なんかでいいのかな?
二人は互いの気持ちを確かめ合った、だがこんなにすぐに交わっていいものなのか?
実月がシャワーを浴びる前、彼女は恥ずかしそうに昴流に抱いて欲しい、と頼んだ。
性的なことに興味がなかったわけではないが、仕事のこともあり女性と深く関わることは全くと言っていいほどなかった。
もっとも、星史郎に殺されたいと願っていた頃には虚しい欲望としか捉えていなかったのだが。
ましてや彼女の忌々しい過去を知っている者としては心中穏やかでない。
まだ高校生のとき、実月は暴走族に襲われたことがあった。死んだほうがましだと思い詰めた彼女は四ヶ月の間夢の中に閉じこもり、
たまたま仕事で再会した昴流と、星史郎の式神の介入により現実に戻って来られたのだった。
あの頃の昴流は性の知識に乏しく、説得は現実味に欠けた。
結果的には上手くいったものの、今思うと無知な者の偽善と彼女から罵られても仕方がない。
未だに女性と交わったことがない自分が、あまりにも深い傷を負った実月を受け止めてあげられる自信がなかった。
シャワーを浴びた実月が寝室に入り、ベッドの端に二人は座る。
「実月さん。やっぱりこんなこと」
実月に伝えようとするが応じない。
「やっぱり、昴流君は優しいのね。でもね…私がして欲しいの。昴流君となら、大丈夫な予感がする」
でも、と言おうとした昴流の口元を実月は自分の唇で塞ぐ。
突然のことでどぎまぎして、昴流は彼女の舌の侵入を許してしまった。
柔らかい唇が触れ舌が絡まり合う中、昴流は目の前の相手があの「実月ちゃん」と同一人物であるのに驚かされる。
今は彼女の言うままに流れに身をゆだねてみたくなった。唇が離れ、名残惜しそうに糸をひく。
昴流は彼女の衣服を脱がそうと試みた。少しずつ剥がされていき、最後には薄明かりの中昴流の眼前に一糸纏わぬ実月の身体があった。
黒く長い髪と優しい眼差しは昔と変わらなかったが、肉体は高校生の頃よりも熟れた大人の女性のものになっている。
「実月さん、こんなに綺麗な人なんだ…」
彼女に聞き取れない位の小さな声で呟く。残っていた理性が消し飛んでしまいそうだった。
つまらない理屈は置いて、ただ彼女の身体に触れて彼女を感じたい。実月が横になり彼女に覆い被さる格好になった。
よく膨らんで紅潮した胸を軽く掴んでみると、実月が僅かに身悶えした。
柔らかい胸をしばらく揉んだ後、少し躊躇したが胸の先端に舌を伸ばした。
「あっ…ぅっ」
実月が声をあげたのに気をよくして、思いつくままに何度も舐めたり吸い付いたりして責め続けた。
目線を実月の顔に向けると、恥じらっているのか顔は紅潮し少し汗ばんでいる。
そんな態度に気付いて、昴流は実月を心底可愛い人だと思った。
顔を彼女の茂みのほうに移し、両脚をそっと開くと彼にとって未知の場所が現れた。秘裂が潤み始めている。
秘裂の入り口をなぞるようにしてここも舐めあげてみた。予期してなかったのか途端に実月の身体がビクっと震えた。
「す、昴流君、そんなとこぉ」
「だって実月さんがそうして欲しいって頼んだんだよ?」
「でもっ、だからってそこは恥ずかし…だ、駄目っ」
実月の懇願に逆らって敏感な突起も含めて愛撫を続けると、愛液が秘裂から溢れてくる。
唾液と愛液が混ざり合い寝室にぴちゃぴちゃと淫猥な音が響いた。
昴流の男性自身もまた、今までにない興奮で先端が先走っている。秘裂の様子を伺い、そろそろ大丈夫だろうと判断した。
「本当にいいんだよね?」
問いに実月はコクリと頷いた。
それでも抵抗はあるのだろう。自身をあてがうと身を固くした。
彼は不慣れながらも自身を彼女の中にゆっくりと埋めていった。
実月が昴流の背中に両手を伸ばした。不安そうに彼を見つめている。
ふと心配になった昴流に、実月は大丈夫よ、と笑顔をつくって応えた。
秘裂の中はとうに愛液でぬめっていて肉壁が自身を締め付けてくる。
自分の手で慰めるのと全く異なる快感にすぐに駄目になってしまいそうになる。
しばらく腰を振り続けた後、昴流は実月の最も奥深い場所で結びついたことを理解し一旦動きを止めた。
実月は微かに震え、腰をよじっている。昴流はやはり駄目だったのかと思ったが、実月は逆のことを言った。
「違うのっ…変な感じ…でも嫌じゃなくて…もっとして欲しいのっ」
彼女はまだ快感を知らず、この感覚が何かがわからないようだ。
「そうなんだ。僕もだよ。もっとこうしていたい」
自身が温かい秘裂の中を幾度も貫き擦りあげ、快感が二人を支配していくのがわかった。
実月は小さな喘ぎ声を発し、昴流も限界に近づく。
「やぁぁっ…すばる…くん…もう…っ」
「…っ」
絶頂を迎えた実月を見た瞬間、昴流も頭の中が真っ白になった。
外は二人が仲違いしたあの日のように土砂降りの雨がふっている。
二人で横たわるには狭すぎるベッドの上に、二人は寄り添っていた。
「好きな人に愛されるって、こんな気持ちになれるのね」
実月は昴流に話しかけたが、無我夢中だったさっきの行為が頭に浮かび照れくさくて昴流はいい言葉が思いつかなかった。
「昴流君」
「?」
「名古屋から東京まで新幹線で2時間位なの。私、できるだけ戻ってくるようにするわ」
返事の代わりに実月の美しい髪を優しく撫でた。
数日後にまた二人は離れ離れになるのに、今度こそ大丈夫な気がした。
誰もが平等に幸福になんかなれない。
それでも、今自分を誰よりも欲してくれる彼女の笑顔を求める位は許されるだろう。
もし邪魔をする存在がいたなら、容赦なく潰してしまえばいい。
彼女を間近に感じながら、昴流はそんなことを思った。