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葬式が終わり、封真は一人祭壇の前に座っていた。  
何者かに神剣を奪われて大怪我をした父・鏡護。  
快方に向かっていたはずなのに、突然、様態が急変して…逝ってしまった。  
祭壇を見上げると、遺影の中に優しく微笑む父がいる。  
こんな日が来る事を予測していたのだろうか。  
父の部屋にあった貯金通帳には、封真と小鳥、二人が生活するには充分すぎるほどの預金が遺されていた。  
「はぁ…」  
大きく溜め息をつき、封真は頭をたれる。  
今、封真を苦しめているのは、父が死んだ悲しみでも、今後の生活の不安でもない。  
『…お前は神威の…添え星だ…』  
父の最期の言葉だった。  
 
――神威がいるから、俺は存在するのか?  
添え星とは、主星あっての“添え”星。主星なくしては存在し得ない。  
そして、光差す主星とは反対に常に影の存在。決して主星になり代わることはできない。  
――俺に、神威の影として、神威のために生きろとでも…?  
親友で幼なじみ、弟のようにかわいい神威は、封真にとって守るべき対象。  
それは今も昔も変わらない…はずだった。  
「…俺は神威の…添え星…」  
幼い頃の封真なら、その役目も甘んじて受けていただろう。  
だが今は違う。  
封真には封真の願う未来、選びたい道がある。  
しかし父の遺言は、それを否定するものだ。  
父は、実の息子である自分より、他人である神威の未来を案じていた…などとは思いたくなかった。  
「どういう意味なんだ、父さん…!」  
 
庭を見ると、神威と小鳥が話をしている姿が目に入った。  
神威を見つめて、小鳥はふわりと優しく笑う。  
6年前に母が死んで、そして父も死んだ。封真に残された家族は、妹の小鳥だけ。  
しかし、いつか小鳥も封真のもとを離れていく。  
きっと…神威のところへいく。  
そして自分は一人取り残されて…。  
「……!」  
我に返った封真は、軽く自嘲した。  
――最悪だな、俺  
いつからだろう、こんな醜い物思いに苛まれるようになったのは…。  
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
「神威ちゃんが帰ってくる夢を見たの」  
桜散る春の朝、頬を赤らめて嬉しそうに言った小鳥。  
ドクン…と封真の胸が高鳴った。初めて見る小鳥の表情は、紛れもなく“女”の顔。  
――小鳥も…こんな顔するのか…  
それが始まりだった。  
 
神威が東京に帰ってきて以来、小鳥は朝の身支度に時間がかかるようになった。  
そして、出かける直前に必ず  
「ねぇ、変なところない?」  
と言って封真の前で一回転して見せるのが日課になった。  
グレーのソックスに包まれた足先からふくらはぎへの美しいライン。  
ほっそりとしたまぶしい太股がスカートの中に消える。  
形のいい臀部と華奢な腰。宙を舞うしなやかな指先に続く細い腕。  
つい4年前まで一緒に風呂に入っていた時には平らだった胸も、それなりに膨らんでいる。  
白い首筋、赤く艶やかな唇、長いまつげに縁取られた大きな目、ふわふわと揺れる栗色の長い髪…。  
「…お兄ちゃん!」  
ちょっとムッとした強い瞳が封真を見上げる。  
どうやら随分と呆けていたらしい。にこりと笑うと、封真は小鳥の頭を撫でた。  
「うん。今日もかわいい」  
 
小鳥の中に“女”を見つけてしまった封真。  
禁断の思いを自覚するのに、そう時間はかからなかった。  
 
日々、よからぬ妄想が封真を蝕む。  
 
「いやぁっ!やめて、お兄ちゃん!!」  
泣き叫ぶ小鳥の服を無理やり引き裂き、獣のように貪り、犯す。  
破瓜の証に滴る血も、絶望に満ちた悲鳴もこぼれる涙も、全て封真を煽るだけ。  
何度も何度も小鳥の中心に己の欲望をねじ込み、叩きつけ、放つ。  
そして、無残な姿の小鳥を見下ろしながら、封真は満足げに氷の笑みを浮かべる。  
 
…こんな夢を見た朝は憂鬱だった。  
しかし頭と違い、体は素直なもので……自分の体の忌まわしい変化に、封真はさらに憂鬱になる。  
そんなことはお構いなしに、現実の小鳥は元気よく封真の部屋に入って来る。  
「早く起きないと、遅刻するよ!」  
鳶色の瞳と視線が重なる。息がかかるほど近くに小鳥の無防備な笑顔があった。  
ほんの少し手を伸ばせば、夢の再現など容易い。  
「…わかってる。あと5分…」  
伸ばしかけた手をぐっと堪え、封真はもぞもぞと布団の中にもぐった。  
こんな時でも冷静に振る舞えた自分の理性を誉めてやりたい。  
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
ふと再び庭を見ると、神威と小鳥の姿がなかった。どこに行ったのだろうか。  
小鳥は神威が好き。神威も小鳥が好き。  
自分が入る余地など何処にもないことはわかっている。  
だからこそ  
「お前に何かあった時は、必ず俺が守る」  
こんな子供のころの戯言までひっぱりだして、昔のように二人の“兄”として振る舞おうと、自分の気持ちを抑えようと努力した。  
だがここに来て、父の遺言。  
――結局、父さんも小鳥も、俺より神威が大切なんだ  
どす黒い“嫉妬”という感情が渦巻く。  
不意に、いつか見た白昼夢…神威と自分が闘う夢がフラッシュバックする。  
慌てて封真は首を横に振った。  
封真はまだ、親友である神威を完全には憎みきれずにいる。  
小鳥への許されない恋心、神威に対する嫉妬…そしてそんな感情を抱いてしまった自分自身への嫌悪。  
――全て忘れてしまえれば、どんなに楽だろう  
不意に眠気が襲ってきて、封真は深い夢の底に落ちていった。  
 

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