君たちの知らないいくつかの出来事.2  
 
 うぅ〜〜〜〜〜〜ん やっぱりプロの仕事は違うわ…………さすがリヒターさんオススメのお店ね  
 店中の品を手当たり次第に手に取りながら、まどかは心の中では感嘆の声を上げていた。  
 ここはまどかがドップリと浸かっている“アッチの業界”でも、知る人ぞ知るが知らない人はまったく知らない穴場中の穴場の店。  
 一見さんお断りなどという敷居の高さはなさそうだが、店にはあまり顧客にアピールしようという気もなさそうである。  
 だから店には口コミでやって来た者のみなんだろう。あまり流行っている感じはない。  
 現にいま店に居る客はまどかだけである。他に店に居る人間といったら、奥の会計でジ――ッとまどかを見てる初老の店主だけだ。  
 オタクという人種は一つのことに集中したら周りが見えなくなるのか、まどかは客を見るにしては熱すぎる視線に気づかない。  
 だから衣装の細かい縫い目などをチェックしながら、ブツブツと口の中で言っているところに、  
「……ずいぶんと熱心だねお嬢さん」  
「ひゃあ!?」  
 突然真後ろから声を掛けられたものだから、まどかは飛び上がらんばかりに驚いた。  
 思わずよろめいてしまい、後ろにいた人物の厚い胸板に倒れ込む。  
「おっと、だいじょうぶかね?」  
 肩を抱かれるように後ろから支えられる。店主の身体は老人とは思えないくらい大きくてたくましい。肩に置かれた手は力強かった。  
「あ? あ、ああ だ、だいじょうぶです!? す、すいません」  
 これで意外と人見知りのあるまどかは、あわてて身体を離そうとする。  
「あの…………手を」  
 でも、店主はすぐにはまどかから手を離さなかった。改めて言われてパッと手を離す。  
 握られていたまどかの肩は、ちょっとだけ熱を持っていた。見上げると店主はニッコリと微笑んでいる。  
 笑い返そうと(要は愛想笑い)まどかが顔の筋肉を動かそうとしたとき、  
「よかったら試着してみてもかまわないよ」  
 一瞬早く店主がそう提案した。  
 まどかの方は機先をそがれて、なんともいえない表情になってしまったが、店主の言葉にすぐにオデコ、ではなく顔を輝かせる。  
 しかしそれも、  
 
「あ、でもわたし今日は持ち合わせが、その……」  
 自分の懐具合を思い出して困った顔になってしまった。  
「ああ、いいのいいの お嬢さんは本当に好きみたいだからサービスだよ 気にいったのがあるならプレゼントしてもいい」  
「そんなわたし今日初めて来たばかりなのに、悪いで……」  
 店主は最後まではまどかに言わせない。また強引に言葉を被せて遮る。  
「ただし後で新しい衣装のモデルさんになってもらう そういう条件でどうかな? モデル代ということで」  
「え? モデル? わたしが?」  
「ああ 是非ともお願いしたい」  
 たしかに、まどかはモデルをするのに十分の素質を持っていた。  
 すらりとした長身。170センチはあるだろう。この年頃にしては、黙っていればずいぶんと大人びて見える。  
 緩やかにウェーブのかかる長い髪がふんわりと肩にかかっていて、きつそうな性格を表す視線と相まってセクシーといってもいい。  
「え、でも、そんな、その…………」  
 熱心に口説かれてまどかも満更でもないのか、困った風を装いながらすでに乗り気である。  
 その証拠に目の前にある衣装と、奥にあるだろう更衣室のあたりにチラチラと視線を走らせていた。  
「さあ、それじゃ着替えておいで」  
 店主に背中を押されると、  
「あの、少しだけ……ですからね」  
 まだ迷っているフリをしながらも、足は軽やかに店の奥へと歩き出している。  
 その背中を見送る店主の顔に浮かんでいるのは、さっきまでとは違う粘ついた笑顔だった。  
“カチャンッ……”  
 扉にクローズの看板をかけると鍵を閉める。  
「誰も来やしないだろうが、モデルさんとの撮影会を邪魔されたくないからな」  
 そこは知る人ぞ知るが知らない人はまったく知らない穴場中の穴場の店。誰の目にも触れない秘密の撮影会が行われようとしていた。  
 
「これって、なんのコスプレなのかしら?」  
 鏡に映る自分の姿を見ながら、まどかは子供っぽい仕草で首を傾げる。  
 店主から渡されたのはなんのことはない。本当に普通の、ただのセーラー服だ。  
 そこにはアニメのキャラクターなどではなく、どこにでもいそうな女子校生が映っているだけである。  
「着替え終わったかな?」  
「あ!? は、はい」  
 カーテン一枚隔てただけの傍に店主はいたようで、まどかが思っていたよりも声はずっと近くから聞こえて驚いた。  
「開けるよ」  
「え? あ……」  
“シャ――――ッ”  
 形だけの断りを入れると、店主はまどかの返事を待たずにカーテンを開け放った。  
「おお!! よく似合っているよお嬢さん」  
 制服姿のまどかをみるなり、頭から爪先までジロジロと見回す。  
 それは舐める様に見るという形容詞が当てはまるほど、いっそ遠慮のない不躾なものだった。  
「うんうん これならいいのが撮れそうだよ それじゃこっちに来てくれ」  
「あ、ちょっ!?」  
 まどかの手を取ると更に奥に部屋があったのか、扉を開けて入った部屋は意外なほど広くて、セットらしきものは大きなソファーと  
小さなガラステーブルがあるだけだが、カメラなどの機材は素人には詳しくはわからないまでも充実している様には見える。  
 これだけ揃っていれば、まぁ撮影スタジオと言えないこともない。  
 店主はカメラを初めとする機材をいそいそと、喜色満面の笑顔で準備している。  
 まどかはそのチラッと見た店主の笑みが、なぜだか気持ちのいいものには思えずに目を逸らした。  
「よしっ お嬢さん早速そこに立ってもらえるかな」  
 セッティングが終わったのか店主はそう声を掛けると、まどかにソファーの前を指し示す。  
 
 今更だがトントン拍子の速い展開に釈然としないものを感じながらも、プレゼントしてもらった手前、まどかはソファーの前に立った。  
 店主はそんなまどかを、無機質なカメラのレンズからジ――ッと見ている。それだけで、  
「…………………………」  
 なにも言わない。なにも店主は声を掛けてこない。  
 ただカメラのレンズ越しに、まどかのスラリとした身体を見ているだけである。  
「…………………………」  
 まどかの目線はキョトキョトし始めていた。  
 こうやってカメラに撮られるのは初めての経験というわけでもないのに、なぜだかわからないが背中がむず痒い。  
 いたたまれなくなったまどかが、  
「あの……」  
 声を掛けると、それを待っていたように、  
「じゃあ、そこでまずはクルリと回ってもらおうかな」  
「あ!? ……はい」  
 指示を出す。  
 虚を突かれたまどかだが、そこはコミケなどにいるカメラ小僧の突然のポーズ指定などで場数は踏んでいて、すぐにクルリと、  
体操をやっていただけある綺麗なターンで回って見せた。  
 スカートの裾がふわりと花のように広がるが、下着が見えるか見えないかという絶妙なものである。  
 昨今の規制の厳しいアニメの影響を無意識に受けているのか、下着などを特別見せなくても牡を煽る方法をまどかは身につけていた。  
 現にレンズに押し付けている店主の目は、好色な形に細められている。  
 もっともまどか本人には、どれだけ自分がオトコを惹きつけているかよくわかってない。  
 いつもなら同年代の男の子のガッついた視線でわかるのだが、初老の店主は己の色欲を隠すのが遥に巧妙なのだ。  
「いいねぇ すごくカワイイよ なんというか、この年頃のしか出せない魅力が詰まってるねぇ」  
 ありきたりな、いかにもカメラマンがモデルに言いそうなセリフだが、それが返っていいのかもしれない。  
 
「そ、そうですか? いやだなぁウマいんだからぁ」  
 モデルさんはあっさり乗り気だ。…………まぁ、モデルがどうこうよりも、単にまどかが乗りやすいだけかもしれないが。  
「いやいや それじゃそこのソファーに座ってこれ飲んでみて」  
 レンズから目を外すと、もう店主は最初の人のいい笑みを浮かべていた。そこには生臭いものはまったく感じられない。  
 薦められる紅茶(?)が写真を撮る演出だと思えば、断る理由がまどかにはなかった。  
「こんな感じでいいんですか?」  
“コクッコクッ……”  
 カメラを意識したカワイイポーズで、白い喉を鳴らして紅茶を飲む。  
「いいねぇ…………すごくいい」  
 喉が微かに上下する度に店主はまどかに、カメラマンがモデルにするにしては熱の篭もりすぎてる褒め言葉を投げかけた。  
 
“カシャッ、カシャッ”  
「うん、いいねぇ でも、ええっと………… そう言えばお嬢さんの名前をまだ聞いてなかったね」  
「え!? あ、まどかです 御堂まどか」  
 お澄ましスマイルをカメラにしていたまどかはシャンッと背筋を伸ばすと、両手を膝の上に置いて遅まきながら自己紹介する。  
「まどかちゃん、いやレディーに“ちゃん”は失礼かな まどかさん堅くならずに、と言おうと思ったんだが、返ってマズかったかな?」  
 言いながら店主はニッコリと笑いかけてくる。  
 そうやってちょっとナイスミドルの店主に微笑まれながら『レディー』などと言われると、特別オジサン趣味のないまどかの頬にも  
パアッと朱が散った。  
 背中はカメラを意識してむず痒いのに、脇腹のほうは店主の視線を意識してかこちょばゆい。  
「いえ、その、“ちゃん”で全然かまわないですよ」  
 言ってまどかは目線をあらぬ方に向けた。  
 身体がなんだか熱い。店主とカメラ、“二人”の視線に見つめられてると思うと、ドキドキとまどかの心臓が高鳴ってきた。  
 そ、そう言えばオトコの人と二人っきりなのよね、まぁ、あっちは私のことなんて……でもレディーって……ああっ!そうじゃない!!  
 まどかは爪を噛みたい衝動に駆られる。  
 自分のことなのになぜこんなに心臓が早鐘を打っているのか、なぜこんなにも身体がカッカッするのかまったくわからない。  
 NESSの青年と話しているときの感覚が近いといえば近いが、それとはあきらかに違うものがある。  
“モジ……”  
 店主に気づかれぬよう、微かにまどかは内腿をすり合わせた。身体は熱いだけではない。耐え難いほどに…………切なかった。  
 ここが自分の部屋であればすぐさま手をスカートの奥に伸ばして、ハシタナイくらい激しく身体を慰めていただろう。  
“モジモジ……”  
 またまどかは内腿をすり合わせる。  
 どんなに細心の注意を払ったところで、そう何度も立て続けでは気づかれようというものだが、それでもまどかはやめられない。  
 
“モジモジ……モジ…クチュ………”  
「……あ!?」  
 思わず洩れてしまった声に、まどかはあわてて口を塞ぐ。チラリと店主を盗み見ると変わらずニッコリと微笑んでいる。  
 それが増々まどかの羞恥心を掻き立てて、“女の子”のほころびからは愛液が内腿を“ツゥ――”と涙のように流れ零れ落ちた。  
 ど、どうしよう スカートにシミとか付いたら大変だわ  
 汚れが発見でもされたら、まさか濡らしてしまったとも言えない。そうなれば買い取るしかないだろう。  
 でもそんな心配をしながらも、まどかの“モジモジ”は止まらなかった。  
“ポンッ”  
 そんなまどかの肩に大きな手が置かれる。  
「お嬢さん、気分でも悪いのかな?」  
 そう、店主はまどかを気遣うような言葉をかけながら、赤く火照った顔を覗き込むようにして隣に腰を降ろした。  
 驚いたまどかは距離を取ろうとするが、  
“ぐいっ……”  
「あ……!?」  
 強い力で肩を抱き寄せられる。  
 店主の厚い胸板へと不意を衝かれた所為もあり、まどかはもたれ掛かるようになんの抵抗も出来ずに倒れこんだ。  
「本当にだいじょうぶかね? 身体に力が入らないようだが……」  
 言いながら店主の手はスルスルと廻された肩から降りてきて、腋の下をくぐってまどかの乳房に触れる。  
 それはとても自然な動きで、  
“ぐにゅん……”  
「あ!?」  
 店主の指先が乳房にめり込んで、まどかは初めて触られているのに気づいた。  
「え!? あ、あの ちょッ、やめ……」  
 乳房を揉む手を掴み、店主の顔を脱力感に襲われながらも“キッ”まどかは睨みつけようと顔を上げたところへ、  
「んぅッ!?」  
 まどかの目が驚愕に大きく見開かれる。店主は貪るように女子校生の清らかな唇を奪った。  
 え?え?ええ!? なに?なに? 私いまなにされてるの? なんなのこれ!?  
 そうやって強制的に訪れたファーストキスの衝撃でまどかがパニックになっているうちに、店主は舌先を“にゅるり”と口内に  
潜り込ませてきた。  
 
「んむッ……んッ…ふぅ………んンッ!!」  
 まどかの舌は捕らえられ絡められる。  
 このときになってようやく自分を取り戻したまどかは、狭い口内を店主の舌に追い立てられて逃げ惑う。  
 まどかは唇をなんとかもぎ離そうとするのだが、いつの間にかガッチリ後頭部を押さえた店主の手はぴくりっともしない。  
 ささやかな抵抗は返って唇の密着度を高めることになり、より深く店主の舌を奥へ奥へと誘い入れてしまう。  
 店主はまどかに覆い被さるように顔を傾けると、塊を舐めて溶かすように舌に唾液を乗せてトロトロと口内に注ぎ込んできた。  
「うッ!?…ごほ……はッ……」  
 まどかは粘つく唾液を顔を歪ませて吐き出そうとするが、頭はガッチリと店主に抑えられて逃げる事もできない。  
 息苦しさに唾液を飲み込むしかなかった。  
 店主は白い喉が“コクンッ”と動く度に、まどかのウェーブのかかった長い髪の毛を撫でつける。  
 それを店主は目の端で見て満足そうに細めると、スカートの奥を窺うように膝小僧に置いていた手を侵入させた。  
 そのまま店主は背中を支えてやりながら、まどかの身体をソファーの上に押し倒す。  
 こんなレイプとしか思えない行為に、なぜか不覚にも気分を出し始めている自分に戸惑っていたまどかもこれには我を取り戻した。  
 もちろん会ったばかりの、それもナイスミドルとはいってもオジサンに“女の子の大切なもの”の一つを守らねば、という思いもあるが  
なによりも、いまショーツに触れられたら濡れてるのが一発でバレてしまう。  
「ふぅッ……んンッ………んむッ、は……んふぅッ!!」  
 唇を重ねられたままのくぐもった声を上げながらも、まどかは咄嗟に腿を閉じて店主手の侵入を防ごうとするが一歩遅かった。  
 指先がぴっちりと閉ざされた太股を強引に押し割ってショーツに触れる。  
“チュプ……”  
 まどかは店主の目が愉しそうに“ニィッ”と笑みの形になったのをはっきりと見た。  
 
“ちゅるん……”  
 音を立てて舌を引き抜くと、  
「……おや?」  
 店主は大袈裟に驚いた風をしながら、特徴的な広いオデコまでも真っ赤に染めているまどかを覗き込む。  
「まどかちゃんはずいぶんと敏感なんだねぇ……」  
 わざわざ言わなくてもわかることを、けっして他人には、それも男性には触れられたくないことを指摘されても、まどかはなにも  
言い返すことが出来なかった。  
“カァ――――ッ”  
 これ以上は赤くなりようがないと思っていたオデコを、更に紅く染め上げるだけである。  
 そしてワナワナと震える唇から発せられたのは、  
「うぁあッ!?」  
 するりとショーツの脇から差し入れられた店主の指先が、ヴァージンであるまどかの秘裂を深くえぐった。  
 ピンクローターのように小刻みに店主が指先を震わせると、膣内に溜まっていた愛液が外へと溢れ出してスカートの裏地にシミを作る。  
「はひッ…ひッ……あッ……はぁッ……ン……んふぁ…………あふぁッ!」  
 まどかは唇からは艶やかな嬌声を、秘唇からはガムを噛んだときのような“クチャクチャ”といった下品な音をスタジオ内に響かせた。  
 それに煽られるように、店主の指先の動きも情け容赦のないものになっていく。  
「ンあぁッ……はぅッ……んンッ………あぁんッ……ふぁッ……ひッ……うぁッ!!」  
 ヴァージンがそれを享受し、尚且つ快感として感じられるのは妙なのだが、そんなことを考える余裕はとっくにまどかにはない  
 自分でするときよりもずっと激しい抽送に、まどかの性感は急速に高められていく。  
「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……んンッ!!」  
 指先が蠢く度にまどかの背筋には微弱な電気が走り、思わず店主の首に両腕を絡めて抱きついてしまうほどだ。  
 頭の中は“チカチカ”と点滅をくり返し、腰は“カクカク”と、本人に自覚はないだろうが浅ましく振りたくっている。  
「……今日は時間がないのでここまでだけど、今度はゆっくり撮影しようね…………まどかちゃん」  
 触れられることもなく放ったらかしにされていた、快感を溜め込んで肥大している真珠を店主はいきなり爪で引っかいた。  
 
「うッ…うッ…んあッ……あッ…はぁんッ……ああッ!!」  
 高みに突き落とされる。そんな理不尽な感覚に襲われた。まどかは気づいてはいないが、これはバブルボードの感覚と同じである。  
 店主の首に“ギュ――ッ”と力一杯抱きつき、身体を快感の余韻に“ビックン、ビックン”と震わせると、まどかはゆっくりと、  
まるでチカラを吸い取られるように弛緩していった。  
“カシャ、カシャカシャ…………”  
 まどかの耳にはどこか遠くで……シャッターを切る音が聞こえる。  
「……ん………………」  
 目を開けようとしたがひどく気だるい。  
 まぁ、いいや……  
 あきらめたまどかは、心地よい眠りに誘われるように、白い世界に同化した。  
 
 

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