「姫、どうですか?」
「…っあ、いや…いちきよさまっ…あっああ…ッん」
そんなこと聞かないで、と続けたかったが言葉にはならなかった。
「いや?じゃあ、やめますか?」
「や、やだあ…」
「じゃあ続けますか?」
いやいやをするように首を左右へ振った。
「どっちですか。あなたは本当にわがままですねえ」
普段と変わらない優しい声音。涙が邪魔をしてよく見えないが、きっといつものような優しい笑顔をうかべているのだろう。なのにどうしてこんなにいじわるなことを言うのか。
そもそも休日の午後に私は一清様に膝をお貸ししていただけだったはずだ。「久しぶりに夫婦水入らずで過ごしましょうね」とにっこり笑って言ったら、一清様は少し考えるようにして「そうですね」と言って、それから私に覆いかぶさってきたのだ。
確かに『夫婦水入らずの時間』だけれども、私はこんなことがしたかったんじゃない。
くちゅり、と一際大きな水音が響く。
「こんなに濡らして、ここでやめたら辛くないですか?」
「あっ!」
いままでじらすように入り口を行き来していた一清様の指がぐっと中へ押し入る。くちくちと音を立てながら私の中をかき混ぜる。
私はただ、ゆっくりお話できたらいいなって、それだけだったのに。…こんなの一清様じゃない。こんないじわるで、いやらしいひとは知らない。だけど、私のことをこんなに気持ちよくさせてくれる人も他に知らない。
「ふあ…っ、あっあっああっ」
思わずはしたない声があがってしまう。こんな昼間なのに。誰か来たらどうしよう。だけど、もう、そんなことどうでもいい気がする。
耳元に熱い息がかかる。それだけでびくっと体がはねた。
「どうしますか、姫?」
言って一清様は私の耳を甘噛みする。
そんないじわるなこと言わないで。もっと、もっとして欲しい。だけどちゃんと言わなきゃ一清様はやめてしまうかもしれない。
「…い、ちきよ…さまっ、わたしっ、私は―――――
―――――保守、します…っ」