『女郎蜘蛛の悦楽』  
 
 真っ暗闇の空間に大きな蜘蛛の巣がはっている。  
 杏子はその白い裸体を晒して仰向けに大の字で横たわっていた。その両足は  
大きく開かれ、その結合部はあふれ出した液体で洪水状態である。  
 そしてその上にはこれまた全裸のリクオが覆いかぶさっている。  
 リクオが腰を突き入れる。蜘蛛の巣が揺れた。  
「あ、いい、ィィの…」  
 杏子は少し掠れた声でリクオの耳元に囁く。合体中のリクオは酷く真面目  
な顔をして腰を振り続ける。  
「そこ、そこよ、そう、それ…」  
 突かれる合間に濡れた言葉で囁き続ける杏子。表情には艶かしさが沁み出している。  
「あッ、それ、そぉれいいの、あ…」  
 熟れた芳香で揺れる蜘蛛の巣を満たしながら躊躇いもなしにそう告げる。  
 リクオは身を起こすと杏子の両足首を掴んで掲げ、執拗に腰を振った。愛液は  
杏子のへその方にまで幾筋も垂れていく。  
「ぁぁ、あ、ぅッ、んッ…」  
 杏子は慣れた調子で快楽に身をゆだね、違和感のない押さえがちの嬌声を上げている。  
ただその内容は次第に意味を失っていく。  
「ぅ、ぅぅ、ぃいの…」  
 杏子の柔らかく解けた乳房の上で硬くなった乳首が楕円を書くように動く。  
彼女は下になりながらも自ら腰で円を描いてリクオに応じているのだった。  
尻にまで垂れる液体は控えめながらもはばかりのない水音を立てている。  
「もっと…ねぇ、もっと…」  
 杏子は胎内の襞を蠢かせてリクオの責めに全身で交わりながらうわ言の様に言った。  
リクオは上半身をせり出すようにして荒い息を吐いている。  
「…だめよ?…まぁだ、イクトキハ一緒よ…」  
 気配を「察した」杏子は上気した顔で品良く微笑んで両腕でリクオを抱き寄せる。  
そしてその柔らかい太ももをリクオの腰に絡ませて固定し余計な摩擦を制御しながら  
体の中で苦しげに震えるソレの感覚を楽しむ。  
「まだ駄目よ…」  
 そのとき杏子は甘く囁きながら男を生殺しに弄る楽しみにうっとりとしていた。  
 
「欲求不満かしら…」  
 深夜に目を覚ました杏子は暗闇に人差し指を噛んでため息をついた。  
ハルに対する微かな罪悪感があった。しかしそのときはそれ以上考える気はしない。  
彼女は布団から出ると桐箪笥を開けて下着の下に隠してあったバイブレーターに  
手を伸ばした。  
 

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