『さる女流画家のゴッホ的白昼夢(桐島)』
黄色い太陽が油絵の具の空から溢れ出るばかりの光を注いでいる。
原色の入り混じる世界に桐島はまどろんでいた。
一糸だに身にまとってはいない気がした。緑と黄色の交錯する野原に
寝そべり全身で陽の光を受け止めている。
生命に満ちた太陽が惜しげもなく放射するエネルギーは彼女の全身に纏わり
つき、包み込むように愛撫している。
長い四肢の皮膚を温めて浸透して鋭敏にさせる。そして微かな気流が筆で
撫でるように脚の内側や喉元をマッサージする。
形の良い白い乳房を覆って優しく揉まれている様にさえ感じられた。
まるで無数の妖精や小人に奉仕されているような錯覚さえ覚えてしまうほどに。
呼吸するたびに頭の奥が痺れる。刹那、その意識が薄れてしまうほどに。
そして甘美な「熱」は弱い部分からも深奥にまで潜り込むように流れ上がってくる。
そこには圧倒的な快さがあった。
夢の中で太陽が与える極端な悦楽は官能的なまでに高まって彼女の
肢体を解きほぐし、緩めていく。
「う…わぁ……」
浪は思わず顔を赤らめた。その表情には明らかな動揺の色がある。
川の土手で昼寝している桐島を見つけて近寄ったまではよかったのだが
桐島の様子は常軌を逸していた。
どんな夢を見ているのかなど分からない。だが大体想像がついた。
眠る桐島の顔は酷く切なげに上気しその長い四肢がひくひくと震えている。
時おり悩ましげな喘ぎさえが漏れるのだった。
普段のクールな印象からはかけ離れた姿を晒している。
起こすべきかどうか悩む浪。しかしその首に桐島の細長い腕が伸びる。
「キミ…一緒に、どう…?」
夢現の狭間にまどろむ桐島は次の瞬間に浪を引き倒して自分の腕の中に収めて
しまっていた。体格のせいもあって彼女は女性の割には腕力があるのだ。
「キモチイイよねぇ……」
頭を乳房に抱き込まれて浪は頭上にそんな甘たるい声を聞いた。
真意を理解しかねた浪の鼻からは一筋の赤い血が零れる。
もう浪の頭の中は真っ白になって肩や足に絡んでくる桐島をどける気力さえない。
桐島の下腹部が浪のものに当たる。ジーンズ越しでもその柔らかさは誤魔化しよう
もなく伝わってくる。浪は身じろぎすることだにできない。
(あ…ぁぁぁ……!)
まるで桐島の性感が流れ込んできたようだった。勃起すらしていないのに
終わりのない射精のような感覚があった。
浪は我を失って霧島の背中に手を回しその服を握り締める。
そのときにわかに桐島の呼吸が荒くなる。体を硬直させて浪を強く抱く。
浪のソコに桐島の胎内の疼きが直接に浸透してくる。
燦々たる太陽の光の下。そのまま長いこと二人は性交を超えるような絶頂を
噛み締め合いながら堅く抱き合っていた。