『夢に見た未来(シナコ)』  
 
 トントントンと包丁がまな板を叩く。  
キッチンのまな板の上では輪切りになったネギの小山が出来上がっていく。  
「シナコ」  
 背後から聞こえる愛しい声。「彼」だった。  
 二人は大学を卒業してすぐに一緒になった。新婚も三ヶ月目に突入だ。  
「あら、もう起きたの?」  
 シナコはちらと振り返り微笑みながら訊ねる。日曜の早朝、普段なら「彼」も  
浪君もお義父さんもまだ眠っている時間である。  
 「彼」はああ、とだけ答える。その足音から近寄ってくるのが分かる。  
「ちょっと待っててね、今お味噌汁作るから。昨日の晩のから揚げあるけどやっぱり  
目玉焼きの方がいいかしら?」  
 シナコはエプロンの裾で手をぬぐって冷蔵庫のドアを開ける。  
そして味噌の容器を取り出して調理台に置く。スプーンで量を計って鍋にといた。  
「熱ッ!」  
 シナコは慌てて鍋から手を引っ込める。ガスコンロの火で熱せられた鍋の縁に腕  
まくりした手首が触れてしまったのである。  
「…あなた?」  
 「彼」はシナコの手を捕らえてその手首を労わるように舐める。  
そしてそのままシナコを背後から抱きすくめ、エプロンごとに小ぶりな乳房を揉むのだった。  
「ちょ、だめ。お鍋が…」  
 シナコは当惑した表情を浮かべたがそのまま壁に手を着いて腰を後に突き出した  
姿勢をとらされる。「彼」は彼女の耳元で小さくシナコと囁いた。  
「あなた、だめだったら…」  
 しかしシナコはそんなことを言いながらもされるがままになっていた。  
スカートを捲りあげられ、そのまま繋がってしまう。  
「………」  
 シナコは神妙な顔で口を噤み、やや遠慮がちに入り込んでくる「彼」を感じていた。  
シナコは比較的普段から「潤っている」方である。  
 
「………」  
 伏せ目がちに壁の一点を見つめているシナコ。彼の左腕はシナコの腰を強く抱き、  
右手はエプロンとシャツの間に差し込まれて乳房を愛撫している。  
その指先はやがてシャツのボタンを外して彼女の肌に直に触れ、指先で乳頭を弄った。  
「……」  
 すでに勃起したそれは「彼」の指で挟まれている。「彼」はあえて何も言わなかった。  
ただ激しくない程度にゆっくりと腰を使うだけである。  
強引なようでいてまるで壊れ物でも扱うかのように繊細な愛撫である。  
 シナコは爪先立ちで壁に両肘でもたれかかりながら「彼」を受け入れている。  
「もう……」  
 そんなことを言いながらもシナコの表情はまんざらでもなさげだった。  
やがて小さくくすりと笑う。そして強く瞼を閉じて深いため息を吐いた。  
その唇には微かな笑みがある。  
(うわ、来そう……そんなとこ引っ掛けたら………やっぱり確信犯?……………)  
 「彼」のモノのエラ裾の部分がねじり込むようにしてシナコの中の繊細なところを  
何度も何度もこすり付けてくる。  
(……ぅぁ…くる……きそう…んんん………ッ!!……き、きちゃった……)  
 シナコは全身から力が抜けるのを感じた。体中から汗がにじみ出るような感じがする。  
そして彼女はふいに股と脹脛の筋肉が緩んでかかとを床についてしまう。  
そのまま背後の「彼」に抱きとめられる。  
(………でてる……)  
 天井を仰いで目を閉じたシナコは何処かうっとりとした表情で体の奥に流れ込んでくる  
命の種を受け止める。そしてこれ以上ないほど優しい目でやや呆れたように呟いた。  
「もう…バカ……」  
 
 
 自室のベッドで目を覚ましたシナコは少し郷愁に似た感情を覚える。嫌悪感はなかった。  
ただ懐かしい気持ちが胸にあふれ出してくる。  
それは彼女たちに叶うことのなかった未来予想図の断片だ。  
(ねぇ、あなた……「よかった」? 私はすごくよかったよ)  
それからしばしの間彼女は優しい過去の思い出に浸って再び夢のない眠りに落ちていった。(了)  
 

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