それは小型だが勢力の強い台風が接近した、ある日の夕方のことだ。  
「な、なんで、こんなとこで……」  
野中晴は自宅前で泥酔していた魚住陸生を拾った。  
 
「リクオー しっかりしてよ」  
彼の肩を何度も揺すり名を呼ぶが、彼女の声は激しい雨風に掻き消されてしまう。  
ハルは荒れた空を見上げ額に流れる汗を拭い溜息をついて決心する。  
リクオに失恋した事が確実となっても、彼女には彼を見捨てることなど出来るわけがなく土砂降りの雨の中、彼を自宅へと運び込むことにした。  
 
小柄な彼女には、酔いつぶれた彼を運ぶのは、かなりの重労働だ。  
しかもリクオは呂律の回らぬ口で、わけの判らないことを喚き続けて、ハルは足元の覚束ない彼に身体をところ構わずに、しがみつかれてしまった、  
「ハァ、ハァ、リ、リクオの馬鹿、スケベ!」  
いつもだったら、最低でも拳で三発はくらわすところだろうが、そうもいかず、  
肩で息をする彼女の顔は赤く染まっている。  
 
好奇心を刺激されたのか足元に纏いつくカラスのカンスケをあしらいながら、やっとの思いで彼を玄関にあげたハルは、激しく肩で息をついて途方に暮れた。  
額から流れ目尻を濡らして流れるのは汗か雨水か……それとも別の何かだろか……  
雨風は増々酷くなり、ガタガタと音を立てて揺れる年月を経た古屋に彼女は不安そうに身を抱きしめた。  
「カンスケ、この家、大丈夫かな?」  
「ガァ?」  
ハルは首を傾げるカラスの頭を撫でると小さく身震いをする。  
この台風が彼女の大事な何かを変えて、大切な何かを壊わしてしまいそうな嫌な予感に襲われたのだ。  
 
彼に鷲掴みにされた左乳房が灼けるように熱い、  
その熱さは凝りのように固まっていき、不安のあまり別の感触を呼び覚ましてしまいそうだ、彼女は気を逸らせるかのように窓の外の暗く荒れる夜空を見るのだが。  
さらに大きくなる暴風の音に顔をしかめると、手で熱を鎮めるかのように左胸を押さえて大人しくしている彼の顔を覗き込んだ。  
 
「……リクオ、眠ったの?」  
彼とも長い付き合いになるが、こんな状態のリクオは見たことがない。  
こんなになるまで呑むなんて、リクオに何があったんだろう?  
まさか、しな子先生となにかあったんだろうか?  
二人の幸せを祈る気持に偽りはないもの、妙なざわめきを伴う  
不安が心をよぎるのだった。  
 
ハルは髪の毛から水を滴り落しながら膝をついて屈み込み、彼が規則正しい呼吸をしていること確かめ安堵の表情を浮かべる。  
それほどまでにリクオの状態は酷かったのだ。  
しかし、  
考えてみればリクオに会うのも久しぶりだ、いつ以来だろうか?  
ああ、そうか……  
あの時からだ。  
彼と、しな子が付き合っている事を知った時の、あのどうしようもない喪失感が彼女の心に蘇り大きな目に涙が滲んだ。  
 
でも、こんなリクオを前にして、めげている場合じゃない、なんとかしないと……  
ハルは目をゴシゴシと擦ると、どうしようかと思案しながら腕を組んだ。  
二人とも雨で下着まで濡れ、オマケに何度も転んでしまいドロにまみれている、廊下に汚れた水が着衣からしみ出して溜まりとなっていた。  
 
足元で騒ぐカンスケを居間に追いやり、取り敢えずタオルを持ち出してリクオの顔を拭くと  
彼がハルの手を払い除けようと身じろぎして、呟いた。  
「なんで、たた…ないん……だ、なんで……クッソぉ……」  
「さっきから………なんのことだろう?」  
ハルは小首を可愛く傾げて疑問に思いながらも、  
「少し待ってて」  
リクオの耳元に唇を寄せて囁き、彼の頭の下にタオルを敷くと立ち上がって溜息をもらした。  
 
まず、シャワーを浴びて、乾いた服に着替えて、それからリクオをどうするか考えよう。  
どちらにしろ、あんなに酔っているのだ、少しくらい放置していても差し支えない。  
あ、そうだ、祖父の服があったはずだ。リクオにサイズが合うだろうか?  
でも……  
その前に、リクオの濡れて汚れた服を脱がさないといけないんだよね、ど、どうしよう……  
ハルは頬が赤く染まるのを感じながら、浴室へと続く脱衣部屋に入り着替えの下着を置いて服を脱ぎ始めた。  
 
「はぁ、ふうぅ〜」  
雨泥で汚れた服を脱ぐとすっきりする、思わず解放された爽快感に声が出る。  
雨に濡れて気持の悪かった下着を洗濯機に放り投げると、思いっきり伸びをし、  
型の良い乳房は柔らかさと溢れる若々しさを誇るかのように揺れて、いかにもしなやかなそうで伸びやかな身体が、壁に掛けてある鏡に映ると、ハルは、はにかむような表情を浮べ、  
「わ、悪くないと思うんだけどな……」  
頬を朱に染めた。  
 
あ……  
廊下にはリクオが寝ているんだっけ、  
思わず羞恥心を覚えたハルは、意外な大きさを誇る乳房を慌てて腕で隠す、この格好のままリクオの前に現われたら、彼はなんと言うだろうか?  
「…………」  
な、なに、馬鹿なこと考えているんだろか……  
私らしくない。  
頬をさらに染めたハルは鏡に映る姿を見つめながら、そっと乳房を持ち上げた。  
 
もちろん巨乳と言うほどには遠く及ばないが、小柄で細い彼女の躯からすれば『でかい』と言われるくらいには十分過ぎる程の大きさがあり量感もある、形も乳首も自他共に認めるくらいには良い。  
 
それにだけでなく壊れそうな程に細いウエストから豊かに広がる腰付きといい、円やかでプリプリした尻は、どちらかといえば安産型で彼女の感度の良さを象徴しているかのようだ。  
また程よいムチムチ感のある太ももは、その整ったプロポーションに彩りを添え、淫らでエッチで見事な体型を曝け出している。  
スレンダーながら、出る所はちゃんと出て、締まる所は引き締まっている絶妙な肉感のあるくメリハリのある身体だ。  
 
いわゆる着痩せするタイプなのだが、一つ問題があるとすれば、自分の肢体に対する彼女の自信のなさだろうか……  
ハルが高校に在籍していた頃には、夏の水泳授業にもなると彼女の水着姿を見るために男子生徒による幾重もの垣根が出来てことは、彼女だけが知らない事実だった。  
 
あ……  
彼女は目を閉じて、そっと乳首に触れる。  
リクオ……  
いまだに彼が触れた感触が残り、そこはもう疼くように熱くなっている。  
ハルは右手で円を描くように乳房を揉みながら、静かに左手の指先を下へと肌に這わせた。  
んっ……  
彼女の唇から小さな喘ぎが漏れ出る。  
風の唸る音に叩き付ける雨の音、そして泥酔しているリクオ……  
こんなことをしている場合じゃない……  
彼女は未練たっぷりに、早くも濡れはじめた股間から指を離して熱い息を漏し、新しく買ったはずのシャンプーを捜した  
 
「あ、あった」  
と、その時だ。  
あれ?  
誰かにジッと見つめられているような気配を感じて  
上半身を屈め床の片隅に置いてあった新しいシャンプーを掴んだまま  
首だけ振り返ると、  
「………!」  
 
ちょっぉとぉぉおおおおおおおおっ!  
 
リクオが立っていた。  
しかも彼女は尻をモロに彼に向けており、局部を、それは見事に晒している。  
彼の視線が何処に向けられているかに気がついて、  
ハルの表情が引きつり血の気が引く、  
指で弄ったばかりのソコは、妖しく、艶かしく、濡れて、彼が見ている目の前でも汁が一筋太ももを伝った。  
 
一瞬にして頭が真白になり、数秒ほど凍りついたあと、必死に股間を手を覆い、大慌てで上半身を起こすが、  
悲鳴をあげる間も無く、よたつきながらも接近する彼の動きは瞬間移動でもしたかと錯覚するほど素早く、あっという間に、間合いを詰められハルは壁際へと追い詰められてしまい、脱衣場に酒の匂いが充満して、  
台風の激しい雨風が古屋をガタガタと揺らした。  
 
「……あ」  
こ、恐い!  
酩酊状態の据わったリクオの眼差しに、さすがのハルの顔も青ざめて恐怖に身体が震え声も出ない。  
せめて、腰を隠すものをと洗濯機の上に置いたタオルを手に掴もうとすると、  
ヒィイッ!  
ハルは歯を食いしばり目を閉じた。  
 
リ、クオ……ヤダ、な、何をするのよ!  
 
なんと、彼の手がハルの乳房を弄っているのだ!  
いつもの彼女だったら蹴りの一つ、いや彼をボコボコにするところだが、  
恐怖なのか羞恥心なのか、何故か身体が強張ったように動かない。  
 
やぁ、嫌ぁー  
酒臭い息を吹き掛けられ、  
彼の指が乳首を摘んだあと躯をまさぐるかのように下へ下へと移動していく、  
逃れようにも後ろは壁だ。  
次第にハルの足がガクガク震えて、彼は空いた手でズボンのベルトを外してジッパーを降ろした。  
あっ、ああ、ヤダ、ヤダ、リクオ、  
ハルの脳裏に最悪の事態が浮かぶ。  
 
いつか彼に抱かれる日を、自慰をしてまで夢見ていたが、  
こんなのは、嫌だよ、絶対に嫌ぁ!  
 
「お、おれ、た、た、ないんだ……」  
へ?  
彼の言葉に目が点となる。  
な、なによ、さっきから、なにわけの判らない事を言ってんのよ、ちゃんと立っているじゃないのよっー!  
ひぃ!  
ついに股間へ到達したリクオの指が彼女の控えめに生え揃う柔らかな恥毛を撫でつけるようにして蠢く。  
ああっ  
リクオの指が小さく盛り上がる彼女の股間に触れ  
「し、しな子 すまん、お、おれ、たたないんだ」  
 
「いやぁー リクオの馬鹿ぁー」  
彼の無情な言葉に涙目になったハルの絶叫が響き渡った。  
 
「!」  
悲鳴の効果なのか股間から手が離れるのを感じて、身体を硬直させながら目をあけると、何故かリクオはしゃがみ込んでおり、  
 
リ、リクオ……?  
ええ!  
 
意外なことに彼は啜り泣いていた。  
「ど、どうしたの?」  
どちらかと言えば、泣きたいのは彼女の方だが、先程までの彼の行為にも拘わらず、思わず聞いていた。  
しかし酔っているとはいえ、リ、リクオがこんなに泣くなんて……  
な、泣き上戸かな?  
彼女は自分が全裸であることも忘れて、乳房を弾ませながら床に両膝をつき腰をおろし、そっと、彼の濡れた髪の毛に触れる。  
 
「ど、どこか、ぶつけたの、痛い?」  
「しな子の奴、まだアイツの事を忘れられないんだ」  
 
え……?  
しな子先生が……  
リクオの返事にハルは唇を噛みしめて、もう既に慣れ親しんだ失恋の痛みと喪失感に耐えて彼に囁く。  
「あいつって?」  
「早川勇の……ことだよ」  
あぁ、そうか、仔細は知らないが、しな子が過去に愛していた少年だ。  
もうすでに故人で、しな子が一歩、踏み出せなかった理由でもあり、微妙な三角関係の要因なのかもしれない。  
 
ハルは目に涙が滲んでくるのを感じながら胸の痛みを隠して、彼の話を聞く決心した。  
しな子とリクオが本当に結ばれ一緒になれば、多分、二度と会うこともなくなるだろう。  
だから、これくらいのことは、してあげていいよね、  
しな子先生、ご免なさい。  
 
ハルは溢れそうになる涙を堪え、可能な限りに優しく囁く。  
「どうしたの? 悩みがあるのなら、わ、私で良ければ、き、聞くよ?」  
それ程までに彼の落ち込みは尋常でなく、  
「は〜ぁ、私ってリクオに甘いなぁ」  
困惑しつつも頬を朱に染めたハルは剥き出しの胸に彼の頭を抱いた。  
むろん、全裸であることを失念したままなのは言うまでもない。  
 
「お、俺、た、勃たたなかったんだ……」  
リクオは酒臭い息を吐きながら絞り出すように呟く。  
さっきから、立つの、立たないの……って  
何だろう?  
彼女の視線がリクオの両足から腰へと身体をさまよい、最後に股間に到達して、  
「…………あ!」  
ええええっ!  
ようやっと理解したハルの顔がボっと真っ赤になる。  
奥手過ぎる二人の関係がそこまで進んでいることにも驚くが、  
「あ、いや、そ、そそそ、それは……な、難儀なことで……」  
他に言い様がない。  
 
「しな子のやつが……」  
「えっ、う……ん、し、し、しな子先生が?」  
「し、しな子が、しな子が、初めてなのに、必死になって勃たせようとして、く、口を使ってまで、してくれたんだぜ?」  
 
く、口で……  
あの、しな子、先生が口でって  
「嘘ぉ!」  
『口で』ってフェラなんとかという奴よね?  
しな子の端正な顔が浮かび、彼女がリクオの股間に顔を埋めている姿を……  
 
と、とても想像できるわけがない。  
 
ハルも年相応の女だ、一応の性知識は網羅しているが、にわかには信じられない事実に、何故だか判らないが却って自分が冷静になっていくのを感じた。  
そっと抱えているリクオの汚れた髪の毛を指にからめる。  
考えてみれば、こんなに密着したのは初めてだろうか?  
ハルは彼の頭に頬を寄せて汗と雨に濡れた髪の匂いを嗅いだ。  
 
でで、でも、そうなったのは何か理由があるはず……よね?  
でなければ、しな子先生が口で……し、したり、リクオがこんなに泣いたりしないよね?  
「リクオ……なにか、り、理由があるんじゃないかな……リクオ……?」  
ふと気がつくとリクオは頭の向きを変えていて、顔をハルの乳房に埋めている。  
ハルは、無意識に彼を抱きしめ小さく呻いた。  
 
躯が熱くて、彼の唇が熱い。  
 
あ……こら、重いって、あっ!  
ちょっっとモゾモゾし、ない、で……  
グラっ と揺れたリクオが、いきなりハルに体重を預けて、ついに耐えられなくなった彼女は尻餅をつくように後ろへと倒れていまい、結果、二人は床に絡み合って転がり、  
ここまできて彼女は自分が全裸であることに思いあたった。  
 
あ、ダ、ダメー!  
私、全裸だったぁ!  
しまったぁ!  
に、逃げなきゃ、  
リクオの重みを感じながらハルは心の中で悲鳴をあげた。  
このままでは、今度こそ本当に不味いかもしない。  
貞操の危機だ!  
そう酔って見境を無くした男は危険過ぎる狼なのだ。  
 
彼の濡れた服が気持悪く、顔をしかめる彼女の表情が凍る。  
「!!!」  
リクオの手が、さも慣れた手つきといった風に彼女の躯をまさぐっているのだ。  
「あ、こらぁ、やぁ、ダメ、そこは、あ、嫌っ!」  
なんとか身体を捻り逃れようとするが、体格差はいかんともしがたく、躯を這い回る彼の指先を意識しながらもハルは必死に呼びかけた。  
 
「正気になって、お願い、あ、あのね、ちょっと、あ、何処にさわってんのよ!」  
彼の手が股間に侵入しようとする。  
くっ、リ、リクオ!  
ハルは、彼の手首を掴んで、なんとか抗い太ももを閉じるが、  
ァ、痛っ、ち、力が、やぁーめっ!  
しかも酔った男の手は強くて、彼女の抵抗は空しく争うこと数分!  
くぅ……あぁっ!  
「リクオ、嫌っ」  
尚も震える手でリクオの手首を掴み退けようと抗うハルは汗を滴らせ目をきつく閉じた。  
「あ、ぁあ、ぃやぁー」  
彼の指は盛り上がる恥丘を這い回り、確実に太ももの間に侵入していく。  
 
あ、くぅ、嫌だったら、ちょ、助けて、  
涙を滲ませ渾身の力を振り絞り、リクオを跳ねのけようとした時、  
「し、しな子の、やつ、アイツの名を、……呼んだんだ、はぁ、はぁ、俺に抱きしめられていながら、二度も……クソッ、し、しかも、入れようとした瞬間にも、ひ、悲鳴みたいにっ、勇クンって」  
 
はぁ、はぁ……うっわぁ!  
そ、そうなんだ……そ、それは、かなりキツイかもしれない。  
 
「あ、あんな悲しそうな、……声で、はぁ、はぁ、ア、アイツの名を出されたら、はぁ、はぁ、もう、出来るわけがないじゃないかぁっ!」  
 
リ、リクオ、カワイソウ……  
って、なんて言っている場合じゃないっ!  
「リ、リクオ、ぁ、ダメッ、は、はは、話を、くっ、聞くから、お、ね、がいっー やめてぇ……」  
 
「わ、判ってるんだ、しな子自身も傷ついていることは、でも、それ以来、ど、どうしも勃起しないんだよ!」  
「そ、そう、うん、判るよ、で、でも私の話も聞いて、ね、判るから、あっ、やぁ、ゆ、指、入れるなあ!」  
 
「はぁはぁ、じ、自分でも誰の名を叫んだか気付いてショックを受けた時の、あの、あの、しな子の顔がぁ!」  
 
……ハァ…ハァ、リ、リク…オ…しな子先生も……  
こんな時、なんって言えばいい?  
誰か、教えて……  
で、でもね、リクオ〜  
ダメ、ぁ、ソ、ソコ、クニャクニャしないでぇ、お願い、私ぁ、んん!  
 
正気のない虚ろな目で酒臭い匂いを漂わせて血反吐を吐くような告白に、必死にリクオの指と攻防しながらもハルは息を乱して沈黙する以外になす術がなかった。  
 
「しな子の……顔が、う、浮かんで、あ、あれ以来、他の女の裸を見ても、たたないんだ……畜生!」  
 
ど、どうしたらいいんだろう?  
しな子先生もリクオも可哀想だ。  
それにしても、なんであたし、この状況で濡れてきているのよー  
 
んっ!  
へ?  
妙な生暖かいねっとりした感触にハルの表情が変わる。  
な、何? ま、まさか、  
あ、んんっ、あっ!  
ハルの躯がピクンと跳ねる。  
息を荒立てるリクオの唇がハルの乳首に張り付いているのだ。  
あ、こ、こらぁ、嫌だって、あぁ、ち、力が、抜ける……す、吸うなぁ!  
 
ハルはリクオの頭を両側から掴んで下へと押し込もうとする。  
がしかし……  
当然、ハルの手から逃れた彼の指はムチムチした張りのある太ももの合間に完全に侵入し、  
「あっ、あっ、んんうっ、ダメ…はぁはぁ、ああっ、そ、そんなぁー」  
ま、まさか、私、本当に、か、感じているの?  
顔色を変えたハルは思わず艶かしい喘ぎ声を漏した。  
 
舌が乳首に巻き付き、なぶるように転がす。  
ダメェ!  
指は秘裂の縁を拭うように動き回り、  
はっ、ぁんん!  
彼の指が裂け目の中に沈んでいく、  
やぁ、いやだ、ああ、なんで、わ、わ、私、ぁ、くぅ!  
ハルは反応しはじめる躯に、必死に耐えていた。  
 
「あっ、あっ、んん、はぁはぁ、やぁ、ぁあ、ダメ、リ、リクオ、上手すぎるよ」  
 
自分の指で自慰するのより、数倍も良い!  
んっ、あっー あっー  
乳首を甘嚼みされ、躯が勝手に弓なりに反る。  
そしてハルは、既に自分が抗うのをやめていたことに気がついた。  
 
だがしかし、  
「しな子〜」  
泥酔し正気を失い、とろんとした目で恋敵の名を呼ばれ、ハルの目から涙が滲む。  
違う、私はハルだよ、しな子先生じゃない……  
しかも、  
こんな酒くさいレイプまがいのセックスなんて……  
せめて、彼の心が正気なら、  
 
でも……  
「んん、ぁ、はぁはぁ、し、舌で、ああっ、舐めまわさないでぇよっ!」  
……ここまで追い込まれている彼を見ているのも辛い。  
酒を限界を越えて呑んだといえ、いくらなんでも異常だ。  
 
彼の心が壊れはじめているのではないか?  
男にとって、勃起しないというのは、そこまでショックなのだろうか?  
しな子の顔が脳裏に浮かび、  
ハルは切ない刺激に身悶えしつつも冷汗のようなものが流れるのを感じた。  
 
バケツをひっくり返したような雨が屋根を叩きつけている、一際、激しい風が吹き荒れ、ハルの心の中にも嵐が吹き荒れる。  
酒と汗の入り交じった匂い。  
のしかかる彼の重さと、体温……  
はぁ、はぁ、わ、私……私っ!  
 
「し…な……子、どう……して……」  
リ、ク……オ……  
ハルだよ、私、野中晴だよ……  
彼女の目から涙がボロボロと溢れ、  
いいよ、リクオ、もう、私……  
意を決したハルは彼を抱き締めると、子供をあやすように囁く。  
「り、リクオ、あ、あ、雨で濡れた、ふ、服を脱いで、は、ほら、私だって裸だよ?」  
絡みあったまま、ハルの指が彼のシャツのボタンを外して脱がせると  
「うん、わかった」  
意外なことにリクオはハルの腰に股がったまま素直に脱ぎ始める。  
 
そのたどたどしい様は、  
まるで幼児のようだと、ハルは思わず微笑んだ。  
リクオが雨で濡れて重いズボンを脱ぎ捨て湿った下着を脱ぐと、ハルは頬を赤くし、マジマジと彼の下半身を見つめる。  
わぁー 初めて生で見た。  
彼が正気だったらとても出来ない行為だ。  
 
醜くてグロイ……  
見た目は決していいもんじゃないね!  
しかし、なるほど勃ってない。  
「…………」  
それは、ひょっとしなくても私に対しても感じてないことだよね?  
あれだけ、私に触っているのに!  
処女ではあるが、ハルは少しムッとするのを感じた。  
元々、ちゃんと女扱いされてないのは判っていたが、何故か理不尽さを覚えてリクオの頭を軽く叩いた。  
 
すると、  
「ぁ……こ、こらぁ!」  
それが合図だとばかりにリクオが重くのしかかり、さっきの続きを再開し、  
「ま、ま、待ってぇ!」  
ハルは声を張り上げたもの、すぐに反応しはじめる己の敏感な躯が恨めしくなった。  
 
んん、はっ、ん、はぁ、ぁ、んんっ……  
初めて体験する男の肌の温もりは、思っていた以上に心地よく、ついハルは彼の熱い裸体に手を回して抱き締める。  
リクオの剥き出しの足が、彼女の太ももの間に強引に割って入ってきて、  
「んん、いいよ、リ、リクオの、す、すす、好きにし、て……も」  
震える声で決意を告げるとハルは自ら太もも大きく開いた。  
 
はぁはぁ、リクオ……リクオ……  
ハルの耳から雨風の激しい音が遠ざかる。  
吹き荒れる外と違ってまるで、ここだけ嵐から隔離された別世界のようだ。  
ハルは酒臭い彼の顔に、そっと口づけした。  
再び、彼女の目から涙がこぼれる。  
 
こうして処女を失うのも自分には相応しいかもしれない。しかも、当に諦めていたリクオに捧げることが出来るのだ。  
彼女は、短く息を飲み込むと、  
「私が、癒してあげるよ、きっと勃たせてあげるから」  
涙を拭うと彼の耳元で優しく囁いた。  
 
「リクオ……いい子だから、わ、私の上から、どいてくれる?」  
ハルが囁くと彼は素直に言うことを聞き、微笑んだ彼女は一瞬躊躇した。  
このまま彼に祖父の服を着させて寝かせれば、何事も無く朝を迎えることが出来るかもしれない。  
どうしようか?  
火照る躯を己の両手で抱え、  
ハルは、ふと違和感を覚えリクオの股間を見た。  
 
ぅあぁ、ああ、た、勃ってる。  
 
完全じゃないみたいだけど、勃っているよね?  
しかも私の躯で?  
さっき、他の女でも勃たたないって言ってたような気がするけど、  
 
ハルは泣き腫らした目をゴシゴシこする。  
「し、しな子先生は、く、口でしたんだよね」  
でも、勃たなかったんだ……  
思わず優越感を感じたことに後ろめたさを覚え、ハルは誤魔化すかのように、震える指でペニスに触れた。  
「アァ……」  
リクオが熱い息漏して、ハルを見つめる。  
 
ハルは、想像していた以上の固さに身震いしていた。  
こんなに大きくて太いのが本当に入るのだろうか?  
で、でも、  
もっと勃たせなきゃ!  
どうしよう……  
あ……そうか!  
く、口か……って、私に出来るだろうか?  
ネットで調べて、や、やり方だけはしっているけど……  
彼女は揺れる乳房を押さえて、そっと彼の股間に顔を近付けて匂いを嗅ぎ、  
思わず躊躇する。  
ほ、本当に、こんなのを口に入れるの?  
おしっこが出る所だよ?  
 
で、でも、  
しな子先生も、やったんだ、私だって、  
「よ、よし!」  
リクオの何を考えているか判らない目を上目遣いで見てから口を開くと目を閉じて、頬張った。  
変な味、  
むぅくう、大きいよ〜  
アゴが、アゴが外れるぅ!  
ハルは口の中一杯に占拠したリクオの大きな先端をさらに奥まで入れようと苦しそうに呻く。  
リクオのソレが平均より結構大きい方だと知ったのは、ずっと後のことだ。  
 
で、でも、これから、どうするんだっけ?  
口に頬張っても初めての彼女に何が出来るわけでもなく、途方に暮れる。  
しかしそれでも、  
あぁ……!  
口の中でさらに大きくなるのが判る。  
歯を当てないように、軽く舌で舐めて表現の出来ない味と舌触りに顔を歪ませる。  
 
すると、  
「あ……れ、なん……で、ハルがフェラ、してんだ」  
呑気な声が聞こえて肩に両手が置かれ、  
・っ!  
ギクと身体を震わせた彼女の額に冷汗が流れる。  
もしかして、はぁ、はぁ、き、気が付いたの?  
それにしては、慌てた風じゃない。  
もし本来の彼なら、慌てふためくだろう。  
 
「ゆ、夢よ、ほら、そ、そっ、そそ、その証拠に勃っているでしょ?」  
焦ったハルは、通過している台風のごとく猛り狂って勃起しているモノを口から唾液を滴らせて抜いて、激しくなる鼓動に混乱しながら自棄にでもなったように床に身を横たえると、  
顔を両手で覆ってから股を大きく開き、  
「い、入れて、い、いいよ、わ、わ、私、もう……そ、その、じゅ、準備出来ている……よ」  
しっとりと濡れた秘裂を彼の目の前に晒したのだった。  
 
だが、  
はぁはぁ、ああ、こ、こんなのって……ダメェ……  
興奮にハルの息が荒くなる。  
彼の唇がモソモソ蠢き、大陰唇を唇で挟む。  
リ、リクオが口で、口でぇ!  
ハッ、ハッ、ま、まだシャワーを浴びてないのに、き、汚いよ?  
アアッ!  
リクオはすぐには挿入せずに、  
「お、お前も俺のを口に含んでくれたからな」  
と、のたまうと  
いきなりハルの股間に顔を埋めたのだ。  
 
ヒン!  
そ、そんなぁ!  
ハルは恥辱に躯をピクピク痙攣させる。  
あ、舌が、は、は、入って、アッ、舌で舐めてるぅ、ハッ、はっん!  
 
彼の舌が、味覚をじっくり味わうように動き回り、その度にハルは躯を何度も痙攣させる。  
むろん舌で舐められるなんて、初めての経験だ。  
誰と、どこでこんなテクニックを覚えたのだろうと思うが、  
あっ、あっ、ねっとりして、あっ、ダメ、こ、これ癖になりそう!  
ハルは未知の快感に躯を震わせた。  
 
「ハルってこんなにエッチだったんだな」  
リクオが顔を離して、呟く、  
ち、違う!  
反論しようとするが、乳首を指で弾かられて悶絶してしまう。  
 
「ハル、本当に、はぁ、ふぅ、い、いいのか?」  
え?  
思いもよらないほどしっかりとした言葉に、快楽に息も絶え絶えの彼女が思わず目を見開くと  
彼女の太ももを抱え、ペニスを今にも、ハルの秘裂に当てようとしている彼の視線と合った。  
 
え、あ?  
えええ、ま、まさか、本当に正気になっているの?  
あ、あああ、嫌ぁー!  
ハルは、激しい羞恥心に襲われて再び顔を両手で覆った。  
なにしろ、全裸で大股を開いて大事な所を包み隠さずに大胆に晒しているのだ。恥ずかしくないわけがない。  
 
「なぁ、これは夢なのか?」  
へ?  
「頭がボーとして、何がなんだか判らん」  
リ、リクオ……?  
ハルは、指の隙間から彼を覗き見る。  
 
「しかし、ま、また、お前とエッチする夢を見るなんてな……最近、多いぜ……」  
え?  
「お前、結構、エッチでいい躯してるよなー、アソコも綺麗だし、処女だなっ!」  
ば、馬鹿っ! そ、そんな恥ずかしいこと、台風の目にでも飛び込んで死んじゃえ!  
 
で、でもリクオ、嬉しいよ、私のことを、そんなに夢でみるなんて、凄く嬉しい!  
しかし我ながら馬鹿だと思った。  
彼が自分の夢を見たという事だけで喜ぶなんて……  
「しかし変な夢だよな」  
「へ、変ってなによ!」  
「ん? いや、そうやって会話が成立するし、俺のチンコがちゃんと勃ってるしな、ハハハ、糞、頭が痛くてボーとしやがる」  
「ははは、はぁ……」  
 
リクオは、どんだけ呑んだというのだろうか?  
まだ、夢だと思っているなんてー  
少しホッとして呆れ、ハルは溜息をつくと、両手を顔から離した。  
 
「ハル、もう俺、ここまで来たら、も、もう止まんねぇからな、こんな時になんだが、俺は、しな子が好きなんだ」  
「ううん、わ、判ってる」  
ハルは、素直に返事をして頷く。  
もういいよ、私、きっと大丈夫だから、  
「卑怯だが、ハルも好きだぞ、しかもなぁ、責任取れないぞ?」  
「ゆ、夢だから責任なんて関係ないもん」  
ははは、好き勝手言ってるぅ、でもこんな状況なのに好きって言ってくれて嬉しいなんて、  
ふふ、私、まるで誉められるのを待っている飼い犬のようだ。  
 
「よし、ゆ、夢だしな、徹底的にぶち込んでやる」  
え、ちょっと、そ、それは困る。  
わ、私、処女なのよ!  
慌てる彼女に  
「冗談だよ」  
馬鹿っ!  
ハルは赤く染まる顔を逸らした。  
 
「い、入れて、初めてだから、や、優しくしてよ!」  
「お、おう!」  
酔っているにしてはしっかりしているリクオの手に力が籠り、陰部に異物が当たるを感じて、ハルはぐっと唇を嚼む。  
 
「もっと力を抜けって、入るもんも入らねぇぞ」  
「う、うん、でも、あ、痛っ!」  
「だから、躯から力を抜け」  
「んんっ、そ、そんな、こと、い、言って…ぁあっ、もっ!」  
はぁ、はぁ、ぁ、あっ あっ!  
それは、まるで何もない所を無理矢理に通路をこじ開けられるような感覚だ、  
「くぅう、リ、ク、オ〜」  
 
い、痛いって、馬鹿リクオ、でも、なんでこんなに、慣れてんの!  
酔っているとはいえ、いや正気を失う程に泥酔していたにも拘わらず、処女の私を快感で身悶えさせる、  
 
このテクニック!  
 
普段の彼からは想像出来るわけがない。  
絶対に経験者だ!  
あ、まさか、あの昔の彼女と?  
でも、まだ高校生だったんだよね?  
いつか、絶対に問い詰めてやるっ!  
などと、  
痛みと羞恥心、そして理性の片隅で囁く罪悪感から現実逃避するかのようにハルはリクオを睨み付けた。  
 
ひぃ!  
ハルは歯を食いしばる。  
かなりの異物感に拳をきつく握りしめ、筋肉が強引に引き伸ばされ、背中が仰け反る。  
 
んんっ、入って来る、あぁ、入ってくるぅー  
 
すぐにハルは、もう、何がなんだか、わからなくなった。  
もの凄い充満感と異物感はあるのだが、痺れたように中は感じない  
 
はぁ、はぁ、痛っ、あっ、やぁ、もっと、や、優しく、動いてぇ!  
腰を動かし始めたリクオに、ハルは哀願するかのように必死にリクオの手を掴み、彼が手の位置を変えて握り返して来るのを感じて、微笑みを浮かべようと……  
して、  
気がついた時には……  
朝を迎えていた。  
 
あのまま気絶をしたのか?  
ハルは周囲を見回す、見れば脱衣所で腰にはバスタオルがかけられ、  
リクオは、傍で、股間を剥き出しのまま、  
「………」  
健やかな寝息を立てていて、ハルは恥ずかしさよりも、何か心に迫るものを感じて彼の股間から視線を外した。リクオは、まだまだ起きそうもない、  
 
ゆ、夢じゃないよね?  
心が痛い程にざわめく、  
夕べの情景が蘇り躯が火照る。本当に処女を喪失したことに信じられない思いだ。  
「痛っ」  
立ち上がろうとすると股間の鈍い痛みと、まだ残る異物感を感じて、そっと震える乳房を押さえる。  
はぁ、  
ハルは目からボロボロと涙が溢れるのを感じて乳房から手を離し、ついに泣き出した。  
 
わ、私、本当にリクオとしてしまったんだ……  
酔ったリクオの心の隙をついて……私……  
ごめんなさい、しな子先生、これが最初で最後だから……  
許して……  
しかし心の何処かで囁く、  
このままで終わりたくない、という切ない想いに彼女は、そっと身を屈め、彼の頬に口づけをした。  
 
それにしても……と、  
ハルは下腹部に手をあてた。  
リクオの言葉通りに徹底的にぶち込まれたような気がする。  
腰にかかるバスタオルを手に持つと、そっとリクオの腰に被せ、頭の下に、たたんだ手ぬぐいを敷く。  
 
「そ、そうだ、シャワーをあびなきゃ」  
小さく呟くと股間から漏れ出る、白い液体に顔を顰める。  
妊娠していたら、という思いが横切るが、ハルは頭を横に何度も振った。  
それもいいかもしれない。  
もちろん、リクオには告げずに独りで育てるのだ。  
「ふふ、どうにかなるもんだよね」  
なんて健気な私!  
ハルは自嘲的に微笑むと、まだ熱い身体を冷まそうと冷水を浴びた。  
 
浴室から出て清潔な服に着替えると、  
騒ぐカラスのカンスケに餌を与え、浴室で股間から流れ出た精液の量に思いを馳せる。  
何回、されたっけ?  
3回?  
「どうりで、腰と股間が痛いはずよ、でも、あれはもう拷問に近いわよね……」  
でも、後悔はしてない……  
かな?  
しな子の顔が浮かび、  
ハルは深く考えるのはやめて、ぼんやりと台風一過のあとの青空を眺めていると  
けたたましい叫び声を上げて、彼が居間に飛び込んできた。  
 
「もう、こ、股間ぐらい隠してよ」  
 
泣き腫らして赤くなった目を悟られないように顔を逸らし、激しくなる鼓動を隠す。  
「うぁあー! だぁー、俺、裸っぁ! ご、ごめん、いや、ここは、やっぱりお前の家だったのか」  
「ハイ! これおじいちゃんの服っ、着られると思うから、さっさと、シャワーを浴びてきてっ!」  
彼はハルの投げ付けた服の束を慌てて受けとり  
「そ、そんなこと言っている、ば、場合じゃないだろぉおお、なんで、俺は、お前の家の脱衣所で、真っ裸で寝てんだよぉお!」  
 
股間を、彼女の祖父の服で隠して血の気のないリクオに、  
「話は、あと!」  
蒼白の彼を眺めながら、冷静に答えることが出来るのは、やや気分が良い。  
「いや、しかしなぁ」  
「そんなに私に、粗末な裸を見せたいの?」  
「・う……粗末言うなっ、わ、判った、あとで、ちゃんと説明しもらうぞ!」  
居間に響き渡る彼の怒鳴り声に、  
ハルは、窓の外で気持良く風に、たなびく彼のズボンや下着を眺めなて、微笑んだ。  
 
「本当だな?」  
ハルが用意した朝食にも手を付けずリクオは繰り返す。  
「うん、雨の中、行き倒れていたリクオを引っぱって玄関にあげてから、リクオに『早くシャワーを浴びて、この服に着替えて』と言ったらさぁ、廊下でどんどん服を脱いで脱衣場で、寝ちゃんだもん」  
「そ、そうか……」  
「そ、そうだよ、もう全裸だし、ど、どんなに起こしても起きないから  
悪いけと思ったけど腰にタオルケットかけて、私、寝ちゃったんだ、ご免」  
 
「あ、いや、謝るのは、俺の方だ、ハル、あ、ありがとうな」  
「ううん、そ、そ、それより、ハルちゃん特製トマトジュース飲んで、二日酔いに効くよ」  
視線を合わせずにハルはトマトジュースを、彼の方へと押しやった。  
「あ、ああ……ありがとうな、ってお前の特製かよ」  
 
彼の、ぎこちない動作とわざとらしい笑み、  
なにしろ、ふった相手の自宅で、しかも脱衣場で全裸な姿で目が覚めたのだ、居心地が悪いどころではないだろう。  
 
もし事実を知ったらどうするだろうか?  
冷汗をかいて顔を歪め朝食をじっくりと点検してから食べ始めた彼を見つめて、ハルは悪戯っぽく笑うと小さな声で、  
 
「今度は勃つといいね」  
と囁いた。  
 
「お、おい、今、なんて、言った?」  
「え、なんのこと? あ、おじいちゃんの服、意外と似合ってる」  
ハルは舌をペロと出すと、洗濯物の乾き具合を見るために立ち上がった。  
「あ、し、しな子には、このこと黙ってくれ……るか?」  
背中から聞こえる声に  
言えるわけないじゃんか……  
ハルは幽かな声で答える。  
この秘密は死ぬまで抱えて生きるのだ。  
 
そして、庭に出た彼女は抜けるようの青空を見上げ  
『バイバイ、リクオ!』  
と呟いて、爽やかな空気を胸一杯に吸いこんだ。  
 

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