医者の修行だ、というので呼ばれた美津里の部屋の戸を開けると、珍しいものがあった。
腰を抜かした長谷川虎蔵。
体を布団に横たえた麻倉美津里。
女の腹の膨らみはどうみても臨月間近だ。
「あれあれあれあれあれあれあれあれ!」
指差して虎蔵がじりじり逃げようとしてるが腰抜かしてるのであんまり動いてない。
その肩に、木下京太郎はぽん、と手を置いた。
「おめでとうお父さん。いいか、出産というのは生命の神秘であり、
これから親となるべき人間が立ち会うのは非常によろしいことだ。
でもって、親としての自覚を養い……」
「俺のじゃねぇっつってんだろうが!」
とうとう寅蔵は怒鳴った。腰抜かしたままなので情けないことこの上ない。
馬呑吐あたりがみたら速攻で腹抱えて爆笑した上虎蔵の五臓六腑を引き抜いて
大磯あたりで干物と塩辛にしてるだろう。
「みんなそういうんだ。虎蔵、父親というのはだな」
「だから違ぇっつってんだろうがぁぁぁ!お前だろ京の字!」
「俺はお産があるから手伝えといわれただけだ」
まさか本人とは思ってなかったが。
「だいたい俺が美津里とどうこうできるわけがない。
美津里相手に勃つ奴なんて、お前くらいだよ」
「ダアホっ誰がvagina dentata持ってるような女相手に突っ込むかっ!
食いちぎられるのが落ちにきまってんだろうが!」
「いやそれはほれ、始めに刀とかつっこんで歯ぁ叩き折ったんだろ。
とにかくだなー、陣痛始まってるみたいだから湯を沸かせ」
「誰のマ○コに歯ぁ生えてるってお言いだえ?」
京太郎と虎蔵は抱き合って震えた。
にたぁり。
そういうしかない女の顔が舌なめずりして二人を見ている。
その目は猫、いや猫又か深淵をのぞいて明らかにSAN値ふりきっちゃったものであり、
恐怖を宝石にしてみたらこんなんだろうという闇の色だった。
「あ、えーと、俺産婆呼んでくる」
「産婆はおまいさんだよ京の字。早いとことりあげとくれよ、鬱陶しくってやってらんない」
当方人類の医者につき、人外魔物の患者は取り扱っておりません。
そう言えればどんなによかったことか。
「……。虎蔵。お湯もってきて」
「嫌だ」
「父親だろお前?」
「だから違うって何回言ったらわかるんだよ!」
美津里のつかっているあやかしのようなものが湯を持ってきた。
京太郎は覚悟して手を洗い、布団を捲り上げた。
「つーか俺どっちかというと殺すほうが専門なんですが美津里さん」
「んなこた知ってるよ。いいから膣口あいてるかどうかみとくれったら。
あたしに首伸ばして自分のあそこ診察しろっていうのかい?」
「できんだろお前なら」
「虎」
美津里が言う。
「こないだ貸した五百万、耳ぃ揃えて返しとくれ」
「……なんでもいたしやすです美津里様女王様鬼子母神様」
練達の営業マンもかくやというすがすがしい笑顔で虎蔵は揉み手した。
「京太郎センセ、お湯でよろしかったりいたしますでありんすか」
「そこで黙って座ってろよ邪魔だから」
人生生きて40年ちょい。
まさか京太郎ごときに邪魔と言われる日が来るとは。
揉み手のまんま寅蔵は滂沱の涙を流していた。
まあ、京太郎にしても必死である。人の医者でも人外魔物は受け付けない。
ましてや相手は美津里である。冗談抜きで膣に歯が生えてても不思議じゃない。
ていうかそのまま吸い込まれかねない。
神様仏様死んだ女好きのお父様、もう一回まともな女のあそこを拝ませてください。
あてになるかどうかわからないが全ての神仏に祈りをささげ、京太郎は美津里の脚を
開いて局部を診察した。
「んっ」
艶っぽい喘ぎ声。
京太郎の体の両脇を通り過ぎてくぬめったなにか。
事態を把握するのにいくらかかかった、その間に虎蔵は事態に対応していた。
せざるを得ない。
タコの触手の遠い親戚みたいな妖物に吹っ飛ばされて庭の池に落されたのだ。
正確にいうと、タコの吸盤の変わりに目がついてて虎蔵の胴くらい太い化け物である。
もともと怒りの沸点が餓鬼より低い虎蔵にとってはそれで十分戦鐘のGONGを鳴らす
に十分だった。
右手に村正左手に虎徹、まだ羽を出さないだけマシともいえようが一瞬で陣図を完成
させ、響く雷撃は触手を打ち貫く。貫かれた触手は四散し分かれ、子蛸のようなものに
変化して遅いかかる。頭は二つ触手は一本、なんぞむさ苦しい男が股間にぶらさげてる
あれの金玉に一つずつ目がついてる子蛸だ。竿の先から吐くのは白粘液。
「……はー」
まだずるずると美津里の中から出てくる触手に挟まれながら、全く無傷の京太郎は
煙草に火をつけようとしてやめた。どうやら寅蔵以外には襲い掛からないようである。
「生まれるや否や反抗期か。さすが親父が親父だけのことがある」
「だから違うって何度言えば判んだこの幇間もち!そこどきゃあがれ、根元っから
たたきってやる!」
「はっはっは」
京太郎は笑って手を振った。「腰が抜けてて動けないに決まってるじゃないか。
動けるならとっくに逃げ出してるよ」
「よしわかった!線香くらいは上げてやる!」
「美津里の脚まで切るのかよ?」
「また生えてくんだろこいつなら!」
「……借金あんだろ」
詠唱がとまった。
「ちきしょぉぉぉぉぉぉぉ死ね氏ね死ねこのくそ蛸野郎ぉぉぉっ!」
千切れる触手飛び交う肉片、阿鼻叫喚の光景は見ないことにして、京太郎は開き
きった膣口とそこから出てくる触手を眺めた。たまにウィンクしてくる暢気なものもいる。
「ああん、そんなにしちまったら一杯になっちまうよぉ」
艶かしい美津里の声。
「気持ちよさそうですね美津里サン」
「あ、ぁぁん、ちょいとそこ駄目だってばぁぁ」
――俺なにしてんだろ。椎名さん、晩飯作ってくれてるかなあ。蛸だけは食いたく
ないなあ。
現実逃避していても、布団の上からでも美津里の腹がぼこぼこに膨れて動いている
のが判る。
さらに子蛸が数匹やってきて、美津里のはだけた襟元から入りこむ。
「はぁぁああああん!乳首、乳首お吸いじゃないよぉっっ、母乳、ミルクでちまうよぉぉぉっ!」
「駄目、中こすったら駄目だったら、ああん、駄目だっていうのにおやめってば、
ああ、はぁん、イく、気ぃやっちまうよぉぉぉぉっ!」
「やめ、らめ、胸もナカもこすられて……死ぬぅ、極楽にいっちまうよぅ」
虎蔵が聞いたら美津里の胴体切断しそうな喘ぎ声である。こいつらに付き合う上
で、常識というものは宇宙の果てに投げ捨ててはいるが、どう考えても美津里の腹
にこれだけ入る容量はない。歯が生えてるんじゃなくて、混沌とか深淵に通じてる
のかもしれない。
――そんで膣口傷つかねぇんだもんなあ。普通、裂けてて当然なんだけど。まあ
巨大蛸出産する女に医学的常識を求めても無駄か。
観察していると、とうとう本体が出てきた。蛸の口と、
幾千万の目と吸盤をつけた巨大蛸の頭。
京太郎はメガネを外した。
これは現実じゃないこれは現実じゃないこれは現実じゃないこれは現実じゃない
これは現実じゃない。だってなにも見えてない俺は知らない見ていない。
その上なんか中から出てきてるし。見慣れたものだが美津里の腹からでてくるとは
思わなかった。羊膜を被った赤子の頭。ていうか破水とかどうしたんだろうか。考え
るだけ時間の無駄だ。
「美津里ー。これ、普通の子?」
「早くとりあげとくれってばぁ。腰がもう蕩けちまって……」
もう一度手を洗って京太郎は分娩介助に勤めた。巨大蛸生んで無傷の女にそんなん
必要かとも思ったが。
「はい、いきんでー。もう一回。もうちょっといきんでー。すー、はー」
「すー、はー」
おそらく歴史上美津里が京太郎の指示にまともに従った唯一の例ではなかろうか。
赤子は肩まで出てきた。
「もうちょっと、ちょっとだから。息吸ってー、吐いてー」
庭で雷母どうとか聞こえたが聞こえないふりをした。虎蔵には虎蔵の、京太郎には
京太郎の分というものがある。早くいうと虎蔵が美津里に借金ふやそうが借りを増や
そうが京太郎の知ったことではない。
雷とともに子供は生まれた。とくに異常はない。手早くへその緒を切り、産湯を使
わせる。
女の子だ。
美津里使用の太ってフード被ってないジャワズか制服脱いだ車掌さんみたいなもの
に産湯はまかせ、後産の処理にかかる。
今度はでかい鮃だった。
「虎蔵さーん。虎ー。ご指名もういっちょ入った」
「ざ、ざけんな馬鹿やろぉぉぉぉ!鮃産む女がどこの世界にいるんだよ!」
「お玉杓子も一緒だよー」
「慰めにならねぇよ!いつから俺はこの星を守るためのスクランブルに巻き込まれてん
だよ!」
「六巻でやってたろー」
「ありゃ腐れ道士とからくり使いだけだろうが!あああああキモいんだよこいつら!」
切れるならなんでもいいとか言ってたくせに、美津里の腹から出てきたものはいやら
しい。
気持ちはわからないでもない。男というのは本能的に出産なんか忌避するものだ。京
太郎だって医者だからなんとかなってるようなもので、普段なら終わってすぐに便所と
友達だ。美津里の場合は出血がほとんどないのと、余りのことに意識がふっとびすきで
冷静になってるのだろう。
美津里がのたまう。後産だろう。
「あ、痛たた、痛たたたた!」
「無事生まれたよ美津里。女の子」
振り返るとそこに女がいた。
産湯の盥に漬かっているのは、急速に成長する裸の女。髪が伸び背が伸び、それは見
慣れた顔と姿となった。全裸なのに、なぜか、眼鏡だけかけている
「はー、狭かったぁ」
くいっと伸びをする、美津里から生まれた美津里。
「ちょいと遊びすぎたねぇ」
「楽しかったけどね、やりすぎたねぇ」
笑いあう美津里×2。
裸の美津里が寝ている美津里に唇を重ねた。舌と舌が絡み合い、ねっちりとした透明な
液が歯と唇の間をつなぐ。
「おやめってば。またその気になっちまう」
「そのときはこっちが引き受けるさ」
軽く額にキスして、裸の美津里は手をふった。「そっちの京の字も、虎の字もご苦労さん。
じゃ、ね」
美津里の使い魔が枕元に姿見を持ってくる。生まれたほうの美津里はその鏡に手を突っ
込んだ。水面のように鏡の表面がざわめき、美津里が鏡に飲み込まれていく。
する、する、する、と。
そして静寂だけが戻ってきた。
煙草の煙が二つ立ち昇る。
「つまりこの女は」
「鏡から出てきたもう一人の自分と」
「番ったあげくに身ごもってご出産ってわけか!
そうだよな!だいたいおとついお前んちで飲んだとき、美津里の腹はへっこんでたじゃ
ねーか!
誰が父親だよ京の字、ああ?」
「そうじゃないならそんなにおたつくなよ。たかが妊婦の一人くらいで」
「美津里が身ごもってたら誰でも腰ぬかすわ!」
罪も無い煙草盆を軽く蹴り飛ばして虎蔵は煙草を捨てた。視線の先には、気持ちよさそ
うに眠っている美津里がいる。
「人がどんぱちやってる時によがりくるって気ぃやりやがって。いい気なもんだぜ」
「それより俺はなんのために呼び出されたんだか。こんな出産二度とないと思うんだが」
二人は顔を見合わせた。
「また、あるとか?」
「いや、ねえだろ……いくら美津里でも」
沈黙が紫煙と漂う。
「いやいや、俺、人の医者だから。できることないから」
「いやいやいやセンセ、産湯使わせる手つきはなかなかのもんでございましたよ」
「いやいやいやいや寅蔵さんこそ、ばったばったと化け物をなぎ倒す勇姿はなかなか見ら
れませんで」
はっはっはっは。乾いた笑いが響く。
「……いい気になって寝込みやがってこのアマぁ」
「疲れてるんだろ。あれだけ産んだんだから」
「どうなってんだこいつのま○こは。ああ?どうせゆるゆるのどどめ色だろ。
どれ、見物しちゃろ」
悪趣味にもほどがある。ぺろりと裾を捲り上げ、虎蔵は中を覗き込んだ。
猫の声がする。喧嘩してるらしい。煙草の吸殻がぽろりと落ちた。
「……長谷川センセよ」
京太郎は診療用具を片付け始めた。
「さて、そろそろ椎名さんが待ってることだし……」
首筋に突きつけられた冷たさに動きを止める。
「医者でもてめぇの首は直せねぇよな?」
「おやいやだ、長谷川の旦那ったら。もちろん旦那の言葉なら何でも聴きますよ」
聞くだけだが。聞くだけにしたい。
「見ろよこれ」
美津里のま○こだ。
「……んなもん見飽きたよ今日一日で」
「いいから見ろってば」
しょうがないので付き合った。綺麗に陰毛は処理され、綺麗なサーモンピンクの襞
を虎蔵が素手クスコで広げていた。その奥にあったものとは。
「……」
機械的に消毒、滅菌、クスコを取り出し中を見る。
「これ、アレだよな。手術したのか?」
「あのな、処女膜再生手術なんか、実際は溶ける糸で中縫っといて、突っ込んだら
血ぃ出るようになってんだよ。
で、処女厨の馬鹿なやつがひっかかると」
「じゃあ今俺たちが美津里の中で見てるもんなんだよ」
「ヒーメン」
「ラーメンヒーメン僕イケメンってか?判るようにいえよ」
「処女膜だよ!」
「こいつ今日出産したんだよな?」
「再生したんだろ?んな面倒なもん再生させる気がしれねぇが!
お前らと付き合ってると正常な感覚がなくなってくから嫌なんだよ!」
「俺は逃げ回る胎児ぶっつぶすほーがまともじゃねーと思うけどねー」
「うるさい黙れ」
虎蔵はしばらく美津里のそこを弄繰り回していたが、ふと手を打った。
「つーことは、今こいつ処女か」
「おい、まて、処女ったって再生しただけだぜ」
「こいつが何回処女膜再生させたかしらねえけど、麻倉美津里の処女喪失シーンて
そそらねえ?」
「俺は絶対にそそらねぇ!つうか歯が生えてる!」
わめく京太郎の前でジッパーを開く虎蔵。よくこの状況でたつもんだと思う。
「ワセリンくんねぇ?」
やらないと死ぬので大人しく渡した。
「じゃ、いっちょ行きますか。よいしょっ……と!」
「俺は知らない何も見てない聞いてない帰るからな!」
「おー、マジいいわこれ、今ずぶーっとやぶったっぽい」
「そんなもん実際にわかるか」
「いや、いいわこれ。数の子天井の三段締め」
ずぶずぶと抽挿を繰り返しながらいう寅蔵は、布団を跳ね除けて美津里の胸元を上
げた。
「お、すげーすげー!京の字、美津里で乳搾りできるぞ!ほれ、ぴゅーっと」
噴水のように噴出す母乳をみながら京太郎は頭が痛くなった。
「いっとくけど母乳はまずいからな」
「うっわ甘えこれ!いい感じに美味いわ!飲んでみ京の字!」
「お前味覚いかれてんじゃねーのか!」
どなりつつもいい香りにつられて舐めてみる。
甘い。
甘い中にもかすかな芳香、極上の酒に似て水の如くさっぱりとしてとろりと舌の上で
とろける。
「おい京の字、てめぇ赤子かそんなに飲むんじゃねえ」
「いや、だって、これ、なんか酔う……」
「右は俺んだからな」
聞きもせずに美津里の乳を吸う京太郎。飲んでも飲んでも麻薬のように足りない。
「虎蔵、美津里起こすぞ」
返事も聞かず京太郎は美津里を引き起こすと、その美しい体から着物をはぎとった。
診療道具から特大のものをとりだす。
「おい、お前も大概いい趣味してるな」
注射器を手に京太郎は眼鏡を光らせて笑いかえした。乳首にあて、思い切り吸い取る。
「ん……ああん…」
「おい、起きるんじゃねぇか?」
「いまさらなにいってんだよ。美津里の尻かせ」
「いい趣味してんねぇ」
いいながら持ち上げた美津里の尻に、吸い上げた母乳を抽入した。
「おい、母乳浣腸って、お前趣味すごすぎだよ」
「これでやったらどんだけかと思ってさ」
注射器を抜くと同時に京太郎は美津里の後ろに突っ込んだ。母乳がぬるついて男根に
絡みつき、湿った音を立てる。締め付けがきつくぬるついて舐められているようだ。
「う、あ、……く…」
「おい京の字、俺にも貸せ」
「もう一本あるからそれでやれ」
「はいよ。はいはいいまお乳しぼりますからねー」
ぐいっと絞って膣に差し込む。注射器を抜くと同時に突っ込んだ。
「う、うあ!」
ぞくっと背筋にきて虎蔵はのけぞった。吸い込まれ吸い付かれぬめった母乳で舐めら
れているようだ。亀頭を何かが嘗め回している快楽に思わず歯を食いしばった。
「ち、くしょ……このっ!」
無理矢理動かして耐える。
「おい、動かすなぁっ!俺がいっちまうだろ!」
「耐えろよ!」
「無茶いうな!」
二人して耳元で怒鳴りあっていることを忘れていた。
「……もすこし耐えてくれないとあたしもイけないねぇ」
白い手が二つの男根を捉える。根元をきつく締め付けた。
「美津里、さん……」
「よー。グッモーニン♪はははははははははははは……はのは」
麻倉美津里は眼鏡を直して唇を吊り上げた。
「ちょいとお前さんたち、いたずらが過ぎやしないかい?」
「……ははははははははは」
「労働の報酬って……ことで♪」
「ふうん」
くぃ、と腰を捻る。
複雑微妙な襞の動きに男二人が悶絶した。いきたいのに根元を押さえられてはどう
にもならない。
「ほうら、ほら、ほら、欲しいんだろう?気張んなさいよ。男二人がかりで女一人も
イカせられないってのかい?」
「触手相手によがってる淫乱女にいわれたくねぇよ!京の字、行くぞ!」
「そらよっ……」
お互いが美津里の身体を持ち上げ落す。
「あうんっ…まだぁっ……」
「よがり声、いいじゃねぇか、美津里よ?」
乳房をもみながら虎蔵があざける。
「は、はぁん、ちくっ、畜生、ナカに何いれたんだい」
「お前の母乳」
余計なことを虎蔵が言う前に京太郎は美津里の陰核を捻りあげた。
「はうっ……!」
「これは効くかっ」
あとはもう淫楽地獄の一枚図。
耳を舐め首を吸い乳をもみ臍をいじり、男二人してもてる技術の全てを尽くして
美津里を攻め立てる。
「あ、はぁっ、はああ、ナカでぇぇっっ……お乳が一杯かき混ぜられてるぅぅぅ!」
のけぞって達した美津里はついに手を離した。
陰核、乳首の三点攻めがそこに襲いかかる。
「堪忍っイったばかりなのにぃっっ!」
「知るかっ」
「く……俺は駄目だっ、後頼むっ!」
京太郎は美津里の背中にしがみつくと強くうちこみ長々と精を放った。
「この根性なしぃぃぃっ!畜生っ、俺も駄目だっ」
「やぁぁぁぁぁぁ、腰ぃ、腰とろけるぅぅ!」
前と後ろと両方くらって美津里は身を捩じらせ幾度目かの絶頂を極める。白い肌に
汗が浮かび黒髪が張り付いた。
「う、あ、まだいけるっ……!」
京太郎のそれがまた立ち上がり美津里を苛めぬく。
「いやぁぁっ、それきつ、きついよぉっ」
逃げようとする腰を抑える。
「俺も二発目装填したわ!覚悟しとけっ」
「ぁぁぁぁぁあああああああああああ!」
後ろを抜かれれば前を突かれ、前を抜かれれば後ろが突き刺さり、美津里は快楽の底
に沈められていく。
「あっ、ああっ、あっ、あんっ、あああ、誰か、ああ……」
伸ばす白い手はむなしく宙を掴む。汗と白濁液が飛び散り、男女三人の身体にこびりつく。
幾度絶頂を迎えたか。
何度放精を極めたか。
誰一人知らず、神経細胞の一つまで絡みとる電流のような悦楽の坩堝に、ふけていく夜
とともに落ちていく。
――堕ちていく。
星の下で、金髪の少女がつぶやいた。
「遅いなぁ…」
数日後。
医者の修行だ、というので呼ばれた美津里の部屋の戸を開けると、珍しいものがあった。
腰を抜かした長谷川虎蔵。
体を布団に横たえた麻倉美津里。
女の腹の膨らみはどうみても臨月間近だ。
「あれあれあれあれあれあれあれあれ!」
指差して虎蔵がじりじり逃げようとしてるが腰抜かしてるのであんまり動いてない。
その肩に、木下京太郎はぽん、と手を置いた。
「おめでとうお父さん。いいか、出産というのは生命の神秘であり、
これから親となるべき人間が立ち会うのは非常によろしいことだ。
でもって、親としての自覚を養い……」
「やめて許して勘弁して!ていうか数日前だろ!」
「おめでとうございます麻倉虎蔵さん。
まあ、出産直後は子宮が綺麗になってるからできやすいんだけどな」
排卵はしてないはずだがそれはもういっても仕方ない。性交で排卵するのは猫でもやる。
麻倉美津里にできないはずがない。
「なんでそれをいわないんだよ!」
「はっはっは」
京太郎は笑った。「忘れてたに決まってたじゃないか」
「てめぇの種ってこともあるだろうが!こいつのことだし!」
ののしりあう間にも、出産は近づいていく。
「う、ぁ、ぁぁん、生まれるぅぅぅぅぅ!」
「俺は知らんぞ京の字!」
「どこ行くんだよ!」
「どっかここじゃねぇとこ!」
罵声と怒声と喘ぎ声とが交じり合い、幻燈館は、やっぱりいつものままだった。
半月後。
美津里の元を訪れた椎名は、綺麗な玉に気づいた。
透明な水晶のようなのだが、中で雲のような模様がひっきりなしに蠢き、時折稲妻
のような閃光が走る。
「綺麗ですねー。なんですかこれ」
麻倉美津里は袖で口元を隠して目だけで笑った。
「たいふうの、たまご」
ふ、ふ、ふ。