きっかけは意外と似たり寄ったりなことの場合が多い。吉永和己はそう考える。
例えばそれが新たな錬金術師の襲来だったり、例えばそれは怪盗百色のいたずらだったり。
例えばそれが和己が3-Aの教室に入るだとか。
「んっ!・・・センパイもっと腰動かしてくらさいよぉ」
目の前で馬の尻尾――もといポニーテールを激しく揺らしながら片桐桃が言う。
「そんなゆっくりじゃ気持ち・・・じゃなかった参考になりませんよっ!」
「そんなこと言ったってぇ・・・これ以上激しくしたら出ちゃうよ・・・?」
和己の腰はさっきから申し訳程度のピストンしか行っていなかった。代わりに桃の下半身はカウボーイを乗せた雄牛よろしくな激しい前後運動を繰り返している。
その柔和な顔つきとは裏腹でパワフルな動きが和己の脳に休む間を与えず快楽を送り続ける。
一時間程前、いつかのように忘れ物を思い出した和己が3-Aの教室の扉を開けると中にはまだ二人の人間が残っていた。
「だから!たとえ参考だろうが何だろうがお兄ちゃんにこの体を売り渡す気なんかないって何度も言ってるでしょ!」
「確かに兄妹間での近親相姦が法律的にも精神的にも禁止なのは解っている!だが他にこんなことの協力者を募れると思っているのか!妹よ!」
「自宅のベッドの下にあるAVでも参考資料にしてればいいじゃないの! このお兄ちゃんの糞ったれ!」
「たれてなにが悪いっ!?」
「二人ともなにやってるの・・・?」
教室では林吾と桃が毎度おなじみの口論をしていた。兄妹喧嘩は家庭の華だが何やらおかしな単語が二三混じっていたように聞こえる。
いつも教室兼部室のであるこの教室で演劇部は会議をしている。和己も時々この片桐兄妹に引っぱられて参加したりもするが、今回もまた活動日でもないのに次回の演目についての議論をしていたのだろうか。
「おう・・・和己・・・いいところに来た・・・」
兄の林吾が激しい意見の飛ばし合いでO2を切らしたのか、息を荒くしながら話しかけてきた。
「次回の演目をな・・・」
「次回の演目を、今までと違って若干アダルトな内容にしようって話になって・・・それでお兄ちゃんがよりリアルな演技ができるように実際にヤッてみよう言い出して・・・」
息絶え絶えな林吾を制して桃が代わりに説明をしだした。その内容に思わず和己は机を巻き込んでずっこけてしまった。
「な・・・!?林吾なに変態じみた発案してるのっ!」
「いやそれには賛成なんですけど・・・そうすると相手が・・・その・・・お兄ちゃん以外いなくて・・・」
役者のなかにはその役になりきる為に体重を極限まで減らす役者がいたりするというのは聞いたことがある。が、役になりきる為にそういうことをするのはどうなんだろうか、と和己は考えながら頬を赤くした。
「そこで今、俺がいい名案思いついた」
復活したのか後ろから林吾が和己の肩をつかんでいる。勘のいい和己は嫌な予感を感じつつも、林吾に向けてNGワードを言ってしまう。
「えっと、何、かな・・・?」
「和己、いよいよお前と桃はその関係の一線を大きく超えるんだっ!!」
一瞬の静寂。
「ええぇぇぇえっ!?」
それを打ち破ろうと硬直の解除された和己が声を上げるよりも、早く桃が大声を出した。
「むむむ無理ですって!セン、プ。センパイとはそそそんな関係じゃありませんしっ!第一こんないつ人が来るか解ったもんじゃない教室でぇっ!」
耳まで真っ赤にした桃が両腕を振り回しながら裏返った声で抗議しまくる。あまりの動揺からか、呂律は回ってない上に最後の方は何故か否定していながら若干乗り気になっている。
和己は当然反対で、こちらも桃に負けずに顔を真っ赤にしながら桃の暴走を止めようと羽交い締めをかけている。
「桃ちゃん、落ち着いてって!」
「セセセム、センパイ!?そんな積極的にならんで下さいっ!!」
おでこになにやら強烈な一撃を喰らった。
それが桃の後頭部だと解ったのは体育用具室で意識を取り戻してからであった。
そして現在に至る、目が覚めた時目の前の桃が一糸纏わぬ姿でいたことには驚いたが、そんなことはつゆ知らず、気絶前は反対意見を口にしていた桃は何故か積極的に和己のズボンを脱がしにきていた。
林吾の姿も見当たらない。
「お兄ちゃんなんかっ、気にしてないで腰を、動かせぇっ!!」
「うわぁっく!?」
桃の中に入っている和己のが今まで以上にキツく締め上げられる。まるで和己の全てを知り尽くしているかのように桃の膣は和己の感じる局部局部を絞め、攻め続ける。
「桃ちゃ・・・!絞め、ないでぇ・・・!んっ!」
限界に達してしまった。和己の尿道が、中からこみ上げてくる熱い何かを感じとっていた。それは勢い良く、和己自身を介して桃の中に注ぎ込まれた。
「あうぅ・・・!熱ぅ・・・」
三秒、四秒・・・五秒程たったところで桃の秘所からは白濁とした液体が垂れ流れ始めた。
それは時折気泡を作り、卑猥な音とともに破裂していった。
そんな様子を見ながら、和己は惚けていた。
自慰くらいなら経験がある、夜中こっそり起きてはベッドの中で何度も、何度も果てていた。ガーゴイルが来てからはそれを気づかれると恥ずかしいのでしなくなっていたが。
しかしそんなこととこの快感は比べ物にならなかった。すごく気持ちいい、もっと感じたい。ガーゴイルが来て以来封じられていた快楽の欲求が和己の中に再び芽生えた。
「なるほど、エッチってこんな感じだったんですね・・・これを参考に次回の演出は・・・あんっ!せ、センパイ?」
桃が何か言っていたが、耳からの訴えを脳は聞き入ろうとしない。
和己の頭は桃から得られる快感のみにしか目が行かなくなっていた。
「桃ちゃん・・・もう一回、いくね?」
「は、はぁ・・・解りました」
桃は抵抗する気はない様だ、きっともっと数を重ねた方が解ることがあると考えたんだろう。どうぞ、と言わんばかりに先ほどまで和己を納めていた秘裂を広げ、和己に示してる。
秘所からは先ほどの精液が溢れ、既に太ももまで伝わっている。しかし秘所からはそれ以外の液体もつたっている。
「桃ちゃん・・・あそこ濡れてるね」
「えへへ・・・センパイの気持ちよかったですから♪」
「うん・・・入れるよ」
言い終わるよりも早く、肉と肉がぶつかり合った。さっきは殆ど桃が動いていた、そのおかげで和己の腰は二回目とは思えない程の激しい勢いで動き出す。
「ひぁぁぁぁぁっ!?せ、センパイ激しい・・・っ!」
「やっぱり、もっと激しい方が気持ちいいでしょ?」
「確かにっ・・・気持ちぃ・・・ぃいです・・・けどぉ・・・ひゃんっ!!」
和己はにこやかに笑いながらさらに強く桃の膣を突いた。それに呼応して桃がさらに高い声で鳴く。
突く。
鳴く。
さらに突く。
さらに鳴く。
誰もいなくなった体育館の片隅から、少女の嬌声が響き渡った。
外に声が漏れてるかもしれない、そんなことを心配する気配りなどは二人とも頭になかった。ただひたすらに。
快感を。
快感を。
既に二人とも立つこともできなくなっていた。
仰向けに床に倒れた和己の上に乗っかった桃も自重に耐えることもできなくなり、和己の胸に倒れてしまっている。
それでも二人の腰だけが動き続ける。快楽に浸り、貪り、互いに口づけ、口内を愛撫し合う。
当初の観念はもはや頭の片隅にも残ってはいない。
「センパイ、もう無理れすっ・・・我慢出来ませんぅ・・・!」
「うんっ!僕も、もうダメっ・・・また出すね・・・!」
和己の動きがさらに速くなる。膣の中を掘り返し、最奥の、子宮口にぶつけ続け。
果てた。
「っ!ああああああああぁぁぁぁぁぁあぁ・・・!」
精液による子宮への直接攻撃によって桃は快感に満たされたかのように動き、弓反りになった。
たとえ桃が達しようとも和己の射精を続けられる、彼女の子宮を満たし、膣内を満たし、音をたてて外へと溢れ出す。
溢れたそれは和己の尻をつたい、用具室の床の一部が白へと染めていった。
「センパイ・・・もっと、もっとぉ・・・」
快楽を求めるひとときはまだ続く。
『和己、今日は帰りが遅かったな。あまり遅くなるとママ殿が心配する』
「うん・・・ガーくんゴメン・・・」
『して和己、汝は何故そんなにやつれている?』
「演劇部の練習・・・かなぁ・・・」
あの後ひたすらに桃とは交わり続けたが、和己は女性の底力を思い知らされることになった。
「センパイ!もっとしましょうよぉ」
「ごめ・・・桃ちゃん・・・僕もー無理・・・」
「何言ってるんですかセンパイ!若い男子がそんなことではダメです!ファイオーっ!」
この会話を七回程繰り返すまで桃はひたすらに果てては和己を求め、果てては求めを繰り返した。その結果、帰りを桃の送ってもらわないと帰れないまでになってしまったり。
『桃よ、和己にあまり無理をさせるのではないぞ』
「あはは、すいませんガーゴイルさん」
片方の手で和己を支えながらもう片方の手で頭を掻きながら桃は笑っている。あれだけしておいてここまで余裕があるのかと溜め息をつきながらも和己は感心してしまう。
「じゃあセンパイ!また明日ぁ〜!」
「うん、バイバイ〜・・・」
若干内股気味でゆっくり歩いていく桃の背を見ながら、和己はまた明日という言葉がどちらの意味で使われたのかで頭を悩ませてた。
ーおしまい