「ちょっと過激なんじゃねーか?」
「そんなコトないよー」
文化祭でマジックショーを行う梨々がクラスメイトの前でステージ衣装を披露しているのだが
白のシルクハットと燕尾服はいいとして
燕尾服の下がプロポーションも露わな白のボディスーツ一枚というのはいかがなものか
「どうせやるならどこに出しても恥ずかしくない舞台にしたいしラスベガスのショーのビデオ
なんか取り寄せて研究したんだよ」
といいつつ軽快にステップを踏む梨々
ステッキを構えてくるりと回ると燕尾服の裾がふわりと浮き上がり
深いV字カットのボディスーツに包まれた桃のようなヒップが露わになる
「おおうっ!」
一斉に股間を抑えて前屈みになる男性ギャラリー
「てめーらー!!」
すかさずドロップキックを放とうとした双葉は背後に出現した異様な気配にさっと振り返る
「ガ、ガマボイラー!?!」
「誰がデストロンの改造人間ですか、て言うかなぜ知っているんですその若さで」
「あ、津亞先生」
鈍い光を放つ両生類の目
角質化したイボに覆われた茶褐色の肌
全高147cm全幅147cmという冗談のような体型
この怪人物こそ双葉達の通う御色町立中学校2年A組担当教諭津亞斗愚阿その人である
梨々の全身に舐めるような視線を這わせたツァト・・もとい津亞教諭は右手で握り拳を作ると
親指をビッと立てた
「ぐっじょぶ」
「文化祭の準備も結構ですが暗くなる前に下校するように、最後の人は戸締りを
確認してから鍵を宿直室に届けること」
それだけ言うと津亞教諭は前を向いたまま滑るように後退し(足は全く動いていない
のに!)教室の扉がぴしゃりと閉まった(誰も手を触れていないのに!)
「・・・アタシそろそろ帰るわ」
「私はもう少し練習するから・・・」
小学校時代の担任よりはとっつきやすいとはいえどこか根源的な恐怖を覚えずには
いられない二人だった
やがて大道具係の男子も下校し一人残った梨々が鏡を見ながら立ち位置のチェックを
していると
「随分とエロい格好してるじゃないか、ええ『リカちゃん』」
梨々は小さく溜息をついた
梨々を「リカちゃん人形」呼ばわりする人間は彼女が知る限り三人しかいない
「何の用かしら?」
うんざりした表情で振り返った梨々の視線の先にいたのは御色町立中学校の誇る
(?)不良学生三人組
高田、桜庭、ヒクソン(日系ブラジル人)だった