「しばらく我慢してくだサーイ。 ガーゴイールさん!」  
今度は何故かヒッシャムがガーゴイルを風呂に入れていた。  
ガーゴイルがやめろと言うのは舐めて洗うことでも全身を使って洗う事でもなく、  
得体の知れない苔のような物をガーゴイルに振りかける事だった。しかも、独りでにガーゴイルの表面に繁殖していく。  
「やめるのだヒッシャム! …そもそも、それは何だ?」  
「これデースか? ワタシが発明した、石像クリーニングオシリスなのデース!」  
「オシリス? 我にまとわりついているこれはオシリスなのか?」  
「この前温泉に行ったら、小さな魚が体を掃除してくれて、とってもリフレッシュしたのデース。   
 そこで、ガーゴイールさんにも経験して貰おうと、こんなオシリスを創ってみたのデース!」  
「それはフィッシュセラピーと言うやつか? だが、我はもとより皮膚の触感がない。 だからくすぐったくもなければ気持ちよくもないぞ。」  
「そうデースか?まあ気にしないでクダサーイ!私が好きでやってるだけデース」  
「む、むう・・・」  
吉永家の夜は更ける。  
風呂場で苔に覆われつつある石像を前に、満足そうに佇む男がいる。  
 
 
 
数日後  
「やめろ、梨々!」  
 

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