非常灯に切り替わったブリッジの中
モニターの中でじりじりと距離を詰めてくるサイバトロンの追跡艇を見据えたメガトロンは断を下した
「ナビ子ちゃん、主砲発射準備だ」
「ま、メガちゃんだいたーん(はあと)」
「正気っスか?ハイパードライブ中に主砲ぶっ放したら座標軸がワヤになって宇宙の迷子っスよ!!」
「何処に飛び出そうが宇宙は宇宙だ、あの馬糞に集る蝿のようにしつこいサイバトロン共に目的地を悟られる訳にはいかん」
「主砲発射準備かんりょー!もうすぐにでもイッちゃいそうよ〜ん」
「よ〜しイッちゃえー!!」
「ダー!これでも喰らえサイバトロン」
この時計った様に同じタイミングでサイバトロン艇もムチャゴリラの命令で主砲を発射
正面衝突した膨大なエネルギーはワープ空間を捻じ曲げトランスフォーマー達はてんでバラバラに通常空間に放り出された
そして舞台は御色町に移る
AM2:47 東宮邸
「違うんだお爺様・・・花瓶割ったのはボクじゃない・・・・・」
何やらトラウマのありそうな夢にうなされる天祢の眠りを覚ましたのはメイド長の山下だった
「御色町全域で複数の空間湾曲が観測されました、現在データ解析中ですが自然現象ではないと思われます」
報告を聞いた天祢の顔つきが老練な錬金術師のそれに変わる
「03:00までに全員を招集してくれ、僕もすぐに行く」
狂乱の一日の始まりだった
「何よアンタ?」
亀の甲より年の功
いきなり現れた紫色のT−REXを目の当たりにしても高原イヨは冷静だった
だが今回ばかりは相手の方が役者が上だった
「お嬢ちゃん、人に物を尋ねる時はまず自分から名乗るものだと教わらなかったのかね?まあいい、知らざあ言って聞かせやしょう。
デストロンのリーダーにして全宇宙の支配者、破壊大帝メガトロンとは!あ、おるぅえのことぅおどゎあ〜!!」
何故か歌舞伎役者の様な見得を切りロボットモードに変形する
「ーっ!」
コレはやばいと感じたイヨ、咄嗟に「嫌な蟲」を仕込んだトランクを開放しようとするが
「遅い!」
メガトロンの放った光線がイヨを襲う
「な・・・!?!」
いかなる技術によるものかイヨの着衣は塵一つ残さず消滅し、黒い下着に包まれたモデル並みの肢体が露わになる
「カッカッカッ!これぞ某魔法先生漫画で流行りの『脱げビーム』!!挿絵が無いことをお詫びします」
得意満面なメガトロン
「ど畜生ぉぉぉぉぉぉ!!」
涙を流しながら走り去るイヨ
「何人たりとも俺様の覇道を阻むことは出来ん!俺様は天の道を逝き全てを司る男なのだ!!」
微妙に字を間違えていることなど気にも留めず夜の町に高笑いを響かせるメガトロンだった
AM3:36 小野寺邸
「嫌ぁぁぁっ、中尉!ちゅういぃー!!」
妖しく光る糸に四肢を絡め取られ床に磔にされた全裸の少女が泣き叫ぶ
忠実なラブラドル・レトリーバーを血塗れの肉塊に変えた異形の侵入者がゆっくりと振り返る
「お待たせ、これからチミにはアタチの操り人形になってもらうっス。なに痛いのは最初だけっスよ」
いつの間にか極太のペンライトに蜘蛛の脚を生やしたような奇怪な機械が床を這い、美森の股間を目指して近ずいてくる
「ヒッ!」
それはタランス愛用の蟲型汎用作業メカ、その名もスパイダーポッド
スパイダーポッドは必死に脚を閉じようとする美森の努力を嘲笑うかのように淡々と侵入を開始する
「いやあ、痛い!いたいぃぃぃ!!お願い、やめてぇぇぇ!」
大人への通過儀礼を迎えるには早過ぎる幼い秘裂が血の涙を流す
「ひぎい!・・・かはっ、・・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・・」
ほどなく全身を少女の中に押し込んだスパイダーポッドはナノマシンを放出し始める
それは物凄い勢いで周囲の体組織を破壊し、再構成していった
(ア ア ワ タ シ ガ ナ カ カ ラ コ ワ サ レ テ イ ク)
もはや声をあげることも止め、光を失った瞳で天井を眺めながらガクガクと痙攣する少女を満足気に眺めるタランス
「○学生異物挿入強制肉体改造!いやー燃えるっスねえ〜」
「成程、容易ならぬ事態のようだね」
中央情報室に篭った天祢の元にメイド達によって次々と報告が送られてくる
曰く「でかい蜂とプテラノドンが編隊飛行していた」
曰く「眉毛の生えたサソリがコンビニの前でやさぐれていた」
そして止めにブラとショーツを身に着けただけの高原イヨが怒り狂ってでやって来た
「とにかく今回の相手は一筋縄ではいかないわ」
花瓶とテーブルとグランドピアノを破壊してようやく落ち着いたイヨが自らの体験を語る
「錬金術とも違う未知の技術か・・・これは助っ人を頼んだほうがいいかな?」
電話を取り上げた天祢にイヨが尋ねる
「その助っ人って頼りになるの?」
振り返った天祢の顔はこれ以上ないくらい真剣だった
「腕は保障する、というかある意味核兵器より危険な人物だよ」
御色町から××Kmほど離れたとある町
一見ごく普通の建売住宅の地下深くに彼女の研究室はあった
「はい・・はい・・・分かりました、すぐ・・そちらに・・・向かいます」
女性は電話を置くとエレベーターを起動させ自らが座る椅子ごと一階のキッチンに出現する
そこには朝食の準備にとりかかろうとする同僚の女教師がいた
「むつきさん・・申し訳ありませんが、しばらく・・学校を・・・休むことに・・なりそうです」
「どうかしたんですかきさらぎさん?」
「世界の・・危機です・・・」