クリスマスが過ぎ  
正月が過ぎ  
町も人も落ち着きを取り戻した一月中旬  
藤田吾郎は相変わらず御色総合病院に入院している  
一つ変化があるとすればクリスマスの騒動以来オシリスが病室に出入りするようになったことか  
天気の良い日などは屋上で歌を唄って聞かせたりもしている  
そして今日も吾郎を庭に連れ出して世間話などをしているのだが  
どうもノリが悪い  
というかいかにも心配事がありますという顔をしている  
いつもつまらなそうな顔をしているせいで表面的な差異は微々たるものだが  
オシリスもその気になれば結構細やかな気配りが出来る  
「何を隠しておる?」  
身を乗り出して詰問するオシリス  
「べ、別にナニも・・・」  
真っ赤な顔をして口にする言葉もしどろもどろな吾郎  
目の前にオシリスの見事なバストがのしかかるように突きつけられているのだ  
ウブな小学生には若干刺激が強い  
目を逸らそうとしてもすぐにオシリス(の胸)が視界の正面に回り込んで来る  
精神的な拷問に耐えかねた吾郎が腎臓の移植手術を受けることを自白したのは十二分後のことだった  
 
 
オシリスの住処は御色第一小学校の裏山にあるプレハブ小屋である  
そこではオシリスの製作者であるヒッシャムが遅い昼食をとっていた  
「うう、二週間振りのお肉デース」  
駅前のコンビニで買った三本230円の焼き鳥(塩味)を前にして感涙にむせぶヒッシャム  
バイトで稼いだ金は全て研究につぎ込んでしまうためヒッシャムの食生活は極めて貧しい  
彼の究極の目標はオシリスをその名の由来となったエジプト神話の豊穣神のごとく  
あるいは「2010年」のモノリスのごとく惑星規模の環境改造能力を持つ超植物生命体に育てることである  
だが現時点ではオシリスの体内で生成される万能薬はオシリス自身にしか効かない  
農薬その他の化学物質を含んだ作物に投与したらどのような反応が起きるか分かったものではないのだ  
一度輸入もののトマトで試したところタコの足とサソリの尻尾、コウモリの翼を生やした奇怪な生物が誕生したことがあった  
オシリスが理想の姿に進化するまであとどのくらいかかるのか  
「オウ、お腹か減っていては思考もネガティブになってしまいまース。冷めないうちに頂くでース」  
ヒッシャムが焼き鳥に手を伸ばしたその時  
床から生えたオシリスがちゃぶ台をひっくり返した  
「ノォォォォォォォ!貴重な動物性タンパク質があああああ!!」  
埃まみれになった焼き鳥(塩味)の姿に血涙を流して叫ぶヒッシャムをオシリスの触手が締め上げる  
「教授、相談がある」  
 
 
「吾郎…」  
少年の名を呼び妖艶な笑みを浮かべるオシリス  
「あ、あ…」  
吾郎は目の前に立つオシリスの一糸纏わぬ姿に声も出ない  
「フフ…」  
オシリスの手が少年の腕を掴み自らの乳房へと導く  
「オ、オシリス…」  
想像も出来ない展開にパニック障害を起こしている吾郎  
“むにっ”  
少年の両の手のひらがオシリスの豊満な双球に押し付けられる  
その柔らかさ、その温もり  
あまりの心地良さに手に余る大きさの果実を握る指に思わずギュッと力を込めてしまう  
「あ、は…」  
グラマラスな肢体を弓なりに反らし切なげな声をあげるオシリス  
「うわああああ!!」  
湧き上がる衝動に突き動かされるまま吾郎はオシリスを押し倒した  
「あああああって、あれ?」  
目が覚めればそこはいつもの病室だった  
「夢か、それにしてもオシリスとあんなこと…」  
「妾がどうかしたのか?」  
「どわっ!」  
いつの間にかベッドの脇にオシリスがいた  
何故か白衣を着て  
 
月明かりを浴びて佇むオシリスの姿は息を呑むほど美しく  
また、その姿は普段とは大きく異なっていた  
白衣の下はいつもの生体装甲ではなく薄手のブラウス  
豊かな膨らみの頂上の小さな突起が布地越しにくっきりと浮かび上がっている  
見事にくびれた腰には両サイドにスリットの入ったタイトなミニスカートが巻きつき  
スカートのすそからは網タイツに包まれた美脚がすらりと伸びている  
「その姿は…」  
呆然とする吾郎に得意げな顔をするオシリス  
「なに、その気になればこのとおり完全な人型をとることも出来るのだがの  
これをやると体に負担がかかるので普段は本来の姿でいるのじゃ」  
説明しながらベッドの端に腰掛けたオシリスは吾郎の前でこれ見よがしに長い脚を  
組みかえる  
思わずスカートの奥に視線を向けそうになり焦って顔をそらす吾郎  
そんな少年の姿を見てオシリスは悪戯っぽく笑う  
「今日は特別じゃ、教授が『男の子を元気づけるならこうするのが一番』と言うのでな  
と、言いつつ吾郎に擦り寄っていくオシリス  
柔らかな肉球が吾郎の二の腕に“むにっ”と押し付けられる  
コレハユメダコレハユメダコレハユメダコレハユメダコレハユメダコレハユメダ  
吾郎の頭の中では同じ台詞が壊れたCDプレーヤーのようにリフレインしていた  
 
「大丈夫、お姉さんにまかせなさい(はあと)」  
どこぞの二次元ドリーム文庫から引用してきたような科白を棒読みしながらオシリスが顔  
を寄せてくる  
ほのかに香る甘い香りと金色に輝く瞳に幻惑され夢見心地の吾郎はオシリスの両手に頭を  
抱えられても身動ぎもしない  
オシリスの唇がゆっくりと吾郎のそれに重ねられようとしたその時  
「誰じゃ!?!」  
吾郎から身を離し厳しい表情で身構えるオシリスの視線の先に闇から湧いたように音も無  
く佇む男達がいた  
「騒がないで貰おう」  
懐から拳銃を抜く男達を見たオシリスの背中から白衣を突き破って飛び出した触手が毒蛇  
のように鎌首を擡げる  
 
はくいのおねいさんはかいきしょくしゅおんなになった!!  
 
 
「バイオメジャーというと『ゴジラVSビオランテ』に出てきたアレですカ?」  
東宮天祢から電話がかかってきたのはスーパーのタイムサービスで120円で買った国産  
豚の心臓をホットプレートで焼いているときだった  
「やはりオシリス嬢の元ネタはあの映画…っと、話を元に戻すとそのバイオメジャーのエ  
ージェントがこの御色町に来ているようなんだ」  
企業家と錬金術師の二足の草鞋を履いている天祢のもとには裏社会の情報がいろいろと入  
ってくる  
「連中は遺伝子操作食品の分野で覇権を握るのが目的だ、その非合法活動部隊がやって来  
たということは目的はおそらく…」  
「オシリスがピンチでース!!」  
勢いよくテーブルに両手をついて立ち上がろうとしたヒッシャム  
だが手のひらを下ろしたのはホットプレートの上だった  
「AGYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」  
 

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