『本当に大丈夫なのであろうな?』
毒々しい蛍光オレンジの液体を満たしたコップを片手に険しい表情を見せるオシリス
私を信用しなさーイと怪しいステップを踏みながら怪しいテンションで怪しい日本語を喋
る怪しいエジプト人
敢えて言おう
怪しさ大爆発だ
いや錬金術士としての腕は確かだろう
なにしろ他ならぬオシリスの生みの親だ
オシリスの製作に成功したこと自体が何かの間違いという可能性も無いことも無いが
とにかく自分の能力を飛躍的に高めるというヒッシャム製作の怪しい薬を覚悟を決めてグ
ッと飲み干したオシリスは−
『がッ…アがぁあァア!?!』
全身が内側から焼かれるような激痛に襲われた
「ノオォォォォォォォォツ!!」
苦悶の声をあげてのた打ち回るオシリスの触手に跳ね飛ばされ天井を突き破ったヒッシャ
ムの身体が満月に向って飛翔する
続いて壁を破って飛び出したオシリスは狂気に取り付かれた踊り子のように全身を激しく
くねらせながら夜の森に姿を消した
パリ…
パリパリ……
夢遊病者のような状態で当てもなく森の中を彷徨うオシリスの身体から枯葉が踏み砕かれ
るような音を立てて土色の装甲ドレスが剥がれ落ちていく
じゅるじゅると音を立てて地面を這う触手の群れは互いに絡まり一体化し次第に形を整え
ていく
森の外れの崖の上に姿を現したオシリスを月明かりが照らし出す
その姿は全身緑色であることを覗けばヴィーナスの誕生といってもいい程の神秘的な美し
さの裸体を露わにした完璧な人間のそれだった
虚ろな視線を彷徨わせながらふらふらと歩くオシリスは当然の如く崖から落下し都合よく
下を流れていた急流に飲まれて何処かへと運ばれていった
約7時間後
早朝の河川敷で黙々とトレーニングを続ける少年が一人
少年の名は石田歳三
打倒吉永双葉を心に誓い自宅から河川敷までランニングしてきた歳三は
入念にストレッチを行って体をほぐした後
腕立て伏せ 腹筋 スクワットを3セットこなし
現在は「タコス大久保の超実戦メキシカン柔術」という怪しい格闘技入門書で憶えた
怪しい体捌きを練習しながら双葉とのバトルを脳内シュミレートしていた
歳三のイメージの世界で得意のドロップキックを仕掛ける双葉
歳三は摺り足で体をかわすと同時に腕を伸ばし
空中を通過する双葉の体を捕えて背中から投げ落とす
受身も取れずに床に叩きつけられ動きの止まった双葉に馬乗りになる歳三
歳三の両手が双葉のTシャツの襟にかかり力任せにシャツを引き裂く
更にその指は露わになった双葉の慎ましやかな膨らみを−
「うわ〜!うわ〜!うわ〜!」
格闘シュミレーションからいつしかピンクな妄想に
アクセル踏みっ放しになる前に我に帰り頭を抱えて叫ぶ歳三
「違う!断じて違う!オレは双葉のコトなんかコレっぽっちも−」
ムキになって否定する
誰も聞いてはいないのに
水でも被って頭を冷やそうと川原に歩を進めた歳三は
岸辺に生える葦の茂みの中に浮き沈みする何かに気付いた
「オシリス…だよな……?」
グラマラスな肢体を脱力させ流れに身を任せたまま眠り続ける全身緑色の美女
豊満な胸と鋭く絞り込まれたウエスト
豊かに張り出したヒップを覆う装甲は今は無く
水面下に広がった髪を揺らめかせ無防備に漂う裸身は寒気を憶えるほど官能的だった
ゴキュウリ…
音を立てて生ツバを飲み込む歳三
すでにその脳裏から双葉のことは吹っ飛んでいる
歳三はオシリスの体を川から引き上げると
勝手知ったる貸しボート屋のガレージに連れ込む
ズルズルと川原を引き摺られていく間もオシリスは全く反応しない
ガレージの扉を閉め
内側から閂をかけた歳三は窓から差し込む埃っぽい空気の中で改めてオシリスを観察する
するとやはり目が行くのはたっぷりとしたボリュウムを持つ二つの膨らみ
同級生の女子は勿論
歳三の知る限りこれに匹敵する胸は御色町には存在しないという逸品が手の届く所にある
歳三の呼吸が速くなり額に脂汗が浮かんだ