夕日も既に落ち、夜の帳が降りたカナン諸島。
港町リモージュ。岸壁に張り出すように立てられたラーバ老人宅。
灯りはあかあかと照る。海風で時折危なげに揺れるランプの下で、3人の男が楽しげに漫談していた。
家主ラーバは勿論のこと、一人は壁砕きのドギ。
そしていま一人は、灯りを照り返す赤毛がまるで燃え上がるような、赤毛のアドルである。
「イントマータの偶像!」
「ヤーパンの八頭蛇!」
「イタカの雪巨人!」
「暗黒都市ルリエ!」
「アルタゴの五大龍!」
その一般人には何のことかもわからない単語の羅列。
それはアドル、ドギ、ラーバ各々の知識にある、世界各地に散らばる驚異の数々の名である。
話の起こりは、ラーバ老に、エステリアを離れてからの数年間の冒険の数々を語るところから始まった。
セルセタの樹海。フェルガナの火山島。サンドリアの砂漠。
アドルは出会った人々の事を語り、ドギは何枚壁を破ったかを自慢する。
ラーバはそれを事細かにメモを取り、時折問いを返してはさらに補足を書き足してゆく。
「それで、次はどの驚異に挑むつもりかな?」
ラーバのその言葉。かくして、各人の伝え聞いた伝承の数々が羅列されるに至ったのである。
実際の所、旅立ちは近い。驚異が明らかになり、脅威が去ったならば、迷わずに新たな驚異へと旅立つ。
それが、赤毛のアドルのやり方である。
アドルは、地図を眺めた。現在位置カナン諸島から向かうならば、やはり西大陸のエルディーン文明だろうか。
エルンストが何かしら思わせぶりなことを口走っていたことだし。
アドルは、とりあえず大陸に向かうべきだろうか、と提案した。
「いいんじゃないか? 後は開発者と脚本の意向次第だが」
アドルは、楽屋落ちを窘めた。
「あの、アドルさん?」
控えめなノックの後で、そっと戸口から覗き込む顔があった。
特徴的な長い耳。銀色の長い髪。隙間から、ぱたぱたと振られる尻尾が見える。
「おやおや、オルハ。どうしたのかな?」
「その……アドルさんにちょっとお話があって」
言ってそっぽを向くオルハ。頬がやや赤く染まっているような気がする。
ははぁ……得心なった様子の息を吐き出すラーバ&ドギ。
一人オルハに会釈を返すアドルを押しだし、何やら二人で話し込みはじめる。
「そういえば、ジェバは今はどうしておるのかな」
「なんだい、実は婆さんに惚れてたなんて今更いうんじゃないだろうな」
「いや、そこはそれ、男女の機微という奴は複雑でな」
「つーわけで、アドル。ちょっと込み入った話になるからお前はオルハと外に出てこい」
有無を言わさずアドルを蹴り出す。タタラを踏んで飛び出すアドルを、オルハが小さく悲鳴を上げつつ受け止めた。
「きゃ、ちょっと、ドギさん!?」
「そんじゃ、朝まで帰ってくるなよ!」
アドルの抗議を耳にもとめず、妙に下品な笑みを満面に浮かべながら、ドギはばたんと扉を閉めた。
アドルは憤慨し、悪態をドアに向けて吐き捨てた。
「え、ええと、アドルさん。良ければ、一緒に歩きませんか?」
オルハの提案を、アドルに断る理由はなかった。
リモージュ近隣、岸壁が切り立ったカナン諸島では割合珍しい砂浜がある。
クアテラ島の月の渚に比べればお粗末な浜辺だが、リモージュの子供達が水遊びをするには十分だ。
だが、今は先日のロムン艦隊船舶と、崩壊したナピシュテムの破片などが打ち上げられ、
美しかった浜辺は多少汚れている。
運良く命のあったロムン兵士達が毎日浜辺の石礫などを取り除いているため、目立つ塵はなくなっているが、
それでも素足で歩けば、多少の傷は免れまい。
海が、元のエメラルド色を取り戻すにも、多少の時間が必要だろう。
ナピシュテムの筺の力を考えれば、これだけの被害で済んだことはむしろ僥倖とも言える。
「見てください、アドルさん。水平線が……まっすぐに見えるんですよ。いつも、渦が巻いて、水平線は歪んでいたのに」
オルハが、彼方を指さしながら言う。明るい二つの月が大地を照らし、海は穏やかな光を返している。
「大渦が無くなって……これから、カナンは外界と触れあって行かなくてはならなくなるのでしょうね」
アドルは、穏やかに頷く。カナン諸島の位置を考えれば、西大陸とエレシア大陸の中継地点としては格好だ。
加えて、リモージュの人々には災厄に負けないしたたかさがある。遠からず、リモージュは今の数倍の大発展を遂げるだろう。
だが、その時。閉鎖的な部族だったレダ族はどうなっていくのだろう。
カナンは狭い島だ。レダ族の集落が、拡大するリモージュの影響を受けないとは思えない。
何らかの形で、レダ族も変わっていくことになるのだろう。それは、大渦によって止まっていた時間が流れはじめたとも言える。
アドルに背を向け、海を見つめたまま、オルハが呟く。
「ナピシュテムの筺……レダと巫女が守るべき宿命も、一緒になくなってしまったんですよ。
私たち、これからどうしたらいいんでしょう?」
迷っている。オルハは迷っている。当然だ。
今まで見えていた道がすっぱりと閉ざされ、新しい道を探せと言われても、普通の人間ならば悩む。
アドルは慰めの言葉をかけようとするが、それを押しとどめるようにオルハが振り返った。
「アドルさんのせいなんですよ? どうしてくれますか?」
そういうオルハの表情はしかし責めるような風ではなく、どこか悪戯をしかけてやろうという子供のそれに似ていた。
「私、本当はさっき、アドルさんにお願いがあって来たんです」
立ちつくすアドル。その手をオルハがそっと取る。
「伯父が……族長が、これからはレダ族もエレシア人と交わって行かなければならない。
その証として、お前が率先してエレシア人と交わってはどうか……って。可笑しいですよね。あんなにエレシア人を嫌っていたのに」
”交わる”それは交流するという意味だろうか。それ以上の意味だろうか。
「判っています。伯父が何を言いたいのか。伯父が一番認めているエレシア人は……アドルさん、あなたですから」
真摯な瞳がアドルを射抜く。
「でも、私はお話を聞いてしまいました。アドルさんは、もう次の目的地を探しているのですね。
私は、お願いに来たのです。あなたに、この島に残ってくれないかと……残って……私と……」
願う言葉。しかし、そこに懇願の色はない。あるのはただただ悲嘆。諦観。
「だけど……あなたの心には、もう翼が生えてしまっているんですよね」
オルハの頬を伝い落ちる涙。悲しみを湛えつつも、笑みを浮かべる痛々しい顔。
アドルの心臓が跳ね上がる。
アドルは、泣いている女を無下にできるほど冷酷ではなかった。
アドルは、胸の奥に沸き上がる衝動を誤魔化せるほど高潔でもなかった。
「……あっ」
気づいたら、アドルの腕はオルハを掻き抱いていたし、
気づくまでもなく、アドルの唇は、オルハのそれと重ねられていた。
同時刻。ラーバ老人宅。
「で、ドギよ。そろそろ掃除が大変じゃから石を叩き割るのはやめてくれんか」
「ん? ああ、すまん。暇だったもんで」
ばきん! 答えながら、ドギは手刀で難なく石材を叩き潰した。
ドギの横には、粉々にうち砕かれた石材の欠片が堆く積み上げられている。
壁砕きのドギのストレス発散の犠牲になった、貴重な石材のなれの果てである。
「全く……そんなに苛立つならば気など利かせなければ良かったじゃろうに」
「ふん、俺はあいつの相棒だからな」
ごそごそと風呂敷に石材のかけらを包むドギ。ラーバが無言のままに差し出した茶を受け取り、
鬱憤晴らしを兼ねるかのように一気に飲み干す。
「……っち」
「しかし、アドルの奴め、もしかして世界中でこの調子なのかの?」
「あいつはな、天性の剣士である以上に、天性の女たらしなんだよ。本人はまったくその気がないのに、
”善意”で行動してるうちに、かってに女の方が惚れていく。セルセタではまだ鳴りを潜めてたがな」
「じゃが、普通下手に手を出すと必ず後腐れが残るものじゃろう? 儂も昔は苦労したものじゃ」
「あんたの若い頃は単なるもてない遺跡オタクだったって聞いたが」
「はて……物覚えが悪くなったかの」
「まあいい……そこがあいつのタチの悪いところだ。どういう訳かリリア以外後腐れが残ったのを見たことがねぇ」
ドギの憂鬱をたっぷりと塗り込めたため息がはき出される。
突然、ドアが力強くノックされた。開け放たれた。ひょいと飛び込む少年の姿。
「ラーバ爺さん、帰ってきたよ!」
「おお、ウルか。早かったな」
「こっちに馴染むと集落はヒマでさぁ……アドルに冒険の話を聞こうと思ったんだけど、どこ?」
「……そうか。まあちょっとこい坊主。おい、爺さん。酒を出せ酒! ウル、お前も大人の味を覚えろ!」
「わっ、ちょっと、ちょっと待てよ!」
「いいから飲め。今日は特別じゃ」
「わーっ! ラーバ爺さんまで!?」
ドギに捕らえられ、ラーバに杯を押しつけられるウル。
そしてささやかかつ自棄っぱちの宴は更けていった。
後にアドルの手記には、次の朝、すごいへべれけが3匹できあがっていたとだけ記載されている。
オルハの背中が、岸壁に押さえ付けられた。
その上で、オルハが身動きできないように覆いかぶさっているのは、
当然のことだが赤毛のアドルである。
興奮に奥底から震える吐息を吐き出しつつ、目の前のオルハの体を眺める。
民族色の濃い、森の民らしく動きを妨げないよう脇で腰で大きく開いた衣。
ほっそりと延びた手足を守るものは何もないが、アドルは彼女がこの姿で、自分が何度
コンティニューを繰り返したかもわからない修羅道を、傷ひとつなく突破してきたことを知っている。
もしかして、自分はものすごく弱いんじゃないだろうか、などという疑念はさておいて、
アドルは目の前のオルハの肢体に意識を戻した。
今夜はこの、羞恥に俯く娘の全てが、自分のもの。素晴らしい。股ぐらがいきりたつ。
「ア、アドルさん、私、その……あっ」
言わずとも、こういう時の娘の言葉は相場が決まっている。そっと手のひらを
豊かな胸の膨らみに這わせて見れば、怯えるようにびくりと震える。
九分九厘、処女だ。
きゅっと目を閉じて震える乙女に、アドルはそっと頬へと唇を寄せる。
優しく抱きとめ、首筋に舌を這わせる。
「あっ……あぁ……っ!」
囀るような、消え入るような声。頬を真っ赤に染めて未知の感覚にうち震えるオルハに、
アドルの嗜虐心が刺激される。
「ア……ドル……さん?」
肺の奥から絞り出すようなか細い声で呼ぶオルハだが、
アドルの視線はびく、びくと痙攣するように揺らめく銀の尻尾へと注がれていた。
「あ……やめ……っ、アドルさんっ!?」
アドルの視線から、何を考えているのかを察したのだろう。オルハは制止の声を上げるが、
鍛え上げたアドルの手の早さには到底追いつけなかった。
長衣の割れ目から手を差し込み、尻尾の根元をきゅっと掴む。
「ひっ!」
掠れた悲鳴。尻尾のないエレシア人にはわからない感覚。
しかし、目の前のオルハの反応を見れば、そこを触れることがどのように
感じられるのかは一目瞭然だ。
優しく、豊かな毛を手櫛で梳くように、撫でさする。
「あっ……ああ、あぁぁ……!」
穏やかな、しかし背筋をゾクゾクと刺激する感覚が、オルハの脳髄を貫いた。
背筋がびんと張り、続いて全身がびくびくと震える。
服止めを解き、首元を、肩を、そして胸の双丘を露わにする。
先がつんとしこり立った形よい膨らみ。恥じらうオルハの鼻先にちょんと口づけし、
そのまま口を、丘の頂に着床させる。
ちゅっちゅっと赤子のように吸い付き、ぺろぺろと、これは赤子のそれではあり得ない
淫靡な舌使いで、頂にそびえる肉芽を弄ぶ。
「あ……あっ、はんっ……」
オルハが、甘い喘ぎを上げる。
半ば無意識のうちにであろうか、ぎゅっと、胸にとりついたアドルの首を抱きかかえる。
意図せず甘く抱擁されることとなったオルハの腕の中で、アドルはオルハの胸の膨らみに
頬をすりつけ、甘く突起に歯を立て、丘の間の谷間に舌を這わせた。
アドルが胸を愛撫する度に、オルハの鼓動が跳ね上がり、喉から可愛らしい喘ぎが零れ出る。
アドルは夢中で膨らみと、その間の谷間を愛撫する。
指が引き締まった腰をなぞり、柔らかく膨らんだ臀部をまさぐれば、オルハはぷるぷると震え、
口が奏でる声は甘いビブラートを帯びる。尻尾がぴたん、ぴたんと岩壁を叩く。
今のオルハは楽器だった。アドルの指で奏でられる、世界一淫靡な楽器だった。
やがて、演奏家は自分の足……楽器を抑えるために足の間に差し込んでいたそれに、
何か暖かい感触を覚えた。
したたり落ちるもの。指で触れてみると、にちゃりとわずかに粘ついた音を立てる。
その音を耳にして、オルハの体が跳ねた。びくりと。「やぁぁ……」と、
いやいやをするような声を漏らしながら。
アドルはその暖かいものを指先にたっぷりと塗りつけ、オルハの目の前に見せた。
オルハがひゅうと喉を鳴らす。瞬間耳まで血を上らせて、オルハは悲鳴を上げた。
「い、いやぁっ! アドルさん! やめて、見せないでくださいっ!」
アドルは拒否した。見せつけるように指先をねぶり、付着していた粘液を舐め取る。
羞恥に俯くオルハの上半身をよそに、アドルの手は粘液の源……オルハの下腹部へと
手を伸ばした。
長衣の隙間から指先を差し込み、熱く湿った空間へと侵入する。
そして、煮えたぎるような、濡れそぼった布地へと、指を……降着させる。
「…………っ!!?」
瞬間、オルハは自分の体に電撃が走ったかのような錯覚を覚えた。
いや、実際の所大した差はない。腰はがくがくと震え、唇はぶるぶると震える。
しかしその震えは寒さ故のものではないのだ。肌は熱く……殊に頬とアドルの指が触れている
その部分は、まるで灼熱しているかのようだ。
・・・・・・苦しいかい? アドルは問いかける。
オルハは頷く。息が苦しい。心臓が破裂しそうだ。頭の中に霞がかかったようで、
いつのまにか泥のように溶けてしまいそうな気がする。
じゃあ。アドルは人の悪い笑みを浮かべた。
楽にしてあげよう、と、アドルはオルハの服に手をかけた。
二つの月が大地を見下ろす下で。
月の光を照り返し、輝くオルハの肢体は、この上もなく美しかった。
神聖な彫像のような、一糸纏わぬ体躯。銀糸の織物のような髪。幻想のようにたゆたう尾。
つんと立った乳房の先。てらてらと輝く秘部。上気した頬。ほんのりと涙を浮かべた目尻。
そのひときわ明るい場所に、アドルは指を押しつける。
「ンッ……!!」
びくり、と肢体が揺らぐ。羞恥に背けた顔の口元はきゅっと結ばれ、思わずこぼれ落ちそうな嬌声を、
喉の奥へと押し込んでいる。
アドルは、少し意地悪をしてみることにした。
オルハの慎ましいピンク色のそこをかき分け、神秘の泉へと通じる道に至る。
今まで誰にも晒したことの無いであろう神聖なる巫女の秘所。想像しただけで、
冒険家の血と男の劣情が小躍りする。
早速、指先で神秘の解明に挑む。まずは僅かに開いた扉を軽くノック。
「……ふぁっ!?」
上の扉が小さく開いた。天上の調べがまろび出る。
次は、鍵を開けなくてはならない。鍵開けのセオリーは、まずは棒を差し込み、形を把握すること。
とりあえず指を使おう。人差し指に粘液をたっぷりと塗りつけ、鍵穴に優しく差し込んだ。
「あっ!? ……ン……あ……あああっ」
鍵穴の中は熱く、狭い。たった一本の指なのに、きゅうきゅうと締め付け、異物を追い出そうとする。
しかし、冒険家は屈しない。鍵穴の形を確かめるため、内壁を指先でつんつんとつつく。
「ン……う、ふ、ふぁっ……や、あ……」
その度に、上の口からあえぐ声が漏れ落ちる。ゆらゆらと、冒険家の魂を妨げる手がアドルの肩にかかるが、
ちょっと鍵穴の中で棒を暴れさせてやれば、甲高い悲鳴と一緒に帰ってゆく。
いい子だ。ついでにボタンを押してみよう。
上の方にある二つの丘。その頂点にあるボタンを、ちょっと厳しめに捏ねる。
鍵穴に差し込んだ指と、ボタンを弄ぶ指を同調させて、波をつくるように刺激してゆく。
「あっ……ああっ……あっ……」
オルハの声が、だんだんと、だんだんとトーンを上げてゆく。
肌の上に玉のような汗が浮かび、体のそこここの谷間に流れ落ちてゆく。
アドルが指をかき回す。秘壷からとくとくと愛液が流れ出す。ぴくんぴくんと体が弾け、掠れた喘ぎが絞り出される。
やがて、アドルの指を締め付ける肉壁が、特徴的な蠕動を始めた。
「あはっ……はん……はぁ……はっ……はぁ……」
見れば、オルハの声も、押し殺すものから虚ろなものへと変容している。
そろそろか。アドルの経験が、オルハの絶頂の近いことを知らせている。
アドルは、指の動きを加速した。トルクを加え、内壁に指の腹を擦りつける。
「あっ!? やっ……や、あんっ、やめ、てっ……くだっ……あっ!」
オルハの声が、ついに抑えきれなくなったらしい。目尻に涙を溢れさせながら、囀るような悲鳴を上げる。
誰かに見られたりしないだろうか。ふと、アドルは頭上を見上げた。
崖の上は、柵で囲まれてはいるが町中から続いている。オルハの声を聞きつけて、のぞき込む者がいないとは限らない。
……いた。
頭上から、じっと自分たちを見つめる影がある。
月の逆光になって、何者なのかはわからない。わからないが、正直なところどうでもいい。
だが、この状況は利用させて貰う。
アドルの腕の中で喘ぐオルハの耳元に、口を寄せて囁く。
誰かが自分たちを見ている、と。
「っ!!? い、いやぁっ!!」
羞恥の炎がばっと燃え上がった。高々と悲鳴を上げ、アドルの肩を掴む手が、爪が突き刺さらんばかりに握られる。
秘裂に差し込まれたアドルの指を、きゅうっとひときわ締め付ける。
すかさず、アドルは差し込んだ指をくいっと曲げて、肉壁の一部、特別感じると思われる場所(少なくともレアはそうだった)を
強く刺激する。舌と反対の腕で、乳房を愛撫するのも忘れない。
絶頂は、すぐに訪れた。
「や、や……やめ……あ、ああ、あぁぁぁっ!!」
一瞬、びくりと体躯が震える。そして、ぐったりと弛緩し、アドルの腕に体重を預けた。
荒い息を繰り返すオルハ。秘裂から指を引き抜くときにびくり、と肩を震わせたが、それ以外は放心したように、
ただ呼吸を繰り返すだけだ。
ふと、上を見上げる。先ほど見えた人影は、何事かと崖下をのぞき込んでいたようだが、
アドルの目が向いたことに気付いたのか、慌てて身を翻した。
目の中に、月光を照り返した銀色の煌めきが焼き付いて残る。
得心成ったように鼻から息を吐き出し、アドルは自らの下履きを解いた。
準備は整った。あとは鍵穴に鍵を差し込むだけだ。