薄闇の中、途絶えていた女の意識はようやく覚醒した。  
鉛のように重い体の中で、唯一かろうじて動かせる頭をやっと少し持ち上げると、  
この部屋、ホテル内の一室に常時設置されているのであろうソファー、簡素なテーブル、  
そして、この重い体の原因を作ったと思われる男の姿が視界に飛び込んで来た。  
 
―やられた。女は心の中で舌打ちした。  
既に夜も更け、窓から差し込む月明かりだけが今唯一の光源のせいか、男の姿はハッキリとは見えないが、  
わざわざ目で確認するまでもない。  
ベッドに横たえられた女―シェラザードは、男の名前を口にした。  
 
「オリビエ……」  
 
「やあ、お目覚めかい?シェラ君」  
 
やはり自分の予想は当たっていたようだ。  
素肌にバスローブを羽織っただけの姿でこちらを見つめているオリビエは、  
椅子に腰掛けて朱いワインが注がれたグラスを傾けていた。  
彼のすぐ側にあるテーブルの上には、さっきまで自分が口を付けていたグラスが、  
月の光を受けて妖しく輝いている。  
注いだ分のワインを飲み干すと、オリビエは椅子から立ち上がり、ゆっくりと歩み寄ってきた。  
一歩ずつ、確実に。  
 
そのまま横たえられたシェラザードの側まで行くと、傍らに手を付いていきなり口付けた。  
初めは唇を重ねるだけの浅いキスを繰り返される。  
首を振って逃れようとする態度を示されると、熱い舌が口内に侵入してきて一気に深いキスに変わった。  
慌てて引っ込めたが一足遅かったようだ。彼女の舌はあっという間に彼のそれに絡めとられてしまった。  
 
酸素を奪われ、シェラザードの意識は段々朦朧としてきた。  
一体どういうつもり?このキスの意味は?これから何をするつもりなの?  
発するはずだった問いの言葉は、拡散して脳裏から消えていく。  
 
いや、もとより問うだけ無駄なのかもしれない。  
男が女に一服盛ってから部屋ですることなんて、一つしかないのだから。  
 

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