ハーメルからヨシュアたちはひたすら歩いた。  
「これじゃあ太陽も見えないな」  
北はノーザンブリアから東へ向かい、帝国の沿岸部を踏破しながら  
道なき道を下って海を渡り──どこをどう間違えたのか丸一日日程  
森で迷うことになった。  
鬱蒼とした森。  
見上げてもただ枝と葉しかみえなくて二人は途方に暮れていた。  
「ごめんエステル、今更だけど完全に迷子になったみたい」  
「そんなの言われなくても気づいてるわよ」  
やれやれと言いたげな彼女はそれでも笑っていた。  
「運がいいことに食べるものには困らない位魔獣もいるし、特に問題は無いけど」  
それから表情を少しだけ曇らせて下を向く。  
「水浴びくらいはしたいわね…」  
最後に宿らしい宿で風呂に入ったのは二日前。  
年頃の女の子には少々厳しいものがあるのだろう。  
水の匂いはそこかしこでするものの、方向感覚を失わせるかのように茂る森はどれだけ  
歩いても同じ場所を回っているかのように感じられて。目印をいくつか置いてきたのだが  
どうやら何かが持ち去っているようで道を戻っても無くなってしまっていた。  
「この際仕方ないからいけるとこまでいきましょ」  
申し訳なさそうにしていたヨシュアの肩を叩き、にっこりと笑う。  
リベールを離れてからというもの傍らの太陽はいつも明るく優しく照らしてくれていた。  
「そうだね、そうしようか」  
 
それから数時間経った頃。  
「ねえヨシュアあれ見て!」  
「どうしたの?」  
彼女の指差す方向を見やると何か石碑のようなものがある。  
ぱっと見ではただの大きな石なのだが、よくよく見れば他の石と違い苔が一つもついて  
いなかった。  
表面に何か文字のようなものが彫られているけれど…。  
「なんて書いてあるのコレ…読める?ヨシュア」  
「……さっぱりわからないね」  
古代語なのか、果たして言葉なのかすらもわからない文様。  
一里塚のようなものかと思いきやまったく別のものだったらしい。  
「あーあ、出口はあっちとか書いてるかと思ったのに」  
疲れたーと言いながらその石の上にエステルが座る。  
その時。  
淡い光を放ちながら石が一瞬消える。  
「エステルっ」  
「な、なにこれ!?」  
咄嗟にエステルを引き寄せたものの、ふたたび石は現れた。  
石が変わったような気がするだけで別段異変は無い。  
周囲にもこれといった気配は無く、ただ森の生物の存在が感じられるだけだった。  
「何も無いみたいだけど用心はしないといけないかもしれないね」  
「それならいいんだけど。でもねヨシュア」  
危険は無いと感じて抱いていた腕を離そうとするヨシュアにエステルはしがみついた。  
「ちょっと腰が」  
「抜けたの?」  
「力が入らないだけですっ」  
それを腰が抜けたというんじゃないのかという言葉を飲み込んで、ヨシュアはエステルの  
頭を撫でた。必死になってしがみついている姿はどこと無く小動物のようでもあるのだが、  
こんなことを言ったら怒られるのだろう。  
腕の中にいるエステルを見て、少しヨシュアは感慨にふける。  
旅を始めた頃手に触れるのにも気恥ずかしさが伴っていた二人だったのに、気がつけば  
極自然に体を寄せ合うようになった。触れ合って、キスをして。そこから先に進むのに長  
く時間はかからなかった。  
 
森が宵闇に覆われ、虫の声が聞こえ始めた頃。  
視界に白い霧のようなものが現れた。  
水の匂いよりどこか懐かしい匂いが強くなっていった。  
「……温泉だ!」  
木々が開け、湯気立ち上る。  
どこか懐かしいと感じたのはエルモ温泉の匂いだった。  
腰が抜けたと言っていたのが嘘のように──腰が抜けたとは言っていないが──エステ  
ルははしゃいでいる。  
対岸で温厚そうな大きな角の魔獣が温泉に浸かっているところを見ると危険は無いのだろうが、  
バッグから銀器を取り出して湯につけてみた。  
変色はしない。  
「大丈夫そうだね」  
指先で湯を確認すると傍らを流れる川から水を引いているらしく温度も適温。落ちて  
いく太陽に照らされ乳白色の湯なのだろうがきれいなオレンジ色に染まっている。  
色々と確認をして横に立つエステルを見上げるとどこかを見ている。  
「どうしたの?」  
「う、ううんっなんでもないよっ」  
「そう?じゃあここでお風呂代わりに…」  
「えっ!は、入るの?」  
水浴びくらいと言っていたからてっきり入るのだと思っていた。  
「入らないの?」  
だって、その……。口ごもったエステルは真っ赤になって下を向く。  
「……んだもん」  
普段と違う小さな声が聞き取れなくて、エステルの手を取ってそばに寄せた。  
目が合うと更に顔を赤くして。  
「明るいんだもん!」  
思えば初めての夜から明かりのある中でエステルの体を見たことは無かった。  
「い、いくらヨシュアでも、羞恥心を忘れたわけじゃないんだから…」  
などとぶつぶつ言いながら耳まで赤くしている。  
「じゃああっち向いてるから。お湯は乳白色で入ってしまえば見えないから」  
安心してとヨシュアはエステルに背を向ける。  
程なくして衣擦れの音がし、水音がした。  
 
ヨシュアの背中を見てるのは好きじゃないの。  
エステルはそう言う。  
グランセル城の夜を思い出すから。  
あたしはヨシュアの後ろに居たいんじゃない。ヨシュアの隣に居たい。  
「結局隣に来てるんじゃ意味無くない?」  
横で湯に戯れるエステルに言うと  
「入っちゃったら見えないから大丈夫」とよくわからない答えが返ってきた。  
「ヨシュアが見えないと不安だし」  
まぶしそうに目を細めながらヨシュアを見るエステルが肩に寄りかかる。  
そのエステルの肩を抱いて額にキスした。  
「もう僕はエステルの居るところしか帰りたくないから大丈夫」  
ついばむような口付けをして、背骨を指でたどる。  
震えのようにエステルの体が硬直して何か言いかけた唇を塞いだ。  
「……っめ……んっ」  
タオルを敷いた柔らかい下草の生えた温泉のふちにエステルの体を引き上げると、  
湯にぬれた体が陽光を受けて淡く光る。  
「みちゃだめっ」  
慌てて体を隠そうとする手を捕まえると体をよじってエステルは逃げようとした。  
「見せて、エステル」  
耳元で囁くとエステルの体から力が抜けていく。  
──多分、ここがエステルの言う僕の意地悪なところなのだろうと思う。  
少しおびえたように困ったようにヨシュアを見る。  
「き、傷だらけだからっ」  
ところどころ白い体にある切り傷や刺し傷、そしてたぶんいくつかの殴打の痕。遊撃士  
である以上避けては通れない体への傷は男であれば勲章にもなろうが、二十にも満  
たない女の子であるエステルにはただ忌まわしいだけの痕なのだろう。  
「きれいだよ」  
一つ一つに唇をつけていくとその度に小さくため息のようにエステルが息を漏らす。  
 
旅を始めた頃よりも女性らしくなった体を抱き起こして、暖かなふくらみに手を添える。  
先端をわざと避けて指先でたどりながら、背中を撫で続ける。  
「ぁ……キスして……ヨシュア」  
愛撫に震える唇に口付け、柔らかな唇を噛む。何度も角度を変えて口腔を舌でなで  
上げるたびにエステルの体は震えた。  
「触ってもいないのに勃ってるね」  
ふくらみの先端を弾くとエステルは泣きそうな顔でヨシュアを見た。  
「い……じわる……」  
旅を続けていくごとに大きさの増す柔らかな胸をもみしだきながら、快感に反る背を指  
でたどる。ヨシュアの指ひとつでエステルは体の奥底から震えた。疼きが少しずつ体の  
芯にまで進んでいく。どうしようもないくらいヨシュアの指先だけで体全体が痺れてしまう。  
「は……あぁぁっ」  
普段の威勢のいい彼女はどこかへ行ってしまったような頼りない声がヨシュアの熱を  
呼び覚ます。  
深く味わうように舌先で乳首を転がし、腹部を撫で。  
ぴたりとあわせられた両足の間をほぐす様に優しく撫でる。  
「っ……ヨシュア……だめっ」  
「だめって言ってるけど」  
丘陵の頂にある赤い蕾をゆるくつまむ。  
「やぁ……っん」  
「感じてるよね」  
力の抜けた瞬間に両足の間に体を割り込ませて柔らかな茂みに指を伸ばした。  
ぷっくりとした突起に触れる。  
「ぁ……んっ……は……っ」  
上気したエステルの体が跳ねる。指先からその先にある熱を感じ、下半身が熱くなる  
のを感じた。  
「だめって……言っても……」  
「我慢出来そうに無いみたい」  
「やぁっ……ん」  
陰核をつまみ、捏ねて。もっとこの声を聞きたいとそこに口付ける。舌先で撫で、潰し。  
「ョ……シュ……あ……もぅっ……あつぃっ」  
狂おしげに眉を寄せ、喘ぐエステルが手を伸ばす。  
「ヨシュア……あたしも……っ」  
 
潤んだ瞳で見上げてくるエステルは唇を離してもなお快楽に震えている。  
びくびくと意思とは関係なく動く体を動かして湯の中にいるヨシュアのそばへ戻った。  
熱く屹立したヨシュアに触れ、上下に動かす。不慣れではあるけれど、気持ちいいらし  
いやりかたは覚えたと思う。裏筋を親指でしごきながら。カリ首を指でたどる。硬さが増  
していくと触れられていなくても体が熱くなる。  
そんなエステルの股間にある茂みに手を伸ばし、最初より大きく膨らんだ陰核を撫でな  
がらその先へと指を進める。  
「あっ」  
「気持ちいいからお返しだよ」  
抱き寄せてキスをしながら温泉よりも熱いねっとりとした秘裂の中へと。  
「……んっ……やぁっ」  
内側のざらついた部分をこするとキスをしている唇を離しそうになるエステルをしっかりと  
捕まえる。  
「んっ……んんんっ」  
ぷっくりと完全に剥けた陰核を擦り上げながら中をも蹂躙する。  
涙目のエステルはそれでもなおしっかりとヨシュア自身を握り、扱く。  
何度もこのまま入れてしまいたいと思ったけれどエステルの嬌態を見ることが出来るとい  
うことが新鮮で。  
再度タオルの上にエステルを抱き上げて、滾る肉棒を秘裂にそえる。  
「まだ挿れないよ」  
「なに……?」  
キスで唇を封じ、両手をつなぐ。  
「……ん」  
安心したように穏やかに目を閉じキスに応じたエステルの陰核に亀頭押し当てこする。  
「ん……ふっ……ぅ!」  
秘裂からもれる液で滑らかに動く肉棒が最も敏感な肉塊に当たる。  
「ひ……やっ……んっ……ああああっ!」  
欲しくて仕方が無くて膨らんだ女の花弁を刺激されて、カリ首で更にクリトリスを擦り上  
げられて。  
「ヨシュ……あぁっ!! もうだめええええええっ」  
これ以上ないほど硬くなった乳首がヨシュアの体に擦られ息も奪われ、快感の最も大  
事な部分を置き去りにされても。  
「いっちゃっ……やぁあああっ!!!」  
そこで一旦ヨシュアは動きを止めた。  
 
つないだ手を離して、双丘の先端を口付ける。  
「なんで……っ」  
やめちゃうのと言いかけたとき、熱い何かがエステルの中に侵入してきた。  
「ああああっ……!」  
「っく、相変わらずきつ……っ」  
入り口を何度か出入りしていると、中へと吸い込まれていくように襞が動く。奥まで腰を  
打ち付けると一層高い声が上がった。  
「ひあぁぁぁぁ……!」  
仕事柄体を鍛えているせいでエステルの中は最初とてつもなく狭い。そこを押し広げ進  
むと甘美な肉襞が肉棒を包む。  
突くごとに奥から何かがあふれ、突くごとに襞がうごめく。えもいわれぬ快感が体の先か  
ら頭の先まで走り抜ける。  
「ヨシュア……っ」  
こんな切なそうな声を上げる時は絶頂の寸前。大きく腰を打ちつけ、奥を突く。  
「いっ……ああああっ!!!!!」  
大きくのけぞり、ヨシュアの腕に爪を立てて。  
強烈な締め付けが無くなった膣内を緩く動かしながら、息の荒いエステルの喉元に口  
付ける。  
「早いよエステル」  
そう笑いながら言うと、不服そうに横を向いてエステルは言う。  
「だって……仕方ないじゃない……気持ちいいんだもん」  
少しだけ息を整えて、ピストン運動を再開する。  
「すごい濡れてるよ」  
「……っんなのいわないでってっ……」  
顔がどうしようもないくらい熱くて仕方なかった。  
「音聞こえるよね?」  
「うん……」  
無視しようとしても出来なくて、結合部からもれる淫靡な音が次第に大きくなっていく。  
さっきイったばかりだというのに体の奥で疼き始める快感。  
ぐちゅぐちゅと音がするたびに胸の奥が震える。  
「はぁっ」  
もっと奥に欲しいのに、ヨシュアは動いてくれない。  
「ヨシュアお願い……」  
何?と意地悪そうな顔をしてヨシュアはいつまでも入り口あたりで動いている。  
カリが入り口を刺激するたび、子宮の奥が痺れる。  
「もっと奥……っ」  
 
「ひぁああああっ!」  
溶けそうなほど背筋を走る快感に全てを乗せて、ヨシュアは最奥まで突き上げる。  
壊れそうなくらいビクビクッと震えるエステルは悲鳴にも似た嬌声を上げる。  
突き上げ、回し、強く、弱く。手を変えて侵入しては引く波に飲まれていた。  
硬く熱い男の象徴が女の体をえぐり快楽を呼び覚ます。  
子宮口に当たるたびに高く嬌声を上げるエステルの潤んだ瞳はヨシュアを時折見上げ、  
物欲しげな唇が濡れて扇情的に動く。  
全て奪いたい。  
「……っんんん……っ…………!」  
唇を重ねて赤い舌を食み柔らかに揺れる胸を揉んで。そして、クリトリスを摘みあげる。  
「はっあああっんんんーーーーーーーーっっっ!!!!」  
嵐のような快感に噎せて頭の中が真っ白になりそうだった。つかまるところがなくて、  
ヨシュアの背に必死にすがりついたけれど。どこかへ飛ばされそうなほど意識があやふや  
になってくる。  
「エステル気持ちいい?」  
ドクドクと子宮から愛液がとめどなくあふれ、性の匂いが充満する。  
ピストンを繰り返す肉棒がかき出す愛液は音を立てて落ちていく。  
「っんっんっ…………きもち……いいぃ……!」  
良かったとヨシュアは言いながら動きは止めない。  
締め付けは更にきつくなり、射精感が加速する。  
「んっ……やあああああぁぁぁ……!」  
膣内はどろどろに溶けて、それでいてきつく肉棒を締め付ける。  
ヨシュアはエステルの足を更に広げスピードを上げた。  
「いっちゃっいっちゃううううううっ!!!」  
抜ききらないようぎりぎりまで抜いて、奥へと突き入れる。  
「じゃあ僕も……っっく!」  
「ぁ……ぁんっっっ」  
激しく突き上げていると狂ったようにエステルは嬌声を上げた。  
「ひぁあああっ……やああああ!!!!」  
びちょびちょと抜き差しするたびにあふれる愛液。  
獰猛な勢いでエステルの中を抉る。  
「ヨシュアっっっっ!!!!」  
ビクンと体が跳ね、膣内に愛液が氾濫する。食いちぎられそうな締め付けに脳天が  
焼き切れそうになる。  
「っく……イくよエステル」  
「やっあああああああああっっ!」  
どくんと中で脈打ち、噴出す奔流。  
体の奥に打ち付けられる熱量が体全体に広がって自分が真っ白に光ったような気がした。  
 
何もかも忘れて一つになることだけを考えて、ただそれだけを考えて互いに触れ合った  
後の静寂。この瞬間が一番幸せだとヨシュアは思う。  
「もう……見られるのやだったのに」  
滑り込むように湯に浸かったエステルが頬を膨らませてヨシュアの肩に頭を預ける。  
「そんなに嫌ならもうしないけど、きれいだったよ?」  
「〜〜〜〜〜っ」  
さらっとこういう事を言うのがヨシュアの困ったところだとエステルは思う。  
どう反応していいかわからないというか、対処にこまるというか。追い討ちをかけるように  
優しそうに微笑むのだから性質が悪い。  
「そんな顔で言われたら嫌じゃないとしか言えないじゃない…」  
「でも外でやっちゃったことより、見られたほうが問題なんていうのがエステルらしいというか」  
「あああああああああああああああああああっっ!!!」  
思い出したかのようにエステルは顔を真っ赤にする。  
よく考えてみればここは外である。いくら迷子になった挙句の温泉とは言え人が通らないと  
確信を持てるわけもない。  
そして。  
「……しかも、ヨシュア中に出したよね」  
「エステルがかわいくて止まらなかった。ごめん」  
「そういうことをしれっと言うなっ!」  
星空の下の温泉だというのになんだか騒がしい。普段ならば動物や穏やかな魔獣位しか  
居ないこの温泉も今日に限って言えば賑やかで、そして普段どおり和やかだった。  
 
その翌日。  
一時間ほど歩いた先に轍を見つけ、人里には下りることが出来た。  
だがそこであの森が迷いの森と呼ばれるものであると知った。  
聖獣が棲むと言うのもその時聞いたのだが、もしかしたらあの時いた大型で、けれどとても  
優しい気配を持ったあの魔獣がそうだったのかもしれない。  
 

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