久しぶりにロレントに帰還したカシウスから、「そんなに忙しかったのか。  
いろいろとすまんかったなあ」などと酒の席で謝られた。ライアンがブライト家を  
訪れないことについて、レナがいろいろと言い含めたらしい。  
 一ヶ月レナの姿を見ないだけで、ライアンはつのる恋慕に狂いそうになっていた。  
自業自得とはいえ、レナへの暴挙も思い詰めた末の行動である。我慢できる程度の  
感情なら苦労しない。  
 一人の夜には寂しさのあまり例の写真を取り出し、あの夜の記憶を反芻する。  
それがさらにライアンの想いを煽った。そうしてさらに一ヶ月、レナへの想いが  
理性の水域を越えたとき、ライアンは行動に移った。  
 
 いつものようにパトロールと訓練を終え、兵舎に帰って一休みしていると、  
来客を告げる声があった。  
「すげー美人だけど誰なんだ? あれ」  
 好奇心むき出しのその質問には答えず、ライアンは足早に応接室に急ぐ。  
そこには思った通り、レナの姿があった。  
 レナはソファーにも腰を下ろさず、どこか落ち着かない様子で立っていたが、  
ライアンの姿を認めると、その瞳に険しいものを宿した。ライアンは何食わぬ顔で  
会釈をする。  
「レナさん。お久しぶりです。こんなところまでどうしました?」  
「……あなた」  
 堪えきれない怒りが漏れたかのように、言葉尻が震えた。レナは一度口を閉じ、  
第三者がいないことを確認するように、部屋の中を見回した。見るまでもなく、  
応接室には二人きりだ。  
「大丈夫ですよ。中の会話は外には聞こえないようになってます」  
「……」  
 レナはしばらく沈黙していたが、奇妙に平坦な声で言った。  
「あの写真はどういうことですか?」  
「どの写真です?」  
 レナの眉がきりりとつり上がる。その表情を見ながら、怒った顔も素敵だ、  
などとライアンは考えていた。  
「……今日の朝、テーブルの上に、置かれていた、あの写真です」  
 一言一言、区切るようにレナは言った。  
「ああ」  
 ライアンはにこやかに笑う。  
「もしかしてこれですか」  
 そう言いながらポケットから取り出したのは、一枚の写真だった。レナの顔色が変わる。  
「よく撮れてますよね。ほら」  
 ひらひらと振ってみせる。写真の中では、テーブルに寄りかかったレナが後ろ  
から男に犯されていた。スカートはまくり上げられ、白いレナの肢体があらわに  
なっている。局部まで鮮明に写り、男のものを飲みこむ部分まではっきりと見えた。  
 帝都ならば、そのような卑猥な写真を商売にするところもあるかもしれない。  
 しかし、リベールはそこまで性に開放的ではない。自分の性行為の様子をこうして  
はっきりと見せられるというのは、レナにとって、頭が真っ白になるような衝撃だった。  
「っ!」  
 ライアンから写真を引ったくり、破り捨てる。何度も何度も引きちぎり、細切れに  
していく。写真を小さな紙片の束にすると、レナは荒くなった息を整えながら、  
ライアンを睨みつけた。  
「それは差し上げますよ。他にもまだたくさんありますし」  
 その言葉を聞き、レナは痛みを堪えるように目を閉じた。  
 震える息を吐きだしながら、  
「あの人にいいます。あなたに犯されたって」  
「なるほど。大佐を裏切るんですか。夫の不在中に他の男をくわえこんでいましたと、  
そう言うんですね」  
「っ! あなたがっ!」  
 ライアンは小さく笑い、  
「別に、大佐に知らせてもいいんですよ。ついでですし、証拠の写真もつけましょうか。  
あれを見れば一目瞭然でしょうし」  
「……あなた、あの人に殺されるわ」  
 ライアンは大げさに肩をすくめた。  
 
「レナさんにこの先ずっと会えないぐらいなら、いっそ殺された方がマシです」  
 レナの瞳に困惑の色が広がる。  
「……何が目的なの?」  
「そうですねえ……カシウスさんに殺されるというなら、いっそのこと、街のみんなにも  
知らせましょうか。私とレナさんの間に何があったのか。写真はいっぱいありますし。  
エステルのお母さんが、他の男に犯されてる写真がね」  
「やめて!」  
 ライアンの言葉を聞くうちに、レナの顔は蒼白になっていた。震える自分の体を  
抱きしめるようにして、  
「言いません。あの人には言いませんから……お願い、やめて」  
 ライアンは穏やかに言った。  
「だから、別に大佐に言ってもいいんですよ。このままレナさんに会えないぐらいなら、  
いっそ全部ぶち壊れればいいんだ」  
 その言葉に、レナはしばらく沈黙していた。  
 やがて、弱々しい声で言った。  
「テーブルに写真を置くのは、やめて……」  
「はい?」  
「エステルに、見られるから……」  
 ライアンは苦笑した。二人の性行為の一部始終を、エステルはすでに目撃して  
いるのだ。  
「あの写真は……処分して、ください。そうしたら、家に、来てもいいですから……」  
 うなだれたレナのか細い声に、ライアンはうなずいた。  
 
 二ヶ月ぶりにブライト家に足を踏み入れたライアンを、エステルは無邪気な歓声で  
出迎えた。  
「久しぶりに、レナさんの手料理が食べたいです」  
 厚かましくもそう言うライアンに、レナはうつむいたままうなずく。  
 夕食ができるまで外で遊んでくる、とエステルが飛び出すと、後には二人だけが  
残された。  
 キッチンに向かい料理を続けるレナの、そのすぐ後ろにライアンは近づく。  
後ろから抱きしめると、レナの体がびくりと震えた。レナの背はライアンより頭一つ分  
小さい。艶やかな栗色の髪に顔をうずめながら、レナの肩に顎を乗せるようにして  
密着する。怒張した腰のものが、レナの柔らかな尻に押し当てられる。  
「やめて」  
 毅然とした口調だったが、そこには隠しようのない怯えが含まれていた。  
「……やめてください」  
「何もしませんよ。料理を続けてください」  
 のろのろとレナの手が動き出す。ライアンはレナの腰に回した手を徐々に上げていく。  
エプロンに包まれた豊かな膨らみを、下からそっと押し上げると、レナが小さく  
息をのんだのがわかった。  
 ゆっくりと指を動かし、その膨らみに沈めていく。ごわごわした生地ごしに、  
レナの乳房の感触が伝わる。レナの全身がぎゅっと緊張し、激発しそうになって  
いるのがわかった。  
 ライアンはなだめるように口を開いた。  
「俺は何もしていませんよ。だから、レナさんもそんなに緊張しないでください。  
レナさんが変に意識して、俺とレナさんの間に何かあるとか、街の人に勘繰られたら  
困るでしょう。少なくとも今は、あの写真がばらまかれたとか、そういうこともないんだし」  
「写真……」  
 レナは呆然とつぶやいた。  
 抵抗すれば写真をばらまく、そういう脅しだった。  
「処分してって、言ったのに……」  
 レナの声はほとんど泣き声になっていた。  
 それからは会話もなく、レナは一方的に胸をまさぐられ、ぽとりぽとりと涙を  
落としながら料理を続けた。  
 
 ライアンの来訪はそれから毎日のものとなり、以前の日常を回復したように見えた。  
 しかし、それは表面的なものでしかなかった。母の穏やかな愛に包まれた、  
エステルにとって何一つ不満のない日常は、その裏側に、陰惨な影を潜ませていた。  
 夜の闇が落ちると、ブライト家の裏手は月明かりも届かない暗闇となる。  
家の中から光が窓の形に切り取られ、四角く外に漏れだしていた。中ではエステルが  
遊んでいる。  
 その窓のすぐ横、家の外側の壁に、レナは体を押しつけられていた。後ろに  
のしかかっているのはライアンだ。窓の明かりは彼らには届かず、二人の体は  
闇に溶けこんだままだ。  
 レナはスカートの後ろ側をたくし上げられ、下着を膝までずり下ろされている。  
あらわになった太股と、その秘部との空間に、ライアンは怒張を突きこみ、  
荒い息を吐きながら前後させていた。挿入はされていない。素股の体勢だった。  
 壁に押しつけられたレナは、じっと唇を噛んでその行為に耐えている。  
ライアンが腰を叩きつけるたび、壁に押しつけられたレナの胸が弾力的にゆがむ。  
 ライアンが小さくうめき声を上げると、レナの媚肉にこすりつけられていた竿の  
先端から液体がほとばしった。スカートの裏側に、白いものがびちゃっと叩き  
つけられる。  
 しばらくの余韻のあと、ライアンは身を引いた。亀頭をレナの秘所にこすりつけて、  
精液に汚れた先端をぬぐう。たくしあげていたスカートを下ろすと、それまでの  
淫らな行為もなかったかのように、普段のレナの姿になった。  
 しかし、怒張は一向に治まらず、いまだ硬度を保っていた。  
「やっぱり、レナさんの中に入れないと治まらないみたいです」  
 小さく囁くと、レナは怯えた声で言った。  
「お願い、やめて……」  
「どうしても駄目ですか?」  
「だめ……だめです」  
「どうしてもレナさんの中に入れたいんです」  
「……許して……」  
「それじゃ、口は駄目ですか?」  
「え……?」  
 困惑の表情で振り向いたレナに、ライアンは言った。  
「レナさんの口の中で、俺のを慰めてください」  
 その言葉の意味を理解し、レナの顔がさっと青ざめる。  
 リベールはごく保守的な土地だ。後背位ですら、獣の形として偏見の目で見られる  
ぐらいだ。男のものを口に含むというその行為は、レナの想像を絶していた。  
「なんて……ことを、言うの」  
 ショックに打ちのめされたように、レナは弱々しい声を漏らす。  
「レナさんの中に入りたいんです。下か、上か、どちらかを選んでください」  
 その言葉に逃れようのない響きを感じとったのか、レナはしばらく身動きでき  
ないでいた。  
「口でなら、大佐を裏切ることにもならないでしょう? レナさんが気にしてるのは  
それですよね? あまり深く考えなくても、レナさんの口で少し慰めてもらうだけ  
ですよ。今の素股と同じです」  
 レナは力なくかぶりを振ったが、それは拒否と言うには弱々しすぎた。  
 
 赤黒く膨らんだ亀頭の先端を前に、レナは唇を開け、それを含もうとするが、  
どうしてもくわえられずに唇を閉じる、ということを繰り返していた。  
「抵抗があるなら、とりあえず舐めてもらえますか」  
 その言葉に、レナの艶やかな唇からおずおずと舌が差し出される。人前で舌を  
出すというその行為すら、レナにとっては恥ずかしいものだ。その舌で男の性器を  
こすり上げる、というのは完全にレナの許容量を越えていた。  
 再三促されて、レナはちろりとペニスに舌をつけるが、すぐに引っこむ。  
 ライアンは苛々したように言った。  
「レナさん、料理の準備もまだなんでしょう? 早くしないと、エステルがお腹を  
空かせちゃいますよ」  
 その言葉に、レナは目を閉じ、覚悟を決めたようだった。せめて表面だけでも  
日常のサイクルを保とうとしたのか。舌の腹で、剛直の下側をゆっくりと舐め上げる。  
レナの閉じられた瞳から、ひとすじの涙が流れた。  
 
「先端の裏側を重点的に舐めてもらえますか。くびれをほじくるみたいに」  
 レナは目を閉じたまま、言われるままに舌を動かす。敏感な部分をこする舌の  
感触に、ペニスがびくびくと震えた。舌の腹に亀頭を乗せ、先端でペニスの裏側  
をつつく。  
「口を開けて」  
 舌に亀頭を乗せたまま、レナは小さく口を開いた。ライアンはゆっくりと、その  
奥の口腔に剛直を突き入れた。レナの可憐な唇を、亀頭のエラが割り広げていく。  
その異物感に驚いたようにレナは目を見開くが、すでに亀頭の半ばまで侵入して  
いる。レナは諦めたように、再び瞳を閉じた。  
 亀頭が完全に埋まると、先端には口内の滑らかな感触が感じられた。  
 夕食の光景を思い出す。レナは育ちがいいのか、食事のときも口を大きく開ける  
ようなことはない。ごく上品に、小鳥のように食べる。その秘められた口内に、  
自分の汚いものが突っこまれている。冒涜的な行為だった。  
「歯を立てないように気をつけてください。唇を締めて。舌も動かして」  
 竿の部分をレナの唇が締めつけ、亀頭の下ではザラザラした舌の感触がうごめく。  
そのままゆっくりと腰を前後させながら、ライアンはレナの熱い口内の感触を味わった。  
 レナの動きはぎこちなく、それほど快感があるわけではない。しかし、目の前に  
ひざまずいた女の唇を、自分の節くれだった性器が出入りしているという光景は、  
生々しくライアンの快楽中枢を刺激した。  
「気持ちいいですよ……」  
 両手でレナの頭を押さえながら、ライアンは高まってくる快感に抗うことなく、  
予告も無しに欲望を吐き出した。  
「っ!?」  
 驚いて逃げようとするレナの頭を全力で抑えこむ。レナはライアンを必死で押し退け  
ようとするが、男の力にかなうものでもない。びゅっ、びゅっと最後の一滴まで、  
レナの口内に発射される。  
 レナは涙目でライアンを上目づかいに見つめていたが、完全に射精が終わった  
あとも、ライアンはペニスを引き抜かなかった。  
「飲んでください」  
 レナの瞳が見開かれる。絶望の涙に濡れた、紫水晶のような美しい瞳だった。  
「飲まないと、ずっとこのままですよ」  
 ライアンを押し退けようとしていたレナの両手が、だらりと垂れ下がった。  
 十秒ほどそのままだったが、やがてこくりとレナの喉が動き、口の中の精液が  
嚥下された。  
 二度、三度とレナの喉が動き、口内から精液がなくなったことを確認すると、  
ライアンはペニスを引き抜いた。  
 ライアンの両腕から解放されると、レナは身を折り、地面に手をついてえずいた。  
「えっ……ぐっ……!」  
 そのまま、レナは嘔吐した。喉と胃で蠕動していた白濁液が、黄色い胃液と共  
に地面に吐き出される。  
「げふっ……ごほっ!」  
 汚いものをすべて吐き出そうというように、嘔吐は何度も続いた。  
 その様子をライアンは冷やかに見つめていた。  
「あーあ……夕食前で良かったですね」  
 その冷たい声に、何かが決壊したのか。  
 精液と胃液の混じった吐瀉物を前に、レナは子供のようにしゃくりあげ始めた。  
両目から次々と涙が溢れ、横隔膜が痙攣したように、ひっ、ひっ、と幼い泣き声を漏らす。  
「どっ……どうして、こんな……ひどいことっ……するの?」  
 えぐっ、とレナは息をのむ。  
「い、いい人だと……思って、たっ……のにっ……おとうとっ、みたい、にってっ……!」  
 さすがに、ライアンも心を動かされないではなかった。エステルの母として、  
大人の女性として、常に穏やかに微笑んでいたレナが、今は幼い少女のように  
しゃくりあげている。  
 ライアンは膝をつき、座りこむレナをゆっくりと抱きしめた。レナの体は嗚咽の  
痙攣に震えていた。布ごしにその柔らかい体を感じながら、  
「愛してるんですよ。レナさん、あなたを愛してるんです。死ぬほど好きなんです」  
「うそ……うそっ……! ひどい、こんなのひどいっ……!」  
「本当です。レナさんに会えないだけで気が狂いそうになるんです」  
「うっ……ううーっ……!」  
 
 レナはいやいやをするようにもがいていたが、ライアンがずっと抱きしめていると、  
やがて泣き疲れたように動きを止めた。  
 力の抜けたレナの体を腕の中に感じながら、ライアンはその耳元で囁いた。  
「泣いているレナさんも可愛いですよ」  
 レナはうつむいたまま答えなかった。  
 
 さすがに気が咎めたのか、ライアンは数日は大人しくしていた。  
 しかし、そもそもすでに正気ではない。我慢は三日と持たなかった。  
二階の子供部屋にエステルを寝かしつけ、おぼつかない足どりで階段を降りてきた  
レナを、ライアンは後ろから抱きしめた。腰を押しつけながら、耳元でつぶやく。  
「レナさん」  
 その言葉だけで察したようだった。  
 レナは弱々しい声で、  
「また……中に……?」  
「ええ。上か、下か。また選んでください」  
 レナはしばらく沈黙していたが、ぽつりと言った。  
「ベッドの用意……しますから」  
 
「痛い……から、あんまり奥は……突かないで」  
 その言葉に、ライアンは浅く入り口をえぐるような動作に変える。  
「んっ」  
 レナが小さな声を漏らした。  
「こんな感じですか?」  
 返答はなかった。レナは漏れそうになる声を抑えようと、ぎゅっと唇を噛みしめて  
いる。  
 部屋は暗く、窓から入る星明りだけが、ぼんやりとレナの裸身を照らしていた。  
 ベッドの上のレナを、ライアンが正常位の体勢で犯している。両腕をライアンの  
手でベッドに押しつけられたレナは抵抗も許されず、ただひたすら突き上げられる  
ままになっていた。痩身のほっそりした体が、男を受け止めるたびに揺さぶられる。  
 ライアンは身をかがめてその唇にキスをした。レナはその行為に反応できず、  
目を見開いたままライアンを見つめる。レナの瞳と目が合うと、膣の中の剛直が  
さらに鎌首をもたげた。  
 浅く唇同士をこすり合わせ、ゆっくりと挟むようについばむ。唇の表面にぴり  
ぴりと快感が走る。レナは目を閉じ、唇をむさぼるライアンのするがままにさせた。  
 キスを続けながら、レナの両腕から手を放し、その胸に手を這わせる。  
おぼろげな星明りの中で浮かび上がる、女神の石膏像のような完璧な曲線を描く  
レナの両胸を、ライアンの手が下からすくいあげるように揉みしだく。  
 乳房の表面に手を滑らせるようにして、優しくゆすりながら刺激していると、  
手に、とくとく、とレナの鼓動が伝わってきた。じらすように、人指し指で薄い  
乳輪の輪郭をなぞる。  
 レナの唇から離れ、ぷっくりと立った乳首を口に含む。そのまま吸い上げ、  
甘く噛んだ。  
「んうっ!」  
 のけぞったレナの動きに、乳房がぷるぷると揺れた。自分の胸に吸いつく  
ライアンの頭を、幼児でも支えるように抱きしめる。愛情というより、快感に  
耐えるための行為だった。  
 湿りけの少なかったレナの蜜壷はすでに潤い、ライアンのものに馴染んで、  
熱くまとわりつく。乳首を口の中で転がしながら、ライアンは小刻みな抽送を  
繰り返した。  
「んっ……ん……!」  
「声を出してもいいんですよ」  
 レナは泣きながら首を振る。最初は諦めたようにされるがままになっていた  
レナだが、強制的に高められていく快感に、今はぽろぽろと涙をこぼしていた。  
時おり深く突きこまれる腰の動きにも、すでに痛みではなく快感を感じていた。  
 
「も……許して……」  
 哀願するその泣き顔に、ライアンの中の何かが切れた。レナの体をベッドに  
押しつけ、全力で腰を打ちつける。すでに理性はなく、腰を動かしているという  
意識もない。汗にまみれた二人の体を、ただこすりつけ合いたい。絡み合いたいと  
いう思いしかなかった。  
「レナさん! レナさんっ!」  
 快感に高ぶったライアンの声に、レナは何をされるかを悟った。  
「中はだめぇっ!」  
 両手がライアンの胸板を押し返そうとするが、力もほとんど入っていない。  
逃れようのない未来への絶望に、また容赦なく身を突き上げてくる快楽に、レナは  
悲鳴をあげた。  
「いやっ! いやあっ! んうっ、いやぁっ!」  
「レナさんっ! レナさんっ!」  
 憧れた年上の女性の、この柔らかい体の再奥に、精液を注ぐ。ライアンは  
それしか考えられなかった。  
 熱く濡れた感触が、カリを、亀頭を、裏すじを締め上げる。意識のないレナを  
犯したときと違い、それは強烈な締めつけだった。いっそう強く腰を打ちつけ、  
亀頭の先に子宮を感じたとき、欲望を押しとどめていた栓が弾けた。膣がきゅっと  
締まり、熱いほとばしりが、びゅる、びゅるる、と放たれる。  
「――――――!!」  
 声なき絶頂と共にレナの体が弓なりにそり返り、びくんと跳ねた。  
 びゅっ、びゅっと胎内に打ちつけられる雄の精液を感じながら、レナは呆然と  
天井を見つめた。取り戻しようもないほど深い場所を男の精液で汚されていく感触を、  
レナはどこか遠いところで感じていた。  
「はあっ、はあっ、はあっ……」  
 静かな部屋に、シーツに突っ伏したライアンの荒い息だけが響く。  
 ライアンが身を起こすと、ずるりとペニスが抜けた。  
 レナは放心したように身を横たえていたが、長い沈黙のあと、小さくつぶやいた。  
「中はだめって言ったのに……」  
 寒さから身を守るように、レナは自分の体を抱きしめ、胎児のように体を丸めた。  
その秘裂から、つっと白いものが伝った。  
 
 
 
 その日、一ヶ月ぶりにブライト家に帰還したカシウスは、出迎えたレナの美しさに  
頬を緩めた。元々美人ではあるが、それが最近顕著になっているように思えたのだ。  
慈愛をたたえた、その透き通った瞳の中に、謎めいた、蠱惑するような色があった。  
 穏やかに微笑むレナと、歓声をあげて父親を出迎えるエステル。家庭というものの  
有りがたさを実感しながら、カシウスは両手いっぱいに抱えたお土産を手に、  
ブライト家の扉をくぐった。空港まで迎えにきたライアンを、後ろに従えて。  
 レナの口元にかすかにこびりつく白いものに、カシウスは気づかなかった。  
 
 
 
 
「姉さん……ああ、姉さん……」  
「……気持ちいい?」  
 右手で前髪をかき上げ、左手に持ったペニスの先端を口に含みながら、レナは聞いた。  
「うん、すごくいいよ、姉さん……」  
 目の前にひざまずくレナの、栗色の髪に両手を差しこんで、ライアンは快感の吐息を  
漏らした。突き上げてくる腰の動きにレナは逆らわず、その硬い肉棒にねっとりと  
舌を絡める。男の快感のポイントを知りつくした、絶妙な動きだった。  
「ね、姉さん……姉さんの中に出したい……」  
「……ん」  
 ちゅぷ、と唇からペニスを抜き取り、レナはライアンを見上げる。  
 暗い地下の一室に、二人はいた。  
 地上では帝国軍との戦闘が続いている。  
 ライアンの制服は血と泥に汚れて、肩には血の滲む包帯が巻かれていた。満身創痍の状態で、  
その目だけがギラギラと輝いている。そばには壊れた銃が投げ出されていた。  
「姉弟なのに、中に出したいの? 子供が出来たらどうするの?」  
「姉さんがいいんだ。姉さん、意地悪しないで」  
「……ふふ、ごめんね」  
 艶然と微笑むレナを、ライアンが押し倒す。  
 服を乱暴に破り、あらわになった肌にしゃぶりつく。下着を引きちぎり、レナの中に  
屹立を埋める。レナは痛みに眉をひそめるが、ライアンが動きだすと、すぐに蜜があふれた。  
(……もう……私は……)  
 自分が誰で、何をしているのか。すでにその認識をレナは放棄していた。  
現実感が薄れ、意識が浮遊するのを感じた。  
 暗い、何もない部屋で、男と女が絡み合っている。ただそれだけの世界だった。  
 体の芯を突き上げる男の剛直と、それに揺さぶられる快感。どこか遠くから響く砲声も、  
耳には届かない。肉欲だけがその場を支配していた。  
「姉さん、出していい? もう出そうだ、姉さん!」  
「おいで……」  
 ライアンの頭を胸に抱きしめ、秘裂に埋まる剛直をきゅっと締め上げる。  
破裂するように、男の欲望が弾けた。びゅる、びゅる、と胎内を犯すその熱い塊を、  
レナは真っ白になる意識の中で受け止めた。  
 
 事が終わった後もライアンは離れなかった。  
 すがりつくようにして震えているライアンの、その頭を、レナは子供でもあやすように撫でていた。  
 ライアンは言った。  
「姉さん、リベールはもう駄目だ。一緒に逃げよう。また昔みたいに、一緒に暮らそう」  
「ライアン……」  
 濁ったライアンの瞳を、レナは悲しげに見つめた。  
「姉さん、愛してるよ……もうどこにも行かないで……姉さん……」  
 ライアンの瞳はすでに現実を写していない。その精神は、すでにどこか遠いところへと  
旅立っていた。  
「心配しないで。ずっと一緒にいるわ……」  
 レナはライアンを抱きしめる。背中に回されたレナの手に、一振りの短剣があった。  
 ライアンのうなじに沈むように、ゆっくりと短剣が突き刺さる。ライアンの体が  
びくりと震え、その目が驚いたように見開かれた。  
 手のひらに伝わる、鉄が肉を切り裂いていく感触を、レナは無感動に受け止めた。  
 数秒ののち、ライアンの体からすうっと力が抜けた。  
 自分の上に覆い被さるライアンの、首筋からあふれた血が、一滴、二滴と、  
滴り落ちる。レナの乾いた瞳の下を、その頬を、真っ赤な血が涙のように伝った。  
 すでに光のない瞳を見つめながら、レナはつぶやいた。  
「可哀相なライアン……」  
 小さく息を吐く。  
「そうね……ここまで汚れたんだもの。もう、あの子の母としても、あの人の妻としても……」  
 レナは自分のお腹をそっと撫でながら、  
「ごめんね。お母さんも一緒に行くからね……」  
 耳を弄する破砕音が、至近距離で響いた。近くに帝国軍の砲撃が着弾したらしい。  
石造りの壁が小刻みに振動していた。遠からず、この時計台も崩れるだろう。  
「……さよなら……」  
 近づく帝国軍の砲声を聞きながら、ライアンの死体を抱きしめ、レナはそっと目を閉じた。  
 

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