レナ・ブライトは、若くして王国軍の将官となったカシウス・ブライトの妻で、
一児の母だった。
しかし、ぱっと見には娘がいるようには見えない。十七のときに結婚して子供
を生み、今年でようやく二十三歳。まだまだお嬢様の雰囲気が強い。
もちろんそれは表面だけで、六年も主婦を務めていれば、ある程度の貫祿は出
てくる。ほとんど家にいない夫に代わって娘であるエステルを育てながら、一人
で家を切り盛りしているのだ。王国軍きっての逸材と呼ばれるカシウスも、レナには
頭が上がらない。
それでも、若い妻と娘を、街から離れた一軒家に残していくのは不安だったのか、
あるとき一人の男を連れてきた。兵士の名はライアンといった。
ライアンはカシウス・ブライトの後輩で、二十歳の青年である。普段は関所に
務めている。ふとしたきっかけからカシウスと親しくなり、それ以来交遊が続いていた。
「だからな、暇なときでいいんだ。うちの様子を見てやってほしいんだよ」
カシウスがグラス片手に言う。
ライアンは料理の並んだテーブルを前に、身を硬くして座りながら、
「大佐のご命令とあらば」
緊張した声で答えた。
「いや、別に命令とかじゃなくてだな。頼みだよ頼み」
カシウスが苦笑する。
普段のライアンならば、このような堅苦しい返答はしなかっただろう。ライアンが
緊張しているのには理由があった。
ちょうど、料理を手にレナが戻ってきた。ほっそりした肢体を青い服に包み、
前にはエプロンを掛けている。料理をテーブルの上に並べながら、ふんわりした
笑顔で言った。
「あなたも心配性ね。私たちは大丈夫よ? 今までだって、何もなかったのだし」
「そうは言うがなあ……。魔獣が迷いこんでこないとも限らんし……」
「そのときは、あたしがやっつける!」
満面の笑みを浮かべて言ったのは、娘のエステル・ブライト。まだ五歳の可愛
い盛りなのだが、父の影響からか娘らしいことには何の興味もなく、棒を片手に
森を駆けまわっている。
その子供らしい稚気にカシウスは笑い、ライアンの頬も緩む。
しかし、レナが片手を頬に当てて、困ったように微笑んでいるのを見ると、
ライアンはまた緊張に硬くなった。
関所に女っ気があるはずもなく、恋人もいないライアンは、軍役についてから
ほとんど女性と会話を交わすこともなかった。そこにとんでもない美人のレナを
紹介されて、緊張していたのだ。
一児の母とはいえ、まだ二十代前半の女性である。男が十人いれば十人振り返る
ほどの美人で、しかもそこに母親らしい包容力が加わり、ライアンは一目みた
ときから虜になっていた。
若くして大佐となるようなエリートは、妻にする女までこうも違うものか……
ライアンはそう思った。
ライアンは、二日と時を置かずにブライト家に寄るようになった。最初は遠慮を
していたレナも、少しずつライアンの手伝いを受け入れるようになった。
「やっぱり男手があると助かりますね」
ふんわりした笑顔でレナは言う。
ライアンは家の裏に積まれている木箱の中から、野菜の箱を下ろしながら、
「力仕事は任せてください。大佐からもよろしくと言われていますし。薪割りも
済ませておきましょうか?」
「でも、お時間を取るでしょう? あの人も、別に雑用をしろってあなたに頼ん
だわけではないのよ?」
「これも鍛練と思えば」
ライアンがいかにも楽しそうに力仕事をこなしていくのを見て、レナは「うーん……」と
小さく苦笑いしながら、家の中に戻っていった。
ライアンも、好き好んで雑用をこなしているわけではない。下心がないと言えば
嘘になる。
関所での退屈な任務と、激しい訓練。ライアンの生活はその繰り返しである。
ブライト家に顔を出して、美人のレナと二言三言と言葉を交わすのが、一服の
清涼剤なのだ。もちろん、上司であるカシウスの言葉もあったが……
薪割りも終わるころには、空は赤らみ始めていた。
「夕食を食べていきませんか?」
顔を出したレナが言った。
「いえ、そこまでお世話になるわけには」
「お世話になっているのはこちらですよ。少し作りすぎてしまって。余らせるのも
何ですから」
それ以上固辞するのも失礼かと、ライアンは大人しく従った。
テーブルに並ぶ料理は少し作りすぎたという雰囲気ではなく、明らかに三人分
のものだった。
カシウスからブライト家のことを頼まれて、すでに一ヶ月。レナが近づいただけで
緊張するということはなくなったが、こうしてテーブルを共にすると、ライアンは
自分がどうにも場違いな場所にいるような気がしてしまう。
ライアンにとって食事といえば、兵舎の食堂で男くさい仲間たちと面を突き合わせ
ながら取るものである。しかし今は、上司の美人の奥さんに、温かい家庭料理を
振る舞ってもらっている。場違いな気がするのも当然だった。
しかし、夫のいない母子家庭に男を招き入れるというのは、少し無防備かも
しれない。ライアンは人ごとのように思ったが、レナのすぐ隣で盛大な食欲を見せて
いるエステルを見れば、いかがわしい雰囲気になるはずもなかった。
食事も終わり、エステルの口元についたソースをレナがナプキンでぬぐっていると、
エステルが唐突に言った。
「弟がほしい!」
「ええっ? 弟が欲しいの?」
「うん! 一人で遊ぶのつまんない」
ブライト家は街からやや離れた場所にある。同年代の子供たちはこの辺りには
おらず、エステルはいつも一人で遊んでいた。
「困ったわね……。欲しいといって貰えるものでもないのよ?」
その言葉にじっと考え込んでいたエステルが、ふと口を開いた。
「子供ってどこから来るの?」
その微妙な問いにライアンは気まずさを感じたが、レナは特に慌てる様子も
見せなかった。
「それはね、女神様が授けてくださるのよ」
「女神さまが?」
「ええ、女神様が夜中、キャベツ畑に赤ちゃんを置いてね……」
「じゃあ私、女神さまにお願いする!」
「ふふ、そうね。お祈りしましょうか。お父さまにも頑張って貰わないとね」
そのあからさまな台詞にぎょっとしてライアンが見つめると、レナは「あら」と
口元を抑えた。
くすくす笑いながら、
「ごめんなさい。おかしな話をしてしまいましたね」
「いえ……」
考えてみれば当然だが、レナは一児の母であり、それはカシウスとの間にできた
ものである。まだ若く、無垢な少女の雰囲気を残したレナだが、何も知らないという
わけではあり得ない。
ブライト家にはカシウスの姿がほとんどないので、レナとエステルを、まるで
森に住む妖精の母娘のような見方をしていた。
しかし、レナはエステルの母である以上に、カシウスの妻なのだ。
たまにカシウスが帰って来た時などは、別離の寂しさを埋めるために体を重ねる
こともあるだろう。
エステルの寝静まった深夜、一階の暗い寝室で、カシウスに組み伏せられている
レナを想像しかけて、ライアンは慌てて首を振った。
二ヶ月、三ヶ月、半年とたつうちに、ライアンの思慕はつのる一方だった。
最初はレナのことを上司の妻という言葉で考えていたが、そのうちに一人の女性と
して捉えるようになっていた。
今ではブライト家に寄ると、必ず夕食が用意される。それがほとんど毎日のように
なり、あるとき食費を渡そうとしたら、穏やかな笑顔で断られた。
「うちの人、お給料だけはたくさん貰っていますから」
それに、とレナは続ける。
「弟ができたみたいで嬉しいんです。わたし」
まったく男として見られていないことに落胆しないでもなかったが、少なくとも
嫌われていないことがライアンは嬉しかった。
その信頼を裏切ることはできない……自分のレナへの感情を表に出すことは
なかった。
しかし、完全に抑えきれるものでもない。
レナの、弟という言葉に、どうして自分がこの女性に惹かれるのか、その理由を
知った気がしたのだ。それは甘い郷愁を刺激した。自覚してしまうと、それは
もう止められなかった。
想像の中で、レナを汚すようになった。ブライト家のキッチンや、家の裏手や、
あるいは暗い寝室で、レナの服を脱がせていく。ときには嫌がるレナに無理やり、
ときには淫らに微笑むレナと交わり、その白く柔らかい体の再奥に精を放つ。
虚脱感から覚めた後は、強烈な罪悪感に襲われた。
何事もなければ、それは人妻への許されない恋心として封印されていたかも
しれない。
あるとき、街に手配魔獣が近づいた。本来なら遊撃士が退治するのだが、
そのときは遊撃士たちも手が塞がっていて、関所の兵士たちにお鉢が回ってきた。
兵士たちは戦闘力という点では遊撃士にも劣らないが、多種多様な攻撃を
繰り出す手配魔獣には苦戦した。一小隊の八人がかりで波状攻撃を繰り返し、
最後に立っていたのは二、三人というありさまだった。植物型の魔獣で、つるを
触手のように振り回した。ときおり放たれる催眠ガスで、連携がことごとく
崩されたのである。
幸いなことに死人は出なかったが、みな大なり小なり怪我を負っていた。
ライアンは最後まで立っていた人間の一人だが、一歩間違えれば自分も死んでいた
ことはわかっていた。単に運がよかっただけだ。
兵舎に帰還し、手当てを受けたあと、ライアンは思い詰めた表情で考えこんでいた。
その日はブライト家には顔を出さなかった。
ライアンは三日後に、ようやくブライト家を訪れた。
出迎えたレナは心配そうに、ライアンの全身を眺めた。
「体は大丈夫? 話は聞きました。大変だったそうね……」
ええ、まあ、とライアンは生返事で返した。
戦いのことを思い出したくないのだろうとでも解釈したのか、レナはそれ以上
追求はしなかった。エステルがテーブルにつき、いつものように食卓の用意が
始まった。ライアンも立ち上がる。
「お皿、運びますよ」
「体も本調子ではないでしょう? ゆっくりしていてもいいのに」
「療養だとかでずっと寝てたんで。体がなまってしまって」
「あらあら」
微笑むレナの、その笑顔にライアンは胸を締めつけられる。
皿を持ってテーブルに向かう。レナに見られていないことを確認して、ポケットから
小さな小瓶を取り出した。
(そうだ。人間は、簡単なことで死ぬ。明日死ぬか、明後日死ぬか知れない。
この想いを閉ざしたまま終わるぐらいなら、いっそのこと……)
小瓶の中の、無色の液体を皿の上に振りかける。その日はエステルのリクエストで、
オムレツだった。ごく少量の液体は、オムレツの黄色に薄れていった。
「あら……?」
食事も終わり、食器を片づけようとしたところでレナは動きを止めた。
「どうしました?」
「ちょっと疲れたみたいで……眠く……」
そこでレナの全身から力が抜けた。あらかじめ立ち上がっていたライアンが、
その体を咄嗟に受け止める。
「おかーさん?」
エステルの言葉にも反応しない。レナは意識を失い、ぐったりとライアンに
身を預けていた。エプロンを通して、レナの柔らかな体の感触が腕に伝わる。
「お母さんは疲れて眠っちゃったみたいだ。あとでベッドに運んでおくよ。
エステルは一人で寝られるよね?」
その言葉に、エステルは「うん!」と勢いよくうなずく。
ライアンは意識のないレナを椅子に座らせ、テーブルの上にうつ伏せにさせた。
両腕を組み、その上に頭を乗せる。一見して、家計簿をつけているうちにうたた寝
してしまった主婦という感じである。
レナを食卓に残し、ライアンはエステルの歯磨きや洗顔を手伝ってやった。
パジャマに着替えさせ、二階のベッドに寝かせつける。
寝物語をせがむエステルに、魔獣との戦いの話を三十分ほど語ると、エステルの
まぶたはとろとろとおり始めた。
「エステル?」
返事はなかった。完全に寝ついたことを確認すると、ライアンは一階に降りた。
レナはまだ目覚めていなかった。ぐったりとテーブルに体重を預けている。
そう簡単に目覚めるものでもないのだ。ライアンが振りかけた小瓶の中身は、
先日戦った魔獣の屍骸から抽出した睡眠薬だ。
魔獣の死体は様々な薬品の材料となる。軍でも、始末した魔獣は専門の業者に
おろしている。ライアンは密かに魔獣のつるを切り取り、薬品として調合しておいた。
催眠ガスを使う魔獣の屍骸は、最良の睡眠薬となる。朝まで目覚めないはずだった。
「正面から、あなたのことを好きだと、そう言うべきなんだろうけど……」
ライアンは、テーブルに身を預けるレナを上から見下ろした。長い栗色の髪が
背中に流れ、エプロンに包まれた豊かな胸がテーブルに押しつぶされている。
「あなたは大佐を裏切れませんよね。でも、もう我慢できないんだ。たった一度だけ、
それだけで諦めます。あなたはずっと眠っていてください。俺が黙っていれば、
あなたは夫を裏切ったことにはならない。何も起こらなかったことになるん
だから……」
独白しながら、ライアンは身をかがめ、レナのうなじに鼻先をうずめる。
爽やかな花の香りが鼻孔をくすぐった。
背中から覆い被さり、レナを抱きしめるようにして、テーブルに押しつぶされた
両胸を揉みしだく。ぴくりとも反応しない。
レナを抱え、少しだけテーブルの上に持ち上げた。浮いたレナの腰と、椅子との
間に自分の体をねじこむ。
椅子に落ち着くと、膝の上にレナを乗せた格好になった。椅子の背にもたれ
ながら、ぎゅっとその体を抱きしめる。女の柔らかい体が、全身に密着する。
ズボンを突き上げるいきり立った肉棒に、レナの柔らかい尻の圧迫がある。
布ごしのその体を、ライアンは全身で味わった。
長い髪に隠された、レナのうなじの部分が目の前にある。鼻をくすぐる香りが、
欲情を喚起する。レナは力なく頭を傾け、ライアンのされるがままになっていた。
レナのスカートは長く、足元まである。フレアのついたすそを持ち、それを
たぐるように引き上げていくと、染み一つない雪のような太股があらわになった。
そのほっそりとした太股に手を這わせる。手に吸いつくような肌だった。
レナの股を広げさせ、スカートの中に手を伸ばす。レースの下着のようだった。
指を差しこむと、ごく薄い毛の感触が伝わる。さらに探ると、レナの女の部分が
指先に感じられた。複雑な陰影を織りなす肉の部分。
そこをいじっているうちに、ライアンのものはますますいきり立った。
レナを上に乗せたまま、ライアンはズボンを下ろし、勃起したものを取り出した。
あらかじめテーブルの上に用意していた小瓶から、とろみのある液体を人指し指で
すくいとる。レナの下着をずらし、その秘部になすり付ける。ひだをかき分けて
膣口を見つけると、座位の格好で亀頭を押し当てた。秘裂の熱さと湿った感触が、
先端をくわえる。
天を突くように屹立した肉棒の上に、レナの体をゆっくりとおろしていく。
先端がぬるりとした感触に包まれ、亀頭、カリ首、棒の部分に、熱いレナの肉が
絡みつく。レナの再奥、もっとも深いところに先端が突き刺さる。ライアンの亀頭
から根元までが、レナの濡れた感触に包まれた。
ライアンは動きを止めて、射精の欲求に耐えた。長い間思い続けてきた女性の、
その胎内に、自分のペニスを突き刺しているのだ。それも世話になっている上司の
妻に、他人の女に。
レナは力なくライアンの肩に頭を預けたまま、微動だにしない。
「レナさん、好きです。大好きなんです」
答えはない。エプロン越しに両胸を揉みしだきながら、腰を揺するようにして
小刻みな抽送を繰り返す。レナの豊かな尻肉がたぷたぷと当たる。レナはされるが
ままになっている。
まるで鉄の芯でも入ったのかと思うほど硬く膨らんだペニスを、レナの柔らかな
胎内がやわやわとなぶる。意識がないため強烈な締めつけとまではいかないが、
温かく包みこむような感触だった。
今まで半年間、このテーブルに座り、レナの料理を何度も味わった。今、同じ
テーブルに座り、意識のないレナの体を凌辱している。場所が日常と同じである
だけ、興奮もいや増した。
「レナさん。レナさんっ!」
ライアンは椅子を蹴り倒し、レナの上半身を慌ただしくテーブルに乗せる。
スカートを尻の上に乗せるようにまくり上げ、こちらに尻を突き出した格好の
レナに、剛直を突き刺す。
座位と違い、レナの真っ白な尻肉に突き刺さるてらてらと光る肉棒が、上から
はっきりと見えた。慎ましやかな菊の下に、赤みを帯びた花びらの部分がある。
腰を押しこむと、カリの部分をぬらりとした肉の感触がこすり上げ、引き抜く
ときには、膣自体がペニスを逃さぬように幾重にもまとわりつき、棒やカリの
もっとも敏感な部分をなぶっていく。ライアンは他に女を知らないが、レナの
それは名器だった。その甘い感触にライアンは恍惚と浸った。
「おにーちゃん?」
声がした。
はっとして振り向くと、目をこするエステルの姿があった。
「なにしてるの? ……おかーさん?」
テーブルの上にうつ伏せになっているレナと、そのスカートをまくり上げ、
尻に赤黒いものを突き刺しているライアンの姿を、エステルは不思議そうに
見つめる。
レナの感触に溺れるあまり、物音に気をつかわなくなっていたらしい。一階から
聞こえる物音に、何事かと起きてきたのだろう。
「おにーちゃんとなにしてるの? おかーさん? おかーさん?」
「……エステル」
一時的に混乱していたライアンの思考が、急速に静まっていく。
ライアンは、すでに自分は正気ではないのだなと思考の片すみで思いつつ、
穏やかな声で言った。
「エステル、弟が欲しいって言ってたね?」
「え? うん。だから、女神さまにお祈りするの……」
「俺も手伝ってあげるよ。これはね、子供が欲しいって女神様に伝えるための、
お祈りの一つなんだ」
「そーなの?」
「そうだよ。でも、これはとっても大事なお祈りだから、誰にも見せちゃだめなんだ。
秘密のお祈りなんだよ。エステルは見ちゃったから仕方がないけどね」
「え……弟できないの?」
「大丈夫だよ。このお祈りのことを誰にも言わなかったら、女神様も聞いてくださるよ。
誰にも言っちゃだめだ。お母さんにもね。エステル、弟が欲しいんだろう?」
「うん」
「じゃあ、黙っていられるかい? 黙っていられるなら、そこで見ていてもいいよ」
「うんー。黙ってる。誰にも言わない。ほんとに弟できる?」
「ああ……できるよ……くっ、ふっ」
言いながら、ライアンは抽送を開始した。
白い尻肉を両手で鷲掴みにし、その秘裂に腰を叩きつけるたびに、ぱんぱんと
音がなる。その様子を、テーブルの向かい側に座ったエステルが見つめている。
ライアンがペニスを突きこむたびに、レナの体が揺れる。長い髪がテーブルの
上に広がり、目蓋の閉じられたその表情は、眠り姫のようでもある。
テーブルに押しつけられるレナの上半身は、エプロンをつけたまま夕食のとき
から変わっていない。しかし下半身はその肢体を隠すスカートをまくり上げられ、
カシウスにしか見せたことのないだろう秘部に、若い牡の屹立を受け入れている。
しかも、幼い娘の見ている前で。
限界まで張りつめた剛直に、柔らかいレナの肉が粘着質の音を立てながら絡みつく。
腰から沸き上がる衝動が、限界を超えようとしていた。ライアンはレナに覆い被さり、
全身でそのしなやかな体を抱きしめながら、ひときわ強く腰を突き入れる。
極限まで密着したペニスが、レナの胎内をかき分ける。女のもっとも深い場所に、
自分の牡の器官が突き刺さった。亀頭の先にレナの子宮を感じ、欲望が決壊した。
あまりの快感に、目蓋の裏に白いスパークが走った。
「レナさんっ! 産んでっ、俺の子を産んでくださいっ!」
脳天に突き刺さるような快感の嵐の中、びゅっ、びゅっと白濁液が放たれる。
亀頭から欲望を吐き出すたびに、尿道に焼けつくような快感が走る。レナの秘肉が
柔らかくライアンを包み、漏らされた子種をその中に受け止める。熱く濡れた
媚肉が、硬く張りつめた剛直を柔らかく刺激し、最後の一滴まで絞りつくす。
手で触れることも叶わないと思っていた憧れの女性の、その膣に、柔らかい
内部に、もっとも無防備で無垢な場所に、ライアンの精液が吐き出されていく。
意識のないレナの、その秘肉を、牡の白濁液が取り返しようもないほど汚している。
レナの再奥に放たれた精液は、もう分離不可能なほどレナの内側に絡みついていた。
(やってしまった。やってしまった……)
取り返しのつかないことをしてしまったという思いはあったが、女の子宮を汚す
その行為に、牡の本能とでも言うべきか、今までに感じたことのない、震えるような
満足感があった。
「おにーちゃん? 大丈夫?」
苦しそうな表情を勘違いしたのか、エステルが心配そうに聞く。
快感の余韻に大きく息を吐き出しながら、ライアンはレナの体から身を起こした。
今だビクビクと脈打つペニスをレナの尻に埋めたまま、
「大丈夫……大丈夫だよ。エステル、これで弟ができるとは限らないけど、できる
限りのことはしたからね」
「あ、うん。ありがとー!」
「どういたしまして。でもエステル、夜も遅いし、そろそろ寝ないとだめだよ」
「うん……眠いや。寝るね」
とてとてと去っていくエステルの姿を見送り、その母であるレナの胎内から、
ゆっくりとペニスを引きずり出す。射精後で敏感になった肉棒に、レナのひだが
絡みつく。膣から抜き取ると、粘着質の糸がつっと引いた。
剛直はまったく硬度を落とさず、天を向いたままだ。ペニスを抜き取ると、
レナの秘部から白いものがゆっくりと溢れた。
レナはいまだに目を覚まさず、穏やかな寝顔を見せている。自分の中に、夫以外の
男の汚液を注がれたことも知らない。
「あと十時間か……」
ライアンは、いまだ満足しない自分の剛直を見下ろし、ぐったりとテーブルに
身を預けるレナに目をやった。秘部から垂れた精液が、太股に滴り落ちている。
ライアンは玄関に置かれた自分の鞄に近づき、中から、小さな機械を取り出した。
オーバルカメラだった。
「悪用はしません。今夜の思い出に……。この写真だけ、許してください。
レナさん、これから先は迷惑はかけませんから……」
意識のないまま蹂躙されたレナの体を、アングルを変えて何度も撮っていく。
フィルムは安いものではなかったが、あっと言う間に埋まっていった。
ファイダー越しのレナの姿に興奮がかきたてられたのか、一通り写し終わる
ころにはライアンのそれは痛いほど硬くなっていた。
「今夜だけ……今夜だけです。レナさん、今夜だけですから……」
言い訳をするようにつぶやき、ライアンは意識のないレナの体を、再び凌辱し
始めた。夜の白み始めるころまで、ライアンは五度、レナの胎内に精を放った。
睡眠薬の効果が切れる前に、後始末をした。風呂場に移し、服を濡らさないように
気をつけながら、白いものの飛び散った太股や足を丹念にぬぐう。レナの中からも
精液を洗い流す。惜しいとは思ったが、そのままにしておくわけにもいかない。
もともと中に出すつもりではなかったのだ。エステルの登場でタガが外れて
しまった。あれだけ出せば、下手をすれば子供もできてしまうかもしれない。
(まあ……カシウスさんも月に一度は帰ってるんだし。バレはしないだろう)
そう思っていたが、どうやら事態を甘くみていたらしい。後始末が不完全だったのか、
そもそも、あれだけ凌辱して何も気づかないはずがなかったのか。
再びブライト家を訪れたとき、レナの目に、歓迎とは違う色が混じっているこ
とに気づいた。歓声をあげて出迎えるエステルと、それは対照的だった。
いつものように力仕事をこなし、いつものように夕食を共にする。表面だけで
見ればいつもと同じような一日だったが、レナの挙動にはどこかぎこちないところが
あった。ライアンに対して明らかな壁があり、それでもエステルの手前、なんとか
いつも通りに振る舞おうとしているような。
夕食のあと、レナは思い詰めたような表情で、「話があります」と家の裏手に
ライアンを呼び出した。
「何の話かは、分かっていますね?」
レナの冷たい声に、ライアンはうつむいた。
情けなくて顔を上げられなかった。レナの信頼を裏切ったのだ。
「朝起きたときは、何かおかしいと思うだけでしたが。朝食の用意をしていると、
その……溢れてきました。……あなたですね?」
「……はい」
重い沈黙が、二人の間にわだかまった。
ややあって、レナが口を開いた。
「どうして……こんなことを」
「それは……」
レナへの恋心を口に出すべきか。ライアンは迷ったが、こんな卑劣な真似をして
おいて、今さらあなたが好きですなどと言えるはずもない。
ライアンが沈黙していると、レナは疲れたように言った。
「そうね……あなたも若い男の人だもの。私が無防備だったのかもしれません。
いいわ、あの人には言いません。お互い、忘れましょう」
ライアンが驚いたように顔を上げるが、レナは叩きつけるように言った。
「でも、もう二度とここには来ないでください」
「え……」
「顔も見たくありません」
「そ、それは、でも、俺だって! あの、もう二度としません! 罰はなんでも受けますから!
軽蔑されても嫌われてもいいですから、あの」
「顔も見たくない、と言ったんです」
「で、でも、エステルと遊ぶ約束もあるし、カシウス大佐にも頼まれて……」
「あの人の名前を口に出さないで!」
レナの悲鳴のような怒りの声に、ライアンは絶句した。カシウスの信頼を裏切った
のはライアンだが、レナ自身も、カシウスを裏切るような形になったのだ。愛する
夫の不在中に、他の男に凌辱されるという形で。
レナは一度も振り返らなかった。ライアンは呆然と、立ち去るレナの後ろ姿を
見送った。