「はぁ、私ってやっぱ何やってもダメなのね……」  
レダの集落有数のうっかりさん、ウェヌカが自宅の裏でため息をついていた。  
ソラの家で料理の手伝いをしていたものの、それも不首尾に終わって  
彼女の自信が回復する余地はますますなくなっていた。  
「はい、どっこいしょっ、と」  
目の前で、このレダの集落唯一のエレシア人、ケビンが何かを運んだり降ろしたりしている。  
遠目に見ると運んでいるそれは木桶のようだ。  
(なにをやってるのかしら……)  
ウェヌカがずっと見ていると、その木桶がどうやら土で埋まっているらしいことも分かった。  
そして何かがその桶の一つ一つに植えられている。  
(あまり見ない植物ね。……いえ、あれは……)  
それはまさしく大半が、まだ幼生のリーファ、ユリーファだった。  
その二種とも、成体にもなれば毒霧を噴出する、人里に置いておくには危険極まりない植物である。  
「ひっ! モンスター!?」  
植物たちの正体に気づいた驚きの声は、ケビンを振り向かせる。  
「ああ、こりゃウェヌカさん、こんにちは。不安がらせてしまって、すいませんね。  
 これのことなら心配要りませんよ。ちょいと品種改良してるんです」  
「品種改良……ですか?」  
「ええ。以前アドル君から、不思議な効果を持つ種子を見せてもらいましてね。  
 食するだけで、腕力その他の身体能力を、少々ながらも向上させられる効能があるそうです。  
 あれはこの地域特有のようですし、あれと似たものなら、これらの毒花が持つ化学成分と  
 この地の他の植物の特性を掛け合わせれば、量産できるんではと思いついたんで、  
 ただ今、鋭意実験中といったところですよ」  
「はぁ……そんなこと、思いつくもんでしょうか……?  
 それに、それ、ほっといたら成長するんじゃ」  
ウェヌカの疑問はもっともだったが、ケビンは自分が独学ながらも農学・植物学を研究し続けていること、  
またある対策を施せば危険な二種の成長は止められる旨を話し、応える。  
「不安になるのも解りますが、ちゃんと成功はしてるんですよ。数少ない成功作がこれです」  
そう言って差し出したのは、黄金色に輝く種子であった。  
「これには、服用者の生命力を高める働きがあります。ただ、量産化には適さないようですから、安価ではちょっと売れないですね。  
 成功がこの金色の1粒とすると、それ以外の……いわば、失敗作がこんなにできてしまいました」  
そう言って、後方に置かれてある大きな麻袋を示す。中には紫色に輝く種がどっさりと入っていた。  
「この失敗作の特別な効果は特にありません。食べてみましたが、毒性もないようです。ただ、とても美味ですよ」  
ウェヌカも一粒もらって食べてみた、確かに美味い。チトの実が問題にならないほど美味い。  
もしかすると、これを食材にすれば私も料理が成功するのでは。そんな考えをふっと浮かばせるほど美味かった。  
「でももしものことがありますから、くれぐれも開けて食べたりしないよう、  
 子供たちにも言っておいていただけませんかね。一粒では大丈夫でも、慢性的に食したり、  
 一度に大量に食べたりしたらどうなるかわかりませんしね。今、ラーバ先生にサンプルを送って  
 成分分析をお願いしているところです」  
 
マーヴは物陰から、あるレダ族の戦士を見つめていた。  
「お礼、言わなきゃ……」  
以前、ロムン帝国兵が大挙して集落へ攻め込んできた時、彼、シルバがマーヴを庇い、代わりに捕まった。  
しかし、アドルやラドックの活躍でこうして全員が無事に帰還できてから、しばらく経つ。  
アドルは突如ゼメス島に巨大な遺跡が現れてからまたどこかへ行ってしまい、ラドックたちもまたこの集落にはいない。  
だが、マーヴがお礼を言うべきもう一人の人は、今目の前にいる。  
(……でも、どうやって声をかけたらいいんだろ……?)  
シルバは、とてもではないが気軽に声を掛けられる雰囲気の男ではない。  
リューグには活発極まりないマーヴでも、彼に声をかけるのは、少しためらわれた。  
ために、こうして物陰からじっと見ている。  
(でもこのままじゃいけない、ちゃんとお礼ぐらい言わなきゃ)  
と、心の中で繰り返すものの、足は一向に動かない。  
(あーっ、どうしよーっ)  
あと一歩を踏み出せない迷いにふと体の向きを変えてみる……と、  
見慣れぬ麻袋を肩にずっしりと抱えた、怪しさ満点の姿でソラの家へ入っていくウェヌカの姿が見えた。  
(……? 今、ソラさんはいないよね)  
ソラは木の実採集へと出掛けたはずで、家は無人のはずだった。ウェヌカの不審な動きが気になり、  
マーヴはソラの家へと近づく。そっと入口から中を覗いてみた。  
 
(な…。なに、あれ?)  
麻袋をひっくり返して、ざーらざーらと大き目の鍋に何かの種を満載している。どうやらあれを材料に何か作る気らしい。  
(でも、なんか毒々しい色……)  
材料を盛る段階でアレなので、当然ながら作っている手つきも危なっかしい。  
料理をまだよく知らないマーヴでも見ていられなかった。  
「て……手伝い、ましょうか?」  
思わず口に出してしまい、陰から出る。  
「ひっ!?」  
どう見ても、ウェヌカはびっくりしすぎだった。  
(そ、そこまで驚かなくても……)  
「な、なんだ、マーヴちゃんなの……私はまたてっきり、ケビンさんかソラさんだと」  
(ソラさんはともかく、どうしてケビンさんが……?)「その種、いったいなんですか?」  
「えー、えー…と、ね。この近くで新たに発見された美味しい種なんだって。ソラさんから分けていただいたの。  
 だからこうして試しに作ってるの」  
どことなく発話がぎこちないのは気のせいだろうか。しかし、マーヴはある考えを思いついた。  
 
(そうだ! ここで料理を作って、お礼ということにしよう! それがいいわ!)  
なんとか、シルバに声をかけるきっかけが見つかった。内心喜々として、マーヴもウェヌカの手伝いを始める。  
 
(俺には何も出来ない……)  
いつものように集落の中心近くで過ごしているシルバの胸中には、ある思いが積み重なっていた。  
(エレシアの連中が攻めて来た時もそうだったが、今もこうして……)  
ふと空を見上げる。そこには木々に囲われた空があるだけであったが、その遥か先には間違いなくゼメス島が、  
そしてそこに突然浮上した、遥か先祖が築いたとされる漆黒の巨大建築物があるはずだった。  
(それに比べて、あのエレシア野郎はどうだ。あいつは俺達全員を、エレシアの連中から俺までも救い出しやがった)  
だが、自分はこの集落を守りきれなかった。  
(族長が重傷を追うほどの相手がいたのだとしても、それは理由にはならない……)  
あの日以来、無力感がシルバの中を霧のように覆っていた。  
この日も、そうして一日が終わるはずだった。  
 
夕方、他人の顔がはっきりとは見えなくなる頃だった。  
「あの……」  
聞き慣れない声が自分を呼ぶ。というより、普通シルバを呼ぶのはクヴァルやラーゴぐらいのもので、  
用事でもない限り彼に声をかけようとする者はいないはずだった。  
「な……、マーヴ……なのか?」  
薄暗くなりつつある夕陽にぼんやりとだけ浮かぶ小さなシルエットは、  
よくよく見ない限りマーヴだとは判らない。その姿が判別されたとき、驚かずにはいられなかった。  
その手には器らしきものを持っている。  
「あの……助けていただいて、あ、ありがとうございます」  
「ん、ああ……」  
一瞬何のことかわからず生返事となったが、すぐに理解した。  
「でも礼を言う相手が違うな。俺は何もしていない、礼ならエレシア野郎に言うんだな」  
理解した彼はまたすぐいつもの冷淡なシルバに戻り、マーヴから向きを変えようとする。  
「あ、あのっ! 作ったんです! た、たた、食べて下さい!」  
 
そう言ってパニック気味に器を両手で差し出し、最敬礼の姿勢で硬直するマーヴ。  
(わたし、なにやってんだろなにやってんだろ、これお礼だって言わなきゃならないのに!)  
腕を差し出したまま顔は俯いたまま、ひたすら赤面してマーヴは顔を上げることもできない。  
と、ふと気づくと腕が軽くなっていた。  
「はれ?」  
顔を上げる。そこには、器を手にしたシルバが、その中味をただただ口にしている姿があった。  
「うまいな。これ、マーヴ一人で作ったのか?」  
淡々と食べ続けている。ある程度食べたところで今度はシルバが器を差し出した。  
「マーヴも食べるか?」  
 
 
「……どうもマーヴたちの帰りが遅いねぇ……」  
日が落ちそうな表情の空。マーヴとリューグの母、ナーリャは帰りの遅いわが子を案じていた。  
一方、父・トクサは何事もないかのように一杯機嫌で答える。  
「またリューグの奴が隠れちまって、探すのに手間取ってるんだろ?」  
「まあそうだろうけどね。あの子が一緒だから、心配はいらないと思うんだけどねえ」  
 
 
既に日は落ちた。器の見た目に反して料理は結構な量があり、  
二人が器の中身を空けてしまうまでにはしばらくの時間がかかってしまった。  
「……すっかり、暗くなってしまったな……」  
器を空けてしばらく、二人の間の沈黙をやり過ごした後、シルバは見たままの風景に言及する。  
空は日没後の錆びたような濃橙色から群青に、そして漆黒に変わろうとする気配で、  
風景もその彩度を失い、薄絹の如き青い闇をまとってしばらく経っていた。  
「……マーヴ……?」  
彼女のほうを見遣ると、すっかり寝入っているかのように見えた。が……  
「……変……なんです。からだ、熱くて……」  
目こそ閉じているが、よく見ると息は荒くなっており、顔も火照っている。  
「大丈夫か!? 病気なら早く……」  
駆け出そうとするシルバの服を握って制するマーヴ。  
「だ、大丈夫です……体はすごく熱いけど苦しくないし、頭もポーッとしてるけど、なんだか心地いい……  
 それに、シルバさんに触られてるとこ、なんだかくすぐったくてきもちいいです……」  
シルバは介抱しようとマーヴを抱きかかえるような姿勢になっていたのである。変だ。  
シルバがそう思うや否や、今度はシルバ自身にも変化が感じられてきた。  
「う……あ、あぁ……ぁ」  
急に目眩がして、体が急激に火照ったように感じる。  
頭もまるでまどろんでいる時のように、心地良く働きが鈍くなっていた。  
急な変化に思わず、抱えていたマーヴへ被さるようにして倒れこんでしまう。そんな状態でマーヴの声が聞えてきた。  
「シルバさんも……こんな感じになっちゃったんですかぁ……?」  
「マーヴ……おまえ、あの料理の材料、なに、使ったんだ……」  
間違いなくあの料理が原因だと悟った時はもう遅かった。更なる変化が二人の体に現れていく。  
「……シ、シルバさん……」  
「こっ……今度は、なんだ?」  
「おしっ……こ……したくなりました……」  
「そ、そうか。それなら……行ってきたらいい……」  
シルバは自分の体の、とある部分の硬直化に気づかれなかったことに少しホッとした。しばらくするとマーヴが戻ってくる。  
「どうも二人とも変になってしまったな。早く帰ろう」  
「いえ……出ないんです……ここ、むずむずしちゃってるのに……」  
そう言ってマーヴは股間を押さえる。  
 
「シルバさんも……おしっこ、したいんですか? その……ぱんぱんにふくらんでます……」  
いくら暗くとも気づいてしまうほどに、シルバの股間は大隆起していた。  
もちろん、尿意から来るものでないことは彼が最もよく解っている。  
「い、いや、違うんだ、これは」  
「もしかして……あの料理のせいで、腫れちゃったんですか!?  
 わたしのおまたもむずむずして、なんだかいじくり回したくなっちゃうような、変な感じになっちゃってるんです……」  
これは間違いなく、「そちら方面」に薬効がある成分が大量に含まれた食材が使われてしまったのだろう。  
こんな幼い子でも性感を催してしまうほどに……  
「ごめんなさい、私のせいです。もし膿とかたまっちゃってたら大変! 早く出さなきゃ……」  
「え、ちょっ」  
シルバが制止する隙もなく、マーヴはまだ幼い手つきでシルバの下半身の着衣をほどいていく。  
そして程なく、エメラスの槍を思わせるほどに硬化した、勇ましげな肉の槍が剥きだしにされてしまう。  
「すごい……こんなに熱くて、大きい……」  
マーヴはリューグのそれを見たことはあった。だが、あれはそのほとんどの部分が袋で、  
申し訳程度に先端に付いていた排尿部は、小さいドリル状のものでしかなかった。  
それが今眼前にあるものはほとんどが柱の部分であるばかりか、  
太く硬くたくましい、大人の男性の頼もしさと恐ろしさを共に具現化させたような、肉の兵器そのもの……  
「あっ! お、おい、こする……な……あっ」  
マーヴは一瞬、目の前に鎮座するものの迫力に圧倒されてしまったが、これは病気のせいかもしれないと思い直し、  
小さな両手を使って、目の前の肉棒へ搾り出すような動きで刺激を加えていく。  
「そんな……っ、そんな動きでそんなところを刺激された……ら……」  
シルバの息がさらにあがっていく。それを誤解したマーヴは、もはや手では遅いかもと思ってしまう。  
「手じゃしぼり出せないかも……よし、それなら!」  
柱をマッサージする動きを止め、その逞しい根元をがっしりと両手で掴む。  
直立不動、血管を全身に浮き上がらせた凶悪な表情で、一つ目の雄々しき獣はマーヴをじっと見つめている。  
その目玉の部分を、マーヴもじいっと見つめる。まるで何かを決意したかのように。そして顔と棒の獣との距離が縮まっていく。  
そしてマーヴの口がぱっくりと開かれた。  
「な、何を。マーヴ、やめ」  
そう言った頃には、既に棒の部分からマーヴの口中のやわらかな熱が感じられていた。  
粘膜接触の瞬間、シルバはとうとう力が抜け、仰向けに倒れてしまう。  
マーヴは棒の内部にあるはずの膿を吸い出そうと夢中で熱くなった先端を吸っていたが、  
シルバがさらに息を荒げて倒れたことから焦りを募らせ、  
吸いたてつつ前後に動かす、唇での柱へのマッサージも加えていく。  
当然その行動はシルバに強烈な快感をもたらした。  
力を加えるたび、途切れ途切れの快い空白が脳内に生まれて、熱に浮かされたようになってしまう。  
(お口だけじゃだめかも……なら)  
マーヴはさらに一度退かせた両手を再動員し、玉、袋、その周囲、前立腺を含む部分へも刺激を加え始めた。  
肛門付近の処女地を侵されたことに戸惑うシルバの意思に反し、  
怒れる肉獣は自らを慰撫する少女の口へ、褒美の怒濤を注ぎ込む時を心待ちにしている。  
与えられる快い刺激に任せ、少女の口中で無遠慮に自らの大きさを主張する。  
「そ、そんなに刺激したら、あ……あぁあ! あっ、あぁ……あ」  
一瞬大きくマーヴの口の中で膨らんだかと思うと、はち切れそうなシルバ自身は  
まだ幼い少女の口の中へ、肉欲の精華とも呼ぶべき濁り汁を思う存分吐き出してしまった。  
一度出しただけでは収まらず、そのまま断続的に放精は行われていく。  
彼本人は硬直したまま、彼自身が排出したがっている白濁をただただ出させるに任せきっていた。  
そして彼女は出されるがままに激噴を受け入れ、さらに吸い立てていく。多分少しは飲んでしまったに違いない。  
(出して……しまっ……た)  
まだ幼女とも呼べうる女の子の口の中を、濃厚白濁汁で汚してしまったことに、  
快楽こそ感じつつも、罪悪感は拭いきれない。シルバは排出の快感と後悔との狭間に落とされ、ただぐったりしていた。  
だがそんな呆けたような表情の彼を、ホッとした表情で彼女は見下ろしている。  
 
「いっぱい……膿、出ちゃいました。もうこれで病気の心配はないですよね」  
彼女の口元には少し白濁が残っているのが見えた。  
そして発される言葉には、まだ粘りが口中に残っているのか、発音しにくそうなぬめりが音となって感じられる。  
「俺は……なんてことを」  
「元々私のせいでこうなっちゃったんですから、当然です。でも、本当によかった……」  
「……」  
「?……どうしたんです、か……きゃっ」  
 
シルバ自身にも、何故いきなりそうしてしまったのか、解らなかった。  
ただ、自分を本当に心配してくれたこの女の子が、この上なく愛しく思えてしまった。  
そして、その可憐な唇を独占してしまいたいという衝動が咄嗟に生まれたことだけは確かだった。  
ただひたすらにマーヴの唇を吸い、その中に自らの舌を滑り込ませる。  
不思議と彼女も嫌がらない様子で彼のくちづけを受け入れていた。  
彼女の口の中には少し自分の精液の残り香がするが、もはや気にもならない。  
 
(俺は……マーヴが好き、なのか?)  
 
自分の唾液と彼女の唾液とを絡め、互いの唇の感触を味わっているこの時に、彼は今さらなことを思った。  
何人かの集落の女の人に対し、似たような感慨を持ったことは何度かある。だがそのどれも、  
ここまで直截的な行動に移したくなるほどの熱さには至らなかった。無論、オルハに対するそれも含めて。  
(い、いや。料理の中の妙な成分のせい、なのかもしれんが……)  
だが、そんな躊躇は目の前の少女の前には、そして唾液と舌が粘り絡み合う心地良い感触の前には、全くの無意味だった。  
唇を離しても互いの唾液が糸を引き、しばらくお互いの唇は結ばれていた。  
暗がりの中で僅かに見えるマーヴの瞳は少し潤んでいるように見える。  
その濡れた瞳には狼狽の色こそ少しあったが、嫌悪や拒絶の表情はない。二人は闇の中で見つめあう。  
 
「ごめんなさい……わたし、変です。チュッてしてもらって……きもち、いい……」  
少し涙声で、いきなりのキスへの戸惑いを、そして歓びを露わにする少女。  
これも先ほどの料理の薬効のせいなのだろうか。  
シルバを正面から見つめる彼女の表情には、快楽と綯い交ぜになりながらも、  
確かに一人の男性を想う、恋する乙女の色香があった。  
「一緒に……変に、なっちまおうっ」  
 
もはやシルバを、二人を止めるものは存在しない。  
さらなる熱いキスが再び二人を結びつけ、そして荒々しい戦士の手はまだ幼い少女の秘部へと潜り込んで行く。  
人当たりの悪い彼の女性経験はほぼ絶無であるにもかかわらず、  
マーヴの内股を、そして股間を彼が一撫でするたび、彼女は微かな嬌声を洩らして敏感に反応する。  
「気持ちいい、か?」  
唇から離れ、首筋にキスしながら耳元で囁く。マーヴは無言で頷いた。  
彼女がシルバを抱きしめる力は、より強くなっていた。  
そして、その可憐な両手は再び、彼の股間へ訪れていたのである。  
先ほどのように柱の部分をさすりつつ、さらに今度はその先端を、丸く指先で磨くような動きで撫でてくれてもいる。  
 
「マーヴ、もう俺は大丈夫だから……」  
「わたし……気持ち、いいです。おまたとか、その近くも、くすぐられて……  
 だから、シルバさんにも、もっと気持ちよくなってもらいたい……」  
 
幼い少女による肉棒奉仕という返礼には、肉体的快感とともに、幼女愛という禁忌を冒すことへの背徳の甘美も滲んでいた。  
恐らく、いや間違いなく、幼い彼女が男の局部をこうして握り、こすり立てたのは生涯初めてのことであろうし、  
実は彼もまた女の人に自らの弱点をいいようにされてしまう経験は初めてであった。  
ならばと彼もまた股間へだけではなく、彼女の服へも手を忍ばせ、そっと乳首を探り当てる。  
弄り始めるや否や、彼女の息がさらに上がり、甲高い鳴き声が交じり始める。  
 
「もう、もう……がまん、できません……からだ全体で、私のいろんな所、こすって下さい……」  
彼女は全身を彼の肉体へこすりつけ、さらなる快楽の共有を急き立てる。  
熱くいきり立つ剛棒から彼女のたおやかな手が離れた代わり、  
彼女の両太股に包まれた股間が、精液充填中の肉砲摩擦の接待をし始めた。  
彼女の軽い全身が彼へと乗っかり、前後に律動を始める。  
それは大人の女性が性の交わりに勤しむ動きとほぼ、揆を一にしているかのようであった。  
剥き出しの最も敏感な男の部分を同じく剥き出しの女体でこすられて、  
彼の性衝動の内圧は最早臨界点近くまで高まっていた。高まりすぎた性の衝動は、生殖を模した直接行動へ容易に転化される。  
 
「おま……たの、なか、に……シルバさんの、あついの、がぁ……あ、ぁ」  
膜を破ってしまわぬように、先端の紅の部分だけを彼女の谷間に宛がって前後に擦り立てていく。  
まだ幼い女性器へ、その煮え滾る全砲身をぶちこむわけには行かない。  
上から見ると、股間の先端、真っ赤に実ったスモモが、彼女のちんまりとした両脚の狭間を出たり入ったりして  
果実同士の戯れを愉しんでいるかのように見える。  
脳と下腹部で渦巻く性欲の奔流に衝き動かされながらも、彼にはまだ目の前の幼女を思い遣る余裕があった。  
その肉柱の先端に輝く紅冠だけが、彼女の幼い宮殿への誉れある初の来賓として参内していた。  
初めての殿方を股間で接遇した少女の瞳には、牡という未体験の存在への怯えと躊躇いが、その十分すぎる潤みと共に見て取れる。  
しかし嫌がってはいないことに、彼は同時に気づいていた。  
「痛く、ないか……」  
「きも……ち、いい……です。あつくって……すごく、おちんちん、うれしそう……」  
膜の手前で暴れさせている幼児性の先端の、肉感的な熱さとこするような彼の動きとが、  
彼女には無邪気に甘えているように感じられていた。  
「ちんちんだけじゃない……俺自身も、すごく、嬉しい」  
彼女は痛がっていなかった。それだけで、彼は救われたように感じた。  
自分の動きで気持ち良くなってくれる女の子がいて、そして自分にも無上の快感がある。  
体を接して、ひたすらにお互いの敏感な部分をこすり合わせていることがただただ、至福に感じられていた。  
だが、その至福感も、快感の絶頂を終止符にして終りを迎えることに気付かないではいられない。  
白い濃厚液の予感が股間に兆す。赤い潮を迎える前の少女を相手に生殖の目的を果たし得ず、  
ただ少女との快楽のためだけに解き放たれる性欲の結晶が、新鮮な幼い亀裂を汚辱しようとしていた。  
「あ、ああぁ……も、もう、出そ……う、だぁっ」  
彼の異変に彼女も気付き、荒い息のままで彼を見つめる。性器とは違う熱源を急に股の間で感じる。  
何かが注ぎ込まれたような触感。引き抜かれた彼の雄しべの先端からは、白い蜜が雫となり一滴、二滴と垂れている。  
「だ……だめ」  
彼女が彼に願う。離れないでほしいと。  
引き離された彼の肉幹を掴み、再び、その逞しい温もりが寄り添ってくれることを願った。  
彼は従う。まだ、濃厚な雫の名残が潤う赤い肉の宝玉を、彼女の秘密の小部屋へと宛がう。  
そのまま潤滑に任せ、彼女の幼い秘部は彼自身を頬張った。  
二人の営みの余熱は沈黙となって、二人の間を温かく埋め尽くしていた。  
 
(やっちまった……)  
しばらくして、二人はどちらともなく自然と離れ、並んでぐったりとしていた。  
シルバは虚空を眺めている。その視界の先にはもう星が瞬いていた。  
「わ、悪かった、マーヴ、こんなことをするつもりは」  
ぐったりとしながらも謝ろうとするシルバの胸元へ、マーヴが全身ごと密着してくる。  
その突然の愛らしい感触に言葉が詰まってしまった。  
「シルバさん……」「……」  
返答できない。感情が言葉にならない。いや、言葉は出せるのだが、  
どんな言葉も、自分の想いを伝えるには絶対に足らないような気がして、出せなかった。  
「……」  
シルバが答えを躊躇っているうち、今度はマーヴのほうが彼の唇を奪った。  
「……!」  
突然のことに驚きながらも、目を閉じ、彼女を受け入れる。  
彼女は舌を動かしたりするようなことはなかった。  
しかしその分だけ、互いの唇をより深く味わえたのかもしれない。  
そうしているうち、急にマーヴがちゅぽんと唇を離す。  
「……なさい」「?」  
シルバが聞き取れなかったことに気づくと、また改めてマーヴはしぼり出すような声で言う。  
「ごめん、なさい……」  
シルバは困惑した。謝るべきは間違いなく自分のほうなのだから。  
「どうして、お前が謝らなきゃ……」  
「だって……伝えられなかったから……」  
「???」  
「好きだって気持ち、伝えたかったんですけど、好きだって言うより先に体が動いちゃって……」  
シルバは唖然とした。  
(なんてことだ、こんな小さな子に気を遣わせちまった挙句、先に告白されてしまうとは)  
「変……ですよね。こんな子……」  
「……いや、変じゃない」  
シルバは正面からマーヴに向き合う。  
「変なのは俺のほうだ。素直に好きだって言やあいいものを、気ィ遣わせて先に言わせちまって……  
 だから……改めて、言わせてくれ」  
──もしかすると、お互い妙な成分のせいで体が火照りきり、それで好きな気持ちが一時的に昂っているだけなのかもしれない──  
「俺は、まだ戦士としても未熟だ。だから……こんなことを、お前に言えるような立場じゃないことは、分かっている。  
 俺はお前を護るに相応しい戦士になってみせる。俺は……お前を、護りたい。それは、つまり……」  
──だが、それでもよかった。初めて感じる、この今の気持ちを伝えられるなら──  
「……お前が、好きだ」  
 
返ってくるのが、どんな答えだろうとも。これでよかった。  
 
それから間もなく、ラーバからの知らせが集落へ舞い込んで来た。  
ケビンが依頼していた「失敗作」の成分分析結果である。結果はやはりと言うかなんと言うか、  
「一時的な滋養強壮・精力増進に効あるものの、過剰に摂取すれば猛烈な催淫効果を発現する」というものだった。  
そしてさらに、その失敗作を詰め込んだ袋がそっくり消えていたことで、また騒動になった。  
が、そちらの方は「金目の物を漁っていたロムン兵の生き残りが怪しげな袋を抱えて、どこかへ運んでいた」という目撃情報で収まることになる。  
その情報提供者がウェヌカであることは、言うまでもない。  
そしてなぜか彼女の家の裏手には、失敗した料理の山が捨てられていたという……  
 
ともあれこうした紆余曲折を経て、命の種がケビンの店で、無事? 高額ながらも発売され始めたのであった。  
 
 
……そして、時が少し経った頃。  
かの匣の崩壊という結末を迎え、アドルたちが島から離れようとしていたその時。  
 
シルバは不意に声をかけられる。族長その人だった。  
「もう、お怪我は大丈夫なんですか」  
「お陰様でな。さて……この度、大きな問題が一つ解決したわけだが、我々には未だ解決されざる問題がある」  
「……なんでしょう?」  
「オルハの後継者のことだ。つまりは、その夫たるべき人物ということだが……  
 その候補をつらつらと考えてみるに、お主もそのうちの一人として十分資格があると思う。どうであろうか」  
以前のシルバなら、不意の朗報に喜んだであろう。しかし。  
「……族長、申し訳ありません。私には……想う人が既に、いるので」  
「そうか。いや、無理にとは言わん。……しかし普段ろくに  
 異性どころか同性の同胞とも語らわぬお主が、一体誰に心惹かれておるのか少し気になるな」  
「その人と対等に並び立つには、私などでは未だあまりにも力不足で、ただ恥じ入るばかりです……  
 その人を護るに相応しい戦士たるべく、一層精進せねばならぬと感じているところです」  
「うむ。善き心意気だ。相手が誰なのかはもう訊くまい。一族の戦士としての誇りとともに、  
 その想う者に相応しき者となれるよう、努力するのだぞ」  
 
以前と比べ、魔物の活動は明らかに沈静化していた。風見の丘へ至る樹海北西部の道も例外ではない。  
ついさっきも子供たちがその付近で遊んでおり、散り散りになって集落へ帰っていく。  
その風見の丘近く、二人だけの秘密の場所、遊び疲れたマーヴはシルバの腕の中で眠っていた。  
以前は全く子供と縁のなかったシルバが、子供たち相手に遊んでやるようになり、  
彼女のみならず子供たちとの距離が急に近くなったことに、皆は歓心を覚えこそすれ、疑いの目をかけることはなかった。  
彼の腕の中で眠る彼女の表情を見ていると、つい微笑ましくなってしまう。  
しかし同時に、邪心が少しくすぐられて股間が芽生え始めてしまう。  
芽生え始めるとそれが若々しく猛る樹になるのに、そう時間は要しない。  
遊び疲れて眠った彼女へ血気盛んな剛棒が押し当てられると、その硬度は極限まで高まる。  
彼は彼女を抱きしめる腕の力をそっと強める。体温が柔らかく感じられた。  
(あの夜のアレは、一時の気の迷いではないだろうな……?)  
シルバが懸念しているのは、自身のそれではなく、マーヴのそれである。  
その幼い肉体をいいようにしてしまった事に、彼女は後悔していないのだろうか……  
だが、その懸念は彼女の手つきで払拭される。  
「お兄ちゃん……かたく、なっちゃってますね」  
「起こしちまったか、悪い」  
彼は、マーヴから恋人としてではなく、兄として慕われるようになっていた。それを彼が望んだということもある。  
まだいっぱしの恋人になるには彼女は幼すぎるし、  
また自分も、彼女を護るべき者として、様々な技倆が足りないと思っていた。  
でも、二人とも一緒には、いたい。  
だから今は、共に歩むべき兄妹として付き合い続ければいい。  
ちょうどマーヴの弟、リューグも今回の事件を経験し、一族の男としてどうあればよいかということを考え始めているようなので、  
戦士としての心構え等々を教えるための存在にもなればいい、とシルバは思い始めていた。  
二人はお互い両思いながら、自らの幼さを認めた上で付き合っている。  
「マーヴ、今日はいい。疲れてるんだから無理するな」  
「私はいいんです。こんなに苦しそうに硬くなって……」  
 
彼女は起き上がると、座した彼の両脚を開いてその奥へと跪く。  
差し伸べられた幼い手で、硬く緊張した男の本性は穏やかに揉みほぐされていく。  
射精を急かすような忙しない動きではない、自らを硬く固めた男を優しく思い遣る、  
心の込められた慈母の如き手つきに、牡の器官は愉悦の快哉を上げていく。  
「もうそろそろ……うれし泣き、しちゃいますか?」  
幼い彼女は、強張った肉棒から白いものがどろりと出て、  
ぐったりと萎れてしまう生理現象を涙に喩えてみせる。たしかに彼は嬉しかった。  
「ああ……マーヴの前でなら、俺も……」  
最後まで言うのはやはり気恥ずかしい。冷静な表情こそ崩してないものの、上気して赤面した顔がより熱を増す。  
それを気付かれるのが嫌で、つい彼女から顔を背ける。彼女はそれを察してただ微笑む。  
「安心して、泣いちゃって下さいね」  
既に下半身の着衣は下ろされ、剥き出しの牡が少女の指に導かれ、白日の下に曝け出される。  
その醜悪とも言えるほどに膨張した肉棒を、指で味わうかのように丁寧にさするマーヴの姿は可愛らしく、また美しくも見えた。  
同じ視界にある自らの膨れた男根との対照でそう見えるのかもしれないが、それだけではなかった。  
(俺の精も何もかも、まるごと包み込んでくれるつもりなのか……)  
左手は柱をそっと握りその包皮を優しく撫でていく。右手は指を揃え、掌を凹ませすっぽり亀頭を包み込むように載せて、  
ころころと玉を磨くような動きで転がしている。本当に大事な宝玉を磨いて手入れするような慎重さで、彼女は彼の性器と接していた。  
その、ぎこちないながらも、愛情のたっぷり込められた手の動きに慰められて、  
彼は射精するのも忘れ、陽だまりの中、そのまま眠ってしまった。  
 
すっかり慰撫され、安心しきった猛獣のように、その硬さを残す獣性を彼女の手の中に委ねている。  
弄られることへの性的興奮というより、大事なところを一身に預けていられる甘やかな安心感をより強く感じていた。  
もはやただの快楽ではない。自らを任せられる異性への信頼感とそれに基く安らぎ。  
外気と陽光の温かさと、股間より伝えられる温かさ、二つの温かさに彼は包まれていた。  
 
股間の上を繰り返し繰り返し、同じところを撫でさすり続ける手。  
静かに繰り返される興奮棒磨き。彼の寝息に彼女が気づくのは、しばらく経ってからだった。  
 
暖められたそよ風が、彼の寝顔を撫でていく。  
寝ているシルバの顔は普段の無愛想な表情とは打って変わって、  
無邪気な男児そのものに、マーヴには見えた。思わず、髪ごしに頭を撫でてしまう。  
彼は起きているのかいないのか、身を転がして彼女へと体を密着させてくる。  
彼女もそれに応じ、彼に密着して横になる。  
「甘えんぼさんのお兄さん……ずっと……私を、護って下さい……」  
マーヴは眠っているシルバの頬に、そっとくちづけをした。  
 
二人を吹き抜ける風は、静かな波音だけを乗せ、眠れる二人を包んでいる。  
凪いだ海の波音は、あの大渦の消失を、何よりも強く証明していた。  
無数の因業を呑み込んできた渦は、もはや無く。  
波濤きらめく穏やかな海からは、ただそよ風が吹いてくるのみであった──  
 
─了─  
 

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