「もうすぐクリスマスね、ロイドにプレゼントをして、ちょっとは意識してもらえるようにしなくっちゃ
う〜ん、どんな物が喜ばれ、かつ『性的』に私の事を見てくれるようになるかしら?」
自室でぼ〜っとそんな事を考えていたエリィの脳裏に、昔小さい頃、父に送った肩叩き券の事が思い浮かんだ
あの時の父の嬉しそうな笑顔は今でも忘れられない
「そうね! これでいきましょう! 少し幼稚だけど、ロイドにはこういう真心の篭ったプレゼントのがきっと有効だわ!」
ポンと両手を叩き、工作に取り掛かる。ふんふんと鼻歌を口ずさみ、楽しそうに厚紙を切り、マジックで文字を書いていく
「ふふっ、ロイドったらどんな顔するかしら? 『嬉しいよ、エリィ、早速今晩使うから、僕の部屋にきてくれるかい?』
そして二人は……。な〜んつって! きゃ〜!」
―クリスマス当日―
エリィは、支援課の屋上の手すりに寄りかかり、白い息を吐きながら顔をほころばせていた
冷えた風が酒で火照った体を心地よく撫でてくれる
支援課でのささやかなパーティが終わり、ロイドに屋上でまってるからと言って待ち合わせているのだ
「エリィ、待たせた。どうしたんだい? こんな所に呼び出して。また何か壁にぶつかったのかい?」
その言葉でエリィは思い出した。支援課をやめようかと悩んでいた時の事、ロイドに元気付けられた時の事を。
そう、思えばあの時以来だ。ロイドの事を異性として意識し、好意をもつようになったのは
「もうっ、違うわよ。もう私を遮る壁はないわよ」
「……それに、たとえ壁ができたとしても、私にはロイドがいる。またあなたに――あなたが壊してくれるでしょ?」
素面じゃとても言えないような台詞。顔が熱いのは酒のせいだけではないだろう
真っ赤に染めた顔で真直ぐにロイドを見つめ少しドキドキしながら返答をまつ
「ん? 勿論、エリィが困っているなら僕はいつでも力になるよ、大切な同僚だからね。それに、ランディや課長だって
頼りになるからね。きっと適切なアドバイスをしてくれるはずだよ」
「そ、そうね……。ま、まぁそうよね……。ロイドだもんね、分ってたけどね、アハハハハ」
溜め息まじりの乾いた笑いがエリィの口からもれた
「コホン、それでは本題に入ります」
右拳を口にあて一呼吸し、自身に活を入れ、プレゼントを後ろに回した左手の中で確かめる。
トクントクン。鼓動が早くなる。これほど緊張するのはいつぶりだろうか
「えっと、コレ、あなたへのクリスマスプレゼント。受け取って」
両手でプレゼントをロイドの前へ差し出す
「……ごめん」
「え?」
いきなりの言葉に心臓が握り潰されそうになる。どういう事? 私のプレゼントは受け取れないの?
「実に申し訳ない。エリィからクリスマスプレゼント貰えるだなんて、思ってもなかったし、僕のほうは何も用意してないんだ
本当にごめん!」
「…………」「もうっ! いいのよ、そんな事、私が勝手に用意したんだからっ。それより、差し出した私の手、
プレゼント、なんとかしてくれるかしら?」
「あ、ごめんごめん。ありがとう、本当に嬉しいよ。女性からプレゼントを貰うだなんて、セシル姉以来だよ」
「あら? ロイドってば顔が赤いわよぉ? 照れちゃってる? ひょっとして照れちゃってる?」
明らかに真っ赤になって照れくさそうにしているロイドを見て気をよくしたエリィは、意地悪く笑ってみせた
「ああ、こういうの慣れてないからね、それにエリィからだからね、本当に嬉しいんだ」
「え……」
ちょっと、ちょっと、何この雰囲気。すごいドキドキするんですけど!
「開けてみていいかい?」
「え、あ、はい! どうぞどうぞ!」
予想外のラブフィールド発生に戸惑い、思わず声が裏返ってしまう
「ん? なんだろう、カードが一杯入ってる。どれどれ」
『1日性欲処理券。エリィ・マクダエルが真心を込めて御奉仕致します(生中おK)』
それからすぐの事だった、ロイドが捜査一課に移転したのは。