ぷにゅん、という音がしそうな動きで、オレンジが生クリームの土台に埋もれていく。
最後の盛りつけも無事に終え完成したスイートケーキを前に、エリィは唇を綻ばした。
「後はキーアちゃん達が帰ってくるだけね」
戸棚にケーキを仕舞うとエリィはエプロンを外す。
今日は久しぶりの休暇。キーアは日曜学校の一日遠足で、ティオとランディはその付き添い。課長
も朝から本部会議。ロイドはというと、台所のすぐ外、一階の共有スペースを掃除していた。
(皆が帰ってくるまでまだ時間もあるし、私も台所の掃除をしましょう)
掃除用具を借りにエリィが向かおうとした矢先、ドアが開いた。
「お掃除お疲れさま、ロイド。何か飲む?」
入口の方を見て微笑むエリィ。が、ロイドは突っ立ったまま、何の反応もしてこない。
「……ロイド?」
訝るエリィの声に、ロイドがはっと身じろいだ。
「大丈夫? もしかして疲れてるの?」
「あ、いや平気さ。この部屋の、この甘い匂いに、少し驚いただけだから……」
小走りで駆け寄ったエリィから、ロイドが目を逸らす。
「あ……確かに……」
指摘されて初めてエリィは気付く。焦げる寸前まで焼いた小麦粉と砂糖の匂い。生クリームの匂い。
飾りに使ったフルーツ類の匂い。それぞれ系統の違う甘さをもった匂いが渾然一体となって台所に充
満しているのに。
「こんな甘い匂いの中で今日の夕飯を作らせたらランディに悪いわね」
エリィが窓を開けに行こうとした矢先、ロイドに左手を掴まれた。
「もう少し、このままで……してくれないか」
今まで顔を逸らしていたロイドが、エリィをじっと見つめてくる。
「この甘い匂いを嗅いでいると……何だかエリィの中に入ったような気がするから、だから……」
上気した顔で告げられた言葉に、エリィは一瞬ぽかんとした後、ぼっ! という音が似合う勢いで
頬を赤らめた。
「やっ、やだ、いきなり変な事をいわないでよ」
慌ててロイドから顔を逸らし、エリィは右手で髪をかきあげる。掴まれたままの左手を通して、彼
の肉体の感触や熱の記憶が鮮やかに蘇ってきて、疼きにも似た震えが止まらない。
アッシュブロンドの髪が甘い風を起こして揺らぎ、彼女の白い首筋についたキスマークを晒した。
「……変な事じゃないさ」
熱と強さの篭もった囁きと共に、エリィはロイドに抱き締められる。鍛えられた彼の腕に触れ、彼
女の豊かな胸が、むにゅん、と動く。
「ちょ、ちょっとロイド……」
惑うエリィに構わずロイドは彼女の首筋や髪の毛に鼻先を這わせる。
彼女の愛用する香水の匂い――草原の片隅でひっそりと咲く花を思わせる香りが、鼻腔を通して
ロイドの頭の中を刺激してくる。
「……やっぱり、エリィの匂いも甘いな……」
うっとりした声で口ずさむと、ロイドはエリィの耳たぶをそっと噛んだ。
「――っ……!」
彼の吐息と唇のくすぐったさに、エリィの口から声がこぼれる。
それを了承ととったのか、ロイドが、慣れた手つきでエリィの服のボタンを外し始めた。
「ちょ、ちょっとロイド……!」
エリィの抗議をロイドは自身の唇と舌でもって塞ぐ。彼女の吐息がダイレクトに口に入り、鼻腔が
新しい甘い匂いを感知する。
(やっぱりここも甘い匂いがするなぁ……)
ロイドは目元を綻ばせながら、自分の舌をエリィの舌や歯に絡めて舐め回す。その間に彼女の服の
ボタンを全て外した。
ピンクのシルク生地に白いレース飾りがついたブラジャーが露わになる。ロイドが慣れた手つきで
ブラのフロントホックを外すと、まるで蕾が花開くようにブラが左右に分かれ、エリィの豊かな乳房
が現れた。
花びらのようにきめ細かくて滑らかな白い肌に、淡いピンク色した小さな乳首。それと複数のキス
マーク。
ロイドは、キスマークを順番につついた後、乳首に触れた。
「……んっ!」
エリィがぎゅっと目を閉じ体を逸らす。その背中を右手でしっかり抱えると、ロイドは掌で乳房全
体をゆるゆると揉みながら指で乳首を転がし摘んだ。
柔らかかった乳首が、指の中で堅く尖ってくる。
「っ! んっ、んあっ……!」
エリィの頬の赤みがさらに強まり、体が何度も揺れ動く。
互いの唇で繋がった口の中でも彼女の舌が激しく飛び跳ね、ロイドの舌にすがりつくように絡んで
くる。
そんなエリィの反応を心行くまで楽しむと、ロイドは口を離した。
ぷはっ……と、息の塊がこぼれ、二人の口の間で唾液が糸を引いて伸びる。
「ロ、イド……」
潤んだ瞳と真っ赤に染まった頬で呟くエリィを壁に押し当てると、ロイドは両手を離し、その場に
膝を折る。
タイトスカートの裾をめくると、そのまま彼女の股下に顔を潜らせた。
「!! だ……!!」
エリィが両手で押し戻すより先に、ロイドの鼻先が彼女の股に触れる。
「……ああ、やっぱりここも甘くて良い匂いがする……」
うっとりとした声で口ずさむと、ロイドは鼻から思い切り息を吸い込んだ。
タイツとパンツの布地を越えて、湿り気を含んだ彼女の匂いがロイドの鼻腔に飛び込んでくる。
たまらずロイドがむしゃぶりつくと、上から彼女の矯声が返ってきた。
「やっ……ちょ、止めてっ……!!」
顔を真っ赤にして悶えるエリィに構わず、ロイドは咀嚼するように口を開閉させながら顔を動かす。
彼の唾液でタイツとパンツの布地が濡れ、その向こう側に隠れている花弁の凸と密壷の入口の凹が、
露わになってきた。
「……本当に止めて欲しいのかい?」
顔を離して問うた後、ロイドは両手で彼女のタイツとパンツを一気に引きずり下ろす。
彼女の股とパンツの間で透明な水の糸が伸び、部屋の明かりに照らされ煌めく。
「とてもそうには見えないんだけど?」
ロイドが露わになった花弁を指でちょんとつつくと、密壷の入口から愛液がこぼれ出て、パンツの
上にぽたりと落ちた。
「だ、って、掃除の前にも……した、でしょう……!」
「いや、回数とか間隔ってあんまり関係ないから。むしろ、さっきしたばっかだから止まらないと言
うか……」
顔を真っ赤にして反論するエリィに、ロイドは苦笑いで返すと、再び彼女の股へ顔を寄せる。
微かに震える花弁へ優しく口づけすると、舌を突き出した。
猫がミルクを飲むように、ぺろり、ぺちゃりと、ロイドの舌がエリィの花弁や密壷の入口を舐めて
いく。
「や……あ、あんっ、んふあっ、あ!」
エリィが顔を真っ赤にしてのけぞり、両膝をガクガク揺らす。舌のザラザラした感触と弾力に舐め
られる度、くすぐったさが体の中心でふわふわ膨らみ、お腹の中が炙られる。
花弁もピクン、ピクン、と喘ぐように震え、密壷も愛液を垂れ流す。
ロイドの口元はエリィの愛液でびしょびしょに濡れ、留まりきれなくなった分が顎先から滴として
垂れ落ちていく。
(……もったいないな……)
首筋を伝う愛液の感触にロイドはそう思うと、口を大きく開いた。
花弁から蜜壷までの間を口で覆うと、舌先を丸めて尖らせ、蜜壷の中へ差し込む。滑らかな弾力と
熱を持った肉壁がロイドの舌を押してきた。
「!! あぁあああっ!!!」
エリィの声が一際大きくなるのと同時に、肉壁がきゅっと締まって、ぶるるっ! と震える。愛液
が一気に噴き出し、ロイドの口の中へ流れ込んでくる。
それを喉を鳴らして飲み干すと、さらに求めてロイドは蜜壷に挿れたままの舌を動かし始めた。
「や! あ、んっ! んんんっ!! あ……っ……!!」
喘ぐエリィの顔が更に赤まり、目尻に涙がうっすら浮かぶ。ロイドの舌が自分を内側から舐めてな
ぞってつつく度、お腹の中が激しく煮えたち溶けていく。
「ああぁっ! やっ……あ、あ! はぁっ……あんっ!!!」
気持ちよさで体は下へ引っ張られ、一瞬でも気を抜けば彼の顔の上に座り込んでしまいそう。
(やだ……他に人がいないとはいえ、こんな所で……)
エリィの視界に入るのは、見慣れた台所の光景。自分やロイドだけでなく、ティオやランディも交
代で食事を作る場所。
そんな所でロイドに大事な部位を舐められ弄ばれている現実にエリィの体が罪悪感に震えた刹那。
ロイドの舌が蜜壷の中にある突起を突いた。
「――!!」
瞼の裏にフラッシュがたかれたかと思うと、体の内側から爆発するような衝撃が走る。
「ああああああぁああああっ!!!!」
エリィが全身を震わせ絶叫あげる中、彼女の蜜壷が大量の愛液を勢いよく噴出した。
「あ……あ、ぁ……」
エリィの上半身が力を失い、その場で崩れる。完全に倒れる前にロイドが口を離し、彼女の背に手
を回して支えてあげた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
肩を大きく上下させながら、豊かな乳房をぷるんぷるんと揺らしながら、エリィがその場に尻餅を
つく。解放された花弁と蜜壷は未だ震えて愛液を吐き続け、スカートはもとより床まで濡らす。
「エリィ……いいかな……?」
ロイドがズボンのジッパーを下ろす。途端に彼の男根が中から飛び出し、天に向かってそそり立っ
た。
「――! だ、だめよこんな所で!」
彼の男根を見て、エリィは理性を取り戻す。
「第一、ロイド、着けてないでしょ!」
羞恥に悶えながらも、エリィが竿に幾筋もの血管を浮かせた男根を指さすと、ロイドがはっと息を
のんだ。
「……そっか……そうだよね……」
ごめんと頭を下げると、ロイドはズボンの中に男根を仕舞い、台所から出ていく。
その後ろ姿を見送って、エリィの胸がズキリと痛んだ。
(悪い事……しちゃったわね……)
彼を傷つけてしまった――そんな罪悪感にエリィは目を伏せ、自分の体を抱えて縮こまる。こぼれ
出たため息は、すぐに部屋の甘い匂いに混ざって消えていくが、気分はどんどん落ちていく。
その重たさにエリィの瞳が涙で歪んだ刹那、ドアが開いた。
「エリィの言う通り、こういうのはちゃんとするべきだよな」
コンドームを手に爽やかな笑顔で戻ってきたロイドに、エリィが思わずずっこける。
「え、エリィ?!」
わたわた慌てるロイドの声に、エリィは、どこから突っ込んだらいいのか解らず震えていると、視
界に彼の顔が入ってきた。
(あ……)
心配そうに見つめてくる彼の瞳に。
一途に、真摯に、純粋に、自分の事を心配してくれている彼の姿に。
エリィの胸は強く高鳴り、気持ちを沈ませていた重石が外れる。唇が自然と綻び、ロイドに微笑み
を返す。
「ごめんなさい、ちょっと気が抜けちゃっただけなの」
エリィがロイドの頬をそっと撫でると、ロイドも表情を緩めて微笑んできた。
ロイドの両手がエリィの背中に回り、抱き締めてくる。
「ところで……どうしても、ここでなの?」
エリィも両手を彼の背中に回しながら問うと、肩に彼の頷いてくる感触が返ってきた。
甘い匂いの中に、熱い吐息が溶けていく。
その中心には、立ったまま抱き合い腰を揺らす二人の姿。タイツを脱いだ左足を腰の高さまで持ち
上げて彼に持って貰っているエリィと、右足だけで立つ彼女をしっかり支えながら己の男根で彼女の
蜜壷を突き貫き擦り上げるロイドの姿。
「はっ……あ……あっ……」
すぐ下で響くグチュネチャと粘りけのある水音を聞きながら、エリィが悩ましげな声を漏らす。
彼の腰がぶつかる度に、彼の男根が根本まで潜り込んで自分を内側から擦りながら昇ってくる度に、
気持ち良いという感覚が花弁と臍の辺りで弾け、全身に拡散していく。
「あっ、ああっ、あんっ……!」
タイトスカートは腰の上までめくられ、卵のように滑らかで引き締まったエリィのお尻が挿入のリ
ズムに合わせて小刻みに揺れる。時折、お尻の間から透明な愛液がゴポリと垂れ落ち、右足首に引っ
かけたままのタイツやパンツを濡らしていった。
「エリィ……」
耳元で囁くロイドに、エリィは大きく頷き返すと、知らずに緩んでいた両手に力を込めて抱きつく。
開いた服から出ている乳房が彼の胸板に強く密着し、形が少し潰れた。
(上着、脱いでおけば良かったな……)
服越しで伝わる乳房柔らかさに、ロイドは少しだけ後悔する。
立った状態での出入り故か、いつもよりも男根がエリィの中へ深く入っていく。根本までめり込ま
せる度、プリンよりも柔らかく鮮魚のように弾力のある肉壁の感触が、竿だけでなく亀頭まで咥えて
くる。その気持ち良さに、ロイドの腰は痺れ、全てを吐き出してしまいそう。
だけど。
(俺だけが気持ちよくなる訳にもいかない……)
心と身体がとろけそうになるのを必死に堪え、ロイドは腰の動きに変化をつける。貫く角度を微妙
に変えて、彼女が最も強く反応する箇所を見定めると、そこを徹底的に攻めて、えぐって、突き上げ
始めた。
「あっ! あぁっ! や……ま、待っ……あああっ!!」
響く水音が激しさを増し、エリィの声も差し迫ったものになる。床に立つ右足が大きく揺れ動き、
時折浮き上がっては落ちて、ヒールで床を打ち鳴らす。
蜜壷はしゃくりあげるような痙攣をし始め、結合部の隙間から垂れ出る愛液の勢いと量も増える。
「ろ、ろいど……も、もう、だ、めぇっ……!!」
ロイドの背中にしがみついていたエリィの両手が力を失い、ずり下がる。身体もぐんにゃりと柔ら
かく崩れ、ロイドに伝わる重みが増える。
それと反比例して、蜜壷の痙攣と締め付けは益々強まり、緩急つけて蠢き始める。出入りを繰り返
すロイドの男根全てを飲み込もうとしてくる。
そんなエリィをロイドはしっかり抱き返すと、奥歯をぐっと噛み締め、腰を振るった。
「あっ! んあっ! あふぁあっ!!」
エリィの絶叫に近い声に合わせて、男根と蜜壷の間でパシン、パシッ、と叩きつけるような音が出
る。
彼の一突きがくる度に、真っ白な爆発がエリィの意識を吹き飛ばし、快楽の感覚以外何も考えられ
なくしてくる。
「あああぁっ! ああんあっ! はあぁあんっ!!」
エリィが、髪を、乳房を、尻を振り乱して悶える中、彼の呻く声が耳に届いた。
ズンッ! と、重たい一突きと共に、蜜壷の最奥にある肉壁に彼の男根がめり込む。
「ああぁああああああぁぁああっ!!!」
エリィの絶叫が部屋の甘い空気を揺らす中、肉壁に挟まれた亀頭が悶えるようにヒクつき、白濁液
を噴き出した。
数日後――。
「ロイド、エリィ、ティオ、ランディ、おかえりなさーい!」
支援要請を一通りこなして帰ってきた四人を、満面の笑みを浮かべたキーアが両手を広げて出迎え
る。
「ねね、エリィ! この前エリィが作ったケーキ、また食べたい!」
四人と一通りじゃれあった後、キーアがエリィの服の裾を掴んでせがんできた。
「えぇいいわよ。キーアちゃん、手伝ってくれる?」
「うん!」
微笑むエリィに、キーアも眩しい程の笑顔で頷く。
「あ、じゃあ私も手伝います。今日の夕食当番、確かエリィさんでしたよね?」
「えぇ。ティオちゃんもありがとう、助かるわ」
じゃれ合いながら台所へ入っていく三人の姿にロイドが思わず目を細めた。
「それじゃあ俺はメシが出来るまで部屋で休むとしますかな」
「え?! 今日の報告書の作成はランディの担当だろう?」
背伸びしながら階段へ向かおうとするランディに、ロイドが泡食い、止めに入る。
「んー、任せたリーダー」
「そんな訳にはいかないだろう。こういうのはきちんとしないと!」
ひらひらと手を振って笑ってくるランディに、ロイドが声を少し尖らせる。と、ランディの浮かべ
ている笑みの雰囲気が変わった。
「ほぉお……この前の休暇日、俺らが留守してたのをいい事に台所でイチャついた人間が、きちんと
なんて言うのかー?」
ロイドの元まで戻ってくるや、ランディが囁くように言ってくる。
「なっ……?!」
使用したコンドームは自室に持ち帰って処分した筈……。
動揺で血の気が引いたロイドに、ランディがしてやったりと唇を歪ませた。
「残り香ってもんかな? 明らかに違う雰囲気があるんだよ、恋人がいちゃついた空間とそうでない
場所にはな」
まあ半分はカマかけだったんだけどなーと笑うランディに、ロイドは完全に沈黙する。
「ま、そっちの情事にとやかく言うつもりはないが」
ここでランディの言葉と笑顔が止まる。
「……いちゃつかれた後の台所で料理させられた身にもなれ」
「……今日の分の報告書、謹んで書かせて頂きます……」
声のトーンを低くして呟くランディに、ロイドは頭を下げるしかなかった。