「おーい、ロイド。大丈夫かー?」  
 ランディからの呼びかけに、自室のベッドで寝ていたロイドが上体を起こして、そのままよろめく。  
「おいおい、病人が無理すんなよ」  
 ランディは慌ててロイドを支えると、そのままベッドへ押し戻した。  
 ベッドのスプリングが弾み、疲労と熱で精気の抜けたロイドの顔が枕の上にのっかる。  
「すまないランディ……」  
 ランディが、脇に転がっていた氷嚢をロイドの額へ載せると、か細い声が返ってきた。  
「ティオやエリィは1日で治ったのに……」  
「今年の流行り風邪は男が好きなんだろ」  
 しょぼくれるロイドに、ランディは軽い調子でフォローを入れる。  
「ならランディも危ないんじゃないか……? 俺は今日を入れて3日目も寝込んでいるから……」  
「お誘いを受けたいのは山々だけど、ウルスラ間道の手配魔獣倒しにいったついでに、病院で予防注  
射ってのを受けてきたからなー」  
 ランディは芝居がかった仕草で残念がると、ロイドに向かって瞳を綻ばせた。  
「今、下でお嬢が卵雑炊作っているから、それ食って休んでろ。支援要請の方は俺らでちゃんとやっ  
とくから」  
 ロイドの頭をわしゃわしゃ撫で回して告げると、ランディは一階に戻っていく。  
 端末で支援要請の内容をチェックしているティオへ軽く手を振ると、台所の扉を開けた。  
 
「あ、ランディ!」  
 テーブルの方で人数分のサラダを作っていたキーアが、ドアの開く音で顔を持ち上げる。  
「ロイドどうだった? 元気でた?」  
「相変わらず、熱でふらふらだな」  
「そっかー……」  
 ランディの報告にキーアが少しだけしゅんとなる。  
 一方、コンロの前にいるエリィは、こちらへ振り向く事もせず、コンロにかけた土鍋と向き合い続  
けていた。  
「……」  
 ごとごとごと。コンロの火の上で、土鍋の蓋が音をたててタップダンスを続ける。  
「……おい、お嬢。流石にそろそろいいんじゃねーの?」  
「え? あ!」  
 ランディがエリィの近くに寄って声をかけた途端、エリィが盛大に身動ぎ、反動で手がコンロのス  
イッチにぶつかる。  
 コンロの火が一瞬だけ膨らみ、土鍋の蓋のタップダンスがブレイクダンスに変わった。  
「キャーッ」  
 べべぼー、という謎の擬音とエリィの悲鳴が響く中、コンロの火が消え、土鍋の蓋が床に落ちる。  
 湯気が消えた後には、紫と碧のマーブル模様がとても鮮やかな卵雑炊が土鍋の中に渦巻いていた。  
「……何かしら、これ……」  
 エリィがひきつった声で呟く横で、ランディが脂汗流して固まる。  
「おい、一体何があった?」  
 物音を聞いた課長とティオが遅れて駆けつけ、土鍋の中身に息を呑む。  
「……これでロイド、元気になる?」  
 唯一、いつもと変わらぬ目で土鍋の卵雑炊を見つめていたキーアが、四人の顔を見回して尋ねる。  
が、誰からも答えはこなかった。  
 
 ※※※  
 
 夜も更け、寝静まった街の空気が不思議な静寂を奏でる中……。  
「……はぁ」  
 エリィが支援課ビルの階段を降りながらため息をつく。  
 脳裏を過ぎるはロイドの姿。流行り風邪による高熱で、起きているのも辛そうな彼の姿。  
(……私が休まなければ、ロイドがあんなに苦しむ事はなかったのに……)  
 ロイドが倒れる前日、エリィはいつもより身体が熱っぽかった。  
 すぐに先日ティオがかかった流行り風邪だと気付いて、早目の養生という事で病欠を申請した。  
『大丈夫。今日の支援要請は俺達三人でやってくるから。だからエリィはゆっくり休んでてくれ』  
 そう言って、エリィの頭を優しく撫でて微笑んでくれたロイド。その笑顔がいつもよりも翳ってい  
るように見えたのは、熱による朦朧からきた勘違いではなく、彼もエリィと同じ症状になっていたか  
らだろう。  
 そして、一日休んだ自分は回復し、休まず無理したロイドは風邪を悪化させて寝込んでしまった。  
 数時間後には四日目になる今も、ロイドの熱は下がらず、ひたすら苦しんでいる。  
 せめて栄養のあるものを、と思って作った卵雑炊は、予想外の暗黒卵雑炊≪べべぼー≫になってし  
まった。  
(ロイドでなく、私が風邪で倒れていれば良かった……!)  
 エリィは唇を噛みつつ、一階に着く。  
 台所にて氷嚢を造り、それを持ってロイドの部屋へ戻ろうとしたその時、食事やミーティング等で  
使っているテーブルに雑誌が置かれているのに気が付いた。  
「ランディったら、キーアちゃんも見る場所にこんな物を置いて……」  
 紐のような水着を着た女性が扇情的なポーズをとっている表紙にエリィが顔をしかめる。が、表紙  
の一角に書かれた文字が目に留まるや、その表情が一変した。  
「『疑問100人に聞きました! 風邪の時に効いたホームケア』……?」  
 
 ※※※  
 
 ふいに意識が浮上する。  
 続けてきたのは、全身を炙る熱の感覚。  
(まだ下がらないか……)  
 眠る前と変わらぬ体調に、ロイドは力なく息を零した。  
 こまめに水分をとっているのに身体は汗一つかかず、皮膚はぱさぱさに乾いたまま。意識や視界に  
ヴェールが被さっているような曖昧な感覚は、嫌な疲労感を与えてくる。  
(早く治さないと……)  
 これ以上、皆に――エリィに心配をかけさせないようにしないと……。  
 ロイドはもう一度息を零すと、頭から外れている氷嚢を拾おうとして、はたと気付く。  
(そっか、エリィが新しいのに取り替えるって持っていったままだったんだ……)  
 枕の脇にもサイドチェストにも置いてないのを見ると、まだ戻ってきてないのだろう。  
 せめて彼女が帰ってくるまでは起きていようとロイドが決めていたら、扉が開いた。  
 ネグリジェに身を包んだエリィが、湯気のたつ桶を抱えて入ってくる。ピンクのシルク生地に白い  
レースとリボンをふんだんにあしらったデザインのネグリジェが、動きに合わせてゆったりと揺らぐ  
様子は、天使か妖精が羽ばたいているように思えた。  
 
「ロイド、遅くなってごめんなさい……」  
「いや、俺も今まで寝てたから大丈夫だよ」  
 申し訳なさそうに目を伏せるエリィに、ロイドは出来る限りの笑顔を浮かべて返すと、彼女の抱え  
ている桶を指さした。  
「ところで……それは?」  
「ロイド、もう三日も身体を洗えてないでしょう? だから……せめて、お湯で濡らしたタオルで身  
体を拭いてあげようと思って……」  
 ロイドの問いに、エリィがテーブルに桶を置きながら妙に緊張した声で答えてくる。  
「え? いやでも……」  
 そんな事しなくても大丈夫だよと言いかけ、ロイドは迷う。自分では解らないけど、三日もシャ  
ワーを浴びてないのだから臭っているのかもしれない。何より、わざわざ用意してくれた好意を無下  
にするのも失礼だ。  
「解った……それじゃあ、有り難く使わせて貰うよ」  
 ロイドは上体をゆっくりと起こすと、エリィからタオルを受け取ろうと手を差し出す。が、その手  
はすれ違い、タオルを持つエリィの手がロイドの頬に触れてきた。  
「え、エリィ……?」  
 少し焦るロイドを無視して、エリィがお湯で濡らしたタオルでロイドの身体を拭いていく。  
 最初は顔。次に首。それから一端タオルをお湯に浸して絞り直すと、上着をめくって腕と胸。彼女  
の手が身体の上を優しく滑っていく度、ロイドの中にこそばゆい気持ち良さが広がっていく。  
 パールグレーの髪も本人の手の動きに合わせてロイドの身体を優しく撫で回しつつ、シャンプーの  
香りを撒いていく。  
 ネグリジェで覆われた豊かな胸元も、動きに合わせてゆっさゆっさ揺れていた。  
 
(まだ風邪のままで良かった……)  
 もし体調が回復していたら、速攻で理性が吹き飛んで節操無しに押し倒していた。  
 背中まで拭ってくれた後にまた桶へ戻ってタオルをお湯に浸し直しているエリィの後ろ姿を眺めな  
がら、ロイドは、風邪と高熱のお陰で元気のない下半身に安堵する。  
 ポタポタッ……ポタポタッ……。タオルから絞られたお湯が桶に落ちていく水音が数度響いた後、  
エリィが踵を返して戻ってきた。  
 掛け布団に彼女の手が触れる。  
「……さ、先に……ズボン、脱がしても…………良い?」  
 顔を真っ赤にしたエリィの申し出に、ロイドは驚き、思わず生唾を呑み込む。それが頷いている風  
に見えたのか、エリィがタオルを脇に置いて掛け布団をめくってきた。  
「あ、その……」  
 自分で脱げるよと言う暇もなく、エリィの手がロイドのズボンを下げてくる。  
(これは、今更自分でやると言うのも失礼だよな……)  
 ならせめてエリィの作業が楽になるようにと、ロイドは両手で腰を浮かせた。  
 ずりずりっ、ずりずりっと、ズボンが外れ、下半身がトランクス一枚になる。  
 エリィは、脱がしたズボンを丁寧に畳んでロイドの足下へ置くと、タオルをとってロイドの両足を  
拭き始めた。  
 足首から膝、膝から太股。それを左右均等に行うと、エリィは再び桶の方へ戻っていく。  
 ちゃぷん、と、タオルがお湯の中へ落ちる水音が響く。  
「ありがとう、エリィ。かなりさっぱり出来たよ」  
 ロイドはエリィの背中へ向かって礼を述べると、ズボンをはき直そうと足下へ目を向ける。その時、  
ポタポタッ……と、タオルを絞る水音が聞こえてきた。  
 
「え?」  
 ロイドがズボンをとるのを中止して振り向くのに合わせて、エリィが絞ったタオルを手に戻ってく  
る。  
「え、エリィ……?」  
 戸惑うロイドにエリィは何も答えず、視線すら合わさない。ただ、その顔は高熱の出ているロイド  
よりも赤く染まって、表情も異様に緊張していた。  
(ま、まさか……)  
 ロイドの頬がひきつるのと同時に、トランクスの裾からタオルを持ったエリィの手が入っていく。  
 トランクスが大きく盛り上がったかと思うと、高熱でへたれている男根に濡れタオルが触れてきた。  
「……!」  
 タオル越しからでも解るエリィの手の心地よさに、ロイドは思わず息を止める。男根も僅かに反応  
するが、すぐにまたへたれてくれたのが幸いだった。  
 ……と安堵するのは早かった。  
 タオルを持ったエリィの手が、睾丸の下から肛門に続く凹み――俗に言う蟻の門渡り。男の肉体の  
中でも特に敏感な箇所――へ回り、つつぅっ……と、中指でなぞっていく。  
「っ……!」  
 痺れにも似た気持ち良さが一瞬で全身を駈け巡り、ロイドはたまらず声を漏らす。  
 一方、タオルを持つエリィの手は肛門とお尻の方へ回って、丹念に丁寧に拭ってくる。  
「!」  
 タオル越しにとはいえエリィの指が尻の合間に潜り込んできた途端、悪寒にも似たくすぐったさが  
尾骨から背骨を駆け上がり、一瞬だけ男根が起きかけた。  
「え、エリィ……!」  
 風邪でなく恥ずかしさで熱が出てきたロイドがたまらず声をあげると、今まで俯いていたエリィが  
顔をあげてくる。  
 真っ赤に染まった顔は緊張でガチガチに強ばり、緑耀石色の瞳に満ちる心細そうな光は今にも涙に  
変わりそう。  
「ロイド……やっぱり嫌……?」  
 形の良い桜色の唇を震わせながら問われると、ロイドはもう何も言えなかった。  
 
 タオルを持つエリィの手がトランクスから抜け出る。ロイドにとって今まで一番長く感じた時間が  
終わる。  
(こ、これで今度こそ終わった……んだよな……)  
 助かったと思う気持ちと、こんな恥ずかしい事をさせて申し訳ないという気持ちと、もっと続けて  
欲しかった……という欲求。それらが高熱で弱っている頭の中でしっちゃかめっちゃかに混ざり合っ  
て、ロイドの頭はパニックを起こしていた。  
「大丈夫、ロイド……?」  
 ベッドに引っ繰り返って目を回していたロイドに、エリィの声がかかる。  
 それで少しだけ我に返ったロイドが声のした方へ顔を向けると、白百合のように滑らかな肌と、珊  
瑚色した小さな乳首が視界に飛び込んできた。  
 ワンテンポ遅れて、全体の映像――生まれたままの姿になったエリィが、恥ずかしそうに顔を赤く  
してベッドに膝を付いて乗っている様子――が脳に届く。  
「? !??!!?」  
 再びパニックに陥るロイド。気が付けば、着ていた上着もトランクスも脱がされていて、ベッドの  
片隅に畳まれていた。  
「ロイド、もし嫌ならいって……すぐに止めるから」  
 顔を真っ赤に染めたエリィが、今にも消え入りそうな声で告げてくる。  
「な……」  
 何を? と、ロイドが問うより先に、エリィが顔を落とした。  
 パールグレーの髪の毛が揺らぎ、ロイドの腰の周りに流れ落ちていく。  
 高熱で未だへたれ続けている男根に吐息がかかったかと思うと、エリィの桜色の唇が触れた。  
 
「――?!!!」  
 ロイドが大きく息を呑む中、エリィがロイドの男根を咥えてくる。唇の柔らかな感触をくぐったか  
と思うと、舌のざらっとした表面が先端から竿の裏筋を舐めてきた。  
「ふっ……ん、っ……」  
 声を小さく漏らしながら、エリィの口がモゴモゴ動く。口の中がじわあぁっと暖かくなって、男根  
に熱い唾が降り注がれていく。それが男根全体に満遍なくまぶされた後に、エリィが顔をひいた。  
 男根と舌先の間で唾が糸を引いて垂れる中、エリィがロイドの股の上でうつ伏せになる。そして、  
豊かな乳房で男根を挟んで包み込むと、そのまま前後に身体を揺すり始めた。  
 凜とした直線を描く胸の谷間が、ロイドの男根の形に沿って幅を広げ形を歪める。  
 なすりつけられた唾をローション代わりに、エリィの乳房がロイドの男根を先端から竿の根元まで  
丹念に擦っていく。その感触は、手で乳房を揉んだ時よりも優しくて柔らかくて気持ち良くて、男根  
と腰と脳髄を繋ぐ神経を直に激しく揺さぶってくる。  
(まっ、まさかこれは夢の中か!?)  
 ずっと高熱にうなされたせいで、こんな幻影を見ているのか!?  
 目の前の光景に……前に一度だけせがんだら思い切り睨まれて却下された行為が起きている状況に、  
ロイドの頭は更なるパニックを起こす。  
(でっ、でもその割にはリアルすぎて……気持ち良い……!)  
 胸の谷間から突き出た鈴口を舌先でちろっと舐められ、ロイドは思わず声を漏らして仰け反る。  
「っく……!」  
 快楽で腰がびりびり痺れる中、ロイドは願う。  
(頼む……夢なら醒めないでくれ)  
 下腹部に熱と血が膨らみ、今まで高熱でへたっていた男根が少しずつ起き始めていた。  
 
 胸で抱き締めたロイドの男根の感触が変わる。  
(ロイドの……大きくなってきてる……)  
 乳房の中から突き出ては潜る男根に視線を落とし、その先端が膨らみ始めているのを見て取ると、  
エリィは恥ずかしさで頭がかーっと熱くなってきた。  
(やっぱり……男の人にはこういうのが有効なの……!?)  
 一階で見つけたあの雑誌を自室にこっそり持ち帰って、件の記事を読んだ時は、恥ずかしさの余り  
悲鳴をあげかけた。  
 でも。  
 自分のせいでロイドの風邪が悪化したという負い目と、高熱で苦しんでいるロイドに何かしてあげ  
たいという想いと、彼の為の卵雑炊を暗黒卵雑炊≪べべぼー≫にしてしまった自責の念が、エリィに  
迷わせた。もしかしたら本当にこれが風邪に有効なのかも……と囁いてきた。  
 そして。  
 長い長い葛藤の果てに、半信半疑……というより九割方疑いながら試した結果、ロイドの肉体が反  
応している。長く続く高熱で削げ落ちていた気力が、彼の元へ少しずつ戻ってきている。  
 ならば。  
 自分が行うべき事は一つ。  
(これでロイドが気持ち良くなって、風邪が治るのならば……!)  
 医学の知識もないし、卵雑炊を暗黒卵雑炊≪べべぼー≫にしてしまうような自分が出来る事ならば……!  
 今すぐ逃げ出したくなる程の恥ずかしさと緊張から必死に耐えつつ、エリィは唇を開くと、胸の谷  
間から突き出たロイドの亀頭を優しく呑み込んだ。  
 
 おそるおそる、ぎこちなく、亀頭と竿の境目にある筋を舌で左右に這わせつつ時折上下へ弾くよう  
に舐め上げる。同時に、身体を前後に揺するのを止め、竿へ与える刺激を左右からの圧迫と解放に変  
える。  
「……、……!」  
 頭上から聞こえてくるロイドの呼吸が荒くなるのに合わせて、口と乳房で抱き締めた彼の男根が熱  
を増して更に大きくなる。  
 亀頭を支える格好で密着している舌の上に先走りの熱い滴が垂れてきたかと思うと、塩気のある苦  
味がエリィの口の中に広がってきた。  
(ぁ……)  
 先走りの滴の熱がエリィの心を包み込む。身体の芯もふわりと軽くなったような気がしたかと思う  
と、花弁がピクッとしゃくりあげる。  
(やだ……私も、ロイドので感じて……気持ち良くなってる……)  
 股にオイルを塗られたような感触――花弁が愛液を垂らし始めた兆候に、エリィは恥ずかしくなっ  
て目を伏せる。  
 両手で竿を挟み込んでいる乳房もしっとりと汗をかき、珊瑚色の乳首が固く盛り上がってきていた。  
「ん……ふっ、ん……っ……」  
 鼻から悩ましげな声を漏らしつつエリィは動く。舌を這わせ、乳房で圧し、彼の男根へ惜しみなく  
奉仕を続ける。  
 心を包む熱は濃度を増し、緊張と恥ずかしさを溶かしていく。  
 止まっていた身体が再び前後に揺れ始め、徐々に動きの幅が大きくなっていく。  
 ぎこちなかった舌や唇の動きも滑らかにそして大胆になって、じゅぱっ、ぎゅぷっ、と音をたてて  
いく。  
 乳房を押さえている指の隙間からは、珊瑚色の乳首がぴんと尖って飛び出した。  
 
「え、エリィ……! だめだ、離れ、て……!」  
 パールグレーの髪を振り乱しながら動いていたエリィに、ロイドの切迫した声が届く。  
(ロイド……気持ち良い?)  
 エリィは身体を揺らしたまま視線をロイドの方へ上げて微笑むと、口に咥えた男根を、ぢぅぅっ…  
…! と、音をたてて吸い上げた。  
「……!!」  
 ロイドが頤を逸らして身体を震わせる様子に、ほんの少し嗜虐心を覚えつつ、エリィは舌先でカリ  
の裏筋を舐め回す。同時に、口の中から涎を出すと、男根全体に満遍なくまぶす。  
 べっとりと塗られた唾によって、乳房で竿を擦る動きが滑らかになる。  
 男根がぴくんっと揺らぎ、竿の表面に血管が幾つも浮き出てくる。  
 その変化が嬉しくて面白くて、エリィが我を忘れて夢中になっていると、ロイドが大きく呻いて腰  
をひいた。  
 ずりゅ! と、エリィの唇からロイドの男根が逃げ出す。  
「ぁ……!」  
 乳房の中に潜り込んだ男根を追いかけようとエリィが首を伸ばした刹那。胸の谷間の中心、心臓の  
すぐ上で、どくどくどくっ! と、大きな脈動が走った。  
 地下水が噴き出すかの如く、エリィの胸の谷間から白濁液が迸る。  
「――っ!?」  
 驚くエリィの頬に、口に、胸元に、熱い欲望の飛沫は容赦なく飛び散って降り注いできた。  
 
「ご、ごめん……!」  
「ううん、いいの。気にしないで」  
 汗だくで息も絶え絶えに謝ってくるロイドに、エリィは静かに首を振る。その頬や顎先や髪の毛で  
は精液の白い礫が線をひいて伸び、乳房と乳房の間では大量の精液が蜘蛛の巣みたいに張っていた。  
「これでロイドが元気になってくれたのなら、私は平気よ」  
 それに。  
(私もどきどきしちゃったし……)  
 いつもはコンドーム一枚隔てて起きる射精を間近に感じて、エリィの身体の芯は否応なく火照る。  
花弁も切なそうに引きつけを起こし、愛液をだらしなく垂らす。  
(男の人って、こんな風に激しく出すのね……)  
 乳房と乳房を糊付けしそうな勢いでねばついている精液をしばし眺めた後、エリィは口元の近くに  
ついていた精液を指で拭って舐めた。  
 ワンテンポ遅れて、エリィが、あ、と我に返る。  
「やだ、私ったら……!」  
 急に恥ずかしいという気持ちが返ってきて、エリィは思わず身体を縮めて照れ臭そうに微笑む。  
 次の瞬間、ロイドの中で特大の雷鳴と時の結界が砕け散る音が轟き、それに叩き起こされるように  
男根が天を仰いだ。  
 
「あっ……!」  
 エリィが口元に手をあてて息を呑む。  
「ロイドの……また元気になってる……!?」  
 緑耀石色の瞳が嬉しさに輝く。自分がどれだけ強烈なストライクベルを打ち込んだのかとんと知ら  
ず、ただただ純粋に、ロイドを元気にさせる事が出来たという喜びで胸を一杯にする。  
(やっぱり……こうする事でロイドの風邪も治ってくれるのかしら……?)  
 この疑問がエリィの頭を過ぎった丁度その時、まるで応えるかのように男根がぐっと力を増した。  
(ぁ……)  
 先走りの滴の味を思い出し、エリィの胸が一段と高鳴る。  
「……ねぇロイド……」  
 身体の火照りが、切なげに揺れて愛液を零す花弁が、エリィの心から躊躇いや羞恥を消していく。  
普段だったらとても恥ずかしくて言えない言葉を、唇から紡がせる。  
「……今度は……私も一緒に……気持ち良くなっても、いい?」  
 上目遣いで問うたエリィに、ロイドが一瞬硬直した後、首がもげそうな勢いで何度も頷いてきた。  
 
 ベッドのスプリングがたわみ、枕元に置かれていたコンドームの小箱がこてんと倒れる。  
「ふぁあっ……んん……!」  
 ベッドに寝転がったロイドの上にエリィが跨り、ゆっくりと腰を落としながら背中を大きく逸らす。  
大きく咲き開いた花弁の中へコンドームを被ってそそり立つ男根をゆっくりと受け入れながら、パー  
ルグレーの髪と豊かな乳房を悩ましげに揺らす。  
 じゅぶっ……じゅぶぶっ……と、結合した隙間から泡立つ水音が響き、垂れた愛液が二人の茂みを  
しっとりと濡らしていく。  
「ふっ……ん、ぁっ……ふぅっ……!」  
 ロイドのを根元まで呑み込み、互いの股を密着させた後、エリィは再び身体を浮かせた。  
 が、途中で腰を重力に絡め取られて引きずり下ろされる。竿の途中まで見えていた男根が、ずぶぶ  
ぶっ……と、蜜壷の中へ潜り込んでいく。  
(動くのって……こんなに大変だったのね……)  
 肉壁を駆け上がっていく男根の摩擦に震えながら、エリィは、いつもロイドのリードに身を委ねる  
だけだった事を申し訳なく思っていた。  
「エリィ……やっぱり俺が動くよ」  
 辛そうに身体を上下させるエリィに、ロイドがいたたまれず体勢を変えようとする。  
「だめぇ……ロイドは病人なんだから、休んでなきゃ……!」  
 エリィがいやいやするように首を振って、手でロイドを抑える。  
(その病人に、こういう事をするのはいいのか……?)  
 そんな突っ込みがロイドの頭に過ぎったが、すぐに彼女と一つになった気持ち良さで押し流される。  
代わりに、右手が自然とエリィの方へ伸びて、愛液の蜜を零しながら上下している花弁を指で勢いよ  
く薙いだ。  
 
「きゃっ――!」  
 エリィが短い悲鳴をあげて身体を竦める。豊かな乳房も小刻みに揺れ、そのリズムに合わせて蜜壷  
も震える。  
「ろい、どぉ……」  
 少し怒った風に頬を膨らませながら、エリィがジト目で見つめてくる。  
「これ位なら、動いてもいいだろ?」  
 ロイドはにこっと笑い返すと、彼女の豊かな乳房へ左手を伸ばした。  
 エリィが腰を浮かして逃げるより先に、ロイドの左手が乳房を捕まえ、指で乳首をこね上げる。  
「やっ――! あ、ああっ!」  
 びくんっ! と、エリィが上体を揺らして嬌声をあげたかと思うと、花弁から愛液が一気に零れ出  
てきた。  
 
 降り注ぐ愛液の雨を浴びて、ロイドの腰が自然と上がる。掴んだ乳首と花弁といじくりながら、ぎ  
っし、ぎっし、とベッドを揺らす。  
「だ、だ、め……ロイドはやすんでな、きゃっ……あぁっ!」  
 エリィがロイドを止めようとするものの、蜜壷と花弁と乳首の三点を同時に責められては、堪えき  
れず喘ぎ仰け反るしか出来ない。  
「あっ、んっ、っふ、あ、あぁっ……!」  
 緑耀石色の瞳は快楽に濡れ、溢れ出た分は目端に涙の粒となって浮かぶ。  
 暖かみのある白い肌はじっとりと汗をかき、身体にこびりついていた精液を下へ向かって流し始め  
る。  
 ロイドの男根を呑み込んだ花弁と蜜壷は絶えず愛液を迸り、彼女の嬌声が大きくなる時に合わせて  
振動のような痙攣を起こす。  
 そんな彼女の変化をロイドが楽しんでいたら、  
「んっ……ぅ、んんっ!」  
 何度目かの痙攣と同時に、エリィがロイドの方にしなだれかかってきた。  
 ぐっ、と蜜壷の角度が変わる。亀頭が肉壁にめり込むように擦りあげられ、竿がぎゅっと絞られる。  
(――! しまっ……!)  
 不意討ちの快楽にロイドは慌てて堪えようとする。が、エリィの豊かな乳房が胸にぶつかってきて、  
その柔らかさに意識が囚われる。  
 結果、抑える所か更なる刺激を貰ったロイドの身体は、本能のままに男根を暴発させた。  
「あ……あぁ、あっ……!!」  
 お腹の中でびゅくびゅくと脈打つ射精の感覚に、エリィが口端から涎を垂らしながら震える。たわ  
わに実った豊かな乳房と、その先端で尖る乳首を、ロイドの身体に擦りつけながら。  
 ロイドは乳首をいじくっていた左手をエリィの背中に回すと、間近に迫った桜色の唇に吸い付いた。  
 
 ちゅぱっ、じゅっ、じゅぶぶっ。蜜壷と男根が奏でていた音色に競うように、唇が淫卑な水音を奏  
でていく。  
「んっ、あ、あふっ、ん、ふっ、ぅんっ……」  
 エリィがうっとりとした表情を浮かべて瞳を閉じ、塞がれた唇の隙間から悩ましげな嬌声を漏らし  
て乳房と尻を揺らす。  
 そんなエリィへ、ロイドは射精で震える腰をぎゅっと密着させたまま、桜色の唇を啄み吸いつき、  
歯を舐め回し、悶えて揺れる舌に己の舌を絡めていく。さりげなく、右手を枕元にあるコンドームの  
小箱へそっと伸ばしながら。  
 やがて、ロイドの男根が全てを吐き出し終え、一気飲みした後の人間みたいに蜜壷からきゅぽっと  
飛び出してくる。  
 後を追って花弁から愛液が滴り落ちていく中、ロイドは身体を横転させ、エリィの身体を隣にそっ  
と寝かせた。  
「はぁっ……はふぅっ……ふぅっ……」  
 エリィがベッドの上にうつ伏せになり、深呼吸を繰り返す。少し気怠げな表情を浮かべた顔は赤く  
染まり、快楽が燻って輝く瞳は涙をうっすら浮かべていた。  
「ろいど……元気に、なった?」  
「ああ。ありがとう、エリィ」  
 少し不安げな声で伺ってくるエリィに、ロイドは力強く頷く。実際、ここ3日間体内に居座ってい  
た熱は今の行為で汗となって全て吹き出て、意識や感覚もクリアになっていた。  
「良かった……」  
 ロイドの表情に精気が戻ってきたのを見て、エリィが嬉しそうに安堵していた時。  
「だから今度は、俺がエリィを気持ちよくさせるよ」  
 嫌に爽やかな声と共に、ロイドがエリィの上に乗っかってきた。  
 
「えっ……!?」  
 焦るエリィに構わず、ロイドはうつ伏せになっている彼女の腰を両手で高く持ち上げる。  
 卵の表面のように滑らかで形の良いエリィのお尻が、ぷるんっ、と瑞々しく弾んだ。  
「ちょ、ちょっと待って……だってまだしたばかりでしょ……!?」  
 泡食いながらエリィがロイドの方を振り向くと、いつの間にか新しいコンドームを装着した男根が  
元気一杯そそり起っている。  
 その上、彼の全身から炎にも似た闘気がうっすらと立ち上がっているようにも見えた。  
「エリィ。俺だけ先に気持ち良くなってしまってすまない。今度はちゃんと君も気持ち良くなるまで  
頑張るから」  
 驚きで顔が青ざめるエリィに、ロイドは燃え上がる心のままに告げると、未だ愛液の止まらない花  
弁に亀頭をくつけた。  
 花弁が咀嚼するかのように揺れたかと思うと、すぐにロイドの男根を呑み込んでいく。  
「あぁっ!!」  
 クールダウンしかけていた肉体が再び火照る感触にエリィがたまらず仰け反る中、ロイドは根元ま  
で蜜壷へ挿し入れていた。  
 
 ロイドの腰がぶつかって、エリィのお尻がきゅっと締まる。  
 ぱしん、ぱしんっ、と、肉同士の叩き合う音がリズムにのって響き始める。  
「あ! あぁっ、ん、ふぅあっ、あ、ああっ!」  
 蜜壷を容赦なく抉られ開かれ貫かれ、エリィが全身をわななかせる。目の奥で閃光がチカチカ瞬き、  
下腹部には爆ぜるような引きつけが何度もくる。  
 ベッドにくつけたままの乳房はロイドの動きのままに前後し、両手はすがるようにシーツを握りし  
める。  
 高く掲げられたお尻は弾み揺れ、その下、男根を呑み込んだ花弁は壊れた蛇口のように愛液を細く  
長く滴らせていた。  
「あぅっ、んっ、んんっ! あぁあっ!!」  
 嬌声あげて震えるエリィの後ろ姿を眺めながら、ロイドは、右手を彼女のお尻の隙間に滑り込ませ  
る。そして、お尻の中心に潜り込むように隠れていたエリィの菊花を親指の腹で軽く揉んだ。  
「!」  
 エリィが背中を大きく仰け反らせると同時に、色素が少し沈着した小さな蕾が驚いたように縮こま  
る。  
 男根を咥えた蜜壷も大きく揺らぎ、極上の快楽をロイドの下半身に伝えてきた。  
「やっ……だ、だめ、おねがい……」  
 涙声で懇願するエリィの耳元へロイドは顔を寄せ、耳の穴をそっと舐め上げる。  
「ひゃぅん!」  
 エリィが子犬のような悲鳴をあげたかと思うと、上体をがくがくっと揺らして悶えた。  
「エリィ、ありがとう。……愛しているよ」  
 嬌声あげて悶えるエリィへ優しく囁くと、ロイドは腰を振る動きに力を込める。  
 一段と大きく揺れ動くベッドのスプリングが、めきょっ、と、奇妙な音をたてて軋んだ。  
 
 ※※※  
 
 夜闇を朝焼けの光が追い払っていく。  
 窓から差し込む陽光と小鳥たちの囀りが爽やかな雰囲気を広げていく中、一階の共有スペースのあ  
ちこちをランディがごそごそ動き回っていた。  
「おはよう、ランディ。どうしたんだい?」  
「いやー、昨夜うっかりここに雑誌置いたまま寝ちまって……」  
 後ろから問いかけてきた声にランディは普通に返した後、はっと振り返る。  
「ロイド! もう大丈夫なのか!?」  
 驚くランディに、いつものジャンパーとアーミーパンツに身を包んだロイドは笑顔で頷いた。  
「ランディさん、朝食当番でもないのに先に降りてどうしたんですか……ってロイドさん!?」  
 階段を降りてきたティオもロイドの姿を見て目を丸くする。  
「ティオも心配させてすまない。今日からまた頑張らせて貰うよ」  
 ロイドの言葉に、ティオがほっと安堵するように表情を和らげた。  
「それならいいが……お前、少しやつれてないか?」  
「まぁ3日間寝ていたからね。体力も落ちているんだと思うよ」  
 じっと顔を見つめてくるランディに、ロイドは当たり障りのない返答を返す。……コンドームのス  
トックが無くなるまでエリィとやりまくった疲労からかもとは口が裂けても言えなかった。  
 
「ところで、ランディはどうしたんだい?」  
「いやぁ、昨夜うっかり雑誌をここに忘れたまんま寝ちまってなぁ。キー坊が起きてくるまでに回収  
しとかないと、お嬢やティオすけにコールドゲヘナを落とされるかもしれん」  
 ランディが少し顔を青ざめる。  
「……今までも、キーアの前で何度か読んでいるのに?」  
「いや、いつものじゃねぇんだ。もっとこう……過激すぎて購入の際に年齢確認されるレベルのシロ  
モンだ」  
「……何でそんなのをここに忘れていくんだよ」  
 呆れてため息が出るロイド。  
「ランディさん。その雑誌をキーアが先に見つけたら、クリムゾンレイもおまけします」  
 やり取りを聞いていたティオが冷たい笑顔をランディへ贈ると、朝食を作りに台所へ入っていった。  
「ちょ!? そりゃねぇよティオすけ〜……」  
 パタンッ、と無情に閉まる台所のドアへランディが力なく手を伸ばして嘆く。  
「畜生、あんな特集記事を見つけなきゃこんな事には……」  
 ぼやくランディに、ロイドが、? と、首を傾げた。  
「いやさ、風邪引いたときに効いたホームケアについてのアンケートが載ってたんだよ。……全く参  
考にならなかったけどな!」  
 ランディが、後半の台詞に思い切り力を込める。  
「? 何でまた?」  
「そりゃお前、過激すぎる雑誌に載ってるような記事だぞ? エロネタでしかないに決まっているだ  
ろーがっ! そんなもん、俺がやれるか!!」  
 言い切った後で内容を思い出したのか、ランディがぶるっと身体を震わせた。  
「そ、それは確かに勘弁してくれ……」  
 ロイドも思わず顔を引きつらせて呻いた瞬間、頭の中で何かがピンと繋がった。  
 
(あ……)  
 男根に、エリィに乳房で包まれた時の感触が蘇ってくる。  
(そうか、昨夜のエリィの行動は、ランディが捜している雑誌からきていたのか……)  
 頭の一角で燻っていた疑問が氷解していく中、ロイドはそっと唇を綻ばせる。  
(ありがとう、エリィ)  
 この場にいない彼女へ心の中で礼を述べると、ロイドは雑誌の探索に戻っていたランディに声をか  
けた。  
「ランディがそこまで捜しているのに見つからないって事はさ、別の場所に忘れたんじゃないか?」  
「……んー、そうかもしれんなぁ」  
 少し納得いかない表情をしながらも、ランディは捜すのを止めて背伸びする。  
「あ、そうだランディ。今まで風邪で休んでたお詫びに、今度の報告書作成は俺がやるよ」  
「? お詫びとは随分大げさだな。まぁ俺としちゃ有り難いが」  
「そうかな? 俺としては感謝の気持ちを表しただけなんだけど」  
 訝るランディにロイドは曖昧に笑い返すと、ティオの手伝いをしに台所へ向かった。  
 
 

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