朝起きたら自分の机の上に手紙が置いてあった  
 
『ロイドさんへ  
 
 大切なお話があります。  
 今日の夜0時に私の部屋に来ていただけませんか?  
 
                  リーシャ・マオ』  
 
 
「・・・リーシャ?」  
 
 寝ぼけた頭をなんとか覚醒させ、『大切なお話』とやらを考えてみる。  
 アルカンシェルの話だろうか?いや、それを自分に話して何になるというのだ。  
 ならば<銀>のことだろうか?これならば納得である。彼女は<銀>のことで悩んでるいるし、自分は彼女の過去も聞いた。相談もしやすいということだろう。だが、  
 
「とりあえず、顔洗って朝食作ろう・・・」  
 
 今日の食事当番は自分なのである。  
 
 
コンコンッ  
 
『・・・どうぞ』  
 
 夜の0時、約束の時間の少し前に支援課の寮を抜け出してリーシャの部屋の前まで来たロイドは、許可が下りたので部屋に入る。   
 
「ロイドさん・・・すみません、こんな時間に呼び出して」  
 
 ドアの少し先に彼女が立っていた。どうやら待っていたようだ。  
 
「いや、それはいいんだけど、一体何の話なんだ?もしかして、あまり人に聞かれたくない話か?」  
 
「そうですね、人に聞かれたくないのはその通りです。ロイドさんにだけ、聞いてほしい・・・」  
 
 彼女は俯きながらそう言う。  
 やはり<銀>のことだろうか?  
 
 
 
「前に、私を・・・見守ってくれるって・・・言ってましたよね・・・」  
 
 オルキスタワー突入前夜のことだ。  
 
「ああ、言ったな。リーシャがどう変わっていくか、見守りたいって」  
 
「・・・その・・・ずっと・・・ずっと見守ってほしいんです・・・」  
 
 ?  
 
「リーシャが俺の手の届かないところにでも行かない限り、ずっと見守るつもりだけど・・・?」  
 
 リーシャは首を振る。そういうことではないようだ。  
 
「・・・・・・私の側で・・・見守ってほしいんです・・・」  
 
 どういうことだ?  
 
「・・・・・・好きです・・・」  
 
 ・・・今何と?  
 
「好きです・・・私と・・・私と付き合ってください!ずっと、ずっと私の側に居てください!」  
 
 ・・・・・・好き?付き合う??ずっと側に居ろ!?  
 
「そ、それはアレか?付き合うって、男女の?」  
 
 頷いた、どうやら自分の聞き間違いではないらしい。  
 
 数日考えさせてくれ、そう言いたい気持ちが湧いてくる。だが、  
 
「分かった、付き合おう」  
 
「ほ、本当ですか・・・?」  
 
 彼女はアッサリ返事が返ってくるとは思っていなかったのか、目をぱちくりさせている。  
 だが女性にここまで言わせておいて返事を保留にするなど自分にはできない。  
 それに、自分は彼女に一目惚れしたこともあるのだ。あの時は胸を凝視してしまったと思ったが、それならエリィの胸も見るはずだ。  
 おそらく自分は彼女の顔が好みで顔を見つめてしまったのだろう。  
 最初はそんなのでも、そこから彼女と関わって行き、<銀>のことも知り、共に戦いもした。好意を持つには十分だ。  
 ならばすぐにでも返事をしなければ男がすたるというものだ。  
 
「本当に・・・本当に本当ですか?」  
 
「本当に本当だ!」  
 
 そうだとも。彼女にここまで言わせたのだ、絶対に責任をとって見せる。  
 
「では・・・・・・・・・証拠を頂きます!」  
 
「!?!?!?」  
 
 そう言うとリーシャは一瞬で距離を詰め、自分の口を塞ぎに来た!  
 
 長い、とても長いキスだ。ディープでないのが不思議なくらいに長いキス。  
 唇を離した時、自分は放心していた。  
 
「ぷはぁ。フフフッ、もう絶対逃がしませんよ?本当に私の側に居てもらいます。支援課の寮がある内は仕方がありませんが、無くなったら私と同じ部屋に住んでもらいます。  
その機会にもう少し広いアパルトメントに引っ越すのもいいですね。あっ、西区なら支援課にも近いですし、もう引っ越しちゃいましょうか」  
 
 そう彼女はとびっきりの笑顔で言う。  
 さっきまで途切れ途切れに話していた少女と同じ人物とは思えないほどスラスラと話している。  
 どうやら気持ちをぶちまけていつもの彼女に戻ったようだ。  
 
「さ、流石にそれは・・・」  
 
 ようやく精神が帰ってきたので抗議の声を上げる。  
 
「フフッ、冗談です。すぐに同じ部屋で暮らしたらクロスベルタイムズに変なこと書かれちゃいそうですし」  
 
 よかった、彼女も世間体は考えてくれるようだ。  
 
「でも何時かは一緒に暮らしてもらいますよ?」  
 
「あ、ああ。それはもちろんだ」  
 
 自分も男だ、言ったことの責任は取る。  
 
「今日はもう遅いですし、泊って行ってください。もちろん同じベッドで」  
 
「な、何ぃ!?」  
 
「大丈夫、明日は私も付いていきますので、エリィさんやティオちゃん、ノエルさんが襲いかかってきたら私が蹴散らしてみせますから」  
 
「そういうことじゃなくて!っていうか、なんでその三人が襲ってくるんだ?」  
 
「本気で言ってます?」  
 
 ?  
 
「・・・やっぱり勇気を出して早く告白してよかったです。これじゃ本当に早い者勝ちで、ロイドさんを盗られちゃうとこでした。」  
 
「どういうことだ?」  
 
「なんでもないです。さっ、早く寝ましょう。ロイドさん♪」  
 
 
 
 この日、リーシャがベッドの中で腕を組み、胸を押しつけてきてロイドがなかなか寝付けなかったのは言うまでもない。  
 リーシャもなんだかんだで襲われるのをちょっとは期待していたため、寝付くのはロイドが寝てからだが、ロイドの体温をを長く堪能できたので、これはこれでいいかと納得した。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 因みに、ロイドとリーシャが『朝帰り』してきたため、本当にエリィ、ティオ、ノエルに襲撃されるのだが、これをリーシャが綺麗に無力化、瞬殺したのは余談である。  
 
 三人が行動不能の数日間、穴埋めとしてリーシャが支援課の仕事を手伝うのだが、これのせいで支援課とアルカンシェルのスター、  
リーシャ・マオは深い仲であるという噂が町中に広まり、クロスベルタイムズに記事にもされるのだが、これはもしかすると、リーシャの狙いだったのかもしれない。  
 

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