由紀は「夢」の中にいた。夜のゴーストタウン。人っ子一人いやしない。いや、  
違う。自分は探し出すためにここにいるのだ。  
 お化けのような大樹が風にざわめいている。しかしなんら怖いとは思わな  
かった。なぜなら、自分が「狩る」側だったからだ。獲物が潜んでいること  
は知っていた。由紀はゆったりとした足取りで、ひび割れたアスファルトの  
上を進んで行った。スカートをはためかせながら。  
「あー!」  
 向こうで女の子の声が聞こえた。目を凝らせば、いつか見た加賀見とかい  
う少女だ。うまい具合に、向こうから駆け寄ってくる。  
「良かったッス!」  
 少女は泣き出さんばかりの表情だった。無理もない。由紀は内心でほくそえんだ。  
「無事だったんスか」  
 どうやら、由紀を女と勘違いしているらしかった。  
「大変ッスよ。暴行魔がうろついてるって…」  
 由紀は加賀見の頭を優しく撫でた。  
「大丈夫よ」  
「でも、でもッ、左が、左が…」  
「安心して。私が何とかしてあげるから…。とにかく、安全な場所にいきましょ」  
 加賀見はすっかり信用したらしく、おとなしく由紀についてきた。  
 由紀はある廃ビルの一部屋に、彼女を招きいれた。鉄の扉を閉めて、灯りをつ  
ける。するとそこには縄でマニアックに縛られて、天井から吊り下げられた左の姿  
があった。あとづざった加賀見は、思わず由紀にぶつかってしまう。その白い指は  
がっしりと、加賀見を押さえ込んだ。  
 
「ユキ、さん?」  
 由紀は間髪入れず、加賀見を古びたベッドの上に投げ出していた。  
「な、何するッスか!」  
 驚愕を隠せない少女に、由紀は問答無用でのしかかる。対話は無用だった。襟に  
指をかけ力ずくで引っ張ると、薄い繊維は簡単に引き裂けた。  
「うあ! 止めるッス!」  
 胸を覆おうとする加賀見。しかしその細い腕を払いのけ、ブラをも引きちぎる。  
「ひっ!」  
 怯えた顔の加賀見はとても愛くるしかった。しかし気丈にも加賀見は手足をばた  
つかせて暴れる。目に涙をためつつ、彼女は叫ぶ。  
「ボクは、ボクはッ…左を助けるッス!」  
 その言葉に若干感動はしたものの、面倒だったのでうつ伏せにしてしまう。ショ  
ーツは脱がせなかった。秘所の部分に指を引っ掛けて破いてしまった。加賀見の上  
に乗り、わき腹の下から手を滑り込ませる。標的はもちろん、少女の恥部だ。  
 反対側から回した腕は未発達な乳房を揉みしだいていた。  
「アア! アアァ!」  
 なおも暴れる加賀見。由紀は乳首を思い切りつねった。  
「いッッ!」  
 加賀見は悲鳴をあげる。すでに泣いているらしかった。  
 由紀は加賀見の首に牙をつきたてた。その「夢」の中では由紀は吸血鬼だったか  
らだ。牙は薄い皮膚を貫き血が滲み出す。それを舌で丁寧になめとった。その間も  
急所を苛む由紀の手は休むことを知らない。  
「はあッ、はああッ…あひッ、いっ、ハ、キャハハ…」  
 異常な状況の中、加賀見の感覚は狂い始めているらしかった。  
 
 加賀見の髪が、顔にかかる。ふと顔を見てみたい衝動に駆られたが、怒張した  
欲望は由紀に猶予を許さなかった。幸いにも、そこは濡れてきている。愛液と漏ら  
した少量の尿が混じった液体が由紀の手を汚している。  
 そこで由紀が入り口に押し当てると、意外にも加賀見は身をひねった。  
「や、やー、めるス…」  
 まだ理性が残っているらしい。  
「ひ、ひだ、りを…」  
 由紀は感心し、一つの趣向を思いつく。  
「君は左のナイト…男の子なんだね?」  
「ボ、ボクは左を、まァ、守る…」  
 首だけで振り返った加賀見は息も絶え絶えに、そう言った。その眼差しは、凄絶  
な艶やかさ。それを見た由紀は鳩尾のあたりがたぎるのを感じた。  
「わかったよ…だったら、それ相応にやってやるッ!」  
 由紀は前に廻した手を深く差し込み、どろどろした汁を肛門にまで塗りつける。  
さらに指を折り曲げて、しまった肉をこじ開けた。指を半ばまで差し込んでしまう  
と、捻るようにして蠢かせる。  
「ひゃ…わ、わぅ、あ、あ…」  
 予想外のことに、加賀見の喉から情けない声が喉から漏れる。しかし、本番はこれ  
からなのだ。由紀は新たに決めた標的に、下半身の牙を向けた。  
「あがゥ! やめてぇぇ!」  
 加賀見の哀願もむなしく、喰いこんでいく肉の牙。  
「やだ! やァだァ! こんなの、ヤダァァァ!!!!」   
 それは筋肉と内臓の圧迫をものともせずに、むしろそれらを押し広げて貫入してい  
く。すでに半ばまでが押し込まれていた。加賀見は抵抗する気概どころか、泣き叫ぶ  
気力さえ喪失しかかっているようだった。  
「い、いい、い、い…」  
 虫のなくような声でうめくばかりだ。  
 
 すでに七割がたが入ってしまっていた。しかし反応がいまいちで面白くない。由紀  
は加賀見の腰に両腕を廻し、持ち上げる。そのまま背後に倒れこみ、ツバメ返しの  
体位をとった。上になった加賀見は、自分の体重で完全に貫かれてしまう。  
「ッッ!!!!」  
 ろくに声をあげることもなく、身を捻るようにして悶絶する加賀見。  
「ダメだよ、加賀見ちゃん。ちゃんとしっかりしないと」  
 由紀は自らの器官で加賀見の体内をかき回しながら、淡々と言った。しかし加賀見  
はもはや、舌をだらりとさせて揺れるばかり。由紀が手で腰を支えていなければ、倒  
れてしまうのは明白だった。どうにもすわりが悪い。  
「もう一本、いっとく?」  
 由紀は意味ありげに笑った。そして「二本目」の器官を取り出した。  
 彼はその「夢」の中で、二本のものを持っていたのだ。それを加賀見の「前」にあ  
てがい、一気に突き破った。  
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」  
 半ば壊れかかっていた加賀見も、その瞬間ばかりはすさまじい悲鳴をあげる。もっ  
とも、次の瞬間には完全に失神してしまったのだが。  
 由紀はしばらくの間、意識のない体を揺さぶって楽しんでいた。小さな腹の中で、  
二本のものがぶつかり合っている。それはそれで快感だったが、今ひとつ物足りない。  
由紀は加賀見の意識が戻るまで、そのままで休憩することにした。  
 
 
 数分後。加賀見が息を吹き返した。相変わらず二本挿しの状態で。彼女は自分で  
自分がわからない様子だった。そこで、由紀が助け舟を出した。もちろん、自らの  
快感のためだ。  
「君は、左のナイトなんだよね?」  
「な、いと…」  
 加賀見の顔は見えなかったが、その目が虚ろであることは確かだった。由紀は  
「気付け」替わりに、思い切り突き上げてやった。小さな体が跳ねる。小さな乳房  
は揺れはしなかった。  
「ぐぅ!」  
 あたりを見回す加賀見。一発で正気を取り戻したらしかった。  
「ナイトならさあ、奉仕しなくちゃ」  
 由紀は加賀見の腰を持ち、貫いたままで立ち上がった。ユキのスカートが加賀見の  
背中にかかる。  
「ッ!! ゆ、ゆるひてくなさい…ゆふ、ひて…」  
 加賀見の足は宙に浮き、その指は何かをつかむかのように引き攣っていた。  
 由紀は加賀見の軽い腰を支え、うつ伏せに吊るされている左の後方に廻った。  
左の秘所はひどく汚れ、爛れている。きれいな体だけにその酷さは際立っていた。  
「ほら、奉仕しろよ」  
 由紀は悪魔の笑みを浮かべて、加賀見の顔を左の股間に押し付ける。  
 そのままユッサユッサと前後に揺すると、玉突き状に左の体もまた、揺れた。  
ロープの軋む音と、加賀見のすすり泣き。左の呼吸音も聞こえた。  
「ボクぅ、しぬぅ、しんじゃうぅぅ…」  
 少女の中は気持ちよかった。二つの肉の筒が絡みつき、その周りにある肉と  
内臓の圧迫。由紀は耐え切れなくなり、ついにイッてしまう。しかし、射精は  
延々、一分近くも続いた。  
 
「ヤメテクダサイ、んうゥ、ヤブレチャウっす…あーアー…」  
 加賀見の小さなお腹が、にわかに膨らんだように見えた。そして体内で律動し、  
暴れ、大量の精液を吐き続ける異物に、加賀見はとうとう壊れてしまったらしか  
った。ベッドに横たえ引き抜くと、白い液体が間欠泉のように噴出してシーツを  
汚していく…  
 
「ヤバイよ。俺…」  
 由紀は翌日、児玉に夢のことをカミングアウトした。あまりにもすさま  
じい夢でさすがに不安になったのである。自分の中に怪物がいるようで怖かった。  
とはいえ、姉や亘の相談できるような話でもなかった。児玉は少し考えて答える。  
「いいんじゃないかな? 夢の話だろ?」  
「そりゃそうなんだけど…」  
「フロイトじゃないけど、夢で発散してるうちは大丈夫だよ。現実でやってら、  
確かに大問題だけど」  
 児玉は少し笑って続ける。  
「君も、律儀だね?」  
 由紀は「律儀」という言葉に意外さを隠せなかった。児玉はメガネをなおした。  
「だってさ、君が本当にしたいのは左ちゃんなんだろ? それが加賀見ちゃんの  
夢を見たってことは、たとえ夢の中でも左ちゃんを出来るだけ傷つけたくないっ  
てことなんじゃないの?」  
 児玉はなおも不安そうに続ける由紀の肩をポン、と叩いた。  
「自分の衝動や狂気を、自覚してるなら大丈夫だよ…そういうのって、パワーだか  
らね。扱い方を誤って、闇に食い尽くされない限りは」  
   
 

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