「決めた。…あたし、一緒の高校に行く。」
―左ちゃんだったら、もっと良いところにだって行けるね。
そう言われるようになったのは、水面さんのおかげ。自分だけの力じゃない。
「…唐突っスね。…でも…、ボクも一緒に行けるっスね、多分。」
…ぼんやりしてたから、声かけられて、びっくりした。
「…うん?」
「…ぷっ…当然、『紀君と』…同じ高校っスよね?」
「…加、賀、美♪怒ってるの?…それとも、嫉妬?」
笑われたのが悔しくて、そんなことを言ってみた。
「…2人っきりのとき位、ボクの事だけ考えて欲しいって思うのは、」
ダメっスか?なんて見上げてくる加賀美。…可愛いなぁ…本当に。
「…ごめんね。…そうだね…。」
「…わかってくれるっスよね、左?」
「ぷっ…もう…言うのすらダメなの?」
「…ふたりきりの時は、ボクのモノっスから♪」
そう言って、軽いキスをくれる加賀美。…やっぱりくすぐったい。
「…言ったなぁ?…そんな可愛いコト言うんなら、こうしちゃおうかな♪」
加賀美の上に、跨るような体勢になる。
…もし保健室だったら、そろそろ保険医さんが停めに来る頃だろう。
カーテンを開けて、またなの?森居さん、加賀美さん。…なんて。
「…同じこと考えてたみたいッスね。停められちゃうって。」
見つめあって、キスし合って、
「ここは、あたしの部屋。だから、停めに来る人なんていないよ。」
…甘い言葉掛けてあげれば、少しは機嫌直してくれるかな?
「…おじさんも、紀君も、未記さんも出かけていれば…っスね?」
…簡単にはいかないか。
「…もぅ…二人っきりの時は、って言ったのはどっちだよ…加賀美。」
「…ん…んふ…ひ、ひだり…?…ゃ…ぁ…」
…自分でも、慣れないけれど、
「…んっ…ん…?…んむ…ん…んっ……ぷはっ…なぁに?加賀美。」
…舌をいれて、いわゆるディープキス。…あくまで、未記さんの真似だけど。
「…ふぁ…あ、あんまりっスよ…。」
それは、女の子同士ってことでノーカウントにはなったものの、
ファーストキスには変わりないあのキスを奪われたことへの、
ちょっとした仕返し。
「…嫌がってないくせにぃ♪」
…そういう反面、気になっていた。
―今のあたし、加賀美の目には、どう映っているのだろう…と。