羊水の中にいるような
温かく
満ち足りた空間の中
俺はパズルを組み立てていた
心のパズルを…
間違って組みあがっていたパズルを
要らないピースをより分けて
本来の形へ
組み立ててゆく
途中
なかなかピッタリなピースがなくて
ため息をついて休憩する
そんなとき ふと頭を上げると
決まって俺に微笑んでくれている少年がいた
彼は慈愛に満ちた微笑を浮かべ
ゆっくりと視線を他に移す
俺もつられてそちらを見ると
施設にいたころに遊んでいた皆がいた
もちろんモクバもいて
少年を見上げると
やさしく笑って頷いてくれたから
俺はその輪に入り チェスを始めた
チェスはトランプになり
かくれんぼになった
ふと気がつくと
俺の手にはパズルがあって
どれも当てはまらなかったはずの空間には
新しいピースがはめられていた
つい 微笑んで
周りには もう遊んだ仲間の姿はなかったけど
再びパズルを組み立て始めた。
途中
ここまで出来たとパズルを少年に見せる
彼は優しく笑って 頭をなでてくれた
俺はそれが嬉しくて
再びピースを集め始める
ふと
知らないピースを見つけて手に取る
すると少年が少し悲しそうな顔をした
俺は見たこともない衣装を身に纏っていた
けど 不自然じゃなくて
何だか いつも着ていたようにしっくりきた
少年を見ると
彼も見たことのない服を着ていた
俺は彼に頭を下げ 手にキスをした
俺のすることは この人を守り抜くこと
そう
どこかで知っていた
彼は戸惑うように
悲しそうに俺を見つめた
俺の胸も
…何故だか痛くて…
気がつくとパズルは少し組みあがっていた
だけど 何だか切なくて…
彼を見上げると 彼はやさしく抱きしめてくれた
……泣きそうな顔で……
俺には そんな彼を包み込むように抱きしめてあげることしかできなくて
やさしく髪をなで 微笑む
切なくて 愛しくて 悲しくて
自分の腕に収まる小さな体を
壊れないように抱きしめた
二度となくさないように
そうしたら
彼は小さな小さなピースになった
哀しそうな 嬉しそうな笑顔を残して
俺はそのピースをパズルにはめ込み
立ち上がった。
瞬くと窓が見えた。
窓の外には空。
昔と変わらぬ青い空があった。
「お、おぼっちゃまがぁ〜〜ッ!!」
長い夢を見ていたような気がする。
内容はもう覚えていないけれど。
目覚めた途端、現実は厳しい状態で。
夢の内容を思い出す余裕もなかった。
モクバを助けに島について、
遊戯に会った。
…何故か懐かしく思って、
…でも気のせいだと考えを打ち消した。
彼はもう少し落ち着いていた。
彼はもう少し聡明だった。
彼はもう少しやわらかく笑った。
彼は……少し哀しそうだった。
デュエルをしても、
そう思った。
彼はもう少し明るかった。
彼はもう少し優しげだった。
彼はもう少し何か知っていた。
彼は……少し淋しそうだった。
何故だか、
今は少し違うと思った。
だが、俺は知っている。
彼は居なくなりはしないことを。
彼は、これから自分の前に姿を見せるのだから。
それまで…
俺は彼を待ち続ける。
彼らが『彼』になるまで…
きっと、
彼も私も、
覚えていることは出来ないのだろうけれど…
幾年月過ぎ去ろうとも、
それが永久に近い時間だとしても…
たとえ私も忘れてしまっても、
魂の記憶は消せないのだから…
…貴方を 待ち続けます…
…我が君…