「ねぇ、勇者って本当に怖いのかな?」
産まれたばかりのリリスが魔王にそんなことを聞いた
「本当だとも、奴らはお前たちを見つけ次第殺してしまうだろうね」
魔王はそう答えた
「じゃあ私強くなるね」
リリスがそう答えた
「もし、強くなったら勇者さんとお友達になれるのかな?」
そんな事をリリスはふと思った
「あ、餌だ餌だーいただきますー」
ガジガジムシを食べながらリリスは「勇者」とかいう人間と友達になりたいと思った
でもリリスは強くなるということがどういう事か分からなかった
仲間が言った
リリスA「どうせ勇者なんて私のこのかわいい姿を見たらきっと逃げ出しちゃうわよ」
リリスB「わざわざ殺し合いをする意味なんてないものねえ」
リリスC「私たちの魔法で勇者なんて適当に痛めつければ逃げていくでしょ」
みんなが笑いながら言っていた
でも産まれたばかりの彼女はその仲間には入れてもらえなかった
彼女だけ種族が違ったのだ
眠りの魔法を使うリリス、「ねむりリリス」だったから
そんな事もあって見もしない勇者にどこか憧れを抱いていたのかもしれない
その時前線で戦っていたとかげ男さんがボロボロになってこっちに来た
リリスA「どうしたんですかぁ?」
リリスB「ゴーレムに食べられそうになったとか…」
しかし、事態はそんな生易しいものではなかった
とかげ男「大変だ!勇者だ!は、早く逃げ・・・」
そう話すとかげ男の背後から爆発音が聞こえ・・・そして彼は動かなくなった
後のことは…よくわからない
必至になって杖を振り魔法を使うリリス達を容赦なく切り捨てる勇者の姿が目に映った
たった1匹のねむりリリスは怖くて震えていた
戦うとかそういう事は考えられなかった
ただ、震えているだけだった
奥の方へ行った勇者の断末魔の声と共に場は静まり返った
奥のドラゴンさんが倒したようだ
こっそりと顔を出したリリスの目に映ったのは仲間の魔物達の死体だけだった
彼女は泣いた
でもどんなに泣いてもみんなは生き返ってはくれなかった
「私が弱いから…私が弱いからいけないんだ…」
「もっと私が強ければみんなを守れたかもしれないし、勇者さんを説得できたかもしれないのに・・・」
「強くなりたい…」
そんな彼女の目の前の壁が突如崩れ…エレメントが顔を出した
「破壊神さま?」
彼女は目には見えない神に祈った
強くなりたい!と みんな仲良くなれるように強くなりたい!
そう祈りながらエレメントを口にしたとき…彼女の体に異変が起こった
自分から何かが生まれてくる感触。
そして自分とは違うリリスが産まれた
「私、バンパイアだよ、あなたが強くなりたいと祈ったから産まれたの!よろしくね!」
魔王「おお、バンパイアが産まれましたか!さすが破壊神さまですな!」
こうしてひとつの新たな種族がまた一つ生まれたのだった
でもねむりリリスの思いは一つ
強くなってみんなが友達になれますように…
それは誰にも届かない小さな願い
小さな小さな願い・・・