訳の分からないまま抱きすくめられて、雪菜は悲鳴を上げる前に押し倒された。  
「やっ…やめてください……いやあ!」  
彼女の声もむなしく荒々しい口付けが交わされる。  
(っ……!!)  
逃れようと必死に抵抗するが相手には力で敵うはずがなかった。  
(…ひえ……い……さっ……)  
 
彼の身体を押し返そうと力を込めた両手首は、あっけなく彼の両手に捕まり床に押し付けられた。  
飛影の舌が雪菜の薄桃色の唇を割り、中へと侵入していく。  
驚きと羞恥に顔を紅らめ、目を硬く閉じながら、雪菜はただ彼の行為を受け入れるしかなかった。  
身体が震えて声が出ない。  
両者の唇が合わさる音と、衣擦れの音だけが薄暗い部屋に響いていた。  
頭の中が真っ白になる。  
(なん…で……)  
こんな事をするには一番遠い存在だと思っていた人。  
その人に突然唇を奪われ、今まさにそれ以上のことをされようとしている。  
何がどうなっているのか分からなくなり、雪菜の頭は混乱していた。  
飛影の唇と舌が雪菜の頬、耳、そして首すじへと伝っていく。  
その間にも彼の両手は彼女の着物の帯を乱雑に解いていった。  
雪菜は必死に抵抗を試みたが、あっという間にあと一枚というところまで脱がされ、  
そして最後の一枚の胸の部分がはだけさせられた。  
 
雪菜は反射的に晒された部分を手で隠そうとしたが、彼の右手で両手首をまとめて頭の上のほうに  
押さえつけられる。  
雪菜の、決して大きくない、けれど形の良い乳房が露わになった。  
今まで誰にも見せたことのない、雪のように白い肌。そこへ飛影の熱い吐息がかかる。  
目の前で起きている光景に、雪菜は羞恥心で耳まで真っ赤になる。  
飛影の視線から逃れようと、思わず身を捩ったが、その行為が却って相手の欲望を煽る結果に  
なったようだった。  
飛影の舌先が、雪菜の乳首に、つ、と触れる。  
「んっっ」  
思わずピクンと身体が反応してしまい、雪菜の口から微かに声が漏れる。  
そしてゆっくりと唇で胸の先の小さな蕾がついばまれる。  
「い……や……っ」  
雪菜が小さく悲痛な声を漏らす。  
最初は口付け程度だった胸の突起への愛撫が、少しずつ大きくなり、飛影の舌が小粒で丸い雪菜の乳首をちろちろと舐め始める。  
「……あ…………ん……っ」  
さらに左手で、もう片方の胸も揉みしだかれる。人差し指と親指が雪菜の乳首をつまむ。  
「やぁっ!!」  
雪菜が声をあげるが飛影はなおも舌を動かしつづけ雪菜の乳房を味わい尽くした。  
雪菜はやめて、やめてと何度も懇願の声をあげたが、暫く飛影の舌と指の動きが止まる事はなかった。  
 
ひとしきり乳房を愛撫したあと、飛影は顔を上げ、雪菜の顔をじっと見つめた。  
二人の息遣いが顔と顔の間で交じり合い、部屋に響いていた。  
雪菜の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。  
飛影は呼吸を整えるために一度唾を飲みこみ、黙ってその目元に軽く口付けする。  
「飛影さん…………」  
「……………………」  
飛影は自分の表情を隠すかのように、雪菜の首筋に鼻先をうずめた。  
飛影の熱い身体が雪菜に覆い被さった。幾分力は抜けていた。  
――今、残っている力を振り絞れば――妖気を一気に放出すれば――逃げられるかもしれない――  
浅い呼吸を繰り返し、天井をを見つめながら、雪菜はそう考えていた。  
だが、雪菜は抵抗できなかった。  
思い出してしまったのだ。  
暗黒武術会の最後、ドームが崩れ落ちるときに、飛影が助けてくれた時のこと。  
しっかりと抱きかかえてくれた手の感触。  
自分がどこも怪我をしないような体勢で着地してくれた一瞬の気遣い。  
汗と埃と血の混じった匂いのする、鍛え上げられた身体の感触、その温度。  
顔と顔の距離。体を通して響いた低い声。行為とは裏腹なぶっきらぼうな言葉。  
あれはいったいなんだったのだろう。  
疑問は少しあったが、それでも、助けてくれたことに感謝する気持ちは変わらなかった。  
普段冷徹な人の、意外な一面を垣間見たせいだろうか。  
そのことがあってから、雪菜は、飛影に対して、少しずつ、心を開いていった。  
 
彼といると何故か不思議な安心感があるのだった。  
そしてそれは、雪菜だけでなく、飛影もそうであるということに、雪菜はある日気づいた。  
自分と向き合うとき、少しだけ彼の妖気のオーラが穏やかになる。  
――見守られている気がする――  
――自分は彼の中で、特別な存在として扱われているのではないか――  
自分でも流石に思い上がりも甚だしいと思ったので、決して口にはしなかったが、そう思うだけで雪菜の心は温まり、  
そして飛影に対し少なからずの好意を持つのだった。  
まだ見ぬ兄に対する憧れもあったのかもしれない。  
兄は生まれたときから炎の妖気に包まれていたと聞かされていた。  
だから、炎術師である飛影に、知らず知らずのうちに兄の幻影を重ね合わせていたのかもしれない。  
飛影が自分に関心を持ってくれていると知ったとき、何故か嬉しかった。体が暖かかった。  
あの人が兄というわけではないのに……そんなはずはないのに……  
 
だんだんと飛影の顔が近づき、また唇が重ね合わせられる。  
「ん……っ」  
先ほどとはまったく違う優しいキス。  
(だ…め……)  
必死に堪えようとするが、飛影のと触れ合う舌先を通じて頭の中に快楽の波が押し寄せてくる。  
「ふぁ……っ……」  
思わず出た甘い声に自分でも驚く。自分の意思とは裏腹に、飛影の唇が、舌が、指が、自分の体と触れ合う部分すべてが  
刺激となって、悦楽の世界へと雪菜を誘う。  
飛影の指が雪菜の胸、腹、腰へとゆっくりと降りていき、そして一番敏感な部分へと進み入る。  
すでに雪菜の秘部は熱く濡れており、飛影の指をスムーズに迎え入れた。  
「あ……っ」  
雪菜の腰が思わず仰け反る。恥ずかしい。でも、気持ちいい。  
雪菜の反応にさらに呼応するかのように、飛影も雪菜に合わせて体を動かす。  
二人とも、同時に高みへと、その瞬間へと、登り始めていた。それを感じた雪菜は、息を熱くさせ、半ば無意識に飛影の  
首に腕を回して抱き寄せた。飛影の息遣いが耳元にかかる。愛しくなって回した腕に力を込めると、飛影が顔をずらして  
そこからまた長い長いキスが始まる。  
「ん……ふ……っ」  
二人の舌が絡まり合う。その間も飛影の指は雪菜の秘所を愛撫しつづけている。  
「は……ぁんっっ」  
雪菜の秘部はもう充分すぎるほど潤っていたが、それでも飛影はそのいじる指を動かし続ける。  
 
雪菜は、大事な部分に触れられながら交わすキスがこれほどまで甘いということを初めて経験した。  
(こんなの……これ以上行ったら……もっと…………)  
だんだん働かなくなってくる頭でそんなことを考えていると、そんな雪菜の思考を読み取ったかのように、  
飛影は、愛撫する手を止め、上がった息で雪菜の顔を見つめた。  
雪菜も、潤んだ瞳で、でも今度は求めるような眼差しで飛影と目を合わせた。  
お互いに考えていることはもう、一つしかなかった。  
「…行くぞ」  
飛影がかすれた低い声で合図する。  
雪菜は黙ってうなずく。  
飛影が、雪菜の膝に手をやり押し広げると、先程の愛撫で充分濡れた秘所が露わになる。  
右手でそこへ自分のものをあてがい、先端が触れ合うと、飛影は一瞬緊張したのか息をつき体勢を整えた。  
そしてゆっくりと、少しずつ、雪菜の中へと入っていった。  
「………んっ………」  
初めての痛みに、雪菜は思わず声をあげそうになるが、飛影に気遣わせたくなくて、顔を逸らしてぎゅっと  
目を瞑り、声を抑える。  
 
 
飛影はそんな雪菜の様子が、愛しくてたまらなかった。自分のすべてをぶつけたかった。  
運命に翻弄されながら生きるうちに知った妹の存在。最初は、遠くから見守るだけでいい、そう思っていた。  
だが、幽助達といる中で彼女と顔を合わせるうちに、飛影は、いつしか彼女に対して妹以上の感情を抱いていた。  
離れていた時間があまりに長すぎたせいだろうか。  
飛影は、自分自身が雪菜を自分のものにしたいと思っていることに気づいたとき、初めはあり得ないと  
自身に言い聞かせた。――そんな考えは捨てろ……馬鹿馬鹿しい……――  
だが実際、桑原と雪菜が並んで歩いているのを目撃したりすると、胸が痛むのだった。  
間違っても雪菜が桑原に身体を許すことはないだろう。  
桑原のことも信用していないわけではない。人間界での雪菜のことは奴に任せたつもりだった。  
頭ではそう言い聞かせていた。だが、万が一……もし万が一のことがあれば……  
そんなことを想像するといたたまれなかった。  
雪菜を誰にも渡したくなかった。彼女と遂げられるのなら、嫌われたとしても構わない。  
その思いが遂に抑えきれなくなったとき、飛影は、雪菜を床に押し倒していた―――  
 
「や……んっ……!」  
雪菜が眉間に皺を寄せて、快楽の波に堪えきれず悩ましげな声をあげる。  
しっかりと繋がれた二人は、抱き合って肌を密着させ、快楽を高めあっていた。  
彼女を抱きしめ、彼女を深く深く突き上げながら、飛影もその悦楽に心を奪われていた。  
ずっと、ずっとこうしたいと思っていたのだ。  
飛影は、雪菜の胸へと顔をずらし、再びその先を口に含む。  
「んっっ」  
そしてピンク色の小粒を強く吸い上げ、時に舐めあげる。  
「はぁ…っ!」  
雪菜の身体がビクンと大きく跳ねる。飛影はその後も鎖骨や、首筋にいくつも赤い斑点を残していく。  
雪菜も、飛影の身体を抱きしめて、再び飛影と顔が近づくと、今度は雪菜のほうから唇を重ねてくる。  
本日何度目かになるディープキスだが、その中で一番気持ちいいキスだった。  
くちゅ、くちゅ、ちゅぷ、ぬるといやらしい水音が上下で繰り返される。  
雪菜の手の平が飛影の背を下から上へとなぞりあげると、雪菜の中でさらに熱く大きくなった飛影が、  
舌と腰をさらに激しく動かしてそれに答える。  
 
「あっ……!あっ……!あんっ!!」  
飛影に激しく攻められて、雪菜ももうされるがままに声をあげる。  
「ゅきな……雪菜っ……」  
激しいピストン運動が繰り返され、その時が、少しずつ、少しずつ近づいてくる。  
そして、飛影のものが雪菜の最奥まで突き上げたとき、ビクン、と大きく脈打って精液が雪菜の  
膣内へ向けて大量に放出された。  
同時に雪菜が脚を飛影の下半身に強く絡ませる。  
「っっ雪菜!!」  
「ああああああああっ!!!」  
一番飛影と深く繋がった体勢を保ち、なおもビク、ビクンと迸る飛影の精を最後の一滴まで受け止めるまで、  
雪菜はその脚を解こうとしなかった。  
 
「はあ……はあっ……はあ……」  
「はぁ……はぁ……雪菜………――……」  
「え……?」  
「……愛してる」  
 
その日二人は、夜中にかけてまでずっと何度も、結ばれあった。  
離れていた時間、気持ちを偽りつづけていた時間を、急速に埋めるかのように。  
何度も、何度も、結ばれあったのだった。  
 
 

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