「じゃーん!さぁ見ろ、とくと敬え!」
「・・・・・・・・・・・へ?」
「・・・・・・・・・・・ふぅん、なるほどねぇ・・・」
「・・・・・・・・・・・何だこれは」
ここはとある喫茶店。机の上に置かれた小さな香水瓶が一つに周りにはいい年頃な男が4人。
いや、正確には数えたら●匹と・・・恐いので止めておこう。
「ん〜、この美しい薬剤師鈴木が蝶・サイコーに素敵な配合で作ったフェロモン香水を作って来てやったと言うのに
お前達のその見事なまでの白けた返事、反応っぷりは何だ!酷いぞ、酷過ぎるぞ!お前達!」
きぃ、とぼたん辺りだったら叫んでいそうな位に腕を上下に振りながら、鈴木は他の3人を順番に指さした。
「ふぇろもんこうすい?何だそれは」
怪訝そうな顔で鈴木の顔を見上げるのは、飛影。その飛影にコッソリと耳打ちするように囁くのは、幽助。
「よくあるんだよ、コレを体に噴き付けておくと女がイチコロだぜってヤツ。通販でよくある紛いモンだぜ、どうせ」
「この美しい薬剤師鈴木が作ったモノをそのような紛い物と同じに扱うなーっ!」
ビシ、と耳打ちしている幽助に向かって再度指を突きつける。
と、その香水瓶を手に取り、手馴れた仕草で蓋を開けると手で軽く扇いでその香りを軽く確認しているのは、蔵馬。
確認し終わったのか、また慣れた手付きでキッチリ蓋を閉めて、瓶を光に透かしながら口を開く。
「ま、一応軽くフェロモン作用は見られますが・・・この程度のレベルではどこぞの蝶々の妖精さんに怒られますよ?」
にっこり、と爽やかな微笑みと共に鈴木の手の中へ香水瓶を押し込んで、更に付け足すようにもう一言。
「それに、この程度の簡単なレベルのモノなんて・・・半日頂ければ俺がこの場の人数分作る位出来ますしね」
あはは、と軽く笑い飛ばして壁の時計を見上げると慌てたように千円札を二枚、机の上に置いて席を立つ。
「あれ、蔵馬。もう昼休み終わりかよ、早くね?」
飛影の分だな、と無言の了承で幽助が懐にしまうのを横目で確認しつつ、蔵馬は小さく哂う。
「昼休みの短い時間でも、デートしたいと言う女性陣はそこそこいるものでね。それじゃ、お先に失礼」
小走りで出て行こうとするが、ふと足を止めて振り返ってポツリと呟きひとつ。
「もっと強い効果が欲しかったら催淫効果を強めておかないと意味が無いですよ、鈴木?」
それじゃ、と笑いながら手を振って出て行く狐の背中を、見送るのは寂しい男1人、一応彼女持ち男が2人。
「かー、やっぱり蔵馬ってタラシだよなぁ、鈴木〜。お前も頑張ってちゃんとした彼女作れよっ!紛い物じゃなくて」
ゲラゲラと笑いながら、幽助が伝票と飛影を引きずって店を出て行く。
不満そうに引きずられつつ、飛影がボソリと呟きを。
「あんなモノを使わんといかんとは、人間達は大変なんだな幽助」
「いや、別に俺あーいうの使う気ねぇし。てかバレた後が痛いから無理」
「そういうモノか」
「そういうモノだぜ」
そんな2人のやり取りが遠くなって行くのを耳で聞きながら、鈴木は久々の負けっぷりに打ちひしがれていたとか。