――何の覚悟も無く、久々に降り立った人間界だった。
魔界で二年後に迫った魔界統一トーナメントに向け、修行に明け暮れている日々。
そんな俺に、現状は人間界で暮らす『闘神』の息子――浦飯幽助から、
何故か人間界へと降りて来いとの通達が入った。
それが、俺を今こんなにもややこしい事態へと誘う根源だったのだ。
…今になって、気付いても遅いんだが。
「………はー…」
「……、…」
俺は、今男として最大の難局を迎えている。
何も知らされぬまま、ただ幽助に、
『いいから降りて来いって。お前に会いたいって奴がいるんだって!』
と、言われ、俺が具体的に聞こうとすると、奴は決して名前も性別も、
妖怪なのか人間なのかさえも俺に教えず、ひたすら『いーからいーから』の繰り返し。
俺がそれでも、としつこく聞くと、
『お前でなくちゃ、ダメなんだって』
その一言で、俺は折れた。
どうダメなのか、わからないまま、俺は幽助に言われるがまま、
まぁ見た目では人間と混じっても全く違和感の無い俺だ、普通に人間界に降りて、
あいつに会って、Tシャツとジーンズに着替えさせられ、
有無も言わさぬ勢いで連れて行かれた場所は。
『このホテルの、五階の512号室で、お前を待ってる人がいんだ。
話だけでも、してやってくれよ』
と、にやにやと冷やかすように言う奴の態度で、俺は気付かねばならなかったのだ。
…っていうか、何でホテル!!?
と、何故俺は奴に突っ込まなかったのだろうか。
正直、何も感じなかった自分が憎い。
死々若や陣やその他諸々から散々、お前はどこか人とワンテンポずれてると
言われ、それを否定し続けた俺だが、やはり俺はずれてるのか。
いや、そもそも別にこのホテル自体、その、それ目的のホテルでは無く
普通の、それなりのホテルだという事で、俺もまさかという思いがあったのだ。
ただ、よく考えれば、それが奴の手だったのだろう。
俺は教えられた部屋の前に立ち、ドアをノックすると、出てきたのは、
見覚えがある――妖怪の、可愛い女の子だった…。
『鈴木さん!?本当に、来てくださったんですか!』
『えーと…確かあんたは…武術会で審判してた…樹里…とか言う…?』
『は、はいっ!って、アレ?浦飯さんから聞いて無かったですか?』
『?いや、何も…』
『ええ!?浦飯さんに、その…私の気持ち、聞いてない…ですか…?』
『気持ち…?』
『…そんな…あれだけ、私の口からは言いにくいから、話しておいてって言ったのにー!』
突如涙目になる彼女に、俺は何の事だかわからず、取りあえず部屋に入って
彼女の話を聞こうとすると。
『うぅ…酷い……全部同意で、ここに来てくれたと思ってたのに…!』
『何なんだ…?同意って…』
『…わかりました…。ここまで来たら、率直に言います…。
鈴木さん…私、貴方の事…好きなんです!!私と、お付き合いして下さいっ!!』
…俺は、その瞬間、頭が真っ白になった。
あわあわと言葉に詰まる俺を真摯に見詰める彼女に、俺は冷静さを取り戻す間もなく
流され、何故か椅子では無くベッドの上に隣同士で腰掛け、現在に至る。
どれ位、そうしていたのだろうか。
外はもう真っ暗だ。
もともと待ち合わせ時間が五時過ぎだったから、当然と言えば当然だが。
まだ色々と感情の整理がつかず、幽助を責めてみたり、気付かなかった自分自身に
悪態をついてみたりと、隣の彼女を見ては、溜め息をついてみたりしていたが。
彼女の方も、このとてつもなく気まずい雰囲気に、頬を染めて俯いたまま
黙り込んでいる。
当然といえば当然の反応だろう。
彼女も幽助に騙されたようなもんだ。
話を聞くと、今彼女は人間界で、所謂芸能界と呼ばれる世界で暗黒武術会で
共に審判・実況を努めた小兎と、結界師の瑠架という女と、
『カルト』というグループを組み、現在大人気絶頂中なのだそうだ。
熱狂的なファンも多く、今妖怪専門の何でも屋を開業している幽助がよく
サインやら握手やらを求めるファンを連れて尋ねて来るのだそうだ。
その時に、彼女はどうやら俺と会わせて欲しいと奴に頼み込んだらしい。
彼女の気持ちも、全部幽助を通して俺に伝わっていると思い込んで、
それを俺が受け入れた上でここに来るのだと思っていた彼女には、
この仕打ちはショックだっただろう。
俺は、何も知らなかったのだから。
俺が横目で彼女を見ていると、彼女も俺をちらりと見て――目が、合った。
「「――っ…!!」」
そして、ばっと目を逸らす。互いに。
あああああ、何だこれ!?
心臓に悪い!!
何コレ。何この雰囲気。どうすればいいんだコレ。
死々若助けて。
俺はこんなこと初めてだ。
今まで、強くなる事とつい二年ほど前までは自分の美しさにしか興味の無かった俺だ、
女を意識したのはこれが初めてで、どうすればいいのかさっぱりわからん…!
「あ、あの…」
「――っ?!」
彼女がおずおずと問いかけてくるのを、俺はぎくりとして恐る恐る彼女を見詰めた。
彼女の上気した顔がすぐ側にあった。
今度は、はっきりと俺を見詰めていた。
正直、…可愛い。
褐色の肌に、大きな目……紅い、唇…
それに、目を引くのは、彼女のルックスに止まらず、その反則的なスタイル。
成る程、アイドルとして人気が上がるのも頷ける、魅惑的なプロポーション。
しかも、人間界では今は夏という気候だけあって、彼女は今肩を開いた、
白い布きれ一枚の、肌の露出が極めて高い服装で、当然の如く
嫌でも彼女の褐色の健康そうな柔肌と、今にも零れそうな胸が目に付いた。
そりゃ、こんな可愛い娘に好きだと言われ、テンションが上がらない男などいる筈もない。
だが、こういった経験の無い俺には、この場合どう声を掛ければいいのか、
どうすればいいのか、まるでわからない。
そんな俺の態度に、彼女は耐えられなくなったのか、不安げな表情で俺を見詰めながら、
申し訳無さそうにこう言うのだ。
「その…鈴木さんは…私の事ご迷惑ですよね…」
ぐら。
俺は目の前が大きく歪んだ。
いやいやいやいや、そんなわけじゃない。
っていうか、何故そうなる!?
いや、俺の態度か!?態度が悪いからダメなのか!?
そりゃそうだよな、一時間以上俺は彼女に何も話してないんだからな!?
そりゃ、そう思われても仕方ない。仕方ない、が…!!
「いや、別に、その、迷惑なわけじゃ…」
いや、寧ろ、嬉しい事は嬉しい。
暗黒武術会においては、素顔さえ晒さず、あの幻海に情けなくボコられ、
ただのイカれた道化に成り下がるしか無かった俺を受け入れてくれた上での告白なのだ。
あの魔界統一トーナメントで、俺の戦う姿を見てくれた上で、俺の素顔を
知った上で、改めて好きになってくれたそうなのだが…。
「本当ですか!?」
途端、彼女の顔にぱぁっと明るい笑みが浮かび、俺は心臓が跳ね上がった。
くそ……可愛い……っていうか……
萌え…!!
いや、だめだだめだ、場所が悪い!!
ここはよりにもよってホテルだぞ!?
ベッドの上だぞ!?
よからぬ想像が頭を過ぎって、俺は顔が熱くなる。
彼女だって、会ってすぐに、…とは考えてはいないはずだ、多分。
でも、ホテル……なんで、彼女は了解したんだろうか。
当然の如く、今夜一晩は二人っきりで過ごさねばならないというのに。
「よかった……私、鈴木さんに嫌われちゃったのかなって、思って…」
安心したような彼女の顔に、俺は、胸の動悸が更に激しくなっていく。
健気で、可愛くて……ダメだ、俺、これ多分。
惚れてしまった、と言ってもいいのか。
散々、棗に惚れた酎に。流石に骨抜きにされた鈴駒に。
亡き幻海にひたすら恋い続ける死々若に、色ボケだの何だのと罵ってきたが。
――俺もその仲間入りか…!?
たら、と額から汗が流れる。
やばい、マジでやばい。
一晩も、理性が持つのか…?!
「あの…鈴木さん…じゃあ…私の事…受け入れてくれますか…?
私…今日はそのつもりでここに来たんです…。本当に来てくれるのかどうか、
不安で不安で、たまらなくて…」
―――えぇぇぇぇ!!?
何ってった、今。
そのつもりで、って…どういう意味だこれ、何なんだこれ、今どういうシチュエーション!?
「あ、あの、そ、それって…一体、どういう…!?」
アホか俺、何聞き返してんだ、明らかじゃないか、おい。
でも、彼女が言う受け入れるというのは、もしかしたらただ
彼女の想いを受け入れてくれるか、というものだけかもしれない。
もしここで判断を誤って、彼女を傷つけでもしたらどうする!?
ここはあくまで慎重にだな…
「…その…鈴木さんは…その…」
もじもじと、頬を赤らめ、恥じらうような素振りを見せながら、続く言葉をためらう。
どくん、どくんと心臓の音がやかましい。
数秒置いて、彼女の愛らしい唇から出た言葉が。
「あの…私と…恋人になって……私を…今日…抱いて、くれますか…?」
瞬間。俺は眩暈がした。
視界が歪む。
余りに予想に違わぬ彼女の言葉に、俺は卒倒しそうになった。
…って、マジでかぁぁ!?
会ってすぐだぞ、おい!!?
まだ一時間位しか経ってないんですけど!?
さっき告白されたばっかりなんですけど!?
いいのか!?
俺はこのまま流されていいのか!?
彼女と最後までヤってしまっていいのか!?
「…い、いや…その、あんたの気持ちは、そりゃ嬉しいけど…
その…ついさっき、俺達会ったばっかりで……いいのか…?」
「わ、私はずっと鈴木さんが好きでしたから……
鈴木さんさえ不都合が無ければ……お願い、します…」
…本気かよ…
ごくり、と生唾を呑んだ。
付き合うと決まった瞬間に、女の子の方から、こんなに大胆に男を誘ってくるなんて、
最近の若い子は人間妖怪問わず乱れているとは聞いていたが、噂どおりだったのか…!
とは言え、今まで一度もこういった経験無しの俺が、果たして女を
うまく抱けるのだろうか。
他の男と比べられでもしたら、それはそれで哀しいものがあるが…
「あ、あの…何か問題でも…あるんでしょうか…?」
…彼女を抱く事に、という意味だろうか、この場合。
別に問題があるわけではない。巧く出来るかどうかは別にして。
「いや…そんな事は…無い、が…」
「鈴木さん…」
不安げに、俺を見詰める彼女に、俺は理性と本能の間で色々と
女々しく葛藤を繰り広げるも――
「…好きです…鈴木さん…!」
その時、俺の中の何かが、音を立てて崩れ去った。
「樹里…っ…!」
「きゃっ…!?」
本能が、完全に理性を押さえ込んでしまったらしい。
俺は、彼女の名を呼びながら、ベッドの上に押し倒してしまった。
正直、そんな自分にびっくりだが…
「鈴木さん…!嬉しいッ!!」
「――っ、い…!?ン…!!?」
突然、彼女が俺の頭に両腕掛けて抱え込み――
俺は、あろうことか、彼女の柔らかい二つの膨らみの谷間に、
顔を押し付けられた。
むぎゅ、と柔らかい感触が、俺の顔を包む。
その瞬間、視界が彼女の胸だけで覆われた。
…あまりの心地よさに、俺は絶句した。
柔らかい、気持ちいい、温かい、…理性が、完全に崩壊する…!!
「――っ、あ、鈴木、さん…!?」
無意識に、俺の掌は彼女の肩の開いた服を、ずり下ろしていた。
勿論の事、彼女の柔らかな双丘が、ぽろんと零れ落ちた。
俺は一旦顔を上げると、彼女の張りのある二つの膨らみが、
目の前にあった。
褐色の肌の中心に、微かな桃色に色づいた淡い突起がぷっくりと
その存在を主張している。
俺はたまらず、その淡い突起を口に含み――舌先で、それを嬲る。
「っ、ひゃうっ!?」
唐突な刺激に、彼女の身体がびくんと反応する。
何だか色んな段階をすっ飛ばしている気がするが、仕方ない。
誘ってきたのは彼女だ、決して俺が悪いわけじゃないぞ、はっきり言って。
俺は彼女の突起を嘗め回し、時に強く吸い付いたり、甘噛みしたり、
その間も彼女の豊かな乳房を下から揉み上げるように弄り、その自由に形を変える
柔らかな感触を楽しむ。
耳元で、彼女の喘ぐ声が、艶めかしく響いていた。
「あっ、あ、ぁ…は、鈴木…さんっ…ひぁ…!」
か、可愛い…!!
身を震わせながら、俺の愛撫を受ける彼女の表情の色っぽい事この上無く、
瞳は潤み、悩ましげな吐息が、俺の頬を掠める。
これが、女ってやつか…
もっと、啼かせたくなる。もっと、乱れさせたくなる。
やばい……嵌りそうだ…!
「ンっ、ぁ、…っああ…!」
再び彼女の胸の合間に顔を埋め、彼女の乳房を舌先で舐め上げる。
もどかしそうに震える胸に、つぅ、と唾液の筋が残る。
早くもしっとりと、微かに汗ばんだ彼女の肌からは、ほんのりと塩気を帯びた味がする。
「ひぁ、ぁ…鈴木、さん…あ、ぁ…」
「樹里…!」
感度のいい彼女の身体を、俺はもっと味わいたくなり、彼女の下半身を手探りで辿り、
彼女の短いスカートを捲り上げる。
「っあ!?」
彼女は目を見開いて、俺を潤んだ眼差しで見詰めてくる。
表情に、微かな不安の色が滲んでいたが、今更止められそうにない。
俺はそのまま彼女の下着の中に手を滑り込ませ、彼女の陰部を弄る。
「ひぁぁっ…!だ、め…鈴木さんっ…や、ぁ…!」
ひくんっと電流が走ったように上体を仰け反り、俺の頭を抱く手に力が篭る。
俺はまた彼女の豊かな胸に顔を押し付けられ、その柔らかさに
呼吸さえも奪われながら、それでも彼女の下半身を弄る手は休めなかった。
「……」
…濡れてる。
俺の指に、確かなぬめりが絡みつく。
それが、彼女の俺の愛撫への反応が、決して演技ではない事を証明していた。
そこで、俺は初めて余裕というものを持てた。
勿論、精神的に、という意味だが。
肉体的にはかなりきつい事に違いないが、まだ幾らなんでも早い。
もうちょっと、彼女の身体を知ってみたい。
俺は徐々に彼女の膣に中指を差し込んでいき、ぬるぬるの中を掻き回すと――
「すず、き、さんっ…んぁ…!」
面白いくらい、彼女は快楽に顕著に反応する。
ビクン、ビクン、と身体を小刻みに震わせ、身悶えながら腰を浮かす。
くにゅ、と中で指を折り曲げ、彼女の膣壁に強く指の腹を押し付けると、
彼女は突如、きゅううぅぅっと俺の指を強く締め付けてくる。
千切られちまいそう……そんな錯覚に、思わず陥ってしまう。
「――っはぁ…!んんっ、あ、気持ち、いい…です…鈴木、さん…!!」
「――っ!!」
気持ちいい、と言われ、俺の方が何だか気恥ずかしくなる。
余裕無く、彼女の身体を不器用に弄る俺の愛撫で、彼女が感じているならば、
これ程喜ばしい事は無いが。
俺は彼女の膣に中指は突っ込んだまま、人差し指も中に突き入れ、それぞれの
指先をくの字に曲げて、掻き回しながら、更に親指の腹で、彼女のひっそりと息づく
肉芽をきゅ、と押さえつける――と…。
「!!ひぁ、んんぅぅぅぅ…っ!!」
びくびくびくっと彼女の身体が痙攣し、快楽の絶頂を俺に伝えてきた。
その時の彼女の表情の、淫らで美しい事と言えば、筆舌に尽くしがたいものがあった。
蕩けるような、涙ぐんだ瞳で俺を見詰め、艶っぽい呼吸を整えながら、
絶頂の余韻に耐えていた。
「えーと…あの…大丈夫…か…?」
自分でやっといて、大丈夫も何も無いが、一応免罪符代わりに聞いてみた。
彼女は、苦しい息の中、艶やかに、嬉しそうに俺に微笑みかけてくる。
「は、い……だい、じょうぶです……ごめんなさい…私ばっかり…
気持ちよくしてもらって…」
「…い、いや…その…気持ちよかったんなら……よかった…うん…」
…俺は何を言ってるんだ。
さっきまで、あれだけ大胆にしといて、何今更恥ずかしがってんだ俺は。
「あ、あの…」
「ん?」
達したばかりで、扇情的な姿の彼女に俺は一瞬見惚れてしまっていたが、
彼女の恥じらいながらの申し出に、俺はまたもや眩暈がした。
「私も…させてもらっていいですか…?その、鈴木さん…の…」
…!!!!!
つまり、それは、ええと……アレ?
「い、いや、無理に、そんな事しなくても…!」
そりゃ、決して興味がないわけじゃないが、何というか、その、
初めてで、俺の方が恥ずかしいわ、そんなの!
と、心中で突っ込む俺に、彼女は引き下がる事無く、
俺を潤んだ眼差しで見詰めながら、なんともいじらしい科白を甘く囁いてくる。
「だって……私ばっかり…気持ちいいの…申し訳なくて……
鈴木さんを…満足させてあげられるかどうかはわからないけど…お願いします…」
…魅惑的な囁きに、俺はまたもや理性を失うハメになってしまった。
「ん…ん、ぅ…」
ベッドに腰掛けた俺の、すっかり硬く勃ち上がったそれを、彼女の掌が
優しく包み、くぐもった声を上げながら、彼女が俺自身に吸い付いている。
それだけでも卑猥で、魅惑的な光景だというのに、その上彼女から与えられる
刺激がぞくぞくと腰にきて、気を抜けばすぐにも達してしまいそうだ。
床に跪いて俺に奉仕する彼女に対し、俺は微かな優越感にも浸りながら、
温かな舌が齎す快感に、ごく、と息を呑む。
彼女の愛撫は、決して激しいものでも無く、寧ろ拙い手つきで、このような経験無しだった
俺の目から見ても、余りこの行為には慣れていないいないようだった。
然るに、彼女の全ての動作が、俺の反応を見ながらの、ゆったりとしたものだった。
それが時に物足りなさを感じる事があったが、彼女は少しでも俺が
感じるように、とその度に俺を弄る手に力を込め、最初はためらいがちだった
口での愛撫も、今ではすっかり大胆に俺のものを口内に収め、じゅぷじゅぷと
卑猥な音を立てて吸い付いてくる。
「――ぅ…!」
情けなく、女みたいにかすれた声が漏れる。
でも、抑え切れない。
彼女は俺の反応に、安堵したような表情を浮かべ、俺への愛撫に躍起になった。
いつの間にか口中に溢れ出していた唾液が、呑み下すことすら出来ずに
唇の端から零れ、のけぞった喉を伝って彼女の胸の谷間に流れ込む。
徐々にリズムを獲得し、先端をちゅるちゅると吸い上げられ、
両手で忙しなくしごかれ、俺は快感に追い上げられ、彼女の手の中でその
質量を増した。
ああ、もう、ダメ…だ…!
「離れろ……っ、出、る…っ…!」
「っ!?――っ…んっ!」
…遅かった…。
俺が彼女の頭を引き剥がそうとするも、時は既に遅く、俺の放った欲は、
彼女の口内にどくどくと流れ込んだ。
彼女の口端から一筋零れる白濁液に、俺はてっきり彼女はそれを吐き出すものだと
思っていたのだが…
こくん、と彼女の喉が鳴る。
…え?えええぇぇぇ!!?
「ちょ、何飲んでんだ、吐き出せばいいだろうが!」
俺が思わず声を荒げて言うと、彼女は頭に疑問符を浮かべながら、俺を見上げてくる。
「っ、え…?吐き出す、って…」
「無理に飲むことないって言ってんだ、そんなもの…!」
言うと、何故か彼女がびく、として、途端に、しゅんと縮こまる。
「で、でも……これは飲んだ方が男の人は喜ぶって…本に…」
…本?
「何だ?何かの本に書いてたのか…?そんな事…」
「あ、あの…私…どうやったらいいのか全然わからなくて…
それで本を読んでたら…そう書いてあったから……
その、ごめんなさい…!」
泣きそうな声で言う彼女に、俺は自分が彼女を傷つけてしまった事を瞬時に悟る。
俺は彼女に無理をさせるのを怪訝していただけなのだが、それがどうやら
裏目に出たらしい。
「い、いや、あんたが飲んでもいいって言うなら、…いいんだ、別に。
その…まぁ、確かに、俺も嬉しいし…」
俺が声のトーンを若干落としながらもそう言うと、彼女は一瞬きょとんとした表情を
浮かべたが、数コンマ後、嬉しそうに、はにかんだような笑顔を俺に向けてくる。
「本当…ですか…?よかった…」
…うわ。今の状況で、その笑顔は反則だろ…。
たった今イったばかりだと言うのに、俺のものはもう次の快楽への期待に、
ずくずくと疼き始めていた。
もう、ダメだ。
挿入たい。
彼女と、繋がってみたい。
身体の、奥底で。
俺は跪く彼女の腕を掴み、ベッドの上に押し倒した。
俺の意図に気が付いた彼女が、不安げに俺を見上げてくる。
俺はそんな彼女の服を全て剥ぎ取ると、彼女のほっそりとしていながらも、
柔らかそうなラインが際立つ、魅力的な身体の全てが俺の目の前に現れた。
俺もシャツを脱ぎ捨て半裸になり、耳元で「いいか」と囁くと、
彼女はにっこりと微笑んで、こくんと頷いてくれる。
可愛い。
本当に、可愛くて、愛しくてたまらない。
俺は、たまらず、自身を彼女の中に収めようと自身に手を掛けると。
「あ、あの…」
「?」
躊躇いがちに、俺におずおずと声を掛けてくる彼女に、俺は首を傾げた。
「どうしたんだ…?」
「あ、いえ、その…鈴木さん…、お願いしていい、ですか…?」
お願い、とそう言う彼女の目には、涙が浮かんでいた。
今になって、何か躊躇する事でもあるのだろうか、と俺の方が不安になる。
だが、彼女の願いを聞いて、俺は思わず頭を抱えそうになった。
「その…キス、してもらって、いいですか…?」
……そうだった…!
キスも、俺達はまだだったんだ…!
余りにも、焦りすぎて、余裕が無くて、初期の段階をすっ飛ばして、
彼女と繋がろうとして。
ああ、俺って奴は…!
「あ、ああ……悪かった。すまん……俺、余裕なくて…」
言うと、彼女はふるふると首を横に振って、また微笑んでくる。
俺は、彼女の艶やかな、愛らしい唇に、自分のそれをそっと重ねた。
…口の中に、妙な味が広がる。
苦い……って、これは俺の味か…。
こんな苦いもん、全部飲んでくれたのか、この娘は…。
俺は、たまらず、彼女の唇を奪うように、舌を絡ませ合い、彼女の口内を
犯していく。
くちゅ、くちゅ、と唾液が絡む音に混じり、熱を帯びた吐息が漏れて、
はぁ、と一際悩ましげな溜め息を、彼女が吐き出すと――
「ん…ぅ…っ!」
俺は、彼女の濡れそぼった紅い陰唇に、赤黒く、びくびくと戦慄くペニスを、
ぬる、と擦り付ける。
「あ…」
彼女が目を伏せて、その感覚を享受する。
俺は、これから先の、快楽の予感に、出来るだけはやる気持ちを抑えながら、
彼女の胎内に、自身を差し込んでいく――と…!?
「ひぁ…い、た…っ…ぁ…!」
…はぁ!?
何だこれ、めちゃくちゃ狭い、硬い、というか、それ以前に。
ぽろぽろと、涙を流しながら、痛みに耐える彼女……もしかして…
俺はとんでもない思い違いをしてたのでは…!?
たらたらと、冷や汗が流れる。
そう言えば、さっきの口淫にしても、本で読んだだの何だの……
それって、つまり……
「っ、鈴木…さん…?」
涙を流しながらも、途中でその行為を中断し、中途半端に先端だけ
差し込んだままの俺に、訝しげな表情を向ける彼女。
俺の想像に間違いなければ。
彼女は…
「なぁ…もしかして……あんた、男とするの…初めてか…?」
俺が、率直に問うと、彼女は途端にかぁぁぁぁっと耳元まで赤らめて、
俺から目を逸らす。
…決まったな。
何だ、これ。
っていうか、馬鹿なのは俺か。
彼女の余りの大胆さに、てっきり経験済みだと勝手に思ってた俺自身の愚かさに、
俺は盛大な溜め息をついた。
本当は、さっきの口淫の下りで気が付くべきだったのだ。
それに、彼女はいざ、となった時に、俺に対して不安げな表情を浮かべていた。
俺に、何かを訴えたかったのだろう。
それに気が付いてやれなかったとは、確かに俺は人一倍ボケているらしい。
「あの、…ごめんなさい…」
「…何で謝るんだ…」
確かに、先に言っておいて欲しかったと言う気持ちはあるが、
別に謝る事じゃない。
気付いてやれなかった俺も悪かったし。
けど、彼女の答えは、どこまでも可愛らしくて、健気だった。
「その…処女は……男の人にとっては面倒くさいって……」
「…それも、本か?」
「…はい」
随分と偏った本だな、おい。
今度見せてもらおうかな、マジで。
そんな事を考えながら、俺は彼女にはにかみながら、笑いかけて。
「…あんまり無理するなよ。俺も…余裕なかったけどな……
俺も、…初めてだし…」
声を潜めて言うと、彼女は目をぱちくりさせて…その意味が彼女の脳裏に
浸透した時、彼女は、嬉しそうに微笑んで、俺にしがみ付いてくる。
「嬉しい…です…」
そう耳元で囁かれ、俺は照れ臭さに、顔が熱くなる。
そして、俺は彼女の身体に、再び自身を沈み込ませていく。
ゆっくりと、時間を掛けて。
精一杯、彼女に負担を掛けぬように、と。
「――っあ、ぅ…!」
彼女は、痛みに呻きを上げる。
だが、俺は全くの逆だ。
「――っ…!す、げ…!」
挿入と同時に、ペニスに絡む肉襞と熱が与えてくる凄まじい快楽に、俺は
思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
硬く閉ざされていた彼女の膜を突き破り、純潔を奪う感触に、
俺は充足感を覚える反面、彼女の苦痛に歪んだ顔が、俺に罪悪感を与える。
半分程入った頃に、俺は一旦侵入を諦めた。
「わ、るい…、痛いよな…もうしばらく、動かねぇから…」
彼女が、俺の大きさに、感覚に慣れるまで、とそう思っての行動だったが、
彼女はふるふると首を横に振って、痛々しい笑顔で、いじらしい言の葉を紡ぐ。
「いい、んです…どうか、鈴木さんの、気持ちいいように……
私も…気持ちいいですから…」
…だめだ…頭がくらくらする。
可愛い、好きだ…!
本当は、待ってやるべきなんだろうが、…もう、無理だ…!
俺は、最早、彼女を思いやる余裕さえも欠いて、痛みに顔を歪める彼女の
胎内に自身を深く差し込んでいく。
「――いぁぁっ!!ひ、くっ…!」
悲鳴にも似た彼女の声に、俺は内心でドキッとしたが、それでも
彼女の狭い窮屈な膣内から与えられる、初めての悦楽には抗い難かった。
こんなに、気持ちいいもんなのか、女というのは…
彼女の中は熱く、俺のペニスを溶かしてしまいそうな程に、きつく。
正直、今すぐにも達していしまいたい衝動に駆られたが、それではダメだ。
彼女にも、味わわせてやりたい。
身体の芯まで蕩けそうになる快楽を。
「はぁっ、ふ、ぁ…鈴木、さん…っ…」
額に汗を浮かべ、痛みに耐える彼女の中から一度引き抜いて、途中に
絡みつくような肉襞から与えられる快楽に鳥肌が立つ。
が、耐えねば…!
ぎりぎりまで引き抜くと、彼女の純潔を奪った証である紅い鮮血が
ペニスに伝っていた。
痛々しい事この上無く、それが俺に微かな戸惑いを与えたものの、
引き返せない。
もう、彼女は、『女』になったのだ。
俺の、手によって。
ゾクゾクする。
後にも先にも、俺が彼女の初めてを奪った男。
その事実だけは変わらない。
俺はぎりぎりまで引き抜いた肉茎を、彼女の荒い呼吸のリズムに合わせ、
再び奥まで突き入れた。
「ひぁん!――っ…!」
「く、ぅ…!」
それからは、もう腰の動きを止める事は出来なかった。
ゆっくりとではあるが、しかし彼女の最奥まで貫き、それを幾度も幾度も繰り返す。
彼女ははぁはぁと苦しげに息を荒げるが、それが決して痛みだけによるもので
無くなるのに、どれ位の時間を要しただろうか。
「――は……あぁ…」
「――っ、樹、里…?」
彼女の反応が、変わる。
子宮口に先端を強く擦り付けると、肉襞が蠢くように俺に絡みつき、
粘り気のある温かな愛液が艶めかしく溢れて、
俺の肉塊を湿らせ、更に奥までにゅるる、と飲み込んでいく。
「ん、ぁ、っは……気持ち、いい…」
甘い声で、無意識にそう呟く彼女の可愛さに、俺は
顔がかぁぁ、と熱くなり――思わず、俺は彼女の身体をぎゅう、と強く
抱き締めていた。
「樹里っ…可愛い…っ…!」
「きゃっ!?あ、ぁ、鈴木さん?――ああんっ!」
理性が完全に吹き飛び、本能のまま、彼女の奥を、強く突き上げ続けた。
身体を密着させ、俺の肌が、結合部より少し上でその存在を主張する突起が
擦れると、彼女の身体がびくびくっと震える。
――その瞬間。
「うぁ…!?」
「アぁぁあっ!」
彼女の膣が、俺の肉塊を一気に締め上げ、収縮する。
強く圧迫され、射精感が煽られ、俺の欲を全て吸い上げようとする
貪欲な動きに、…くそ、もう限界だ…!
「ひぁ、あああ、や、やぁ、鈴木、さんっ、や、おかしく、なっちゃ、う…!」
「っ、おかしく、なれよ…、俺も、もう…!」
俺は彼女の身体を強く抱き締めながら、腰を容赦なく突き上げ続ける。
彼女は俺の首に手を回してしがみ付き、互いに初めての絶頂へと――堕ちていく。
「――っ…!」
「――あっ…!」
互いに短く息を詰め、絶頂に震える彼女の身体を離し、自身を引き抜き
彼女の肌の上に、俺は白濁を吐き出した。
彼女の胸に、腹に注がれたその白さが、彼女の褐色の肌に一際映えて――
淫靡でありながらも、どこか上等で…美しかった。
はぁはぁ、と、互いに荒い呼吸を繰り返しながら、絶頂の余韻を冷まそうとする。
…とうとう、やってしまった。
女を、抱いてしまった。
しかも、こんなに可愛い娘と……これは夢じゃないよな…?
「は…、鈴木さん…」
「…、樹里…」
潤んだ瞳を輝かせて、幸せそうに俺を見詰めてくる彼女。
そして、
「――好き…」
そう、甘く囁いてくる。
…くそ……ダメだ、完全に骨抜きにされてしまった。
これじゃ、しばらくは修行に手がつかないかも……やばいな…
「あ、あの…」
「ん…?」
「その、鈴木さんは…私の事……好きになって…くれますか…?」
―――――!!!
…そうだ。
俺、まだまともに彼女に付き合うとも、好きだとも言ってないじゃないか。
本当に、色んな段階をすっ飛ばして身体を重ねてしまった。
ぎくり、と強張ってしまった俺に、彼女が不安げな表情を浮かべ、
俺の様子を伺っている。
ああ、俺の愚か者が。
何つー不実な男なんだ…!
彼女じゃなけりゃ、見限られてもおかしくないぞ、これ。
こんなに可愛くていじらしい娘に、こんな顔をさせるとは。
「あ、ああ…俺も…好きだ…俺の方こそ…こんな俺でよければ…」
付き合ってくれ――そう言うと。
彼女は、しばらく俺の、おそらく真っ赤になった顔を見詰めた後、
本当に嬉しそうに、満面の笑みを浮かべて、
「――はい!ありがとう…鈴木さん…!」
俺は、そんな彼女に、一つキスを落とした。
これで、やっと俺達はスタートラインに立ったのだ。
順番は、色々と変わってしまったが。
翌日、早朝。
俺と彼女は部屋を後にし、ホテルから出るや。
パシャ
突然、物陰に潜み、カメラを抱えた男女にシャッターを切られる。
そして、『スクープスクープ!!』等と嬉々として叫びながら、
二人は走り去る。
…何なんだ一体。
「……あ」
隣の、彼女の顔が青ざめ、引き攣った笑いを浮かべていた。
「やばーい…撮られちゃった…」
「何だ、あれ」
「うーん…私最近、ずっとあの人たちにつけられてたんですよねー…
彼氏がいないっていうの、信じてもらえてなくて…」
「はぁ?」
「マスコミの人なんです、あの人たち……ごめんなさい、鈴木さん。
多分、私達雑誌に載っちゃうかも…――」
失敗、失敗、と舌をぺろりと出しながら、困ったように可愛らしく笑う彼女に。
俺は、またもや眩暈がした。
620 :鈴木×樹里@426[sage]:2011/01/23(日) 03:14:21 ID:cFVQM84R
それから数日後。魔界にて。
「おいおいおいおい!!お前、俺達の事さんっざん色ボケだの何だの
言ってくれといて、お前こそちゃっかりやりやがって!!
抜け駆けもいいとこだな、おい!」
「ホントだよなー、俺も酎もまだだってのに、いーよなー。
『カルト、樹里ちゃんに恋人発覚!?帝王ホテルで迎えた熱い夜』だって?
元裏御伽チームのご両人は揃って手が早いねぇ。よ、色男!」
「…下らん…」
酎と鈴駒、そして死々若が一冊の雑誌を囲んで座り、少し離れて陣が苦笑い、
凍矢がじとっと俺を見詰めていた。
…針の簟だ。
っていうか、幽助め、わざわざ魔界にまでこんな人間界の雑誌なんて
送ってくんじゃねーよ!!
次に会った時は絶対一言言ってやる。っていうか、殴ってやる。
次のトーナメントでは絶対あいつより上にいってやるからなチクショー!!
しかし、次に彼女と会うときはどこで会えばいいんだ。
人間界は彼女に付き纏う人間共がうじゃうじゃいるらしいし、
かといって魔界ではこいつらの好奇の目があるし……!
出来れば今すぐにでも会いたいってのに…
あああ、俺は一体どうすりゃいいんだ、頼む誰か教えてくれ。
―終―