「飛影さん…」  
布越しに胸の曲線をなぞると、雪菜の口から熱い吐息が漏れる。  
今は亡き幻海師範の家の一室に、青白い月明かりが差し込んでいる。  
家を囲む山々は静寂に包まれ、誰にも邪魔される事はない。  
 
肩から背中へ。  
二の腕から頬へ。  
飛影の手が、ゆっくりと雪菜の身体を這う。  
時折、胸や太腿あたりに、触れるか触れないかぐらいの力で指を這わせると、  
雪菜はそのたびに、はぁ、と小さく息を漏らす。  
そんな彼女の反応にわざと気づかないふりをして、飛影は焦らすように全身への  
愛撫を続ける。  
「や…ん…っ」  
 
 
 
―――――――  
 
 
魔界パトロールの気晴らしに、飛影は久しぶりに人間界を訪れた。  
街で一番高いビルの上から雑踏を見下ろすと、以前来た時は無かった  
色鮮やかな電飾が、街のあちこちを彩っていた。  
風は冷たく、空もどんよりと曇っているというのに、人間たちは皆どことなく  
楽しそうな様子で歩いている。  
…何か祭事でもあるのだろうか。しかし飛影はそんな街の様子は気にせず、  
いつものように第3の目でこちら側の住人達の姿を追う。  
折角人間界まで訪れても、挨拶する事はほとんど無く、様子見だけで  
済ませるのが彼流だった。  
幽助に……蔵馬に……桑原……  
馴染みの面々は、相変わらず元気でやっているようだ。  
ただ一人を除いては…  
 
(…?)  
飛影の邪眼には、肩をがっくり落としてうなだれる桑原青年の姿が映っていた。  
近くでタバコを咥え立っていた静流が、「まあまあ、年末年始もあるんだから」と  
何やら弟の背中に慰めの言葉を掛けている。  
しかし、弟桑原が活気を取り戻す気配は全く無い。  
(…何だ…?)  
しかし、飛影はすぐに気がついた。桑原家に居るはずの、一人の少女の気配が  
その場にないことを。  
 
静流はフゥゥーっとタバコの煙と共に溜息をつき、面倒臭そうに頭を掻いた。  
「……カズ。あんたね、男だったら好きな娘のわがままの一つ位聞いてやんな。  
いつまでも辛気臭くしてんじゃないよ。全く…せっかくの……だってのにさ」  
 
静流の台詞には聞き慣れない言葉もあったが、それはさておきながら飛影は  
すぐさま少女の姿を探した。  
 
彼女とは随分会っていない。  
最後に会ったのは彼女の氷泪石を返そうとした時だったか…  
 
懐かしい妖気を辿っていくと、程なく彼女の姿は見つかる。  
彼女は人間界の衣服を身に纏い、幻海邸の庭で落ち葉を掃いていた。  
飛影は思わず、その少女の名を――自分の妹の名を小声で呟いた。  
「雪菜…」  
 
 
寒空の下、雪菜は幻海邸の庭中に散った木の葉を掻き集めていた。  
フリルの白いブラウスに碧い髪と同系色のロングスカートという出で立ちは、飛影を  
複雑な感情にさせた。  
 
(………)  
 
庭全体を見渡せる大きな樹の上から、飛影は彼女の様子をうかがっていた。  
なぜ顔を合わせるわけでもないのにここまで来てしまったのか…  
飛影は自分でもよく分からなかった。それでも、実際に妹の姿を自分の目で  
確かめられた事で、飛影は安堵していた。  
(元気そうだな…)  
 
実は以前、飛影は雪菜に彼女から預かった石を返そうとした事がある。  
 
 (お前の兄はもうとっくに命を落としていた。伝え聞いただけだが信用できる情報だ。  
 もう、くだらない兄探しはこれで終わりにしろ)  
   
しかし、飛影がそう言って差し出した石を雪菜は受け取らなかった。  
 
 (分かりました…でも、その石はあなたが持っていてください。なんだか、あなたが  
 持っていたほうが良いような気がするんです……)  
 
優しく笑った雪菜の顔が、飛影の脳裏にいつまでも焼き付いていた。  
 
 
突如、一陣の強い風が吹いた。  
風は少女が集めた木の葉を、いとも簡単に持ち去っていく。  
 
少女の目は自然と、宙に舞った枯葉の行く先を追う。  
見上げた視線と、見下ろす視線がぶつかった。  
 
「……飛影…さん…?」  
 
握っていた箒が、彼女の手から落ちる。  
名前を呼ばれ、飛影はハッとしてその場を立ち去ろうとしたが、次の瞬間、  
乾いた音を立てて箒の柄が雪菜の足の上に落ちた。  
「あ痛っ」  
「!」  
飛影が思わず、樹の上から着地して駆け寄る。  
「!あ、いえあのっ、だ、大丈夫です…」  
顔を赤らめて箒を拾い上げつつ、雪菜が弁解する。  
「ご、ごめんなさい、私、びっくりしちゃって…」  
「…イヤ」  
無意識のうちに、飛影は雪菜の拾った箒を手に取る。  
一本の箒を二人で持つ形になり、また目と目が合った。  
「…お久し…ぶり…です」  
雪菜はそう言って、恥ずかしそうに微笑んだ。  
表情をまともに見ることができず、飛影は握った箒の柄を苦々しげに見つめた。  
 
 
「立派なお家もお手入れをしないと住めなくなってしまいますから。さっきまでは  
家の中の掃除をしていたんですが、埃がすごくって」  
淹れた茶を飛影に差し出しながら、雪菜は言った。そして、自分の茶を淹れ、  
縁側に座った飛影の隣に並んで腰掛けた。  
「…あいつは手伝うと言わなかったのか?」  
立ち上る湯気を見つめながら、飛影は雪菜に問い掛けた。  
「え?」  
「かなりショックを受けていたようだが」  
飛影は邪眼で見た桑原家の事を雪菜に話して聞かせた。  
 
「そうでしたか…」  
雪菜は目を臥せて話を聞き終えた後、しばらくして、ゆっくりと語り出した。  
「実は、和真さん達にはここに来る事は告げていません。ただ…今夜は帰らないと  
いうことだけ、伝えてきました」  
「…何?」  
「飛影さん、ご存知ですか?人間界にとって、今日が特別な日だということ…」  
「…?…」  
「クリスマスイブっていうんです。イブというのは前夜祭で、つまり今夜は一番  
大切な人と過ごす日なんです」  
クリスマス…そういえば、静流が言っていたのはそんな言葉だった気がする。  
なるほど、街の様子がいつもと違っていたのはそのせいか…飛影は思った。  
 
雪菜はさらに話を続けた。  
「ですから、本当なら今夜は和真さん達と過ごすはずだったんですが……  
今朝、急に思い立って、行き先は告げずにこちらに来させて頂いたんです。  
和真さんはとても心配してくださったんですが、一人で行かせてくださいって、  
私、本当にわがままを言って出てきてしまって……」  
雪菜はそこまで言うと、自嘲気味に微笑んで、茶を一口飲んだ。  
飛影はその光景が目に浮かぶようだった。あの桑原のことだ、雪菜が家を出る  
最後の最後まで雪菜を引き止めたに違いない。  
 
だが飛影は、雪菜の言葉のある部分が引っかかった。  
 
「急に思い立った…だと?」  
 
雪菜はもともと無計画に出歩く性格ではない。そのことをよく知っていた飛影に  
とって、彼女の言葉には少し違和感があった。  
 
飛影の問いに、雪菜は少し間を置いて答える。  
「…はい…少し皆さんと離れて過ごしたくて」  
「……」  
「……」  
 
(何故だ?)  
顔に出ていたのだろう。  
飛影の心の中を察してか、雪菜は飛影に向かって少し困ったように微笑むだけだった。  
どんな顔をして目を合わせればよいのか分からない。  
 
「あ」  
雪菜の声に、飛影は顔を上げた。  
雪菜が見上げた方向を見ると、灰色の空に白い雪片がちらちらと舞っている。  
「雪…ですね」  
雪菜は感慨深げに呟いた。  
「…ああ」  
飛影はまだ先程の言葉が気になっていたが、空を見つめる雪菜の横顔を見て、  
それ以上詮索するのを止めた。  
 
「そうだ、いいものがあるんです」  
そう言って雪菜は部屋の奥に入っていくと、一本の酒瓶とグラスを持って戻ってきた。  
 
「部屋の掃除をしていたら見つけたんです。呑まれますか?」  
「雪見酒か。…良い考えだな」  
 
グラスに注がれた透明な液体を飛影が一口口に含むと、ふわっと涼しい味が喉の  
奥に広がった。この家の主だった者の愛蔵品だったに違いない。  
「私もいただきますね」  
そう言うと雪菜は自分で別のグラスに酒を注いだ。  
「いつから酒が呑めるようになったんだ?」  
飛影が半分驚いたように訊くと、雪菜はふふっと笑った。  
「静流さんに教えてもらったんです。…そんなに呑めないですけど」  
そう言って、雪菜も一口酒を呑んだ。  
「…わぁ…美味しい…このお酒」  
「…そうだな…」  
目を輝かせて酒を呑む雪菜の姿に、飛影はほんの少し可笑しさを覚えた。  
 
雪は次第に本格的に降り始め、庭全体を白く覆っていく。  
 
「飛影さん、お寒くありませんか?」  
自分は寒さなど全く感じないはずなのに、他人の身を案じて出たその言葉には  
雪菜の性分がよく表れている。  
「いや…このくらい、大した事ない」  
飛影の返事に雪菜は優しく微笑む。  
飛影は再びゆっくりと酒を喉に流し入れる。  
「お前にとってはこれから良い季節なんだろうな」  
「はい…あ、でも、人間界の冬のお料理はちょっと苦手です」  
「?」  
「熱いですから」  
くっと、飛影の口元が思わずほころぶ。  
それにつられて雪菜も笑う。  
久々に訪れた人間界で、こんなに穏やかな時間が過ごせるとは思っていなかった。  
雪菜はいつでも周りをそうさせる力がある。それは自分に対しても例外ではなく。  
全く、自分と正反対だ、と飛影は思った。  
 
「蔵馬さんが仰ってたんですけどね。海の向こうでは、クリスマスの日は戦争も  
休戦になるんだそうです。兵士たちが家族の元へ帰るために」  
「…本当に、特別な日なんだな」  
「…はい」  
飛影が答えると、雪菜は嬉しそうに笑った。  
 
 
「メリークリスマース!!」  
桑原家では幽助達が集まって盛大なパーティを開いていた。  
「っかーー、うめッ!にしてもつまんねーなー、やっぱ飛影がいね―と」  
「ほーらー、桑ちゃんいつまでも落ち込んでないでさ、呑も!ね!」  
ワイワイと賑やかな若者たちの様子を、静流はテーブルから少し離れた窓辺に立ち、  
微笑みながら眺めていた。そして、窓の外に目をやると、小さな声で呟いた。  
「大事な人と…過ごせると良いね…雪菜ちゃん」  
 
 
 
雪も止み、日も沈んだので帰ると言ったのに、泊まっていけと雪菜は言った。  
「大丈夫じゃないですよ、お酒も呑まれてますし…風邪を引かれます」  
確かに、美味い酒でついつい進んでしまったのか、少し呑みすぎたらしい。  
立ち上がると視界がぐらりと揺れて、飛影は思わず柱に寄りかかった。  
「あっ…」  
雪菜は手を差し出して、一瞬飛影の身体を支える格好になったが、すぐその手を引いた。  
彼女の顔も少し赤くなっている。酒のせいだけだろうか。  
「…今、お布団敷きますから…」  
そう言って、雪菜は部屋に入っていく。  
「……」  
彼女に触れられたところから、身体が不可思議な熱を帯びてくる。  
朦朧とした意識の中、飛影は彼女の姿を見つめていた。  
雪菜は別の部屋から寝具を運び込み、手際よく用意をし始めている。  
 
飛影は先程の雪菜の言葉を思い出していた。  
大切な人と過ごす日、と彼女は言った。  
彼女にとって大切な人といったら……  
 
「お前」  
 
飛影は突如切り出した。  
雪菜の手が止まった。  
 
「お前…本当は、兄を待ってたんだろ?」  
 
雪菜はその場で俯いたまま、じっと動かなかった。  
ふらつく足取りで、飛影はゆっくりと雪菜の元へ歩み寄る。  
 
「皆と離れて過ごしたいなどと抜かしやがって…」  
「……」  
「人間界が勝手に決めた特別な日にあやかって、こうして一人で待っていれば  
奇跡が起きて兄が会いに来るとでも思ったのか?」  
「……」  
「前に言ったはずだ。お前の兄は魔界で死んでいたと」  
「……」  
「いい加減、くだらん考えは捨てろ。兄が現れるなどあり得ん事だ」  
「それでも、あなたは、ここに来てくれたじゃないですか」  
 
今度は飛影が言葉を失う番だった。  
 
 
「…あなたはこうして、会いに来てくださったじゃないですか」  
「何……?」  
 
 
飛影は手の中の汗を握り締めた。自分の心音が段々と速くなっていくのが分かる。  
 
「昼間あなたが目の前に現れたときは…本当に奇跡が起きたのかと思いました。でも、  
本当…嬉しかったです。あなたはいつも、なかなか顔を見せてくださらないから」  
「……」  
「あなたが兄であることはずっと前から気づいていました。はじめは、どうして名乗り出て  
くださらないのかと思っていましたが…私が危険な目に遭わないよう、ずっとそうやって  
守ってくださってたんですよね。それが分かってからは、ずっと…感謝していました」  
「……」  
「こんなに大切にされて…雪菜は果報者です」  
 
雪菜の顔が耳まで赤く染まっている。  
飛影はその場に立ちすくんだ。  
胸の鼓動が、自分の耳にもはっきり聞こえるくらい大きくなっていた。  
 
雪菜は立ちあがり、飛影の前にゆっくりと歩み寄った。  
「こんなことを言ってしまうのはおかしいかもしれませんけど…私、母の気持ちが今なら少し  
分かるような気がするんです」  
飛影の胸に、今までずっと押し殺してきた感情が湧きあがりつつあった。  
――ダメだ。言うなそれ以上。  
気づいてはいけない。気づいてはならない。  
彼女の本当の想いに。自分の本当の想いに。  
「飛影さん」  
彼女が自分の名を呼ぶ。  
飛影は黙って俯いていた。雪菜の足が、飛影の前に来て止まった。  
 
「…………」  
雪菜と目が合う。その瞳は、感情が零れてしまわぬように大きく見開かれていた。  
 
「今夜…ずっと一緒に居ていただけますか?」  
 
震えるような雪菜の声に、飛影は為す術なく、小さく頷いた。  
 
「…お布団…すぐもう一つ用意しますね」  
飛影の前から離れようとした雪菜を、飛影は何も言わず抱き締めた。  
 
「あ……あの……」  
雪菜は頬を紅く染めて一瞬戸惑ったが、身体の力を抜いた。  
この健気な少女を、飛影はいたわってやりたくて仕方なかった。  
雪菜を抱く腕に力がこもる。  
「ずっと大事に思っていた。お前を傷つけたくなかった。だから…自分でも気づかない  
ふりをしてた」  
「飛影さん……」  
魂の、片割れ。  
自分には、こうする資格など無いと思っていたのに。  
「…離れていた時間が、少々長すぎたのかもしれないな、俺達は」  
彼女の細い身体も、柔らかな髪も、すべてが新鮮で、懐かしくも思えた。  
潤んだ瞳で自分を見つめる彼女の表情が愛しかった。  
飛影が雪菜の唇を塞ぐ。  
「ん……」  
そのままゆっくりと、倒れこむようにして、二人は抱き合った。  
 
 
永い全身への愛撫を続けながら、飛影は何度も雪菜に唇を重ねた。  
下唇をゆっくりとついばんだあと、舌でなぞる。  
ピクン、と雪菜の身体が反応する。  
みずみずしい果実のような雪菜の唇を味わうと、今度は唇をなぞっていた舌を  
その隙間に割り込ませる。  
やがて雪菜の甘く柔らかな舌に辿り着くと、深く絡ませてそれを味わった。  
「んんっ……」  
唇を塞がれ、雪菜がくぐもった声を出す。  
愛しい。  
飛影は左手で雪菜の頭を抱きかかえるようにして舌を深く差し入れ、右手は  
背中から腰にかけてのラインをゆっくりとなぞっていく。  
口に、背中に、愛する人の体温を感じながら、雪菜は今までにない至福の時を  
感じていた。  
ブラウスのボタンに手が掛けられ、そこから飛影の右手が侵入する。  
「ひぁっ……」  
雪菜は驚いて突然の侵入を防ごうとしたが、既に手は雪菜の胸に到達していて、  
ちょうど雪菜は自分の手で彼の手を自分の胸に導くような格好になった。  
「心配するな…」  
「あ……やぁ……」  
飛影は下着の上から雪菜の胸をやわやわと揉みしだく。  
「はぁっ……ん……」  
飛影は雪菜の首筋に舌を這わせ、鼻先をうずめるようにして愛撫を続けた。  
彼女の頭を抱きかかえていた左手も参入し、雪菜は為す術もなく飛影の愛撫に  
身を委ねる。  
「あっ……ぁ…っ…ん」  
雪菜の艶っぽい声に、飛影は気が狂いそうだった。  
 
飛影の手が、雪菜のショーツの中に滑りこみ、指が一番敏感な場所に触れる。  
「――っ…」  
雪菜のそこは既に十分過ぎるほど熱く潤んでいて、とめどなく蜜が溢れ出していた。  
「濡れすぎだぞ…お前」  
「やぁ………ん」  
飛影の一言一言がまるで媚薬のようだ。  
布の存在を邪魔に感じて、もどかしげに飛影は雪菜のショーツを脱がせる。  
「んんっ……」  
蜜壷に、つぷ、と指を差し込むと、ず、ず、といとも簡単に指を受け入れていく。  
熱く柔らかい雪菜の肉襞は、飛影の指にぴっとりと張りついてくる。  
奥に指を挿れて掻き回すと、クチュクチュといやらしい水音が室内に響いた。  
「あああ……っ、飛影…さんっ…」  
(……っ)  
くらくらと、やもすれば飛んでしまいそうな意識を飛影はかろうじて持ちこたえる。  
目を閉じて互いを全身で感じあい、何にも代え難い心地良さに、何もかもを忘れた。  
それはまるで遠い昔、母親の胎内で過ごした時のような、温かい幸福感だった。  
 
飛影は、今度は雪菜の両膝を内側からぐいっと持ち上げる。  
「はぁ、…は、飛影さん……?」  
そのまま両膝を左右に押し広げると、先程まで指を挿れていた秘所が露わになる。  
「!や、あ、あの……」  
雪菜が手で隠すよりも先に、飛影は股間に顔をうずめた。  
「――っ/////」  
きれいなサーモンピンクの割れ目に、チュ、と軽く口付ける。  
そして、包皮を剥き露わになったクリトリスをちろちろ舐め上げる。  
 
「ひゃああぁぅっ!!」  
 
一番敏感な部分を直に刺激され、雪菜の身体は一瞬ビクンと大きく反応する。  
唇が蜜壷の入り口全体を多い、ちゅく、ちゅくと音を立てて溢れる蜜を吸う。  
(あっ、いや、はずかしい、そんなとこ……ああっ)  
雪菜はあまりの恥ずかしさに、両手で飛影の頭を離そうとする。  
「っ、やぁ、だめっ、そこは……はあぁぁん!!」  
だが、飛影は両腕で雪菜の太腿の付け根をがっちりと掴んで離さない。  
蜜壷に深く舌を抜き差しすると、じゅぷじゅぷと音を立て、蜜が溢れ出す。  
「ああっ、やん!!おねがい、飛影さん、ひえいさ、ああっ!!」  
膨張するクリトリスをついばみ、優しく歯を当てると、雪菜は泣き声にも似た嬌声をあげた。  
さらにこれ以上ないというくらい、深く舌を入れて暴れさせると、雪菜の身体がビクン、と大きく  
撥ね上がる。  
「ふぁっ、やあぁぁん、やあああーっ!!」  
初めての絶頂を迎え、雪菜は身体を大きく仰け反らせ果てた。  
どっと奥から一際熱い蜜が溢れだし、飛影の舌の上に流れた。  
 
 
「はぁ、はぁ、はぁ…はぁ…」  
絶頂を迎えた余韻で、雪菜の身体はまだ少し、ピク…、ピクン…と震えていた。  
先程の甘美な感覚がまだ、身体中のあちこちで渦巻いている。  
(はぁ…はぁ……私……飛影さんに…)  
愛する人に最後まで行かせてもらえた事に、雪菜は思わず感極まり、涙を零す。  
「……大丈夫か?」  
顔を上げた飛影が、口を両手で覆う雪菜の格好を見て心配そうに訊ねる。  
それがまた嬉しくて、また涙を流しつつ、雪菜はフルフルと首を振った。  
「…雪菜」  
飛影は彼女の耳元に落ちた涙の結晶を優しく払い、彼女を抱き締める。  
そして、再び可憐な唇に口付ける。  
「飛影さん…」  
「雪菜……雪菜」  
飛影が唇に舌を割りこませると、雪菜の舌に自分の愛液の味が広がった。  
「んんっ…」  
「イヤか?」  
悪戯っぽく笑って飛影は雪菜の額に額をくっつける。  
「う、うぅん…」  
少年のような彼の仕草に顔を赤くしつつ、雪菜は小さくかぶりを振って答えた。  
 
「雪菜…俺、もう……」  
飛影のそこは既に充血して、ズボンがはち切れんばかりに膨張していた。  
圧迫しているズボンを下ろすと、その中央から大きくそそり立ったものが現れる。  
それは目的の場所を求めて怒張し、その先端からは先走りの透明な液体がとろとろと  
溢れ出していた。  
(――っ……)  
思わず唾を呑みこんだ彼女の喉元が上下に動いた。  
雪菜が初めて見るその大きさに驚いていると、既に飛影は彼女の両脚を開き、濡れた  
蜜壷に自分のものをあてがう。  
「あっ……ひ、飛影さん……」  
「…できるだけ優しくやってやる」  
飛影はそう言うと、濡れた蜜壷の中に、自分のペニスをゆっくりと押し込んでいった。  
「はあああぁぁっ……!!」  
先程彼の指と舌によって十分ほぐされていた入口は、クチュ、と音を立てて飛影のものを  
迎え入れる。  
(あっ…熱い、…飛影さんの……こんなの、溶けちゃいそう……)  
溢れる蜜が潤滑剤の役割を果たし、飛影の雁首は、狭い入り口を通り抜けると、ぬるりと肉襞の  
中におさまる。  
(……あぁ、つ、繋がってる、私、飛影さんと……)  
まだ先端部分しか入ってきていないが、愛する人と確かに結ばれた事に、雪菜の胸は熱くなる。  
一方飛影も、先端が雪菜の熱い襞に包まれている気持ち良さに、それだけでもう既に発射して  
しまいそうになる。  
(う……く、…雪菜っ……)  
何とかこらえつつ、さらに腰を奥へと進める。  
腰を押し進める時に雪菜の身体も一緒に動いてしまわないよう、飛影はしっかりと手で雪菜  
の腰を固定する。  
そうして飛影のものはさらに雪菜の奥深くに進んでいく。  
チュプ・・・ジュプ・・・  
「あっ・・・はあぁぁん・・・」  
 
やがて、飛影の先端が雪菜の最奥に突き当たり、雪菜の蜜壷は、飛影の肉棒をしっかりと奥深く  
まで咥えこんでいた。  
それはまだ少し幼い面影の残る雪菜にとって、初めて迎え入れた「男」だった。  
(……ああ……飛影さんが…入ってる……私の中に……)  
飛影と本当の意味で結ばれたことが嬉しくて、雪菜の目から、また涙が溢れる。  
飛影は、繋がった部分を通して雪菜の鼓動を感じる。愛しくてたまらず、そのまま彼女の身体を抱き  
締める。  
「雪菜……」  
「飛影さん……」  
ぽぉっとする頭を、大好きな人に優しく撫でられる。そして、飛影の方から、延々と長いキスが始まる。  
最初は唇を優しく重ね合うだけだったのが、何度もするうちに次第に激しいものになっていく。  
ちゅぷ、ちゅぷと音を立てて舌を絡め合うと、雪菜は頭の中が真っ白になる。  
とろけるような極上の感覚に、雪菜はすべてを飛影に任せ愛し合う。  
繋がったままのキスがこんなに気持ち良いものだとは雪菜は思わなかった。  
「んむっ……ん……、んはぁっ、んんっ…」  
 
やがて飛影がゆっくりと腰を動かし始めると、そこからまた新たな快感が生み出されていく。  
「んあっ…ああっ…あん、…ああっ…」  
ズチュ…ズチュッ…  
性器と性器が擦れ合うたびに、雪菜の肉襞は更に熱く潤いを帯び、飛影の肉棒は硬さと太さを増していく。  
「ふぁっ…あん…っ、飛影さんっ、の…っ、…すっごい……おっきいッッ」  
「…雪菜…ゆきなっ……」  
「あっ、ああん…やっ、…飛影さんっ…、ひえいさっ……」  
うわずった声で雪菜が繰り返すと、飛影の腰の動きは刺激を受けてさらに激しさを増す。  
ヌプっ、ヌプっ、ヌプっ、ヌプっ、と一定のリズムで腰が突き上げられ、快感が蓄積されていく。  
「やっ、やあっ!やん!あん、はああぁぁん!」  
 
ずっと自分のものにしておきたい。  
一生手放したくない。  
 
飛影は腰を突き動かしたまま雪菜の唇に吸いつき、舌を深く絡ませてくいくいと動かす。  
上下の口を激しく突かれ、雪菜は快感で意識が飛んでしまいそうになる。  
「んんっ、んふぁっ……やんっ!は……はぁっ!ああっ!!」  
ヒクヒクと痙攣している雪菜に、まだ足りないとばかりに飛影は雪菜の両方の乳首を捏ね上げる。  
「やあああぁっ!!」  
飛影が乳首を親指と人差し指でつまんで擦り合わせると、雪菜の身体がビクンと撥ね上がった。  
口と、乳首と、下の口を同時に責められながらどうすることもできず、雪菜は最果てまで上り詰めていった。  
飛影も雪菜の蜜壷を激しく突き上げ、熱く甘く柔らかな果実を全身で味わいながら、一気に高みに向けて  
走り出した。  
 
「あん、あ、あ、あぁ、ひえい、さん、ひえ、…っさ……!!」  
「……っ、イクぞ……ッッ」  
「あっ、あああああああーーッ!!!」  
 
目が眩むような絶頂が二人を襲う。  
 
―――ビクン!…ビクン、ビクン、ビュク…  
 
飛影のペニスが雪菜の最奥を突き上げ、精液が二度、三度と大量に雪菜の中に放出された。  
濃厚な白濁液は、キュッと締まった雪菜の膣によって飛影の先端から最後の一滴まで搾り取られ、  
子宮の入り口を満たした。  
自分の種が、雪菜の襞の隅々まで行き渡るよう、飛影はなおも腰を動かしつづけた。  
「やああぁぁぁ・・・・・・」  
 
 
 
ゆっくりと飛影が蜜壷から肉棒を抜くと、その穴から、トロっと白濁液が溢れ出す。  
 
「はあ、・・・・・・はあ・・・・・・はぁ・・・・・・」  
「・・・っ・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」  
 
絶頂を迎えた痙攣がようやく収まると、崩れ落ちるようにして飛影は雪菜に身体を預けた。  
力の入らなくなった身体で呼吸を整えていると、意識が段々と遠のき、深い眠りに落ちかけていく。  
雪菜の細い指が、自分の髪を優しく梳いている。  
薄目で彼女のほうを見やると、柔らかく微笑む顔が見えた。  
深い充足感に満たされながら、飛影は目を閉じた。  
 
 
 
目が覚めるとまだ夜中だった。  
見慣れぬ天井に一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。  
 
「ん・・・」  
 
声がしたほうを見ると、すぐ隣に雪菜の寝顔があった。  
あどけない彼女の寝顔を見つめながら、つい先程の出来事を思い出す。  
 
先程の行為とは裏腹に、穏やかな寝息を立てる彼女の顔を見ていると、何とも言えぬ感情が胸を  
締め付けた。  
自然と飛影の手がのび、雪菜の頬の当たりを優しく撫でる。  
人差し指でこめかみをなぞると、雪菜がくすぐったそうな笑みを浮かべた。  
誰にも渡したくない。  
飛影は一人、考えにふける。  
 
雪菜の両目がゆっくりと開く。  
「・・・ん・・・」  
飛影と目が合うと、雪菜は眠たそうな目で幸せそうに微笑む。  
彼女はゆっくりと自分の手を飛影の手に重ね、その手に口付ける。  
 
「すまん。起こしたか?」  
「・・・んーん・・・」  
夢うつつに答える彼女を愛しく思いながら、頬や髪をしばらく撫でていると、雪菜がすり寄ってくる。  
そして、雪菜のほうから飛影の唇に、チュ、と軽く口付けた。  
「ん・・・・・・」  
 
雪菜はそのまま飛影の胸に頬を寄せる。  
「…痛くなかったか?」  
飛影の問いに、雪菜はほとんど痛みを感じなかったと答えた。きっと、生まれる前はもともとひとつ  
だったのだからそのせいだろう、と彼女は言った。  
「・・・ここに・・・飛影さんが、してくれたんですよね・・・」  
雪菜が幸せそうに下腹部あたりをさすりながら言う。  
「分裂期まで、いっぱい、できますね」  
「バカ」  
 
思わず赤くなった顔を見られたくなくて、飛影は雪菜の頭を胸に押し付ける。  
雪菜はキャッと小さく悲鳴を上げたあと、ふふふと笑って、飛影の背中に手を回す。  
 
このまま眠って次に目覚めたら、魔界へ戻らなければならない。  
そしてまたいつもの日常がやってくる。  
ならばいっそ、このまま彼女を連れ去ってどこか遠くへ逃げてしまおうか、とさえ考える。  
 
飛影の考えがなんとなく伝わったのか、雪菜が落ち着いた口調で話す。  
「…待っています。この世界で、ずっと」  
「…雪菜…」  
「またいつかこうして過ごせると信じて、私、待ちます。大丈夫です…私、待てます。今日のことを  
思い出せば、そのたびに、心は繋がっていると、思えるから……」  
「…………」  
 
「抱いてください。次に会う時まで、ずっとその感覚を覚えていられるように」  
「…雪菜」  
 
飛影の唇が雪菜の唇に触れ、そして再び二人は身体を重ねる。  
まるで、今まで離れ離れになっていた時間を急速に埋めるかのように。  
夜明けまで、二人はお互いの身体を抱き合い、その感触を、温度を、感じ続けた。  
 
 
 
 
 
世界で一番愛する人と過ごす、最高のクリスマス。  
 
 
 
 
青白い月だけが見ていた、ふたりの、秘密。  
 
 
 
 
 
 
おわり  
 

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