「よく来たな、ぼたん」  
相変わらず仕事中だというのに呼び出しておいて、コエンマは何やら含み笑いをしながら指先で机  
をとんとんと叩いていた。  
「…で、今日の御用件は一体何でしょうか」  
「んー、特別これといってはないぞ」  
「そ・れ・で・は・即刻立ち去らせて頂きたいものですねえ」  
只でさえプロの案内人として一日のノルマはきっちり果たしたいところなのに、こんなところで時間を  
取っていたら結局は給料に響く。口調もつい嫌味っぽくなってしまうというものだ。  
だが、肝心の相手には全く届いていない。それどころか、この厄介な上司はこうして二人きりになっ  
た途端にあからさまな態度を取り出す。それが気に入らなかった。  
「時に、あれはちゃんと身につけているか?」  
「…あれって…」  
「とぼけるな。人間界から取り寄せた下着だ。お前に似合うと思ったのだが」  
まずい。  
ぼたんは動揺を気取られまいとしながら、冷や汗をかいていた。  
そう言えば確かに以前、アレなデザインばかりの下着がぎっしりと詰まった大きな箱を貰ったことが  
あった。その時は特に何も考えずに受け取ったまま、どうせ外からは見えないのだからとたまに何  
枚か着けるに留まっていた。だが、今日に限ってたまたまとんでもないデザインのショーツを穿いて  
しまっている。  
「え、あ、ま、まあ…あははは…」  
まさか今日こんなことになるなんて。  
何とかこの場を凌いでおかないと、これまでの経験上どんなことになるか想像に難くない。心の中で  
だらだらと冷や汗をかきながら、色々と言い訳を考えていたぼたんの前に常時セクハラし放題の上  
司が立ちはだかった。  
「まさか今まさに穿いている、というのなら嬉しいがな」  
「あ、いや。そんな…まさか。はははは…」  
否定とも肯定ともつかない返事をするぼたんを不審げに一瞥した後、物も言わずに着物の裾を突然  
捲り上げた。  
 
「うきゃあああ!!」  
「ほう、似合うではないか」  
にやーっと笑った顔は更にいやらしくなった。  
「何すんですか、いきなりっ!」  
慌てて隠そうとしたが、もう遅い。白いレースの花模様が辛うじて局部を覆っているだけの、やたら  
過激なデザインのショーツが完全に晒されてしまった。  
「離して下さいよおおっ!」  
「隠すな、お前にはたまにこういうものも穿いて欲しかったからな」  
「もう、嫌…いやですってばっ」  
それでも懸命に裾を引いて隠そうとするぼたんの油断をついて、コエンマはその華奢な体を後ろか  
ら抱き込んでしまった。  
「…だから、何するんですかっ」  
「嬉しいぞ、ぼたん」  
宥めるように、急に口調がやんわりとしたものに変わった。こんな風に関わるようになってからという  
もの、経験値を積んだせいか普段殊更事務的に接しようとするぼたんを懐柔する遣り方を、すっかり  
熟知してしまったようだ。  
「普通なら、なかなか近付けもしないからな」  
薄い着物は少し乱暴に扱えば、すぐにはだけられる。まさか今日もこのままこんなところでされるの  
か。腕に抱かれて何となく蕩かされながらも一瞬で警戒モードに入るぼたんだったが、貝殻のように  
透き通った耳を軽く噛んでくる歯の感触にさえ、感じてしまっているのが自分でも分かった。  
「あ…」  
「可愛いなあ、ぼたん」  
「そ、そんな…」  
頬を染め、目を閉じて必死に声を殺しているぼたんは悔しそうに唇を震わせていた。  
 
只でさえ案内人として一日のノルマはきっちり果たしたいところなのに、こんなところで時間を取って  
いては何にもならない。だからわざときっちり線引きをしているのに。言葉でも態度でもそう言ってい  
るというのに、どうして分かってくれないのだろう。  
好意を持ってくれているのは嬉しいけれど、だからといって仕事中にまで踏み込まれるのは本意で  
はない。直接査定に関わってくることでもあるし。  
「は、離して下さいってば…」  
気分はまさにまな板の上の鯉。床の上に華奢な体を横たえるぼたんの懇願など単なる誘いとでも受  
け取ったのか、人の悪い上司はにやーっと笑った。  
「興が乗った。とりあえずはこのまま付き合え」  
「えええーーー!」  
ここに呼ばれた時から予期はしていたが、詰めがやっぱり甘かった。どっちみちこうなるのなら無視  
を決め込んでいれば良かったのだ。仇情けとはよく言ったものだ。半端な優しさが自分を追い詰める  
羽目になっていることをぼたんはつくづく痛感していた。  
 
「あ…んっ」  
「もっと声を出せ、ぼたん。どうせここなら誰にも聞こえることはないぞ」  
「…そうは言っても、嫌です…」  
「ほう、そうか」  
爪も立たない床の上で、白い着物はすっかり乱されていた。普段人目には晒されない乳房も太腿も  
すっかりあらわになっている。  
「では、もっと苛めてやろう」  
決して閉じられないように大きく広げられた膝の間の顔を埋め、ショーツの上から念入りに愛液を零  
し始めている部分を舐め始めた。  
「ひゃあっ、何、を…」  
「お前が素直にならないから悪い。まあ、いつまで我を張れるかも楽しみではあるがな」  
後はただ翻弄すればいいとばかり、コエンマは悪い遊びを覚えたばかりの子供のような無邪気で残  
酷な笑みを綺麗な顔に浮かべた。ぞっとするのに、不思議と見入ってしまうほど魅力的ではある。  
 
「はぁ…ふっ」  
一番感じてしまう部分とはいえ、ただショーツの上から舐められているだけだというのにぼたんは早く  
も我を忘れようとしていた。決して直接的な快感ではないからこそ、体はより強い刺激を欲しがってざ  
わざわと乱れ狂う。  
「そんなの、ダメ、ダメですってば…」  
「では、ここでやめてもいいんだな」  
「えっ」  
その口調が、あまりにもあっさりとして本当にこのまま放り出されてしまいそうだったので、ぼたんはつ  
い高い声を上げた。あまりにも物欲しげな声色だと、自分でも思ってしまうほどだった。  
「ほう、そんなに待たせていたか、嬉しいぞ」  
「…コエンマ様なんて、嫌いです…」  
可哀想になるほど肌を真っ赤に染め上げ、潤んだ目で睨むぼたんの表情は、やはり誘っているよう  
にしか見えなかった。  
「では、そろそろお愉しみといこうか」  
にたーっと笑いながら、びっしょりと愛液を吸い込んで濡れたショーツを物凄い早業で脱がしてくるコ  
エンマには、どこかの魔族の息子同様スケベオヤジが入っていた。  
「あ、悪趣味…」  
「まあ、いいではないか。儂とお前の仲ではないか」  
「もう、コエンマ様ったら…」  
何となく、ふっと笑えてきた。  
最初から拒否が出来ないのなら、まず今日のところは我慢するしかないようだ。その上、今のぼたん  
の体は限界を迎えようとしている。この火照りを鎮めるには大人しく言うことを聞くしかないのだからと  
仕方なくではあるが大人の判断に切り替える。  
「それでは、美味しく頂こうか」  
「…いいですよ。でも速やかにお願いしますね、仕事中ですから」  
雰囲気はすっかり盛り上がっているようだ。査定とか、給料とか、現実的なことは全部まとめて棚上げ  
して、ぼたんは甘い溜息をつきながらも身を任せた。  
 
「…ぅうっ…」  
何度抱かれても、最初に突き入れられるときの痛みだけはいつも新しい。治らない傷の上を思い切り  
擦り上げられるような衝撃が消えないのだ。  
「まだ辛いか、ぼたん」  
「平気です、あたし、こんなこと大丈夫ですから…続けて下さい…」  
薄桃色の乳房が突き上げられる度にゆらゆらと熟れた果実のように揺らめいていた。何も分からなく  
なっていく意識の中でも、両手で掴み取られているのが感じ取れた。  
「ダメ、です…あたし、あたしっ…!」  
もどかしい熱が体中を音が感じ取れるほど激しく巡っている。痛い、熱い、怖い。確実に感度が上が  
っているせいで、ただ繋がって突かれ続けるだけでも体は勝手に暴走を始めていくのだ。  
「もう、ダメえぇっ…!!!」  
そこで意識は完全に途切れた。  
 
ようやく目覚めたはいいが、ぼたんは冷静に視線を移して周囲の状況を観察するしかなかった。  
何しろ、相手は下手をしたらとんでもないことになっている可能性もあるたちの悪い上司だ。その腕に  
いかにも大切そうに抱き寄せられていたのは不覚だった。  
着物はそのまま床に投げ出されていて、放置状態だ。仕事で着ているものだから丈夫だが決して上  
等な生地とは言えないだけに、あれでは簡単に皺になってしまうだろう。  
やはり上の者はそんなことなど知りもしないのだ。  
頭が痛かったが、着物を畳み直す為だけでもすぐに起き出す必要があった。もちろんさっきの所業を  
考慮して多少の演技も加味してみた。それがぼたんの唯一の抵抗だった。  
「…コエンマ様?」  
「起きたか」  
「あたし、どうしてここに…」  
さっきまでのことは、なかったことにしたい。  
ぼたんのなけなしの乙女心は、鈍感この上ない上司によってこっぴどく粉砕された。  
「なかなか良かったぞ、ぼたん」  
 
 
 
終わり  
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル