カチ  カチ  カチ  カチ  カチ  
 
(あと5分)  
 
質素なつくりの部屋の中。  
雪のように白い少女が和服に身を包み、椅子に座り、向かいの振り子時計を眺めている。  
 
部屋の窓には幾重にも重ねて張られた呪符が連なり、その隙間から  
傾きかけた日の光が注いでいる。  
 
少女の部屋は、豪邸の一角、眺めの素晴らしい、とても厳重に監視された、  
最も閉鎖的な場所にあった。邸の主人の計らいだ。  
 
カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ  
 
(あと1分)  
 
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ  
 
(あと10秒)  
 
カカカカカカカカカ  
 
ボーン ボーン ボーン ボーン…  
 
バタン。  
 
時間通り。  
1秒も違わず予定通り。  
今日も、午後四時の拷問が始まる。  
 
扉から小走りに男が近寄ってくる。  
この邸の主人、宝石商の垂金だ。  
 
「幾つだ?今日は幾つだ?」  
部屋に入るなり、少女には目もくれず、這いつくばり、何かを探し始めた。  
「ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・・・・ 」  
子供が浜辺で貝殻集めをする様に、床に所々散らばっている何かを集めていく。  
石だ。真珠のように、白く光を放つ美しい石をかき集めている。  
「しち… はち… はち…八! もう無いのか?!」  
癇癪を起こした子供のように喚きながら、床を睨みつける。  
もう、これ以上石が落ちていないことを確認すると、ようやく少女に目線を移す。  
「八個か! ふん、昨日よりはましだな。昨日は三つしか取れなかったからな。  
化け物め、貴様の気まぐれに付き合わされなけりゃあならんこっちの身にもなってみろ!」  
少女は視線を落としたまま、目を合わせようともしない。  
垂金は気にくわなそうに顔をしかめたが、すぐに気味の悪い含み笑いを浮かべた表情になり  
醜くでっぷりと肥えた両手で大事そうに石を抱えながら、部屋の出口に向かって歩き出した。  
 
「今日はいつもとは少し趣を変えたやり方でやってみるからのう。  
結果次第によっては今後の方針についても考えようかとも思っておる。」  
 
戸口で、振り向きざま、同行してきた三人のスーツ姿の部下に向かって言う。  
「こいつだ。正真正銘本物の氷女だ。名前は――雪菜とか言ったな。  
まあそんなことはどうでも良い。大事な商品だからな、決して殺すでないぞ。  
後は任せたぞ。終わったら戸口で待機しておる者共に言いつけて置け。」  
 
 
扉が閉まった。  
 
 
腕に残った火傷の痕を見つめながら雪菜はぼうっと考えた。  
趣を変える?やる事は結局同じだろう。  
火傷だけではない、拷問で受けた傷など体中、無数にある、もう数え切れないほどに――  
数ヶ月前、雪菜は人間界に出て、初めて、『氷女』という種族が、いかに人間の世界で  
非常に価値のある『商品』として珍重されているかを知った。  
自分が『氷女』として、『商品価値』を維持できるギリギリのラインの拷問を  
幾重にも、この数ヶ月間繰り返されられてきた。  
いかに効率よく泪を流させるか。ただそれだけの為に。  
一粒よこせば二粒欲しがった。  
二粒よこせば三粒、三粒よこせば…  
際限などない。泣けば泣いたぶんだけ、次はその倍の数を欲しがる。  
 
 
ちっぽけな 石   
 
こんな石の為に こんな石コロの為に いつまで・・・  
 
 
ふいに、顎をつかまれた。  
すぐ目の前に男が立っていた。  
 
空中で目線が合ったその瞬間。急に、男が顔を近づけ、口の中に舌を入れてきた。  
 
(・・・え?)  
はじめて気が付いた。  
(人間・・・・じゃあない・・・!)  
 
雪菜は弾かれるように顔を背け、椅子から飛び起きる。  
「へぇ〜、ただの木偶かと思っていたら、ちゃんと動けるじゃねぇか。」  
生身の人間がこんなことをしたらすぐさま冷気で氷付けになっていたであろう。  
突き放した男の顔をまじまじ眺めてみると――顔中毛が生えている  
耳が頭の上のほうにあり、ダラリと舌を垂らし、荒く息をしている様はまるで犬のようだ。  
 
(人狼――妖怪!?)  
ぼうっとして気が付かなかったが入ってきた男たちは皆妖怪だったのだ。  
 
拷問は大抵、垂金の部下――主に人間がやる仕事 のはずだ。なぜ今更わざわざ金を使って妖怪など?  
 
もう一人の男――三人の中で最もがっしりした巨漢――が後ろからにじり寄り羽交い絞めにする。  
雪菜は、冷気で威嚇し、周囲の空気が一瞬にして凍りついた。  
後ろから雪菜を羽交い絞めにした妖怪が、雪菜の耳元で囁く。  
「へっへへ、数日前にそんな芸当覚えなかったら、今日は人間どものぬるい拷問程度ですんだのになぁ。」  
冷気の威嚇などものともせず、雪菜の耳を甘噛みし、着物の帯に手を伸ばしはじめた。  
抗い、男の腕を振り解こうとする雪菜の足首に、吸盤の付いた蛸の足の様なものが巻き付いてきた。  
見れば三人目の男が蛸のような下半身をむき出しにし、幾つもある足を、気味悪く、くねらせながら  
雪菜を下から見上げている。  
 
「おじょうちゃん、今日は怖い怖い人間様の拷問じゃぁなく、ちょっとした息抜き程度のお遊びをしようじゃないか。  
ただし泪は流してもらうよ、俺たちにもノルマってのがあるもんでね。」  
言うが早いか、足袋の上から足首に絡みついた蛸の足を、ぐいと持ち上げ  
雪菜を開脚させるような格好で宙吊り状態にさせた。  
 
男たちが何をしようとしているのか、雪菜には解からなかった。  
解からないのに、ただただ、恐ろしかった。  
男の腕から逃れようと、無我夢中に、握り拳を振り回した。  
抵抗は無意味だった。男が雪菜の腕を握り締た。あまりの力の強さに雪菜が悲鳴をあげる。  
にたりにたりと笑いながら言う。  
「非力だねぇ、氷女ってもんは。こんなんじゃぁ魔界なんぞで生きていけねぇだろうに  
どうりで滅多にお目にかかれねぇわけだぜ。」  
悲鳴に興奮してか、そう言いながら熱い息を雪菜の耳元に吐きかけた男は、もはや人間の姿ではなかった。  
鼻は短く寸詰まり、耳は垂れ下がり、まるで、ブタか猪かのような顔つきだった。  
 
「いい声をしているなぁ おじょうちゃん。」  
開脚し、肌蹴た裾からあらわになった雪のような白い太ももをなで、その先にあるものを凝視しながら  
人狼が毛だらけの一物を反り勃たせ雪菜に話しかける。  
「おじょうちゃん見たいな上玉、もっと時間かけてやりてぇ所だけど、今日は泣かせるのが仕事だから、勘弁しておくれよ。」  
人狼は帯に手をかけ、帯止め、腰紐ごと帯を引きちぎり、薄い肌着を引き裂きさいた。  
「……!」  
叫び声を上げたいのを堪えじっと我慢をする。  
(どうせ、いつもと同じだ…我慢さえすればいい。)  
 
着物の下には、所々、今までの責め苦による傷跡が残っていた。  
「随分と色々遊ばれたねぇ、おじょうちゃん。」  
そう言いながら、毛むくじゃらの手で雪菜の太ももを撫で、その先のうっすらと生えた陰毛に隠された  
ピンク色の割れ目に手を滑らせた。  
「ふぅっ…ぁっ」  
奇妙な毛むくじゃらの棒を突きつけられ、毛むくじゃらの手で股間を撫でられ雪菜は思わず声が出た。  
今までの拷問とは何か違う。妙に体がふわついて浮かれているような…くすぐったいような感覚。  
おびえ、それでいてキョトンとしながら人狼に問う。  
「なにを… なにを…なさるんです?」  
「ウブなじょうちゃんだ、仕事だってのがもったいねぇぜ。」  
 
ドップっ  
 
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」  
 
叫び声が邸中にこだました。  
「ひぐぃぃぃぃ!!ぁぁ!!ぁぁ!! いた…いたいいたい!!やめ…やめぇ…てぇくださぃ!!」  
「へははは おじょうちゃん すげぇぜ!キッツキツでこっちが痛ぇくらいだ!」  
強引に肉棒をねじ込まれ、雪菜の恥部から赤い鮮血が滴り落た。  
人狼が一突きするごとに、泪が――大粒の氷泪石が床一面に溢れた。  
雪菜を後ろから羽交い絞めにしている二人の妖怪がイライラしながら人狼に交代をせがむ。  
人狼は雄たけびを上げながら譲ろうとしない。ブタが人狼に罵声を浴びせかける。  
「まだか?まだかああ?いい加減に交代したらどうだ犬コロ!こんなすぐ側で焦らされりゃぁ堪まんねぇぜ!」  
「ハァ!うるせぇ!ノルマがあんのは知ってんだろう!俺の分の泪が搾れたらすぐ交代してやるからよう!」  
人狼はそう言うと、直いっそう雪菜に体を激しく打ちつけ、滴る鮮血で一物と腹の毛皮を赤く染め上げた。  
自分の番がまだ当分回ってこないと解かると、蛸足の妖怪は雪菜の体のそこかしこに張り付き  
足を這わせるように撫でまわす。  
「ぁあ…ひぐっ…やめて…はなしてくださぃ」  
くすぐる様な蛸足の侵蝕に雪菜の桃色の乳首がピンと張り詰めると、  
蛸足は乳首に吸い付き上半身がぴチャぴチャと音を立てて舐め回した。  
 
焦れたブタがズボンに右手をかけ、はちきれんばかりの一物を取り出した。  
人狼のそれより一回り大きいものは、我慢の限界といったように、透明な液を先端から滴らせている。  
「そんなにノルマこなしたかったらオレが今すぐ手伝ってやるぜ!」  
巨大な一物を、人狼が犯している割れ目の、すぐ下の穴にあてがい、雪菜の耳元で囁く。  
「ごめんよぅおじょうちゃん。これもあの犬コロがさっさとどかねぇから悪いんだからよう。」  
 
ブチ  
 
「ヒぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」  
ブタはたった今処女を失ったばかりの雪菜の菊門に容赦なくそれを突き立てた。  
「ギヒ こりゃぁすげぇイイぜぇおじょうちゃん!もっともっともっといい声で泣くんだ!」  
「ひっ…く…やめ…なんでこんぁこと…ひっく…もうやめてください…」  
目の前はかすみ、頭はクラクラとして今にも意識を失いそうな中、泪を落しながら  
雪菜は必死に下腹部に突き立てられた二つの生き物の猛攻に耐えていた。  
雪菜の体内で暴れまわる二本の肉棒は、肉一枚を隔てて擦れあい  
受け入れるにはあまりに小さすぎた雪菜の中一杯に広がっている。  
「・・・ぉう・・・もう・・・ぃゃ・・・いやです・・・はなして・・・離して下さい・・・お願い・・です」  
どんなに懇願しても泪を落としても、もはや化け物どもには聞こえていなかった。  
これが仕事であるとか、ノルマがどうとか、そんなこと遠の昔に忘れてしまい  
今はただ本能の赴くまま雪菜を屠り、犯し続けた。  
 
 
 
 
  ご  ゅ  
    び る  
         り  
          ぃ  
 
 
 
 
膣から白い泡が吹き出た。  
少し遅れてブタが絶頂を向かえた。  
だが二匹の野獣は雪菜を離さなかった。  
蛸足は自分の番が来るのを今か今かと、まっている。  
二匹の野獣が二度目の絶頂を迎えた時、雪菜は意識を失った。  
ぼんやりと、振り子時計を眺めながら。  
 
 
 
 
 
 
 
ボーンボーンボーン ボーン ボーン ボーン ボーンボーンボーンボーン…  
 
 
 
時計の音が聞こえる。  
気が付けば寝台に寝かされていた。  
着物は着替えさせられており、体も拭かれている様だ。  
―あんなこと、夢であって欲しい  
 
だが、椅子の上に置かれた引き裂かれた着物が――  
僅かな血と大量の精液を含んだ着物  
なによりも自分の股間にある『違和感』と『痛み』がそれを否定していた。  
 
垂金の言葉が思い出される。  
 
『結果次第によっては今後の方針についても考えようかとも思っておる。』  
 
あの時流した泪の粒を数えてみる。  
 
すぐにそんなこと無駄だと数えるのを辞めた。  
 
 
耐えればいい…いや…耐えられなくとも  
泪さえ流さなければいい。  
そうすればきっとまた  
『趣をかえて』違う方法を探すだろう。  
 

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