この間貰った物の使い方がいまいち理解出来ん。とりあえず蔵馬に連絡を
取って、教えてもらう事に。・・・・俺のプライドが許さんが仕方あるまい。
「おや、こんばんわ飛影」
窓をいつもの様にガラリと開ければ既に待ち構えていましたよ、とでも言う顔で
爽やかに笑っている性悪狐の顔。
そんな相手に、無言でこの前貰った袋を差し出す。笑顔を崩さずに受けとる狐。
「やっぱり使い方判りませんよね、飛影じゃ。とりあえず、こんな物でも」
椅子を回転させて優雅な仕草で立ち上がり、部屋のドアを閉めて振り返った顔は
まさに悪徳盗賊、と言った顔付きで一瞬自分の選択が間違ったかと思った位だ。
「・・・・こんな物でも、と言いながら何も無いじゃないか」
キョロリ、と部屋を見渡した所で何の変哲もない。いつもの、人間臭いだけの
つまらん部屋だ。置いてある寝台に腰掛けてみると視線の先にはTV。
「えぇ、ですから部屋をとりあえず閉めておきませんと、ね」
「何の為にだ?」
わけが解らん。こいつは元々何を考えているか予想がつかない奴だったが、
今日はいつにも増して何を考えているのやらサッパリ理解出来ん。
困惑顔をしている俺の前で、蔵馬が何やら机からCD・・・いや、DVDと言う物か、それを出すのが見えた。なぜ教えて貰うだけでそんな物が必要なのだ?
「飛影、感情が最近モロ見えで楽しいですね、顔で丸解りですよ?」
笑いを含んだ声でハッとした所で、蔵馬がこちらを向いたままリモコンを押した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
思わず沈黙。そして、つい食い入るように画面に釘付けになってしまう自分が
哀しい、と思わずどこかで考えてしまった。
「中々面白いでしょう?これは表じゃ流通していない”裏モノ”ですけれどね。
ま、幽助が桑原君に渡そうとしたら拒否された、とかで・・・仕方無いでしょうが。
それで巡りめぐった挙句に俺の所に来たし、ちょうど良い資料になるかと」
相変わらず優雅な笑みを意地悪げに湛えたまま蔵馬が何やら横で解説していたが、
それを聞いている余裕など無かった。画面に映る二人の男女の絡みを眺める、俺。
そうか、こうすれば躯も悦ぶだろうとやっと納得が行った頃に、映像が終わった。
「で、どうでしたか飛影?」
肩を叩かれて我に帰る。慌てて振り向いて見上げると、俺の表情で理解したのか
無言で再度肩を叩く蔵馬。そして、またいつもの爽やかな笑顔で一言。
「あの方に、ちゃんと応用して下さいよ?その為に持っていたんですから、ね」
それに頷く事も忘れて、そのまま窓から出て帰途へつく。
その後、飛影はあまりに動揺し過ぎて蔵馬の部屋に袋を取りに一回戻ったと言う。