思わずこめかみを抑える。
あいつが、今日百足へと行くのは知っていた。だが、顔を合わせたくなかった。
だから、わざと日が合うように用事を作って人間界に来たものの・・・・・・
気になって、邪眼で様子を見てみれば、躯があいつに悪戯をちょうど仕掛けていた所で。
「あの、阿呆めが・・・・」
思わず口から出るぼやき声に、目の前にいる狐が顔を上げる。
「どうかしましたか、飛影?」
聞いているが、その表情から察するに恐らくは俺が『何』を見ているかは理解しているのだろう。
「何でも無い。早くさっさと薬草を準備しろ、この化け狐が」
「はいはい、調合が面倒なので時間がかかるってさっき言ったばかりですよ?」
クスクス、と笑いながらまた背中を見せる相手を二つの眼で見つつ、
邪眼は着崩れた妹の姿を追っている。
乱れた姿もそれはそれで良い、などと思う頭を軽く振り払いながら。
― 後で躯に苦言を呈さねばならんな、と心の中で苦々しく思いながら。