「・・・・・・・ん?」
「冷房効き過ぎじゃないか、ったく・・・・何か酒でも買い直すか・・・・と?」
廊下を歩いていて、目に止まった人影が一つ。扇風機に当たってグッタリしている蔵馬だった。
「どうかしたのかい、蔵馬君」
ぽんぽん、と肩を叩いて声をかければ、相手はハァ、と溜息をついてから目を開いて、それから
軽く、薄く苦笑をこちらに漏らして一声。
「いや、ちょっと長湯をし過ぎまして、のぼせてしまいまして。それで風に当たっていたんですが・・・
どうもあまり宜しくないかもしれません、ねぇ」
はふー、と彼にしては珍しく弱気な声を出してまたベンチにグッタリとする姿を見て、静流は蔵馬の
額にそっと手を当てる。冷房で軽く冷えた手に、相手の火照った体温が移って来る。
「静流さんの手、ひんやりしていますね?」
女性にしては大きい手の下から、目を細めて狐が笑う。
「・・・・・冷房のせいさ」
軽く呟いて、静流は冷やす物を探しに行くと呟いてその場を離れた。
後に残された蔵馬は扇風機の風を調節しつつポツリ、と一言。
「・・・・・・・・・・・・・・・浴衣の開きがもう少し大きければ良かったのに、惜しい。」