「へぇ、躯が飛影に”惚れた”って言ったんですか、そうなんですか〜。へー。」
あからさまに驚いた様子も無く、狐が笑いながら俺に薬草を渡して来る。
相変わらず、態度と言葉が裏腹で気に喰わん奴だ、こいつは。まぁ、薬草に強いのは便利なのだが。
「それで、どっちが攻めたんですか?」
「・・・・・は?」
「あぁ、その様子だと飛影がヤられちゃったって感じですね、はい、何も言わなくていいです」
ふふふ、と意味深な笑顔で肩を叩かれ、何が何やら、と言った所か。いや、何が言いたいんだ、こいつは。
「いいですねぇ、年上の女性に色々教えて貰うって言うのも。俺の場合だとあまり周りに・・・あ。」
一人、何やらブツブツと言っている蔵馬の表情が微妙に変わるのを、不思議そうに眺める俺。
そして、そんな俺と視線が合えばきまりの悪そうな表情でこちらを見返す、狐の瞳。
「いえ、南野としてだったら年上の女性、いたなぁと思っただけですよ?それより、飛影は・・・・
躯、ほっといていいんですか?そろそろ痺れを切らせて怒るんじゃないんですか?」
ハッとして時計を見上げれば、戻ると言っていた時刻がせまっている。いかん、早く戻らないと何を
言われるか、たまったモノではない。
挨拶もせずに、窓から慌てて荷物を片手に走り去る飛影。そして、その背中を見送ってから、カーテンを
閉めつつ、ポツリと一言漏らす狐。
「・・・・・静流さんの胸、大きいし・・・・狙い目、かもしれませんねぇ・・・?」
クスクス笑う狐の戯言。だが、誰も、まだその呟きの結果を知らない。