麗(うらら)
飛影と躯の間にかけがえのない絆が誕生した。
その奇跡は過ぎし真夏の盛りのこと。
それからやや時間が経過して、躯が寝間から赤子を抱いて出て来たのが人間界で
いう一週間後のことだった。
そして、小さな奇跡は煌めくように続いている。
「さあ、汗をかいちゃったから着替えましょうね」
まだ体が本調子ではない躯に加えて、赤子の世話も引き受けることとなった雛にと
っては、確かに負担が増えたことも事実だった。だが、それ以上に主人二人と新しく
誕生した主人の世話を焼けることが嬉しかった。
赤子は躯に瓜二つのとても可愛らしい女の子だった。名前はまだついていないが、
雛は相変わらずの誠実さで一心に世話を続けている。
何ひとつ知らない無垢な瞳は本当に綺麗で、つい見蕩れてしまう。
きちんと新しい肌着に着替えさせてから、薔薇色のおくるみに包んで雛は幼い主人
を抱き抱えて屋外の薔薇園へと歩いていった。
「ほら…綺麗でしょう?これはお母様の躯様の為に作られた場所。だからあなたの
為のものでもあるかもね…見える?」
宝物のように赤子を抱き締めて、雛は幸せそのものというように微笑んでいた。
新たな日々が、これからも続くのだ。
そんな予感がしている。
終わり