幽助・蔵馬・飛影・桑原の4人は、一見大きな門の前に居た。  
どう見ても学校の門だった。  
校庭の端々に大きな桜の木が植えられており、青々とした葉が生い茂っている。  
門の中から校舎の入り口までの道に、夏服姿で笑いあう生徒たちの幻が見え、どうやら朝の風景らしかった。  
どこからともなく、ゲームマスター・天沼の声が響く。  
『やあ、みんな。久しぶりだね。ちょっぴり大人になった君たちの為に、今回は素敵なゲームを用意したよ』  
「なんなんだ一体。学校なんかが舞台で素敵なはずあるか、ボケ!」  
桑原がしかめっ面で言い放った。  
『オレの領域へは、ゲームに関係ないものは入ることさえできない。とりあえず門から中に入ってみてくれよ』  
「ちっ、くだらん!」  
飛影が反対方向へ身体をむけると幽助が首根っこをつかんで中に入り込んだ。  
「まあまあ、せっかくじゃんかよ。たまに人間界に来た時くらい遊んで行こうぜ」  
なぜかのりのりである。  
「あれ?」  
蔵馬一人がブロックされた。  
『あ〜あ、残念!』  
天沼の心底残念そうな声が響く。  
『このゲームは恋してる人しか参加できないんだ。蔵馬くんは女性に恋していないんだね。  
仕方ない。門の外にモニターを出しておくから見てるといいよ』  
この言葉に桑原は敏感に反応し、瞬時に飛影の方を見た。  
 
「まさかこいつが・・・恋だと!?」  
桑原の額に汗が流れる。  
幽助と蔵馬には躯の姿が浮かんだ。  
しかし完全に上司と部下のように思っていた幽助にはにわかに信じがたい思いがした。  
対する蔵馬は「なるほどね」とニヤニヤ確信に満ちた表情になった。  
「で、天沼、どんなシナリオなんだい?」  
モニターの性能を確かめながら、蔵馬は楽しそうである。  
『あそこの時計が17時になるまでに、意中の彼女に告白し交際をOKしてもらう。  
うまくいったらエンディングで、その彼女とHなことができるんだ』  
「うおおおおおおおおおお!!雪菜さあああああああああん!!!!」  
天沼の説明を聞くや否や、桑原は校舎に駆け込んで行った。  
「ちょ!待て!!貴様!!」  
飛影の叫びはむなしく響くだけである。  
『もちろん、人の恋路の邪魔もできるよ、飛影くん』  
飛影もすっ飛んで行った。  
「あーあ、ありゃ、桑原と雪菜ちゃんの邪魔することしか考えてねーな」  
「そのようですねえ。ま、オレはゆっくりモニタリングさせてもらいますよ」  
この場で一番楽しんでるのは蔵馬のようだった。  
「くそ〜、エロゲーなのは歓迎するところだが相手が螢子じゃな〜」  
すでに両思いの恋人持ちの幽助は余裕綽綽であった。  
 
 
その教室に入った桑原の目に飛び込んできたのは可憐な制服姿の雪菜だった。  
螢子とおしゃべりして笑いあっている。  
「雪菜さん!」  
開口一番、雪菜の名を呼ぶ桑原の、襟首掴んで廊下にひきずりだした飛影がすばやく雪菜の隣の空席に座った。  
「まさかお前も雪菜さんを・・・」  
桑原の顔が青くなった。  
雪菜はちょっぴり頬を赤く染めて飛影の方を振り向いて言った。  
「あ・・・、おはようございます」  
「ああ」  
ぶっきらぼうに言い放った飛影に今にも掴みかからんとする桑原の額に、このとき何かが飛んできた。  
「いてえっ!!」  
それはチョークのかけらだった。  
命中した額からはだらだらと血が流れている。  
そのチョークのかけらをとばした方向を見た飛影は愕然とした。  
 
「お前、オレの授業の前に着席してないとはいい度胸ぜ」  
チョークの指弾を飛ばしたのは教壇に立った女教師だった。  
すらっとしたスタイル。  
腰まで伸びた金糸のような長い髪。  
深く、誰をも射抜くような意思を感じる蒼い瞳。  
その身体に醜く焼け爛れた部分はどこにもない、完璧なスーパー美女の躯だった。  
「な、なんだ、あの美女は!!」  
とかく面食いな桑原は驚いた表情で赤面し着席する。  
飛影は躯のそんな姿にドキドキしながら桑原の反応に嫉妬しつつ、  
隣に座った可憐な妹を守らなければならなかった。  
「これは興味深いゲームですね・・・」  
校門の前でう○こ座りで画面を食い入るように見ている蔵馬は、どこからどうみても変な人であった。  
 
 
「いや〜、遅刻しちまった」  
へらへら笑いながら教室に入ってきた幽助を迎えたのは、やはりチョークの指弾の洗礼だった。  
「いてえっ!!」  
額からだらだらと血が流れ、その血がぽたぽたと床に落ちた。  
「お前は廊下だ。立っていろ」  
そう言い放った女教師に、幽助も唖然とした。  
「げっ。躯か?!」  
躯の目元がピクリと反応する。  
「教師を呼び捨てにするとはいい度胸だな…」  
次の瞬間、幽助は廊下に立っていられない身体になって地に伏した。  
倒れた場所に鮮血の血だまりが広がる。  
保険委員の螢子が幽助を保健室に連れて行く展開になり、それを横目に桑原が「うまくやりやがって」と  
呟いた。  
 
キーンコーンカーンコーン  
 
授業終了のチャイムがなった。  
礼を終えた桑原のみぞおちに素早く飛影の拳が入る。  
「むぐっ!」と机につっぷした桑原の姿を確認し、飛影は教室からさっさと出てしまった教師の後を追った。  
「躯!!」  
名前を呼ぶと、鋭い眼光と共に躯が振り返る。  
瞬時に先ほどの幽助の無残な姿が脳裏に浮かび、ヤバイと感じた飛影はあわてて小声で付け足した。  
「……先生」  
モニター前の蔵馬が「ぷっ」っと笑った。  
「なんだ。質問か?」  
とたんに躯の表情が和らぐ。  
その、キレイな表情にまたしてもときめきながら、飛影は「そうだ」と呟いた。  
「いいだろう。こっちに来い」  
空き教室に二人して入る。  
雪菜のことは気がかりだが、飛影の足はどうしても恋する躯の方へ向かってしまう。  
「・・・で、こうだろ。だからこうなって・・・」  
授業内容を適当に質問した飛影は、丁寧に説明する躯の表情を見つめていた。  
ふうん・・・、こいつは身体をオリジナルに再生治療するとこんな風になるのか。  
別にキレイである必要を感じたことはなかったが、こんな姿で登場してくるということは、  
躯のこんな姿を見て見たいという気持ちが自分の中に密かにあったのだろうか・・・。  
飛影は複雑な表情で熱い視線を向ける。  
窓から入る微風に流れるような長い髪、キレイな瞳、長い睫、白い肌。  
飛影の頭は霞がかかったようにぼーっとしてきた。  
「・・・おい、聞いてるのか?」  
躯が視線を上げると、はっとした飛影の視線とかちあった。  
「聞いている」  
「そんなふうには見えんな。人の顔をじろじろみやがって」  
抗議の台詞とは裏腹に、熱っぽくみられていたことに躯は思わずどきどきしてしまっていた。  
「お前、キレイだな」  
思わず呟いた飛影の言葉に躯の頬は真っ赤に染まった。  
 
 
キーンコーンカーンコーン・・・  
 
次の授業のチャイムがなった。  
飛影は教室を飛び出して、もと来た廊下を走り自分の席に戻った。  
桑原が机につっぷしたまま、飛影を睨み付けている。  
「・・・て・・・てめー・・・げほっ」  
雪菜が桑原にかまうことなく友達と笑いあいながら着席する様子を見て、飛影は安心した。  
「幽助は?」  
飛影は正面を向いたまま雪菜に話しかける。  
「まだ、螢子さんと保健室です」  
雪菜は恥ずかしそうに呟いた。  
 
「たく、あのぶっそうな教師はなんなんだ」  
幽助は保健室で螢子の手当てを受けていた。  
手や足が、まるでかまいたちにやられたようにすっぱり切れている。  
ガーゼで押さえて止血しながら、螢子はあきれた顔で話しかけた。  
「躯先生にあんな口きくなんて無茶よ。あんた何考えてんの」  
「やっぱりあの教師は躯か・・・」  
と、すると飛影が恋してる相手というのも躯ということで間違いないだろう。  
あの飛影がなー・・・。  
幽助はなぜかしんみりしてしまった。  
その表情を勘違いした螢子が心配気に覗き込む。  
「ね、ねえ、痛いの?大丈夫?」  
「ん?ああ」  
そういえば。  
これはゲームなんだからちゃんとクリアーしないといけないんだ。  
幽助はこれがゲームだということを思い出した。  
よく見ると、目の前の螢子は現実の螢子より若干胸が大きいようだった。  
躯のあの姿といい、このゲームの女キャラはプレイヤーの願望が反映されているらしい。  
こりゃなんとしてもエンディングを迎えないと。  
この螢子の胸で、普段できないあんなことやこんなことを・・・。  
いやしかし、エンディングは完全にプレイヤーの希望が反映されるのだろうか?  
エンディングについて、もっと詳しく天沼に聞いておけばよかった。  
幽助はとたんにやる気になった。  
螢子はすけべ面して自分の胸に目をやっている幽助に気がつき、とたんにむっとした顔つきになった。  
「どこ見てるのよ!このスケベ!!」  
次の瞬間、幽助の頬に見事な手形が残った。  
ぴしゃん!と閉まる保健室のドアの音に続いて、螢子の去っていく足音が遠のく。  
幽助はひりひりする頬を押さえながら「あと6時間か・・・」と呟いた。  
 
校門の前で、蔵馬は各女性キャラのデータを見ていた。  
 
螢子の好意度・・・幽−20%・桑0%・飛0%  
雪菜の好意度・・・幽0%・桑0%・飛65%  
躯の好意度・・・幽−40%・桑−5%・飛95%  
 
「天沼、この好意度はどう解釈すればいいんだ?」  
『60%を超えるとやり方しだいではOKがもらえる。90%以上は余程のことがないかぎり、  
告白さえすればOKをもらえる。飛影くんがなかなかいいかんじだね。  
数値はこのあとの行動で変動することもあるけど、  
今の時点でさっさと告白してしまえば躯先生とのエンディングには行けるよ』  
「それはないな。飛影の目的は桑原くんと雪菜ちゃんの邪魔もあるから  
ぎりぎりまでゲーム内にとどまろうとするだろう。しかし・・・」  
恋愛シミュレーションゲームなんて分野でまさか飛影が善戦してるなんて・・・。  
蔵馬は心底不思議に思うと同時に、なんだかちょっぴりくやしくなった。  
ゲームの中の時間は着々と時を刻み、昼休みに入ろうとしていた・・・。  
 
 
「雪菜さん!いっしょにお昼ご飯、食べましょう!!」  
午前の終礼が終わるやいなや、桑原が雪菜のもとにすっとんできた。  
雪菜はきょとんとして口ごもっている。  
あまりの迫力で少し驚いているようだ。  
雪菜は不安気な面持ちで隣の気になる同級生の飛影を見た。  
飛影はすっと立ち上がると雪菜に目を向け手を差し出した。  
「屋上に行くぞ」  
コクン。  
雪菜はちょっぴり頬を染めながら飛影の手をとった。  
「なんで・・・雪菜さん・・・」  
桑原の目が涙目になった。  
 
屋上は少し風があった。  
「あ・・・」と、少し足元がぐらついた雪菜を飛影は軽く抱きとめると「気をつけろ」と呟いた。  
雪菜は真っ赤になりながら給水塔の陰に座り込み、お弁当の包みを開けだした。  
「サンドイッチ作ってきました。飛影さん、いっしょに食べましょう」  
「・・・・」  
飛影は黙ったまま雪菜の横に座り、サンドイッチを受け取ると口に運んだ。  
可愛い可愛い妹の作ったサンドイッチ。  
そういえば雪菜が作った物を口にするなんて初めてだ。  
飛影は心底感動し、雪菜との穏やかな時間を過ごすうちにこれがゲームの世界であることを忘れかけていた。  
その時、屋上と校内の入り口のドアがばたんと開いた。  
「わはははははーーー!!飛影っ!!オレだって邪魔させてもらうぜ!!」  
そこにはお調子にのった桑原と、思いっきり不機嫌な顔をした躯が立っていた。  
「不純異性交遊だって?!」  
躯は飛影を睨みつけた。  
躯の飛影に対する好意度が−99%になった。  
 
 
「なあ、螢子お、悪かったって。許してくれよ」  
教室の机の上でお弁当を広げている螢子に、幽助はひたすら謝っていた。  
「知りません。スケベな人はどっかいっちゃってください」  
「そんな〜、いいかげん機嫌なおしてくれよ・・・」  
ぐうぐうお腹をならしてまとわりついてくる幽助に、螢子は菓子パンひとつつきだすときっぱりすっぱり言い放った。  
「もう!わたしから離れて!!」  
螢子の機嫌は一度そこねたらなかなか治らない。  
そのことは経験上、よくわかっていた。  
幽助は絶望的な気分になった。  
 
飛影は躯の目をまっすぐ見つめて桑原にすっと指差した。  
「雪菜はオレの妹だ。その妹によからぬことを考えてるのはそこにいるそいつだ!」  
「なんだって?!」  
躯と桑原が同時に叫んだ。  
「嘘つけ飛影!そんな話は聞いてねーぞ!!」  
桑原は信じられないとでもいわんばかりの大声を上げる。  
「こともあろうに雪菜さんときょきょ、きょうだいだと!!」  
「嘘じゃない!これが証拠だ!」  
飛影は自分の胸元から母の形見の氷涙石をとり出した。  
雪菜の目が大きく見開かれる。  
「雪菜、お前も持っているな」  
コクン。  
雪菜はびっくりした面持ちで、自分の氷涙石を胸元からとり出した。  
「飛影さんが、兄さんだったんですね・・・」  
可憐な妹の瞳から涙が溢れ、その涙は屋上にふく風に触れると澄んだ光り輝く石となり、  
小さな音をたてて足元に落ちた。  
躯の鋭い視線が桑原に向けられた。  
「お前は殺す!」  
「えあっっ!!?」  
躯のスーパー怒りの鉄拳が炸裂し、桑原はこの学校から亡き人になった。  
「雪菜、教室に戻るぞ。躯・・・先生、後で話がある。授業が終わったらオレと二人で会ってくれ」  
雪菜と躯はコクリと頷いた。  
 
突如として、蔵馬の前に、幽助と桑原が無傷な身体で落っこちてきた。  
「あ、お帰り」  
蔵馬が心底楽しそうな顔をして出迎える。  
「くそー、どうなってるんだ?!」  
幽助が天沼に声をかける。  
『まず幽助くん、実際の女性の攻略でも言えることだけど、「あきらめたらダメ」なのさ。  
キミ、螢子さんの機嫌が悪いのでもうダメだと絶望したろ。そこでゲームオーバー。  
そして桑原くん、これは論外。キミはゲームのキャラクターに殺されてしまったんだからね。  
これもゲームオーバー』  
「くそー。なんだあのくそ教師は!まさかアレが魔界で飛影の彼女だったりするのか?!  
恐ろしくキレイだが、ひでえ女じゃねーか!いきなり生徒殺しやがったぞ!あんなのアリなのか?!」  
桑原はすごい剣幕で蔵馬に詰め寄っている。  
「躯は魔界で最強の女性ですからねえ。飛影だってうっかり殺されそうになったことが何度もあって、  
その度にオレだって治療が大変なんですよ」  
「それに彼女じゃないよな?蔵馬何か知ってるか?」  
「いいえ・・・」  
彼女ではなくても、お互い想いあっていることは間違いないように思うんですけどね。  
そんな言葉を蔵馬は飲み込んだ。  
「大体なんだよ!なんだって飛影と雪菜さんが兄妹になってんだ?!そんなわけあるか!  
このゲームはかなりいろいろ間違ってるぜ!!」  
「・・・・・・」  
その件に関してはノーコメント。  
蔵馬と幽助は無言でそういっていた。  
躯の飛影に対する好意度は、100%までになっていた。  
 
16時45分、終礼のチャイムがなって、飛影は午前中に躯と二人で過ごした教室に向かっていた。  
「授業が終わったらオレと二人で会ってくれ」そうは言ったが約束の場所は言わなかった。  
でもその場所でいいんだと確信していた。  
そして17時前10分、躯はそこに現れた。  
誰も居ない教室で、二人はしばらく見つめあっていた。  
「躯、オレはお前が好きだ」  
飛影は直球で言い放った。  
そして躯の目をまっすぐに見つめながら、飛影はとても不思議な気持ちでいた。  
この言葉が、いつも本物の躯を目の前にのど元まで出掛かっている。  
なぜ本物には言えないんだ。  
時間にしたらほんの数秒、とても簡単なフレーズなのに・・・。  
しばらくの沈黙。  
モニターの前で3人のギャラリーも無言で息を呑んだ。  
「・・・オレとつきあってくれ」  
たしか天沼の言ってた条件は「交際を申し込みOKをもらうこと」だったな、と飛影は思い出した。  
それと同時に、もうひとつ大事な事を思い出した。  
OKをもらえたら、その後はなんて言ってたか・・・?  
たしか・・・。  
飛影は背筋に悪寒が走った。  
・・・外でモニタリングしてる奴がいなかった、か?  
エンディングで、想像してることが起きるとすればもしかして・・・。  
「待て!躯!!」  
飛影が叫ぶのと同時に、躯はコクリと頷いた。  
「オレもお前が好きだ、飛影」  
時計の針が17時をさした。  
躯の言葉に、飛影はこの上ない幸福感と、そして恐怖を味わった。  
「飛影・・・」  
躯が近づいてくる。  
だめだ。  
この甘美な誘惑から逃げることなんて到底できない。  
誰も居ない放課後の教室で、二人の影が静かに重なりあった・・・。  
 
校門の外では3人が目を皿のようにして、う○こ座りで画面に見入っていた。  
はたから見れば、立派な変質者である。  
よく知っている仲間である飛影の濃厚なラブシーンに3人はとてもリアルなものを感じ、  
上質のアダルトビデオよりもはるかに興奮した。  
そして行為が終わる頃、画面にTHE HAPPY ENDの文字が浮かび上がった。  
だが飛影は戻ってこない。  
『無事にクリアーした飛影くんには、もうひとつのスペシャルご褒美に、本物の彼女の元にとんでもらったよ♪』  
たぶん、エロゲーなんてやりこんでるんだろう天沼は、涼しい声でそう付け加えた。  
 
 
<おまけ>  
 
飛影は百足の上にどすんと尻餅をついた。  
「くそ。なんだっていうんだ」  
よく知っている魔界の風が頬に心地いい。  
さっきまで人間界に居たはずなのにいきなり百足の上だと?  
これもゲームの続きなのか???  
「よお、飛影。何やってんだ?突然現れてびっくりするじゃないか」  
飛影がぎょっとして後ろを振り向くと、ゆっくりと走行する百足の上に腰掛けている本来の躯の姿があった。  
「そんな顔してなんだ?人間界で変なものでも食ってきたのか?」  
「・・・躯?お前、本物か?」  
ゲームの中の躯と、本物の躯とのギャップに飛影は戸惑って軽い眩暈を覚えた。  
「はあ?」  
怪訝そうな顔をして、躯は飛影の頬をつまんでひっぱった。  
「お前、寝言は寝てから言えよ」  
飛影は百足の上からつまんで放り捨てられた。  
「信じられない・・・」  
百足が走り去っていくのを地響きで感じながら、飛影はいつまでも魔界植物の根元に転がっていた。  
 
 
(おしまい)  
 
 
 

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