「・・・・・・で、何でコエンマ様まで俺の所に来るんですか。」
玄関の扉を開けば目の前にいる相手に深く溜息をついて、部屋に招き入れつつも相手の顔をチラリと確認する。
「んー?いや、下界の『芸術の秋』を使ってぼたんに悪戯してやろうと思って、のぅ」
ふぉふぉ、と笑う好青年の漏らした言葉に一瞬だけ、相手の女性に哀れみの感情を抱く。ああ、何て酷い上司なんだろう。
まぁでもその道を選んだのは彼女の選択ですし、と気を取り直して蔵馬は軽く思案を巡らせる。
「さて、蔵馬。お主なら何か良い手を知っているのではないか?聞く所に寄れば飛影も世話になっているそうじゃないか」
にやにや、と意味深な笑みを浮かべてどこから・・・いや、恐らく幽助辺りから仕入れた情報を嬉しそうに言うコエンマに
蔵馬は溜息だけを返す。自分は、どうしてこうもあちこちから頼られるんだろう、と。
「別に飛影の場合は知識が無さ過ぎて躯が大変だろうと思っただけですよ?」
「ほぅほぅ、お主がそれだけで色々と教えるとは思えんがのぅ」
ふふふ、と腹黒い男二人はお互いの腹の内を探り合う。しばらくして、根負けした蔵馬はコエンマに何やらぼそぼそと
耳打ちすれば、それを聞いたコエンマが最初は不思議な顔をして、理解してからは逆に明るい表情に変わり。
「なるほど、流石は蔵馬じゃな!ふむ、そこまで持って行くのは大変じゃろうが面白い提案じゃ。助かるぞ」
はは、と笑って邪魔したな、と言って出されたままのお茶に手も付けずにさっさと出て行くコエンマ。
その手の付けられていないお茶を啜りながら蔵馬は思案する。
「うーん、流石に俺でも霊界の様子までは詳しく知れないです、し・・・結果報告待ちでしょうかねぇ?」
流石の狐も、今回ばかりは相手が報告してくれるまでは分からない、と言う事で。