「・・・蔵馬」  
「!飛影、久しぶりですね。何かあったんですか?」  
蔵馬は窓際に佇む飛影の身体をじろじろ見つめて腕を組んだ。  
「どこにも怪我はなさそうですが・・・?」  
「今日は治療じゃない。躯のことだ」  
飛影は少し言いにくそうに視線をそらした。  
「率直にどうぞ」  
「ラーメン食べて百足に帰った後はどうもあいつの機嫌が悪い。どういうことだ?」  
「・・・貴方はどういうことだと思うんですか?」  
「あいつもラーメン食いたいのかと・・・」  
蔵馬はぷっとふきだした。  
「そんな鈍さでよく生きていられますね。まあ、鈍くてもうたれ強さはありますが」  
「だからどういうことだ!!」  
からかうような蔵馬の口調に飛影はちょっぴりいらいらした。  
「やきもちですよ。幽助に会ってきてるのが貴方からにおうチャーシューの匂いで解るんでしょう」  
「幽助に会うのに何でやきもちなんだ?わけわからん」  
「まあ、わからないでしょうね・・・」  
「わかるように説明しろ!」  
「躯はいままでの貴方の行動やなにかを総合して考えて、貴方にとって幽助は特別な人物だと思ってるんですよ。  
そんなことを考えると定期的に幽助の所に行ってしまう貴方の行動が腹立たしいんでしょう。  
独占欲、嫉妬心・・・微妙な女心なんでしょうね」  
「幽助は男だ。やきもちもなにもないだろう。というか、オレは別に躯とは何もない」  
「そういう問題じゃないですよ」  
「とにかく、あの機嫌の悪いのをなんとかしてほしい」  
「飛影・・・今、チャーシューの匂いさせてますね・・・ちょっと口あけてください」  
蔵馬は飛影の口に飴玉をほうりこんだ。  
「なんだこれは。甘いな」  
「帰ったらそれをお土産とかなんとかいって口移しであげたらどうですか?ご機嫌になりますよ、きっと」  
「なんで口移しだ!!そんなことしたら殺されるぞ!」  
「いいからだまされたと思って。あ、オレからの入れ知恵だってことは言わない方がいいですよ。  
さ、それがなくならないうちに帰ってください」  
蔵馬は飛影を窓から追い出してぴしゃりとガラス戸を閉めた。  
「やれやれ。恋愛相談室じゃないんだから・・・」  
 
飛影が百足に帰還すると、その上に躯が不機嫌な表情で座っていた。  
「おかえり」  
全くいい鼻をさせてやがる。  
飛影はもうどうにでもなれという気持ちで躯に近づいて跪いた。  
「土産だ」  
突然唇を合わされ、躯はびっくり仰天!心臓が口から飛び出しそうになってしまう。  
なななんだ?!飛影がオレにキスだと??????  
・・・と思いきや、一瞬にして何かを口の中に入れられ、唇を離された。  
「・・・甘い・・・」  
「それでも喰ってろ」  
「なんだよ、それ」  
躯はころころと笑いだした。  
飛影はびっくりする。  
・・・なんだ?ほんとに機嫌よくなったぞ???  
「・・・なあ、飛影」  
「なんだ」  
「また、お土産くれな」  
「・・・そんな甘い飴玉なんかが気に入ったのか?」  
案外子供っぽいやつだな、とか検討違いなことを思ってしまう飛影はどこまでも鈍ちんだった。  
「・・・ま、いっか。そういうことにしておくよ」  
躯はそういうとにっこりと子供のように微笑んで、口の中で飴玉をころころと転がしていた。  
飛影が真にうけて、今度は袋ごと持ち帰らなきゃいいけどな、とか思いつつ・・・。  
 

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