「こんにちは!」
その日、螢子は浦飯家へダンボール箱を持って訪れた。
「おーっ、螢子。おっ、どうしたんだ、これ?」
玄関のドアを開けたのは幽助だった。今日も温子は留守のようである。
「これ、親戚が送ってきてくれたの。おすそわけ」
温子さんと一緒に食べて、と箱の中から彼女が差し出したのは、甘酸っぱさ香る蜜柑であった。
「すげぇ、いっぱいあるじゃねぇか!いつも悪りぃな」
受け取った蜜柑の香りをいっぱいに吸い込む幽助。その後、なにやら得心したように頷く。
「…どうしたの?」
そんな幽助の態度を訝しく感じた螢子は声をかける。
「いやいや〜この蜜柑もお前と一緒で熟してて…」
「こ、このバカ幽助!」
語る幽助の視線の先を悟り。瞬間、螢子はいつもの平手打ちを炸裂させた。
幽助、“上手そうだよな”とは結局最後まで言えずじまい。