「で?なんの相談だって?」
躯は癌陀羅の喫茶店で10人分くらいありそうなでっかいパフェにとりかかりながら目の前の棗に言葉をかけた。
「・・・躯さ、1000歳以上も歳の離れた男とくっついてんだろ・・・?」
「ん?飛影のことか?」
「しかも自分より弱い相手で、そういうのってお互いのプライド的にどうなのかなと思って」
躯は今まさにでっかいまるごとバナナをフォークでぶすっと突き刺し口に頬張る寸前で止めた。
そのバナナに目を留め、螢子の電話を思いながら思わず眉間に皺がよってしまう。
「・・・何?オレに恋愛相談するのが流行ってるのか?」
「え?ただ、似たような境遇だからどうなのかなと思って・・・」
「つまり、お前も自分より弱くて年下の男で好きなやつがいるということだな?」
・・・やっぱり恋愛相談か。ちょっと最近うんざりなんだけどとか思いながら。
「好きなやつというより勝手に惚れられてるというか・・・。自分より弱いやつは嫌いだといったら一生懸命
挑戦してくるんでこっちも悪い気がしないっていうか・・・。でも、なんかイマイチ
ビジュアル的にも臭い的にもキレイじゃなくて、よろめくには心が納得しないというか・・・」
「なんだかはっきりしないな・・・」
躯は器に戻したバナナをフォークの先でつつきながら、時々スプーンで生クリームを舐めだした。
幽「いてえ・・・」
蔵「幽助?どうしました?」
幽「いや、なんかさっきから大事なところが痛いんだが・・・」
飛「そうか?オレはなんだか気持ちいいんだが・・・」
蔵「・・・?」
「・・・お前、取り繕いすぎ」
「え・・・?」
「歳とか弱いとかは置いといて、好きなのか?嫌いなのか?好きならそれでいいじゃないか」
なんでもっとこう、シンプルに考えられないのか。
うじうじ悩まず感情には素直に従えばいいのに、と躯は思う。
棗は「うーん」と考えながら紅茶をすすり呟いた。
「嫌いではないけど好きというほど恋しいこともなく・・・」
「じゃ、とりあえず傍に置いといたらどうだ?そのうち好きになるかもしれんし嫌いになったら殺せばいい」
「そんなもんなの?」
不思議そうな棗の表情を尻目に、躯は数年前の飛影の姿を思い出してこっそり一人で微笑んだ。
あの時は本当に、『とりあえず傍に』置いといたんだっけ。
うっかり殺しそうになったことも・・・いやいやくふふ・・・。
「でも・・・」
「・・・?」
「傍に居ると、ムサイというか、ウザイというか・・・はぁ」
「まあ、無理に結論だすこともないさ。ただ、いつでも殺せるようにお前の方が強くないとな」
「んー・・・」
「とりあえず、さ」
躯は再度バナナにぶっすりとフォークを突き刺すと棗の方につきだした。
「これ、喰っとけ」