「ふぅ…」  
京都の城咲、化物マンション。  
僕は九月に入ったばかりの暑い街を徒歩で移動し、三時間以上をかけてようやくここにたどり着いた。  
ただ今の時刻は午後八時半。  
ちなみに今日は珍しく、僕自身の気まぐれで来た訳ではない。  
つい四時間程前に、玖渚から電話での呼び出しを受けたのである。  
『やっほーいーちゃーん!今日はシリーズ三ヶ月連続リリース祝いのパーティなんだよ。  
理解したら今すぐカモーン!来ないといーちゃんの身の回りに悪いことが起きまくるから  
そのつもりで。待ってるよん』  
…呼び出しというよりは脅迫と言った方が正しいかもしれない。  
強面の警備員さんに頭を下げ、エレベーターに乗り込む。  
「返事も聞かずに切りやがって…」  
今更々々の話ではあるが、あいつは言葉のキャッチボールができていない。  
というか、する気がないのだろう。  
そもそも「シリーズ三ヶ月連続リリース祝いのパーティ」ってのは何だ。何のシリーズだ。  
「まぁ、どうでもいいか…」  
玖渚の性格は矯正しようがないし、僕はどうせ暇で、既にここに着いてしまっている。  
それに、僕が知っても詮無い話だろう。  
 
そんなどうでもいいことを考えている内に三十二階に到着し、僕はエレベーターから出た。  
見慣れた鉄製の扉を開錠し、中に入る。  
「友ー。脅されて仕方なく来たぞー……おーい」  
返事がない。それどころか、室内の電気すらついていない。  
「友ー?上がるからなー」  
絶対的な引きこもりの玖渚が、僕を呼びだした上で出かける可能性はほぼ零。  
とりあえず廊下を移動し、適当な部屋のドアを開け―  
 
ぱぁんっ!  
 
暗闇から、破裂音と共に色とりどりの紙テープが飛び出してきた。  
「へへーっ。いーちゃん、ようこそ僕様ちゃん主催パーティへ!ってゆーかビビった?ビビった?」  
「…いいや全く全然」  
うん。ぶっちゃけ超ビビった。  
紙テープを被った僕が電気を点けると、部屋の真ん中に玖渚の姿があった。  
手には使用済みのクラッカー。頭には三角錐のとんがり帽子。  
「ほらほらいーちゃん、座って座って。せっかく頑張って準備したんだからさ」  
言われて見渡してみると、部屋の中はかなり派手に飾り立てられている。  
定番の金銀のモールに、カラフルな電飾。  
クリスマスツリーまで置いてあるのは玖渚流のジョークなのだろうか?  
部屋の真ん中のテーブルの上の料理は、出来合いの物のようだが結構な量がある。  
「これ…お前が用意したのか?」  
「そうだよん。僕様ちゃん、いーちゃんの為に健気に頑張っちゃった。  
っていうかこの部屋を一番に開けてくれたあたりに、二人の運命を感じるねー」  
健気なのかはともかく、確かに随分と頑張ったのだろう。  
僕は椅子に座り、皿に盛られたポテトを一口つまんだ。  
「ふぅん…そっか。それじゃ、素直にもてなしてもらうかな」  
「うに。存分にもてなしちゃうよー」  
さて。  
良く分からないが、パーティの始まりだ。  
 

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